初の2万5,000円突破
国土交通省は、2026年度の公共工事設計労務単価を決定した。全国・全職種の単純平均は前年度に比べて4.5%上昇し、必要な法定福利費相当額の反映を目的に単価算出手法を大幅に変更した13年度以降、14年連続の引き上げとなっている。加重平均(都道府県別・職種別の単価を標本数に応じて重み付けした平均)の値では2万5,834円に上り、設計労務単価の公表を始めた1997年度以降の最高値を8年連続で更新したほか、初めて2万5,000円を上回った。国交省は、例年と同様に、ゼロ国債などの発注が始まる3月から前倒しで直轄工事に適用している。
国や地方自治体などが公共工事の予定価格積算に使用する設計労務単価は、「基本給相当額」、「基準内手当(当該職種の通常の作業条件と作業内容の労働に対する手当)」、「臨時の給与(賞与など)」、「実物給与(食事の支給など)」の4つを合計したもの。基本給相当額と基準内手当は所定労働時間内8時間当たり、臨時の給与と実物給与は所定労働日数1日当たりで算出する。
公共事業労務費調査で把握した労働市場の実勢価格をベースとしつつ、建設業を取り巻く状況変化への対応に必要な経費なども反映した上で、47都道府県別・51職種別に毎年度定めている。新単価は、調査で十分な有効標本数を確保できなかった建築ブロック工を除く50職種分を設定した。
調査の実施方法としては、労働基準法で使用者に調製・保存が義務付けられている賃金台帳から、請負業者(元請け、協力会社)が転記するなどして作成した調査票を基に、建設技能者等への賃金支払い実態を把握する。25年度調査で賃金支払い実態を確認した有効標本数は、国交省と農林水産省が所管する直轄・補助事業などの工事1万0,031件で8万5,670人となっている。
公共工事で広く一般的に従事され、現場技能者の8割以上を占める主要12職種は、単純平均で4.2%上昇、加重平均値で2万4,095円となった。
職種別は、特殊作業員=2万8,111円(4.3%上昇)、普通作業員=2万3,605円(3.0%上昇)、軽作業員=1万8,605円(2.9%上昇)、とび工=3万0,780円(4.0%上昇)、鉄筋工=3万1,267円(4.6%上昇)、運転手(特殊)=2万9,442円(4.8%上昇)、運転手(一般)=2万5,275円(2.9%上昇)、型わく工=3万1,671円(5.0%上昇)、大工=3万0,331円(3.1%上昇)、左官=3万0,508円(4.1%上昇)、交通誘導警備員A=1万8,911円(5.8%上昇)、交通誘導警備員B=1万6,749円(6.7%上昇)となっている。
交通誘導警備員Bの伸び率は6%を超えて最も高くなったほか、交通誘導警備員Aは5.8%と2番目に高い伸び率となった。伸び率が最も低かったのは、軽作業員と運転手(一般)の2.9%。金額の加重平均値を見ると、とび工、鉄筋工、型わく工、大工、左官の5職種が3万円を超えた。
全国・全職種の単純平均の伸び率は、5%を上回った23-25年度の過去3年間と比べると弱まったが、コロナ禍以降となる21年度以降の5年間の平均で見ると4.2%のため、ほぼ同等の水準となった。現行の単価算定手法になる前の12年度と比べると、これまでに全国・全職種で94.1%、全国・主要12職種で93.4%とほぼ2倍に伸びている。


建設業に従事する技能者の処遇改善に向けて、25年12月に全面施行した改正建設業法で運用が始まった労務費に関する基準(標準労務費)では、適正な労務費のベースに設計労務単価を位置付けている。標準労務費は、公共工事、民間工事を問わず、契約当事者間で価格交渉時に参照できる適正な労務費の相場感として機能させるとともに、行政が指導・監督を行う際の参考指標として活用することを目的に作成している。
この際、適正な労務費を、「適切な職種の公共工事設計労務単価×施工条件・作業内容などに照らした適正な歩掛かり」によって導かれる「単位施工量当たりの労務費(労務費の基準値)」に、「施工量」を乗じることによって得られる値に相当する額と定義している。あらゆる工事の発注者-元請け間、元請け-下請け間、下請け-下請け間の全ての段階で適正な労務費が確保され、技能者に賃金として支払われることを目指している。
また、労務費に関する基準では、支払い段階の実効性確保策として、建設キャリアアップシステム(CCUS)のレベル別年収の賃金支払いを盛り込んでいる。CCUS の能力評価に応じた賃金実態を踏まえ、設計労務単価が賃金として支払われた場合に考えられるレベル別年収を算出・公表することで、技能者の経験に応じた処遇と、若年層のキャリアパス形成につなげることを目指している。
改正建設業法の全面施行に併せて公表されたCCUS レベル別年収の改定版では、全国9ブロック、43職種のレベル別に支払いを推奨する水準となる「目標値」と、最低限支払うべき水準となる「標準値」の2つの値を設定した。適正な賃金として「目標値」以上の支払いを推奨するとともに、「標準値」を下回る支払い状況の事業者に対しては、請負契約において労務費ダンピングの恐れがないかを重点的に確認するとしている。
改正建設業法の全面施行後初めての設計労務単価の公表となったが、こうした点において、設計労務単価の持つ意味は大きくなっていると言える。単価表の留意事項には、労務費に関する基準で、全ての建設工事の適正な労務費の基礎となる水準として位置付けられていることを新たに記載し、あらゆる工事でこの適正な労務費が確保されるべきと喚起している。
また、設計労務単価とは別に、事業主が負担する費用として参考値を公表している「雇用に伴う必要経費」を見直し、従来の設計労務単価の41%から48%に改めた。必要経費は法定福利費(事業主負担分)、労務管理費、安全衛生経費などで構成する。13年度から41%に据え置いていたが、諸経費動向調査の結果を踏まえて初めて変更した。
請負契約で適正な労務費が確保されていても、事業主が下請代金に必要経費分を計上しなかったり、下請代金から必要経費を値引くことは不当行為に当たる。実態に即した値を示すことで、下請けが元請けに対して必要経費を請求する際の参考にしてもらう狙いがある。
新単価に対し、主要建設業団体のトップからは歓迎の声が上がった。日本建設業連合会の宮本洋一会長は、「今回の引き上げは、最近の労働市場の実勢価格の適切・迅速な反映と、賃金引き上げなどによる『強い経済』の実現を目指す高市内閣の姿勢を踏まえたものと考えている」と受け止め、「我々は、この引き上げを技能者のさらなる賃金引き上げにつなげていかなければならない。日建連としても、25年12月に完全施行された第三次・担い手3法における労務費の基準を踏まえ、引き続き『労務費見積り尊重宣言』に基づく適切な労務賃金の支払いを進めるとともに、適切な水準の賃金が技能労働者に確実に行き渡る努力を続けていく」と決意を示した。
全国建設業協会の今井雅則会長は、「地域建設業が担い手を確保し、『地域の守り手』としての社会的使命を果たしていくためには、建設技能者の処遇改善、特に賃上げ、そのために必要な設計労務単価の持続的な引き上げは、極めて重要な課題だ。全建としては、将来の担い手確保に向け、必要な技能や労働環境に見合った処遇改善が図られるよう、この設計労務単価の引き上げを踏まえ、会員企業の建設技能者の賃上げ、下請け契約における労務費への反映などの取り組みを今後とも積極的に展開していく」と表明した。
全国中小建設業協会の河﨑茂会長は、「労務単価の引き上げは、建設技能者の処遇改善や若年層の入職促進につながる。近年の過酷な猛暑の下で作業している人たちのためにも、労働環境にふさわしい設計労務単価となるよう、さらなる引き上げをお願いする。地域の守り手としての使命を果たし、若者から選んでいただける魅力ある産業を目指して、全中建は会員団体と傘下企業が一丸となって、適正な労務賃金の支払い、労働環境の改善に取り組む」とコメントを寄せた。
金子恭之国交相は、新単価発表後となる2月20日の会見で、「今回も現場での賃上げが確認できた結果、設計労務単価が14年連続で引き上げられることになった。これを現場技能者の処遇改善に向けたさらなる取り組みにつなげていかなければならない」と強調した。
その上で、「自然災害が激甚化・頻発化する中で、建設業は応急復旧の現場に駆けつけるなど、地域の守り手としてなくてはならない重要な存在だ。近年、現場技能者の高齢化が急速に進む中、建設業が持続可能な産業として今後も発展していくためには、依然として他業種よりも低い水準に留まる賃金の上昇を図り、将来の担い手を確保していくことが不可欠となる。
今後は設計労務単価の引き上げと、改正建設業法に基づく適正な労務費の確保・行き渡りの徹底を車の両輪として、将来に希望が持てる持続可能な建設業を実現できるよう、民間発注者も含めた全ての関係者による取り組みを、私自身が先頭に立って前進させていく」と意気込みを語った。
労務費の基準値、CCUS レベル別年収は、新単価を踏まえた改定を予定している。また、25年2月に国交省と建設業主要4団体(日本建設業連合会、全国建設業協会、全国中小建設業協会、建設産業専門団体連合会)が申し合わせた「おおむね6%」とする技能者の賃上げ目標の達成状況については、各団体のフォローアップ調査の結果を踏まえて検証するとしている。
