―――竹中工務店が描く“ホールライフカーボンゼロ”への挑戦
前回のコラムでは、大成建設の建築物ライフサイクルCO2の評価に関する取り組みを紹介させていただきました。今回は、竹中工務店が取り組む「ホールライフカーボン削減」戦略を見ていきましょう。
本コラムでは、建設分野における脱炭素、カーボンニュートラルに関する役立つ情報や気づきとなる話題(制度動向、技術革新、取組事例、用語解説など)を10回にわたり紹介していきます。
#バックナンバー
第1回【 #01 建設業が脱炭素化を求められる背景 】
第2回【 #02 Scope3排出量と建物のライフサイクルCO2 】
第3回【 #03 建物のライフサイクルCO2をめぐる状況① 】
第4回【 #04 建物のライフサイクルCO2をめぐる状況② 】
第5回【 #05 土木・インフラ工事のCO2排出量算定】
第6回【 #06 建物のライフサイクルCO2に関する具体例① 】
第7回【 #07 建物のライフサイクルCO2に関する具体例② 】

竹中工務店の特徴は、その事業姿勢にあります。
公式サイトでは自社の施工物件を「施工事例」や「施工実績」ではなく、「建築作品」と呼び、建物を単なる成果物ではなく、社会に遺す価値ある作品と位置付けています。
同社の使命は「最良の作品を世に遺し、社会に貢献する」こと。
「CSRビジョン」にも「ステークホルダーとの対話を深め、その想いを「まちづくり」を通したかたちにして、未来のサステナブル社会へつないでいきます。」という理念が掲げられています。ここには、単なる建設会社を超えた、持続可能な社会づくりへの強い意思がにじみます。
参考:竹中工務店
竹中工務店は、サステナビリティに関する重要課題(マテリアリティ)の一つとして「ライフサイクルCO₂ゼロ建築への挑戦」を掲げています。
これは、建物の設計から施工、運用、さらには解体・廃棄までを視野に入れた、まさに“建物の一生”を通じた脱炭素の取り組みです。
同社はこの挑戦を具体的な数値目標に落とし込み、2030年までにScope1・2排出量を46.2%削減、Scope3を27.5%削減することを宣言。
さらに2050年には、事業活動全体でのカーボンニュートラル達成を目指しています。
単なる「環境配慮」ではなく、グループ全体の成長戦略と一体化した目標設定。
ここに、竹中工務店が描く未来の建築業の姿
――“持続可能性を組み込んだ作品づくり”への覚悟が見えてきます。

環境に関しては、「環境戦略2050」を掲げて、CO2削減に関する中長期の目標を設定しています。

この目標を達成するために、同社は三つの領域に分けた長期ロードマップとKPIを策定し、段階的に実行に移しています。数字だけを掲げるのではなく、その裏付けとなる実行計画を明確にしている点が特徴です。

こうした戦略を具現化するため、2025年4月に発表されたのが独自プラットフォーム
「Z-CARBO(ジカーボ)」です。
このシステムは、
といった膨大な情報を集約・分析し、建物のライフサイクルCO₂を可視化・評価するもの。
いわば、建物の“炭素会計”を担う総合的なツールです。



本システムには以下のような特徴があります。
AI連携による効率化
見積データとCO₂排出原単位をAIが自動でマッチング。
従来の煩雑な計算を大幅に効率化します。
豊富なZEB実績を活かした独自データベース
再現性のある脱炭素提案を顧客に提示可能。
机上の理論ではなく実績に基づく提案力が強みです。
設計施工一貫方式のメリット
建物のライフサイクル全般でデータを継続的に収集・管理でき、情報開示や改善提案に直結します。
竹中工務店は「Z-CARBO」を活用し、顧客の脱炭素目標を確実にサポートする方針です。
ホールライフカーボンという長期的な視点で建物を捉えるアプローチは、単なる環境施策にとどまらず、社会に残る“建築作品”を次世代へとつなぐ挑戦とも言えるでしょう。

さらに詳しく知りたい方は、竹中工務店のウェブサイト等をご覧くださいね。
今回のコラムでは、建物のライフサイクルCO2に関する事例を紹介しました。
——————次回のコラムでは…!
他の先進的な企業の取り組みを取り上げていきます。
それでは、また。

大学院で気候変動に関する研究に従事。
卒業後は、シンクタンクで気候変動対策の政策実施支援やカーボン・オフセットの指針・ガイドライン策定などを担当。
さらにコンサルティング会社にて、気候変動対応の戦略策定や実行支援に携わる。
2021年、Sustineri株式会社を設立。
建物のCO2排出量算定サービスの開発・運営を行う。
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