建設物価調査会

みかんプロジェクトって知ってる?~若手が描く鋼橋の未来~

みかんプロジェクトって知ってる?~若手が描く鋼橋の未来~

一般社団法人 日本橋梁建設協会 戦略広報WG


〇鋼橋業界の将来の担い手確保の取り組み

 少子高齢化の進行にともない、日本の労働力人口は急速に減少することが予想されています。建設業界においては、近い将来に技能労働者の大量離職が見込まれているだけでなく、今後、老朽化インフラが急増することから、継続的に担い手を確保することが課題となっています。

 私たち鋼橋業界においては、将来を担う20代、30代の割合は3割未満であり、各社リクルート活動に苦戦しているのが現状です。また、これまでの組織では若手による発信が少なく、従来通りのアプローチでは、鋼橋業界の魅力や仕事内容を学生たちに十分に伝えられていないのではないか、との懸念もありました。そこで、鋼橋メーカー31社が加盟する日本橋梁建設協会は、2019年度より若手社員が参画する戦略広報 WG(ワーキンググループ)[通称:みかんPJ(プロジェクト)]を広報委員会の傘下として設立し、「鋼橋業界の将来の担い手を継続的に確保すること」を目的として、若手主体の新たな広報活動をスタートしました。現在、WGは運営委員と鋼橋メーカー14社14名の若手で構成しており、リモートを併用した会合を毎月1回開催し、時代に合った方法で学生たちに鋼橋の魅力を伝える様々な方法を考案し実行しています。



〇座談会

 みかんPJ は、現在4期目の活動を行っています。メンバーは所属会社や業務内容もバラバラです
が、『鋼橋の魅力』を広めたい!という想いは同じです。今回はメンバーの中から6名が集まり、この活動に参加した経緯や『ケン・ブリッちくん』のこと、今後の展望などについてリモートで座談会を実施しました。

左から   永岡 (株)IHIインフラシステム、    逸見 (株)IHIインフラ建設、
田向 (株)駒井ハルテック、   中村  瀧上工業(株)、   後藤  日立造船(株)、  小池田 (株)北都鉄工




1.みかんPJに入ったきっかけについて

小池田 私は自社で採用担当をしていますが、当社もリクルート活動には苦戦しています。その状況下で、同世代が将来の担い手確保のために広報活動をしていると知り、この取り組みに共感したため、自分から手を挙げて参加しました。みなさんは、どういうきっかけでしたか?

後藤 私は上長から参加してみないか?と声をかけてもらい入りました!

田向  私は厳正な抽選の結果…っていうのは冗談ですが、みかんPJの運営の方に目をかけていただいていて、色々と経験したいという話をしていたので、選んでもらえたのかな?と思います。他社は各社のエース級が集まっていて、正直最初はビビっていました(笑)!

中村 私は会社の上長からちょっと行ってこいと言われ参加したので、最初は正直自発的では無かったかもしれません…。

逸見  私は何でも挑戦させてもらえる部署に所属しているので、声をかけてもらったのだと思います。

田向  1期生と交代で入ってきた永岡さんは、この活動はご存じでした?

永岡  正直全く知らなかったです(笑)。前委員から交代になり引き継ぎもありましたが、最初はよく分からないまま交代したっていうのが本音かもしれません(笑)。

小池田  ほとんどのメンバーが最初は何か分からないまま参加したりしていますが、今は主体的に活動できていますよね!色々な会社の、しかも様々な部署の人が集まっているのはすごく面白いです!現メンバーにいない工事部所属の人とかも参加してくれると更に面白くなるのかなと思います!

田向  そういえば、実はもうメンバーの半分ぐらいは30歳越えしていません?

逸見  そもそも若手WGって何歳を目安に集められましたっけ?

小池田  多分30歳前後?だから、平均が30歳を下回っているのは1つの売りなのかもしれませんね。

後藤  この記事を読んで、一緒に活動したいっていう人が出てきてくれるとすごく面白いなって思います。メンバーは随時募集しているので、ぜひよろしくお願いします!

2.みかんPJの活動で楽しいこと、難しいこと

小池田 みかんPJの活動で、楽しいことは何ですか?

逸見  他社の若手のみなさんと意見を出し合うことが楽しいですね。思いもしなかった考えを持っている人もいて、そこから話が広がることも多いです。

田向  自由で前向きな議論ができる良い環境な気がします。それに、発想は多様だけど業界全体で同様の課題認識を持っていて、そういった意味でも楽しさがありますね。現場代理人として働く自分にとっては、他社かつ同世代と関わる機会がほとんどなかったので、新鮮でした。

中村  インスタなどで橋の魅力を発信したときに、他の人からも良い反応があると嬉しいし、楽しいですね。橋の新たな魅力を発見するきっかけになっている気がします。

後藤  キャラクターやLINEスタンプなど、自分たちで考えたことが形になって世に出ていくのは初めての経験で楽しいと感じますね。個人的には月1回のWGそのものを楽しみにしています。

小池田  確かに、SNSやグッズなど、同じ目標に向けて業界として一緒に仕事ができることは楽しいし、貴重な経験ですね。顔を合わせると、新たな発想が生まれますよね!

永岡
一方で、みかんPJの活動で、難しいことは何だと思いますか?

田向  例えば、みかんPJのInstagramがきっかけで入社してくれた子がいるなどあれば嬉しいですが、まだまだ先の話になるのが悩ましいです。

中村  実際に入社してくれたら実感が湧いて嬉しいのでしょうが、今はまだ霧の中にいるような感覚がありますね…。小池田 今を種まきの期間と割り切って、この活動を継続することが大事だと思います。それに向けて、グッズ,イベント,SNSなど着実に進めていくというイメージですよね。

後藤  あとSNSは、橋を知らない人たちに見てもらう機会を増やすことがこれから必要ですね。

3.ズバリ!ケン・ブリッちくんはどう?

田向  小池田さんは、初めてケン・ブリッちくんを見たとき、どのような印象を持ちました?小池田 橋の日が誕生日、はしまきが好物などというように、キャラクターの設定が細かく決められていることがすごいなという印象でした。

田向  実は、名前の候補は他にもありましたよね?

後藤  1人1案ずつ提案したので、10案以上は出てきましたよね。逸 見 名前決めに結構時間をかけました。ケン・ブリッちくんの“ち”はなぜ平仮名かなど…。

小池田  ちなみに、なぜ平仮名なのですか。

逸見  知識の“ち”や知見の“ち”など、平仮名にすれば様々な意味を持たせられるためです。

田向  永岡さんの印象はどうでした?

永岡  キャッチーだなと思いました。陸上選手のケンブリッジ飛鳥さんの名前に乗っかっていると思いましたが( 笑)。少し考えたら、「橋建協」にかかっている名前だと理解できました。覚えやすい名前ですよね。

中村  この名前が挙がったときは笑いが起きましたよね。

逸見  「ケンブリッジ」と検索すれば、ケンブリッジ飛鳥さんやケンブリッジ大学が先に出てくるので抵抗があるという意見もあれば、有名な名前と関連付けて覚えてもらいやすいという意見もありました。

中村  他名前の候補は、かけるくん,はしろうくん,はしみーくん,ブリッジくんなどがありましたね。

田向  それを聞くと、やはり今の名前が良いって思います。

小池田  なぜイメージキャラクターがハシビロコウなのかという理由も良いですよね。

田向  ハシビロコウをモチーフにするというのは、逸見さん発案です。

逸見  “橋を広く広報する”でハシビロコウが思いつきました!

小池田  ケン・ブリッちくんは、一般受けもとても良いと感じています。TwitterやInstagramの反応や、小学校出前講座での生徒さんたちの反応がとても良かったです!

田向  このキャラクターを活用して橋梁に興味を持ってもらうためには、橋とどう関連付けるかが今後の課題ですよね。

小池田  今後はケン・ブリッちくんと鋼橋をもっと紐付けられるような広報活動ができれば良いなと考えています。現状の効果についてはどう思いますか?

後藤  この業界は堅いイメージがあると思いますが、ケン・ブリッちくんのおかげで親しみやすい印象を持ってもらえているかと思います。

田向  当初の目的であった『広告塔になる』という意味では良いスタートを切れていると思います。みかんPJ以外の橋建協活動でもイラストが使われ始めているので、さらに活用の場を広げていきたいです。

永岡  キャラクターがいる団体や会社は他にもあるので、その点を活かして橋建協ならではのことができれば面白いなと思っています。工事看板にキャラクターを掲載している建設会社もあるので、コラボしてみたいですね。

田向  各社が工事看板にキャラクターを掲載すれば、全国に多くの現場があるため一般の方の目に留まり、興味を持ってもらえる可能性はありますね!橋建協でキャラクターを作ったことがきっかけで、他の会社や団体でもキャラクターを作る流れができると良いなと思います。

小池田  みかんPJ委員の所属会社でも自社キャラクターを持っているところがありますよね?当社もキャラクターを作ろうか検討中です。各社キャラクターがいるなら『建設業キャラクターコンテスト』のようなイベントができたら面白くないですか?

田向  そうですよね!当初は某グランプリにエントリーしようとの話がありましたが、デビュー時にはそのグランプリが終了していたので参加できませんでした。

小池田  建設業全体を盛り上げるきっかけになるのであれば、コンテストを開催してみたいですね!

4.みかんPJの今後の展開(どのような活動をしたいか)

小池田  みかんPJでは、今後どのような活動をしていきたいですか?

中村  Instagram・Twitterのフォロワー数を10,000まで増やしたいです。10,000まで増やすことで箔がつくといいますか、ニュースなどのメディアの目に留まる可能性が高くなると思います。また、鉄道のような橋好きを増やして、橋マニアに『撮り鉄』のような愛称がつくぐらい、世間に流行させたいです。更にもっとデカい話を妄想すると、世間の流れをつくったうえで、長大橋、例えば四国と九州を結ぶものは橋なのか,トンネルなのかという議論があるのですが、世間の評価を高めたうえで「橋つくるでしょ!」という流れができれば面白いですよね。

田向  以前、橋建協公式 Twitter のツイートがバズって、1つの投稿で36,000いいね、10,000リツイート、350万インプレッションがついたように、もっと社会現象を起こしたいです!例えば、橋を擬人化する『橋娘』やマンホールカード,ダムカードのような『橋カード』ができたら良いなと思います。

後藤  橋を擬人化する『橋娘』については、最近国道をモデルにした『コクドル』というのがテレビで取り上げられていて、これに何か乗っかれたら面白そうです。

小池田  中高生に何が刺さるかなと考えたときに、ショート動画(15~30秒くらい)が良いかなと思います。例えば、TikTokで橋ダンスをつくり、ダンスをきっかけに、橋に興味を持ってもらう切り口があっても面白いのかなと思います。

後藤  今年小学校で初めて出前講座を実施して、すごい反応が良かったじゃないですか。もっと私たちみかんPJ主体でいろんなイベントができたら良いなと思います。例えば、今稼働している各社の工事現場での現場見学会を私たち主体でやっても面白いのかなと考えます。

永岡  大学や学校などとの繋がりがもっと作れたら良いなと思います。以前WGで金沢に行ったとき、犀川大橋を見たじゃないですか。そこで犀川リバーカフェなどの取り組みを産学官の連携で行っているそうです。そういうのにも関わっていけたら面白いのかなと思います。

田向  じゃあ、連携候補先の視察も兼ねて今度は沖縄でWGをしよう!

全員  行こう!行きたい(笑)!

田向  少し話が脱線してしまいましたが、産学官のうちの学、例えば大学との繋がりの作り方って、各企業だと共同研究みたいな形になるじゃないですか。このみかんPJの場合だったら、どんな形が良いと思いますか?

永岡  イベントを一緒にできたら良いなと思います。特段カフェがやりたいわけではありませんが、自治体にアピールして一緒に何かできたら良いなって思います。

小池田  その関わり方はすごい良いなと思いました。例えば、カフェの中でこの橋はこんな構造になっているなど、少しでも橋に興味を持ってもらえるようなことをするのは面白いと思います!

田向  理系の学部以外とも繋がりってできますよね。経済学部や商学部などの文系の学生でも関われますし、技術職を志望する人以外でも橋梁に興味を持ってもらえる機会になるのかなと思います。

逸見  私は外部向けと内部向けでそれぞれやりたいことがあります。まず外部向けでは、東京ビックサイトで開催しているような大規模な就職セミナーに橋建協で出展して、鋼橋と鋼橋メーカーのことをスパパーン!と周知したいです(笑)。目に見える活動の結果という形で入職者を増やしたいです。

田向  あの場は、勤務地や条件などを学生は聞きに来ているからニーズに合いますかね?

逸見  例えば、建設業の相談コーナーのような形でもできませんかね?橋建協だけで終わるのではなく、各社の名前が伝わることをしたいですね。
もう一つ、内部向けの活動としては、みかんPJに携わってきたOB・OGも含めた24人全員で集まりたいです。みかんPJから離れた人たちから、今の活動について客観的な意見をもらいたいです。

〇活動紹介

 みかんPJ は、広報活動のメインターゲットを「中学生・高校生」と設定し、鋼橋の魅力を効果的に伝えられるよう「カッコイイ」「デカイ」「街のシンボル」「オーダーメイド」「社会貢献ができる」をPR ポイントとして取り組んでいます。これまでの3年間の活動では、イメージキャラクターの考案、SNS を活用した鋼橋の魅力発信、タグラインの考案、グッズ作成、出前講座等を行ってきました。

みかんPJ のHP にはこの記事のフルバージョンを載せています!ぜひご覧ください!





建設物価2022年12月号

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