昨今、日々の生活やニュースの中で、気候変動、脱炭素、カーボンニュートラルといった言葉を聞く機会が増えてきました。
これらの言葉は、建設分野においてもいま非常に注目を集めているテーマでもあります。
本コラムでは、建設分野における脱炭素、カーボンニュートラルに関する役立つ情報や気づきとなる話題(制度動向、技術革新、取組事例、用語解説など)を10回にわたり紹介していきます。
第1回は「建設業が脱炭素化を求められる背景(ワケ)」を紹介します。
2025年5月は非常に気温が高い日が多く、一足先に夏を感じた方も多いのではないでしょうか?
先月、5月21日には、岐阜県飛騨市で最高気温35℃を観測し猛暑日になりました。
20~21日は東北南部から中国地方にかけての広い範囲で気温が30℃を超え、観測史上5月の最高気温を更新する地点が多く出ました。
世界気象機関(WMO)¹によると、2024年の世界平均気温は、産業革命前から1.55℃上昇し、観測史上最も温暖な年となったそうです。
気温の上昇だけでなく、世界の平均海面水位が観測以来最高になったり、氷河も大規模に消失したりしています。
このような気候変動による影響を緩和するため、世界的な枠組みであるパリ協定が2016年に発効しました。
パリ協定に参加する国は、自国が排出する温室効果ガスの削減目標を提出し、削減に向けた取り組みを実施する必要があります。
パリ協定に参加している日本は、2030年度までに2013年度比で46%削減する目標を提出しています。
また、長期的な目標として、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにするカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを掲げています。
日本が温室効果ガスの削減に向けた取り組みを加速するうえで、CO2排出量の約4割を占める建築物分野の脱炭素化は非常に重要なテーマとなっています。
日本のみでなく、世界全体で見ても、CO2排出の約4割を建設セクターが占めると言われており、現在、建物の脱炭素化は世界共通の関心事項になっています。
また、建物は一度建設されれば数十年という長期にわたり使用されるため、設計の時点での低炭素化は特に重要であると言えます。
2023年には政府の脱炭素戦略を盛り込んだ、GX推進法(正式名称:脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律)²が施行されました。
GXとは(グリーントランスフォーメーション)の略で、脱炭素社会の実現に向け、化石燃料中心の社会から再生可能エネルギー中心の社会に向けた変革や活動のことを意味します。
GX推進法では、GX推進戦略の策定・実行やGX実現に向けたファイナンス(GX経済移行債)やカーボンプライシング(炭素税、排出量取引制度)について記載されています。
またGX実現のための具体的な国の戦略として「GX2040ビジョン³」が策定されました。
今年2月に改訂された最新版(GX2040ビジョン 脱炭素成長型経済構造移行推進戦略 改訂)では、建築物の脱炭素化を図るため、建設から解体に至るまでの建築物のライフサイクルを通じて排出される CO2等(ライフサイクルカーボン)の算定・評価等を促進するための制度を構築することが盛り込まれました。
具体的な制度を検討する各種検討会も設置され、具体的な議論が開始されています。
——————次回以降のコラムでは
より詳細に関連する社会動向や具体的な取り組みなどについて紹介していく予定です。
次回もお楽しみに!
大学院で気候変動に関する研究に従事。
卒業後は、シンクタンクで気候変動対策の政策実施支援やカーボン・オフセットの指針・ガイドライン策定などを担当。
さらにコンサルティング会社にて、気候変動対応の戦略策定や実行支援に携わる。
2021年、Sustineri株式会社を設立。
建物のCO2排出量算定サービスの開発・運営を行う。
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