建設物価調査会

令和7年度国土交通省関係予算概算要求の概要

令和7年度国土交通省関係予算概算要求の概要

国土交通省 大臣官房 会計課


第1 令和7年度予算概算要求のポイント

Ⅰ.令和7年度予算概算要求額

○ 上記の他、下記項目については、事項要求を行い、予算編成過程で検討する。
・防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策
・近年の資材価格の高騰の影響等を考慮した公共事業等の実施に必要な経費
・北陸新幹線(敦賀・新大阪間)の新規着工に要する経費
・一般会計から自動車安全特別会計への繰戻しに係る大臣間合意を踏まえた更なる増額

第2 令和7年度予算概算要求の基本方針

(基本的な考え方)

○ 我が国は、長年続いてきたデフレから完全に脱却するチャンスを迎えており、物価上昇が賃金上昇を上回る現状の日本経済を成長型の新たなステージへ移行させ、豊かさと幸せを実感できる持続可能な経済社会を実現していく必要がある。このためには、能登半島地震からの復旧・復興に全力を尽くすとともに、今回の地震等を踏まえた災害対応力の強化、防災・減災、国土強靱化の着実な推進、交通の安全・安心の確保、海上保安能力の強化等により、国民の生命・財産・暮らしを守り抜く必要がある。また、持続的な経済成長に向けて、成長分野における国内投資を持続的に拡大し、賃上げにつながる人への投資、生産性の向上に寄与する戦略的な社会資本整備、DX・GX の推進に加え、デジタル田園都市国家構想の実現に資する地域活性化の推進、「交通空白」の解消等に向けた地域交通のリ・デザインの全面展開等に取り組む必要がある。これらの施策を実現するため、
・国民の安全・安心の確保
・持続的な経済成長の実現
・個性をいかした地域づくりと分散型国づくり
を柱に、次頁の主要課題をはじめとして概算要求に取り組む。

○ その際、「重要政策推進枠」も最大限活用して、メリハリをつけた要求を行うとともに、「5か年加速化対策」の推進や、物価高騰対策、敦賀・新大阪間の整備新幹線着工等を含めた重要政策のための所要の経費等については、予算編成過程において検討する。国土強靱化については、「5か年加速化対策」の着実な推進とともに、継続的・安定的に切れ目なく取組を進められるよう、施策の実施状況の評価など「国土強靱化実施中期計画」に向けた検討を最大限加速化し、2024年度の早期に策定に取り掛かる。

(公共事業の適確な推進)

○ 社会資本整備は未来への投資であり、ストック効果の最大化に取り組む必要がある。既存施設の計画的な維持管理・更新・利活用を図りながら、上記の3本柱の実現に資する波及効果の大きなプロジェクトを戦略的かつ計画的に展開することが不可欠であり、中長期的な見通しの下、必要かつ十分な公共事業予算の安定的・持続的な確保を図る。その際、近年の資材価格の高騰の影響等を考慮しながら労務費も含め適切な価格転嫁が進むよう促した上で、今後も必要な事業量を確保する。

○ また、公共事業の効率的かつ円滑な実施・順調な執行のため、改正建設業法等も踏まえ、施工時期等の平準化や適正価格・工期での契約、国庫債務負担行為の積極的な活用、地域企業の活用に配慮した適正規模での発注等を推進するとともに、新技術の導入やi-Construction2.0の推進、災害に備えた防災体制の拡充・強化にも取り組む。あわせて、建設資材価格の変動への対応、建設産業における処遇改善や働き方改革の推進、外国人技能労働者の受入・育成等に取り組む。

第3 令和7年度予算概算要求の概要

1.国民の安全・安心の確保

(1)東日本大震災や令和6年能登半島地震をはじめとする大規模自然災害からの復旧・復興

(a)東日本大震災からの復興・再生 [617億円]
(注)復興庁一括計上
 「第2期復興・創生期間」における東日本大震災の被災地の住まいの再建や復興まちづくりを着実に推進するとともに、インフラの整備や被災者の暮らしを支える被災地の地域公共交通、福島県の震災復興に資する観光関連事業等に対する支援を引き続き実施する。

(b)令和6年能登半島地震をはじめとする大規模自然災害からの復旧・復興
 令和6年能登半島地震や近年相次ぐ豪雨、台風等の大規模自然災害からの復旧・復興に向けて、道路、河川、砂防、港湾、空港、水道、下水道、公園、鉄道等のインフラの整備や被災地の住宅再建・宅地の復旧等に対する支援を着実に推進する。

(2)災害に屈しない強靱な国土づくりのため

※  防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策については、事項要求を行い、予算編成過程で検討する。

 (a)令和6年能登半島地震を踏まえた防災・減災対策
 令和6年能登半島地震を踏まえ、「事前防災」の観点で、上下水道一体の耐震化などインフラの地震対策を進め、国民の生命と財産を守る防災インフラの充実・強化を計画的・戦略的に推進するとともに、災害リスクを踏まえた事前防災型のまちづくりを推進することで、被害を未然に防止・軽減する。

(b) 気候変動による水害や土砂災害の激甚化に対抗する「流域治水」の加速化・深化
[8,311億円(1.31)]
 気候変動による水災害リスクの増大に備えるために、流域治水関連法も踏まえた「流域治水」の考え方に基づき、堤防整備、ダム建設・再生などの対策をより一層加速するとともに、自助・共助・公助の観点に立って、国・都道府県・市町村、企業・住民など流域のあらゆる関係者で水災害対策を強力に推進する。また、気候変動による集中豪雨の増加や火山噴火等により激甚化・頻発化する土砂災害に対して、ハード・ソフト一体となった総合的な対策を実施し、地域全体の安全性向上を強力に推進する。

(c) 南海トラフ巨大地震、首都直下地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震対策等の推進
[2,771億円(1.34)]
 切迫する南海トラフ巨大地震、首都直下地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震などの大規模地震に備え、想定される被害特性に合わせた実効性のある対策を総合的に推進する。

(d) 密集市街地対策や住宅・建築物の耐震化の強化
[392億円(2.15)]
 大規模地震や大規模火災の発生時における人的・経済的被害の軽減を図るため、密集市街地の改善、住宅・建築物の耐震化や防火対策等を推進する。

(e) 災害対応能力の強化に向けた線状降水帯、火山噴火等に関する防災情報等の高度化の推進
[109億円(1.46)]
 非接触・リモート型の新技術の活用や共有体制の構築により、線状降水帯、地震、火山噴火等に関する防災気象情報や災害発生状況などの防災情報の適確な把握・提供を図り、行政や住民の災害対応能力を強化する。

(f) 地震、豪雨、豪雪等災害時における物流・人流の確保[4,939億円(1.21)]
 災害発生時であっても輸送ルートが確保されるよう、啓開体制を構築するとともに、地震、豪雨、豪雪等を想定した防災対策を推進する。

(g) 盛土の安全確保対策の推進[10,405億円の内数]
 令和5年5月に施行された盛土規制法に基づき、都道府県等が実施する規制区域指定のための調査等の取組や盛土の安全性把握調査、対策工事等に対する支援措置を通じて、盛土の安全確保対策を推進する。

(h) TEC-FORCE 等の国の災害支援体制・機能の拡充・強化[476億円(1.24)]
 南海トラフ巨大地震、首都直下地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震等の大規模広域災害時にも被災自治体の膨大かつ多様なニーズに対応できるよう、迅速な情報収集体制の強化、高度な専門性を有する多様な主体との連携等による自治体支援のためのTEC-FORCE 等に係る機能強化、資機材等を活用したインフラ機能の暫定的な確保による被災者支援、陸海空が連携した啓開体制、物資輸送の確保など、発災後に被害の影響を軽減するための応急対応について、災害対応力を拡充・強化する。また、過酷な環境で活動するTECFORCE隊員の活動環境改善を図る。

(3)インフラ老朽化対策等による持続可能なインフラメンテナンスの実現

[9,327億円(1.22)]
 インフラが持つ機能を将来にわたって適切に発揮できるよう、国土交通省インフラ長寿命化計画(行動計画)に基づく取組や、広域的・戦略的なインフラマネジメントの取組など、インフラ老朽化対策等による持続可能なインフラメンテナンスの実現に向けた取組を推進する。

(4)地域における総合的な防災・減災対策、老朽化対策等に対する集中的支援(防災・安全交付金)

[10,405億円(1.20)]
 激甚化・頻発化する風水害・土砂災害や大規模地震・津波に対する防災・減災対策、予防保全に向けた老朽化対策など、地方公共団体等の取組を集中的に支援する。

(5)交通の安全・安心の確保

(a) 羽田空港での航空機衝突事故等を踏まえた運輸分野の総合的な安全対策の推進[133億円(1.26)]
 公共交通等における安全・安心の確保を図る取組を推進する。
※「一般会計から自動車安全特別会計への繰戻し」については、大臣間合意を踏まえつつ、更なる増額を図るため、事項要求を行い、予算編成過程で検討する。

(b)通学路等の交通安全対策の推進[3,026億円(1.20)]
 交通安全確保のため、通学路対策、生活道路対策や踏切対策、無電柱化等の道路交通安全環境の整備等を推進する。

(6)海上保安能力の強化等

[2,916億円(1.12)]
 厳しさを増す我が国周辺海域の情勢等に対応するため、「海上保安能力強化に関する方針」に基づき、海上保安業務の遂行に必要な能力を強化するとともに、国民の安全・安心を守る業務基盤の充実を図る。

(7)国民保護・総合的な防衛体制の強化等に資する公共インフラ整備

 令和4年12月に閣議決定された国家安全保障戦略等に基づく国民保護・総合的な防衛体制の強化等に資する公共インフラ整備に取り組む。

2.持続的な経済成長の実現 

(1)ストック効果を重視した社会資本整備の戦略的かつ計画的な推進

 我が国の経済を支える人流・物流ネットワークや、企業立地・設備投資を誘発するインフラなど、国内投資の拡大、生産性の向上等に資する社会資本を戦略的かつ計画的に整備する。

(a) 効率的な物流ネットワークの早期整備・活用[4,336億円(1.20)]
 大都市圏環状道路等の整備やピンポイント渋滞対策等を併せて推進し、交通渋滞の緩和等による迅速・円滑で競争力の高い物流ネットワークの実現を図る。

(b) 地方都市のイノベーション力・大都市の国際競争力の強化 [157億円(1.20)]
 イノベーション拠点の形成やデジタル技術等を通じた地方都市と大都市との交流・連携を推進するとともに、国際ビジネス拠点を支える都市基盤の整備や優良な民間都市開発事業を推進する。

(c) 航空ネットワークの充実 [140億円(1.12)]
 航空ネットワークの維持・活性化を推進するとともに、国際競争力の強化や訪日外国人旅行者の受入対応等に資する空港の機能強化等を計画的に推進する。

(d) 整備新幹線の着実な整備 [804億円(1.00)]
 我が国の基幹的な高速輸送体系を形成する整備新幹線について、着実に整備を進める。
※  北陸新幹線(敦賀・新大阪間)の新規着工に要する経費については、事項要求を行い、予算編成過程で検討する。

(e) 鉄道ネットワークの充実 [210億円(1.22)]
 大都市圏における国際競争力の強化や利用者の利便性向上を目的とした都市鉄道整備や技術開発等を進めるとともに、東京圏における今後の都市鉄道のあり方や幹線鉄道ネットワーク等に関する調査を行う。

(f) 国際コンテナ戦略港湾の機能強化[797億円(1.26)]
 サプライチェーンの強靱化・安定化を進めるため、コンテナ船の国際基幹航路の維持・拡大に向けた取組を推進する。

(g) 成長の基盤となる社会資本整備の総合的支援(社会資本整備総合交付金)[6,089億円(1.20)]
 将来の成長の基盤となる民間投資・需要を喚起する道路整備やPPP/PFI を活用した公園整備、地域の賑わいの創出に資する民間等と連携した河川の水辺整備、下水道資源・エネルギーの有効利用など、地方公共団体等の取組を総合的に支援する。

(2)脱炭素社会の実現に向けたグリーントランスフォーメーション(GX)の推進

(a) 脱炭素効果の高い住宅・建築物の普及や木材利用の促進などを通じた住宅・建築物の脱炭素対策等の強化 [1,263億円(1.19)]
 カーボンニュートラルの実現に向け、我が国のCO2排出量の約3割を占める住宅・建築物部門における省エネ、再エネ利用等を促進するため、住宅・建築物の省エネ化や木材利用の促進、ライフサイクルCO2の削減を図る。

(b) グリーンインフラ、まちづくりGX 等のインフラ・まちづくり分野における脱炭素化の推進[193億円(1.28)]
 自然の持つ多様な機能を活用するグリーンインフラ等のインフラの活用、都市における緑地の確保やエネルギー利用の再エネ化・効率化、都市の暑熱対策等を進めるまちづくりGX の推進を図るなど、インフラ・まちづくり分野における脱炭素化やサーキュラーエコノミーを推進する。

(c) カーボンニュートラルポート(CNP)の形成、持続可能な航空燃料(SAF)の導入促進、ゼロエミッション船の導入促進等の交通分野における脱炭素化の推進 [156億円(1.09)]
 脱炭素化に配慮した港湾機能の高度化や水素等の受入環境の整備等を図る「カーボンニュートラルポート(CNP)」の形成推進や洋上風力発電の導入、持続可能な航空燃料(SAF)の導入促進、ゼロエミッション船の導入促進など、鉄道、自動車、道路、海事、港湾、航空といった交通分野における脱炭素化を推進する。

(3) 国土交通分野のデジタルトランスフォーメーション(DX)や技術開発等の推進

(a) i-Construction2.0、建築・都市のDX 等の「インフラ分野のDX アクションプラン」の推進[124億円(1.48)]
 2040年までに少なくとも建設現場の省人化3割・生産性向上1.5倍を達成するため、自動化・省人化を図るi-Construction2.0を推進する。また、地籍調査の成果を含むベース・レジストリや国土数値情報等の地理空間情報も活用し、建築物の3次元データと属性情報を併せ持つ建築BIM、3D都市モデルの整備・活用・オープンデータ化を推進するPLATEAU、土地・建物を一意に特定する不動産ID の取組を一体的に推進し、まちづくりの高度化や官民データ連携による新サービスの創出を促進する。これらも含め、「インフラ分野のDX アクションプラン(第2版)」等に基づき、インフラDX の推進に向けて取り組む。

(b) 自動運航船の実現を含め経済安全保障にも資する造船・海運の国際競争力強化や海洋開発等の推進 [28億円(1.22)]
 造船・海運の国際競争力強化・生産性向上、海洋資源・エネルギー等の開発・利用、海洋権益の保全・確保に関する取組等を推進する。
※  この他、沖ノ鳥島における戦略的維持管理等による恒久的な島の保全の推進がある。

(c) DX の推進等 [16億円(3.76)]
 少子高齢化や人口減少といった社会課題の解決を図る観点から、社会全体の生産性向上に向け、デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速化を図るとともに、サイバーセキュリティの確保に向けた取組を同時に推進する。また、「国土交通省統計改革プラン」(令和4年8月10日)に基づき、統計全般の省横断的な企画立案、点検、品質改善を図る。

(4)持続可能な観光立国の実現

(a) 持続可能な観光の推進 [146億円(1.62)]
 我が国の成長戦略の柱、地域活性化の切り札である観光について、持続可能なあり方で、全国あまねくその効果を広めるべく、観光産業の「稼げる」産業への変革を進めつつ、持続可能な観光地域づくりや地方を中心としたインバウンド誘客、国内交流拡大に戦略的に取り組む。

(b) 国際観光旅客税を活用したより高次元な観光施策の展開 [470億円(1.17)]
 「国際観光旅客税の使途に関する基本方針等について」(令和5年12月観光立国推進閣僚会議決定)に基づき、より高次元な観光施策を展開する。

※  国際観光旅客税を充当する施策の考え方については、既存施策の財源の単なる穴埋めをする
のではなく、①受益と負担の関係から負担者の納得が得られること、②先進性が高く費用対効果が高い取組であること、③地方創生をはじめとする我が国が直面する重要な政策課題に合致することを基本とする。

※  国際観光旅客税を充当する具体的な施策・事業については、硬直的な予算配分とならず、常に上記の考え方を満たすものとなるべく、毎年度洗い替えが行えるよう、民間有識者の意見も踏まえつつ検討を行い、予算を編成する。

(c) 社会資本の整備・利活用を通じた観光振興
 観光資源としての既存ストックの公開・開放などの社会資本の利活用や、観光客の移動円滑化等にも資する社会資本の整備を通じて、地域の観光振興に貢献する。

(5)国土交通分野における働き方改革等を通じた担い手の確保・育成や生産性の向上

 生産年齢人口の減少が見込まれる中、日本経済を成長型の新たなステージへ移行させるため、国土交通分野における処遇改善や働き方改革を推進し、担い手の確保・育成を図る。また、業務効率化や省力化等により、生産性の向上を促進する。

(a) 物流の革新や持続的成長に向けた中長期計画を踏まえた取組の推進 [168億円(1.56)]
 令和6年2月の我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議にて決定された「2030年度に向けた政府の中長期計画」に基づき、物流の効率化、商慣行の見直し、荷主・消費者の行動変容を柱とする施策を一体的に講じ、物流の適正化・生産性向上の更なる推進を図る。
※  この他、物流拠点や物流GX・DX 関連設備の整備等に向けて財政投融資を活用した支援を行う。

(b) 担い手の確保・育成や生産性向上による持続可能な建設業の実現 [8億円(1.74)]
 第三次・担い手3法を踏まえ、賃金支払の原資となる適正な労務費の確保、建設資材価格の変動への対応、週休2日の実現に向けた働き方改革、建設Gメンの体制強化による処遇改善・取引適正化、現場管理におけるICT 活用による生産性向上等に取り組むとともに、建設キャリアアップシステムも活用した処遇改善、外国人技能労働者の受入れ・育成等を通じ、持続可能な建設業の実現に向けた担い手の確保・育成や生産性向上に取り組む。

(c) 運輸業、不動産鑑定業、造船・海運業、宿泊・観光業等における人材確保・育成
[307億円の内数]
 現場を支える技能人材等の確保・育成や生産性の向上のため、適切な賃金設定等の処遇改善、教育訓練の充実等を官民一体で推進する。

(6)民間投資やビジネス機会の拡大

(a) ビジネスでの利活用に向けた地籍整備等の推進やデータ基盤・提供環境の整備[113億円(1.17)]
 不動産投資市場の活性化等を通じたビジネスの機会拡大・効率化や新ビジネスの創出に向けた環境整備を推進するため、土地の適正価格の把握や社会資本整備の基盤である地籍整備について地域特性に応じた戦略的な推進を図る。

(b) PPP/PFI の推進 [80億円(1.48)]
 民間の資金・ノウハウを活用した多様なPPP/PFI を通じて、低廉かつ良質な公共サービスを提供するとともに、民間の事業機会を創出し、経済成長の加速化や地域活性化を図る。

(c) インフラシステム海外展開の戦略的拡大[36億円(1.36)]
 我が国の国際競争力を高め、持続的な経済成長を実現するとともに、経済安全保障を確保し、デジタル変革、カーボンニュートラルへの対応等を通じて世界のインフラ需要を取り込んでいくため、
「2030年を見据えた新戦略骨子」及び「グローバルサウス諸国との新たな連携に向けた方針」等を踏まえ、我が国の強みである質の高いインフラの海外展開に向けた取組を官民一体で推進するとともに、国際機関との連携の強化を図る。

(7)2025年大阪・関西万博に向けた対応

 2025年大阪・関西万博の開幕にあたり、関係省庁や地元自治体等と緊密に連携し、万博のコンセプトである「未来社会の実験場」の具体化に向けた空飛ぶクルマや自動運転走行などを実現するとともに、万博を契機とした誘客促進や関連するインフラ整備等、万博の成功やその後の大阪・関西の発展に資するような取組を行う。

(8)2027年国際園芸博覧会に向けた対応

 2027年国際園芸博覧会( 略称:GREEN×EXPO2027)については、SDGs の達成及びGXやグリーン社会の実現等に貢献するため、関係閣僚会議で決定された基本方針等に基づき、国際園芸博覧会協会が実施する会場建設に係る費用の一部補助、日本国政府出展及び参加招請活動等の開催に向けた準備を着実に進める。

3.個性をいかした地域づくりと分散型国づくり

(1)共生社会実現に向けたバリアフリー社会の形成と活力ある地方創り

(a) 地域公共交通や観光地・宿泊施設等のバリアフリー化の推進とユニバーサルデザインのまちづくりの実現 [337億円の内数]
 誰もが安心して暮らし、快適に移動できる環境を整備するため、鉄道駅や地域公共交通、観光地・宿泊施設等のバリアフリー化を推進する。また、全ての人に優しいユニバーサルデザインのまちづくりを実現するため、幅広い世代が利用する駅前広場や公園施設等のバリアフリー化を推進する。

(b) 空き家対策、所有者不明土地等対策及び適正な土地利用等の促進 [122億円(1.54)]
 空き家・所有者不明土地等の適正かつ効果的な活用により地域の生活環境の維持・向上を図り、魅力・活力のある地域の形成を推進する。また、建物と居住者の「2つの老い」に直面するマンションの管理適正化と再生円滑化を推進する。

(c) 半島、離島、奄美群島、小笠原諸島、豪雪地帯等の条件不利地域の振興支援[57億円(1.20)]
 半島、離島、奄美群島、小笠原諸島、豪雪地帯等の条件不利地域について、地域資源や地域の特性、創意工夫等を活かした取組に対する支援を行う。
※  離島振興にあたっては社会資本整備総合交付金も活用

(d) 民族共生象徴空間(ウポポイ)を通じたアイヌ文化の復興・創造等の促進[22億円(1.20)]
 令和2年7月に開業した「民族共生象徴空間(ウポポイ)」への年間来場者数100万人を目指し、戦略的・効果的な誘客施策の実施、魅力的なコンテンツの提供、地域との連携などウポポイの充実を図り、アイヌ文化の復興・創造等を促進する。

(e) 首里城の復元に向けた取組の推進[47億円の内数]
 関係閣僚会議で決定された「首里城正殿等の復元に向けた工程表」に基づき、首里城正殿の本体工事(令和4年11月着工)を引き続き実施し、令和8年の復元に向けた取組を進める。

(2)デジタル田園都市国家構想の実現に資する分散型国づくりや持続可能な地域活性化

(a) 国土形成計画の推進 [1億円(1.01)]
 新たな国土の将来ビジョンとして「新時代に地域力をつなぐ国土」を掲げ、「シームレスな拠点連結型国土」の構築を図る新たな第三次国土形成計画(令和5年7月閣議決定)を実効的に推進していくため、広域地方計画の検討・策定作業を進めるとともに、新しい資本主義やデジタル田園都市国家構想を踏まえつつ、人口減少下においても地方において人々が安心して暮らし続けることができる社会の実現に向けた取組を推進する。

(b) 地方への人の流れを創出する官民連携による二地域居住等の促進・個性ある多様な地域生活圏の形成 [311億円(1.20)]
 第三次国土形成計画に掲げる「新時代に地域力をつなぐ国土」を実現するため、各課題に対応し
た施策を講じ、地方への人の流れを創出する二地域居住等の促進を図る。また、デジタルとリアルが融合した「地域生活圏」の形成を促進するとともに、多様な公園緑地の整備や、固有の歴史・景観資源の活用等により、安全で魅力ある地域づくりを進める。

(c) コンパクトでゆとりとにぎわいのあるまちづくりの推進 [930億円(1.16)]
 地域の生活機能の誘導・集約や防災指針を軸とした防災・減災を推進するとともに、多様なライフスタイルを支えるコンパクトでゆとりとにぎわいのあるまちづくりを推進する。

(d) スマートシティの社会実装の加速[52億円(1.88)]
 デジタル田園都市国家構想の実現等に向けて、新技術や官民データを活用して地域の課題解決、新たな価値の創出を図るスマートシティの実装の加速化を図るとともに、その基盤となる3D 都市モデルの整備等を推進する。

(e) 次世代モビリティの普及促進[272億円の内数]
 ポストコロナにおけるヒト・モノの移動ニーズの変化に対応するため、デジタル田園都市国家構想の実現に資するAI・IoT 等の新技術を活用した次世代モビリティの普及等を促進する。

(f) 地域・拠点の連携を促す道路ネットワークの整備 [4,469億円(1.21)]
 分散型国づくりへの転換を図るとともに、デジタル実装した社会を支え、人流・物流の円滑化・活性化を図るため、地域・拠点をつなぐ道路ネットワークを整備する。

(g) 地域の暮らしと産業を支える港湾整備の推進[1,590億円(1.19)]
 デジタル実装した社会を支え、民間投資の誘発、雇用と所得の維持・創出を図るため、地域の暮らしと産業を支える港湾の整備を推進する。

(3)「交通空白」の解消等に向けた地域交通のリ・デザインの全面展開[331億円(1.38)]

 我が国のあらゆる地域における待ったなしの課題である「交通空白」の解消に向け「地域の足」「観光の足」の確保を強力に進めるとともに、デジタル技術も活用しつつ、地域のあらゆる関係者が参画した連携・協働の取組を進めることにより、地域交通のリ・デザインを全国的に展開する。
※  この他、交通DX・交通GX を通じた利便性向上と経営力強化を図る取組への財政投融資を活用した支援を行う。

(4)「こどもまんなかまちづくり」等こども・子育て政策の推進

 「こども未来戦略」(令和5年12月閣議決定)等を踏まえ、こどもや子育て当事者が安心・快適に日常生活を送ることができるよう、こどもや子育て当事者の目線や、住宅を起点とした「近隣地域」といった視点に立った「こどもまんなか」の生活空間の形成や、こども・子育てにやさしい社会づくりのための意識改革のための取組を実施する。

(5)安心して暮らせる住まいの確保と魅力ある住生活環境の整備

(a) 多様な世帯が安心して暮らせる住宅セーフティネット機能の強化 [835億円(1.33)]
 高齢者世帯、子育て世帯など、住まいの確保に困難を抱えている世帯をはじめとして、誰もが安心して暮らせる多様な住まいの確保を図る。

(b) 既存住宅流通・リフォーム市場の活性化[327億円(1.30)]
 既存住宅流通・リフォーム市場の活性化に向け、取引環境の整備や既存ストックの質の向上を推進する。

(6)豊かな暮らしを支える社会資本整備の総合的支援(社会資本整備総合交付金)【再掲】[6,089億円(1.20)]

 コンパクト・プラス・ネットワークの推進やゆとりとにぎわいのあるまちづくり、地域交通のリ・デザインなど、地方公共団体等の取組を総合的に支援する。

※計数については、一部重複がある。

[参考]デジタル庁一括計上 [398億円]
 国土交通省が所管する政府情報システムに係る予算については、デジタル庁に一括計上した上で、国土交通省において執行する。
 (一括計上されたシステム)
 ・国土交通本省行政情報ネットワークシステム
 ・次世代河川情報システム
 ・特殊車両通行許可システム
 ・海事行政情報連携基盤システム
 ・地方整備局等行政情報システム
 ・気象資料総合処理システム 等

第4 令和7年度国土交通省関係予算概算要求総括表

第5 公共事業予算の一括計上

○  北海道総合開発、離島振興、奄美群島振興開発の推進

 地域の総合開発等の推進を図るため、北海道、離島及び奄美群島に係る公共事業予算は、農林水産省及び環境省関係を含めて国土交通省に一括計上を行っている。

※ 「【令和7年度】国土交通省関係予算概算要求の概要」の詳細は、以下国土交通省HP に掲載しております。令和7年度予算 – 国土交通省

公共事業関係費(政府全体)の推移


建設物価2024年11月号

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