建設物価調査会

建設分野の外国人材育成・確保あり方検討会取りまとめについて

建設分野の外国人材育成・確保あり方検討会取りまとめについて

国土交通省 不動産・建設経済局
国際市場課 外国人材係長 長津 朋哉



1 .はじめに

 建設業においては、従事する技能者の高齢化や少子化に伴う入職者の減少などにより、将来的に担い手の減少が見込まれる中、外国人材の受入れによる中長期的な担い手の確保が重要な課題となっています。

 外国人材の受入れについて、令和6年6月に、出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律(令和6年法律第60号)が公布され、国際貢献を目的とする技能実習制度を抜本的に見直し、人手不足分野における人材の育成・確保を目的とした育成就労制度が創設されることとなりました。

 こうした背景のもと、有識者や業界関係者等からなる「建設分野の外国人材育成・確保あり方検討会」(座長:蟹澤宏剛芝浦工業大学建築学部教授)を令和7年6月に立ち上げました。

建設分野における外国人材の円滑・適正な受入れに向けた環境を整備するため、育成就労制度の施行に向けた対応の方向性について整理するとともに、外国人材の中長期的なキャリアパスの構築、技術者人材の受入れ、地域との共生等の幅広い論点について議論を進め、令和7年11月にその結果が取りまとめられました。


2.育成就労制度について

 令和7年3月に、育成就労制度の施行に向け、「特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する基本方針及び育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する基本方針」が閣議決定され、この基本方針に基づき、各分野を所管する行政機関は分野別運用方針を検討し策定していくこととなりました。建設分野の運用方針を定めるにあたって、主に論点となった内容について紹介いたします。

 技能実習制度ではやむを得ない事情がある場合を除き、働く先の企業の変更(以下「転籍」という。)ができなかったものの、育成就労制度では、同一の企業の下で働いた期間が一定の期間を超えている(転籍制限期間)などの一定の要件を満たす場合には、育成就労外国人本人の意向による転籍が認められます。

 この期間については、分野ごとに、その業務内容等を踏まえ、1年から2年までの範囲内で設定することとなっています。建設分野においては、必要な技能の習得に相応の時間を有することや他の産業と比して外国人の労働災害の発生率が高く、労働安全衛生教育に一定の時間をかける必要があることなどが考えられるため、転籍制限期間は、当面2年とすることが適切であるとされました。

 転籍制限期間2年を選択した企業は、育成就労外国人の就労開始から1年経過後に、昇給等の待遇向上等を図らなければなりません。

 この点、昇給等の待遇向上等については、建設業従事者全体の賃金動向を考慮する必要があることから、昇給率は建設業の前年の平均賃金の上昇率以上とすることが適切であるとされました。

 育成就労外国人が転籍するためには、技能検定基礎級又はそれに相当する育成就労評価試験のほか、日本語能力試験の合格が必要です。ここで求められる日本語能力は、各分野において、日本語教育の参照枠A1 相当からA2 相当の範囲内で設定することとなっています。

 この点、図-1のとおり、就労開始前にはA1相当の日本語能力、特定技能1号移行時はA2(現在はA2.2)相当の日本語能力が求められているところ、転籍後に円滑に業務を行うことができる最低限の日本語水準を確保する必要があることなどを考慮し、A1とA2.2の間であるA2.1とすることが適切であるとされました。

 企業が育成就労外国人を受け入れる際、代替措置が設けられている場合を除き、企業は、分野を所管する行政機関が組織する分野別協議会に加入しなければなりません。

 この点、既に建設分野では、特定技能制度における上乗せ基準として、全ての特定技能所属機関に対し、特定技能外国人受入事業実施法人への所属を義務づけているところです。

このため、育成就労制度においても、企業がこれに所属している場合は分野別協議会に加入しているものとみなし、企業がこれに所属していない場合は分野別協議会への加入を義務づけることが適切であるとされました。

 育成就労制度では特定技能制度と同様、分野の特有の事情を鑑みて上乗せ基準を設定することとされています。

 この点、基本的に技能実習制度の上乗せ基準を踏襲するものの、労働安全衛生に対する意識の一層の向上を図るため、企業又は監理支援機関が育成就労外国人の就労開始前に行う入国後講習において、労働安全衛生に関する講習を受講させることが適切であるとされました。


3.特定技能制度について

 特定技能制度では既に多くの外国人を受け入れているところ、育成就労制度の施行を契機に、制度の適正化のため議論した主な論点について紹介いたします。

 特定技能外国人が所属する企業は、原則、1つに限るとされているところです。しかし、

①親子会社の間等相互に密接に関連する特定技能所属機関の間において一定期間在籍型出向を行うことが必要不可欠であり、

②かつ、特定技能外国人の雇用の安定や特定技能外国人への支援に与える影響等に係る懸念を払拭するために必要な措置を講じたと認められるときに限り、在籍型出向という形で複数の企業に所属することが認められます。

 この点については、日本人技能者も含めた建設分野全体における整理を踏まえて、引き続き検討する必要があるとされました。

 特定技能制度についても、分野の特有の事情を鑑みて上乗せ基準を設定することとされています。

 この点、基本的に現行の上乗せ基準を踏襲するものの、受入れ人数枠の特例を設けることとなりました。受入れ人数枠とは、その企業の常勤職員数の総数を超えて1号特定技能外国人(及び技能実習生)を雇用できないという上乗せ基準です。これまで技能実習制度では優良認定を受けた企業は常勤職員数以上の技能実習生を雇用できる特例を設け、特定技能制度では設けていなかったところ、育成就労から特定技能1号への円滑な移行の観点から、特定技能制度でも優良認定の特例を設けることが適切であるとされました。

また、労働安全衛生に対する意識の一層の向上を図るため、一般財団法人国際建設技能振興機構(FITS)が行う建設特定技能受入後講習の内容に労働安全衛生に関するオリエンテーションを追加することが適切であるとされました。

 建設分野における特定技能外国人の受入れに際しては、建設特定技能受入計画(以下「受入計画」という。)の認定を受け、その適正な履行について、国土交通大臣又は適正就労監理機関により確認を受けることを求めています。また、その受入計画の運用において、適正な履行が確認できなかった場合については、当該計画の認定を取り消すことができることになっています。


 上記の適正就労監理機関による確認としてFITS が巡回指導等を実施しているところ、その受入れにおいて非協力的なケースや、受入計画の内容を適切に運用していないケースがあり、これらルールを守らない受入企業への対応も論点となりました。

 受入計画の取消しは、現に雇用されている特定技能外国人への多大な影響が懸念されること等もあり、受入企業に対する措置を講ずることが困難な場合がありました。

そのため、これらルールに従わない企業等について、受入計画の取消し以外にも、社名の公表や新規の1号特定技能外国人受入停止といった新たなペナルティが必要であるとされました。

 また、受入企業以外の関係者からも適切に協力を得ることができる体制を構築するため、受入計画の申請段階において、登録支援機関名を受入計画の記載事項に追加し、登録支援機関に対して必要な協力を求めることも有効とされました。


4.中長期的なキャリアパスについて

 育成就労制度の施行に伴い、外国人技能者の育成就労から特定技能1号への移行、更には特定技能2号への移行を見据え、中長期的に安定したキャリアを形成できる環境を整備する重要性が一層高まります。中長期的なキャリアパスの構築の促進にあたり主な論点となった内容について紹介いたします。

 技能者の中長期的なキャリアパスの構築に向けては、現在、CCUS の整備・利用拡大が進められており、技能者の登録者数は約171万人、事業者の登録者数は約30万社となっているほか、累積就業履歴数は2.2億回超となっているところ、日本人技能者のみならず、外国人技能者の中長期的なキャリア形成のためにも、その活用が期待されています。

 こうしたことから、育成就労制度及び特定技能制度における上乗せ基準として、CCUS への登録を義務づけつつ、外国人技能者の就業履歴をCCUS に確実に蓄積できる環境を整備することも必要であるとされました。

具体的には、図-2のとおり、受入計画の審査・認定を行う国土交通省の外国人就労管理システムをハブとして、出入国在留管理庁が有する在留情報とCCUS を相互に連携させることにより外国人技能者の円滑かつ適正な就労監理を図るとともに、就業履歴の蓄積を促すことが挙げられました。


 また、一般社団法人建設技能人材機構(JAC)より、CCUS の登録手数料に対する支援の拡充やCCUS カードリーダーの導入支援などの取組を通じた、CCUS の就業履歴の蓄積促進などについてご説明いただきました。

さらに、将来的には、全ての特定技能外国人及び育成就労外国人が、CCUS の詳細型に登録し、就業履歴を蓄積するような取組が期待されているところです。

 育成就労制度において、受入企業には、3年間の就労を通じて、当該技能の修得に向けて計画的な育成を行うことが求められます。

 こうしたことから、各分野を所管する行政機関は、育成就労外国人もしくは特定技能外国人が、自身のキャリアを俯瞰し、技能等の向上・育成が予見できるよう、また関係業界、特定技能所属機関、育成就労実施者等において、受け入れる外国人の計画的かつ的確な育成・評価等を行うための指針である「育成・キャリア形成プログラム」を策定することとされています。

 この点、建設分野においては、職種や受入企業によって必要な資格・技能や育成に関する取組状況は様々であることから、建設分野全体で策定する育成・キャリア形成プログラムを踏まえて、より具体的な「キャリア育成プラン」を各受入企業が策定・運用することが望ましいとされました(図-3)。

国土交通省としても、各受入企業がキャリア育成プランを策定・運用する際の参考となるよう、各専門工事業団体による職種ごとの特性等に応じた「キャリア育成プラン(モデル例)」の作成・公表が有効であると考えているほか、JAC が検討を進めているキャリア育成プランの普及に向けたインセンティブ付与の実施も期待しているところです。


5.外国人技術者について

 建設工事の直接的な作業を行う「技能者」のほか、建設業に関する専門知識を活かし、工事現場の施工管理等を担う「技術者」も欠かせない存在です。

一方で、技術者も若年層の不足(15~29歳の比率が12.9%)や高齢化の進行(55歳以上の比率が34.4%)が進んでおり、技術者についても外国人材の受入れの推進が求められているため、本検討会で論点として取り上げました。

 技術者における外国人材の受入れについては、令和6年10月時点で、技術者業務に従事できる在留資格「技術・人文知識・国際業務」の建設業の在留者数が約1.6万人と、直近8年間で約5倍に増加してはいるものの、引き続き、不足が見込まれる状況です。

このため、国土交通省においては、海外合同就職説明会を開催し、建設学・土木工学の学科を有する現地大学の学生・卒業生と我が国の建設関連企業とのマッチングの取組を実施しています(図-4)。

また、中堅・中小建設企業の経営者・実務担当者向けに、「外国人技術者の採用・定着に向けたハンドブック」を公表し、受入準備や採用・定着に向けたステップ、受入事例等を紹介しています。

 今後の取組として、現在、施工管理等には、特定技能外国人は従事していないところですが、外国人技能者の中長期的かつ安定したキャリアの形成を図る観点から、一定の技能等を有する特定技能外国人が施工管理等を担うことの可否について今後検討していく必要があるとされました。


6.建設分野の外国人共生の取組

 建設分野において、外国人材の円滑かつ適正な受入れを行っていくためには、地域住民の理解を得て、地域社会と共生していくことが不可欠です。特に建設分野は、全国津々浦々に根ざす産業分野であることから、積極的に外国人共生の取組を進めていく必要があるため、本検討会で論点として取り上げました。

 国土交通省では、令和5年度より「外国人材とつくる建設未来賞」を国土交通大臣表彰として行っており(図-5)、建設技能や日本語によるコミュニケーションの習得が優れた特定技能外国人、その育成に尽力した企業、さらには、建設業に従事する外国人材に関連した、地域社会との共生等の優れた取組を表彰しています。

また、JAC では無償日本語講座等の外国人材の教育支援や日本人従業員向けに外国人共生講座を実施しています。

 これら建設分野独自の取組に加え、各地域の自治体やNPO 法人等においては、例えば、外国人を対象とした日本語や文化に関する教育支援や外国人に対する相談窓口の設置や生活ガイダンスなどの生活面の支援などを行っています。加えて、外国人労働者を受け入れた企業においても、地域の祭り・イベントやボランティア活動への参加といった地域社会との協働の取組がみられます。

 建設分野における外国人材の円滑かつ適正な受入れを行っていくために、引き続き、建設分野において外国人共生の取組を充実していくことが必要であるとされました。そのため、教育支援の充実については、JAC において、無料日本語講座の拡充、日本の文化や生活マナーに関する理解促進プログラムの提供のほか、日本人従業員向けの外国人共生講座の拡充などを検討しています。

また、FITS においても、全ての1号特定技能外国人が受講する「建設特定技能受入後講習」の講習内容に、健全な社会生活を促すための啓発等を加えることを検討しています。外国人材への生活面の支援については、JAC において、オンラインでの医療受診サポートや日常生活トラブルに対応した損害賠償保険への加入支援を検討しています(図-6)。

また、FITS においても、母国語ホットラインを拡充し、就労面の相談対応に加えて生活面の相談に対応し、窓口の紹介等により各地域の自治体等の支援を外国人材等につなげることを検討しています。

 加えて、受入企業等による地域社会との協働の取組について、さらなる事例収集や優良事例の抽出を図るため、優良な取組については、引き続き「外国人材とつくる建設未来賞」による表彰を行いつつ、JAC による横展開の支援をはじめ、業界全体で取組の輪を広げていくことも期待されているところです。


7.おわりに

 本検討会では育成就労制度のほか、外国人材のキャリアパスや地域共生など様々なテーマの議論を行っていきました。本検討会の議論内容や分野別運用方針を踏まえ、業界団体や関係省庁等と連携しながら、建設分野における外国人材の適正かつ円滑な受入れや育成を進めてまいります。


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