建設物価調査会

【令和5年度】ICT施工に関する基準類の改定について

【令和5年度】ICT施工に関する基準類の改定について

国土交通省 大臣官房 技術調査課 施工企画室(旧 国土交通省 総合政策局 公共事業企画調整課 施工安全企画室)



  1. はじめに
  2. 現状
  3. ICT 施工に関する基準類の整備状況
  4. おわりに



1.はじめに

 国土交通省では、2016年度から調査・測量から設計、施工、検査等のあらゆる建設生産プロセスにおいてICT 等を活用するi-Construction に取り組んでおり、2025年度までに建設現場の生産性を2割向上させることを目標としています。


2.現状

 現在、直轄工事におけるICT 施工の実施率が約8割に対し、地方公共団体におけるICT 施工の実施率は約2割にとどまっております。今後ICT 施工の更なる普及を図るためには、ICT 施工の対象工種を拡大が必要となります。


3.ICT 施工に関する基準類の整備状況

 国土交通省ではICT 施工の普及拡大に向けて、平成28年度のICT 土工から始まり順次基準類を拡充しております。令和5年度は小規模現場に対応するモバイル端末を用いた出来形管理の適用拡大や構造物工(橋梁上部工)への新規策定および民間等の要望を踏まえた基準の策定・改定をしました(図1 )。


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(1)小規模現場へのICT 適用拡大

 中小企業にICT 施工を普及させるため、令和4年度より小規模現場(土工)におけるICT 施工の適用拡大を実施し、モバイル端末を使用する3次元計測技術を用いた出来形管理手法について基準類を策定しました。

 令和5年度からは、モバイル端末を用いた3次元計測技術を用いた出来形管理手法の適用拡大をするため、令和4年度より運用を開始した小規模土工とあわせて実施する側溝工等について、適用拡大しました(図2 )。


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(2)ICT 構造物工(橋梁上部工)
 構造物の出来形管理においては、従来、計測箇所に計測員を配置し、レベル・巻き尺等を用いて計測を行い出来形管理を行っていました。

 構造物(橋梁)の出来形管理にICT を活用し出来形管理について効率化を図るため、令和4年度に橋梁下部(橋脚・橋台)への適用拡大を実施しました。

 更なる拡大を行うため、令和4年度に橋梁上部工の出来形管理について試行工事による現場実証を行い、基準類を策定し平成5年度より運用を開始します(図3 、4 )。


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(3)民間等の要望を踏まえた基準の策定・改定
 公共工事に用いられる工種は多種にわたること、またICT の進展が非常に早いことから、新技術を迅速に現場導入するため、民間企業等から基準類の提案を募集し、より迅速に基準類を整備する取り組みを行っており、下記の手法について基準類へ反映をしました。


1 )バックパック型レーザースキャナーを用いた計測
バックパック型レーザースキャナーを「地上移動体レーザースキャナー」の一技術として位置づけ適用可能としました(図5 )。


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2 )地上移動体搭載型プリズムと自動追尾機能付きTS を用いた計測
TS 等光波方式での出来形計測時に使用するプリズムに対し、移動機構を付加したものを「地上移動体搭載型プリズム」とし、地上移動体搭載型プリズムを用いたTS 等光波方式での計測方法を適用可能としました(図6 )。





3)モバイル端末を利用した3次元計測手法
モバイル端末を用いた出来形管理手法において、GNSS を用いる手法以外に、TS を用いて標定点・検証点の座標を計測(TS 併用タイプ)し、モバイル端末にて計測した点群に座標を与える手法を適用可能としました。


4)GNSS‒TLS を用いた出来形計測手法
TLS の両端に2 基のGNSS を搭載した「GNSS 搭載TLS」等の、点群計測時の自己位置を直接計測できるTLS を用いる場合の手法を可能としました(図7 )。





5 )ICT 切削における施工履歴取得手法(ICT切削工)
   路面切削機で施工できず人力ハツリやミニ切削機にて施工する範囲(人孔の周囲、R部拡幅部、施工の起終点など)について、従来管理手法での計測で代替できることを明記し、活用しやすくいたしました(図8 )。


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6 )高精度GNSS を用いた出来形管理手法(断面管理)
土工の出来形断面管理に用いるICT として、現時点ではTS 及び高さ補間機能付きGNSS が適用可能となっております。近年、RTK 解析エンジンや取得衛星数が改善した製品が市販されるようになり、GNSS の高さ計測精度が向上したことから、必要な高さ計測精度を有するGNSS(高精度GNSS)を用いる場合も、土工の断面管理に適用可能としました。



6.おわりに

 建設現場の生産性向上を目指しi-Constructionに取り組み、ICT 施工の普及に関して前述したように一定の普及は確認されております。

 しかしながら、中小建設業においては、ICT施工を経験した企業はまだまだ少ない状況であり、ICT 施工に関する研修や講習会の実施、ICT 施工に関する様々なアドバイスを受けることができるICT アドバイザー制度の導入などの中小建設業へ向けたICT 施工普及の取り組みを実施しているところであります。

今後も、ICT 施工の更なる普及のため、工種の拡大や人材育成等の普及方策を実施し、課題解決に向けた取り組みを進め、さらなる建設現場の生産性向上に努めて参りたいと思います。



建設物価2023年5月号

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