建設物価調査会

セメント業界の現況と今後の展望

セメント業界の現況と今後の展望

一般社団法人 セメント協会 調査・企画部門 統括リーダー 佐藤正彦

  1. 現況
  2. 今後の展望
  3. カーボンニュートラルに向けた取り組み

1. 現況

 2021年度のセメント生産は55,741千t、前年伸び率▲0.6%と4年連続のマイナスとなった。国内需要は37,882千t、同▲2.0%と3年連続のマイナス、輸出については11,484千t、同+3.3%となり3年連続のプラス、輸入は10千t、同▲48.0%と9年連続のマイナスとなった。セメント系固化材の販売量は7,835千t、同+1.9%と3年ぶりにプラスとなった。



(1)国内需要は2 年連続で40,000千t割れ

 2021年度のセメント国内需要は37,882千tと前年に比べ▲788千t、▲2.0%の減少と、2年連続の40,000千t割れとなった。これは増加基調にあった55年前の1966年度と同程度の水準。

 前年比プラスとなったのは、関東一区、東海、九州の3地区だった。コロナ禍からの回復の動きも見られ、概して都市再開発事業や道路整備事業などが寄与した。一方、他の地区では工期の長期化、建設労働者の人手不足など弱含みで推移したことから、前年比マイナスとなった。前年に新型コロナウイルス感染症拡大の影響で一部工事が中断した上半期は前年比プラスで推移すると見ていたが、長雨の影響もあり同マイナス、下期もマイナス基調が続いた。一方で、7月から8月には1年延期となっていた東京オリンピック・パラリンピックが開催されたが、コロナ禍を鑑み無観客開催となったことから、工事中断などの大きな影響はなかった。

 官民別にみると、官需は同マイナス。2021年度の国の公共事業関係費予算は2020年度補正予算と合わせて金額ベースでは確保されたものの、資材価格、労務コスト上昇等による入札不調・不落や用地買収の遅れによりマイナスとなった。

 一方、民需は増加した。設備投資は停滞していた投資再開の動きが見られ、都心部の再開発も本格化してきたものの、コロナ禍からの持ち直しの動きは弱かった。住宅投資は、コロナ禍からの回復に加え、政府の住宅取得支援策の一部延長により、コロナ禍前の水準には届かないものの新設住宅着工の総戸数は増加した。





(2)輸出は増加基調

 2021年度の輸出は11,484千t、同+3.3%と3年連続で前年比プラスとなった。
 アジア向けが全体の約70%を占めており、7,903千t、同+0.7%となっている。2021年度に最大の輸出先国となったのはシンガポールで、2,668千t、同+64.0%。コロナ禍でのサーキットブレーカー措置により、建設工事が停滞していた前年より状況が改善した。

 オーストラリアなど大洋州向けも2,859千t、同+14.8%と増加。各国とも経済活動が徐々に回復してきている。その他、中南米向けも増加した。
 輸出は増加基調であり、7年連続で10,000千t超の高水準を維持している。





(3)輸入は減少傾向

 2021年度のセメント輸入は10千t、同▲48.0%と、2013年度から9年連続のマイナス。全量韓国品となっている。
 セメント輸入は低調な国内需要を反映し、このところ大幅に減少している。


(4)セメント系固化材は高水準を維持

 2021年度のセメント系固化材の販売量は7,835千t、同+1.9%と3年ぶりのプラスとなった。自然災害による被害が増加しており、国が国土強靭化策を推進していることから地盤改良工事は増加傾向にあり、セメント系固化材の販売量は高水準を維持している。


2. 今後の展望

(1)2022年度セメント需要見通し

 国内需要は前年比若干プラスの38,000千tと見通している。
 官需は減少の見通し。国の公共事業予算は2021年度に対して下回る水準で、入札不調や用地買収遅れによる予算執行率の低下、人手不足等による工事の長期化も継続すると想定する。民需については、住宅投資において新設住宅着工戸数は減少すると予想。設備投資は事務所や店舗、倉庫が増加することや、都市部の再開発工事が本格化することから、2021年度を上回ると想定している。

 輸出は11,600千t、前年比101.0%と見通した。エネルギー価格高騰、フレートの上昇等、厳しい輸出環境にあるものの、アジア諸国及びオセアニアを中心に依然根強い引き合いが期待されることから、前年並みに推移するものと想定している。


(2)中期的なセメント需要見通し

 新型コロナウイルスの収束の見通しは立たないが、都市開発事業,地方での防災、減災対策などが継続されることや、2025年大阪万博開催の関連工事、リニア中央新幹線工事の沿線地域での直接・間接投資が期待されることから、中期的には一定水準の需要は維持するものと期待する。

 一方で、工事着工までの長期化、工期の長期化、コスト上昇による実工事量の減少など、近年の人手不足に起因する工事環境の変化は引続きセメントの需要動向に影響を与えるだろう。また、官需は今後の政府よる財政健全化の動きにも左右されると思われる。


3. カーボンニュートラルに向けた取り組み

 我が国では、第21回国連気候変動枠組条約国会議(COP21、2015年12月開催)で採択されたパリ協定に基づき、2050年までにカーボンニュートラルを目指すという政府の方針が示されている。そして、2021年4月にはその通過点である2030年度の温室効果ガスの削減目標が従来の2013年度比26%減から46%減に引き上げられた。

 セメント協会では2020年3月に「脱炭素社会を目指すセメント産業の長期ビジョン」、さらに2022年3月には「カーボンニュートラルを目指すセメント産業の長期ビジョン」をとりまとめた。セメント業界にとって二酸化炭素の排出量を抑えるには、セメントの製造工程での発生を減らす方法、発生した二酸化炭素を回収する方法と大きく二つあり、それぞれ新技術の開発など具体的な対策に取り組んでいる。

 セメントの安定供給を主軸としながら、廃棄物・副産物の有効利用を通じた循環型社会形成への貢献、災害廃棄物処理により被災地の復旧・復興を支援する役割、セメント工場の全国展開による地域経済への貢献、これらを果たしつつ進めていかなければならない。





建設物価2022年7月号

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