建設物価調査会

GREEN×EXPO 2027(2027年国際園芸博覧会)について

GREEN×EXPO 2027(2027年国際園芸博覧会)について

~ 幸せを創る明日の風景 ~



公益社団法人2027年国際園芸博覧会協会









1.はじめに

 GREEN×EXPO 2027(2027年国際園芸博覧会 以下、「本博覧会」)は、横浜市を含む一都三県で初めて、日本では7回目の開催となる万国博覧会です。本稿では、本博覧会の概要や開催準備状況、今後の取組について紹介します。





2.国際園芸博覧会とは

 国際園芸博覧会は、国際的な園芸・造園の振興や花と緑のあふれる暮らし、地域・経済の創造等を目的に、世界各国で開催されてきた博覧会です。

 開催に当たっては、国際的レベルで園芸生産者の利益を図り、園芸技術の向上を図るために設立された非営利団体である国際園芸家協会(以下、AIPH)の承認が必要となり、1960年にオランダ・ロッテルダムで初の国際園芸博覧会が開催されて以降、これまで世界各国で開催されてきています。

 国際園芸博覧会には開催期間や会場の面積等によりA1、B、C、Dの4つのカテゴリーが設けられ、最上位であるA1クラスの開催に当たっては、AIPH の承認に加え、「国際博覧会に関する条約」に基づき設置されている博覧会国際事務局(以下、BIE)の認定が必要となるため、A1クラスの国際園芸博覧会は、当該条約に基づく国際博覧会、EXPO(いわゆる万博)としての位置付けも持っています。

 そのため本博覧会は、日本においては、2005年の愛知万博や2025年開催予定の大阪・関西万博に続いて開催される国内7回目のEXPO(万博)となるのです。

 なお、日本で開催されるA1クラスの国際園芸博覧会としては、1990年に大阪の鶴見緑地で開催された国際花と緑の博覧会(大阪花の万博)以来、37年ぶり2度目の開催となります。大阪花の万博はアジア初のA1クラスの国際園芸博覧会であり、約半年間の会期で2,300万人以上の参加者数を記録しました。これを契機にいわゆる“ガーデニングブーム”が起き、花壇苗の出荷量が増加するなど産業振興に大きな効果をもたらしました。



博覧会の歴史
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3.招致検討とこれまでの経緯

 本博覧会は、横浜市の郊外部(旭区・瀬谷区)に位置する旧上瀬谷通信施設の南側、約100ha を使用し開催されます。旧上瀬谷通信施設は、2015年に米軍から返還された約242ha の広大な土地であり、戦後約70年間米軍施設として使用されてきたため、長年にわたって自由な土地利用が制限されており、市街化が抑制されてきました。

そのため、農地や緩やかな起伏の草地など豊かな自然が広がり、南北に流れる相沢川、和泉川の源流部、谷戸地形等の貴重な自然資本が残っています。周辺からは丹沢山・富士山が眺望できるとともに、近接する樹林地(市民の森)との隣接部分に存在する林縁は、多様な生き物の生息環境を創出しています。

 また、東名高速道路横浜町田IC に近く、複数の鉄道路線に囲まれ、多様なアクセス手段が利用できるほか、農業振興と都市的土地利用による新しいまちづくりが進められており、郊外部の活性化拠点として大きなポテンシャルを有しています。

 横浜市では、旧上瀬谷通信施設が米軍から返還されて以降、当地での国際園芸博覧会の招致を進めてきました。2017年に有識者により構成される附属機関「旧上瀬谷通信施設における国際園芸博覧会招致検討委員会」を設置し検討を進め、2018年3月に横浜市として「旧上瀬谷通信施設における国際園芸博覧会基本構想案」を取りまとめました。そして2019年9月には、中国・北京国際園芸博覧会の会場において開催されたAIPH 年次総会にて国際園芸博覧会の開催申請を行い、その場でAIPH から開催の承認を受けました。

 2021年6月にはBIE への開催申請手続を進めることが閣議了解されました。同年11月に一般社団法人2027年国際園芸博覧会協会(会長:十倉雅和 一般社団法人日本経済団体連合会会長 以下、「博覧会協会」)が設立し、2022年3月に「令和九年に開催される国際園芸博覧会の準備及び運営のために必要な特別措置に関する法律(園芸博法)」が公布・施行されると、同年4月には同法に基づき、博覧会協会が開催者として指定されました。

 BIE への認定を受けるための準備が整ったことから、同年6月に閣議決定を経てBIE に認定申請を行い、同年11月28日にパリで開催されたBIE総会において国際博覧会条約に基づく国際博覧会(万博)として認定されました。そして、同年12月には博覧会協会が「公益社団法人」に認定されています。





4.GREEN×EXPO 2027(2027年国際園芸博覧会)の概要

 本博覧会の概要は、次のとおりです。

(1)概要

■名称:2027年国際園芸博覧会  
International Horticultural Expo 2027、Yokohama、 Japan

■会場: 旧上瀬谷通信施設(神奈川県横浜市)

■開催期間: 2027年3月19日(金曜日)~2027年9月26日(日曜日)

■博覧会区域:約100ha(内、会場区域80ha)

■参加者数: 1,500万人(地域連携やICT 活用などの多様な参加形態を含む)      有料来場者数:1,000万人以上

■資金計画: 会場建設費320億円(財源:国、地方公共団体、民間による負担)      運営費360億円(財源:入場料、営業権利金等)


(2)開催テーマ「幸せを創る明日の風景」

 本博覧会は、地球温暖化等、世界規模の環境変動を踏まえ、自然が有する機能を活用し、花や緑との関わりを通じて自然と共生した持続可能で幸福感が深まる社会を、新たな明日の風景として可視化していくことを目指しています。

 SDGs 達成年の3年前に開催される国際園芸博覧会として、持続可能な社会の形成に向けた取組の成果を確認し、「新しいグリーン万博」の姿を世界と共有することで、SDGs 達成をより確実なものとする機会にしたいと考えています。


(3)正式略称「GREEN×EXPO 2027」

 本博覧会について、その趣旨をわかりやすく伝え、多くの人々に親しんでもらえるよう、2027年国際園芸博覧会1500日前記者発表会(2023年2月8日)において、正式略称を発表しました。それが、本稿の表題となっている「GREEN×EXPO2027」(グリーンエクスポニーゼロニーナナ)です。

「植物」、「花」、「緑」を総称する言葉であり、「自然」、「環境にやさしい」という意味を持つ「GREEN」、国際的に共通する課題の解決に寄与する国際博覧会「EXPO」という語を掛け合わせることで、SDGs やGX(グリーントランスフォーメーション)の実現に貢献する博覧会として、これからの自然と人、社会の持続可能性を追求し、世界と共有する場であることを表現しました。

多様な業界の企業をはじめ、行政や研究機関、市民も含めて産官学民でGREEN の可能性を拓き、多様な価値との出会いによる掛け算(×)により、具体目標と共に、課題解決の様々なイノベーションが生み出される博覧会を目指していきます。



5.事業体系

(1)事業体系

 GREEN×EXPO 2027は、世界が直面する課題解決へのチャレンジの場であり、それは企業の新たな事業成長に資する活動につながっていくものと考えています。

 当博覧会協会は、2023年1月に、博覧会開催に必要な事業及びその方針を示した「2027年国際園芸博覧会基本計画」(以下、「基本計画」)を策定・公表しました。この基本計画に基づき、各事業を推進するとともに、各国政府に対する参加招請や出展者、支援者、来場者に向けた機運醸成等の取組など、2027年の開催に向けた準備を横浜市と連携しながら、進めています。

 基本計画では、
①外国政府や国際機関、地方公共団体や民間企業等による屋内外の展示・出展

②技術の向上、産業の発展を促すコンペティション

③博覧会協会が設定するテーマに応じ、民間企業、教育・研究機関、市民等が共創してコンテンツを提供する「Village」

④気軽に旅をするように、世界中の風景・食・文化、人とのふれあいを五感で楽しむ食体験事業である「Farm to Table STREET」

⑤参加者に楽しさや驚き、感動を与え、本博覧会のテーマを効果的に発信する多彩な「行催事」などのコンテンツを展開することとしています。


(2)Village 共創事業

 本博覧会では、私たちが目指すグリーン社会を世界へ発信するGREEN×EXPO 2027独自の参加型事業「Village 共創事業」の検討を進めています。

 本事業は、グリーン社会のショーケースとして様々な形でこれからのまち・ライフスタイルモデルを提示し来場者に新たな体験を提供するための事業です。様々な参加主体でひとつの“まち”として共創されるVillage 共創事業。2050年グリーン社会を見据えて「Well‒being」「Farm & Food」などをテーマに展開を検討しています。

 「Well‒being」では、自然のすごさの体感、都市・暮らしへの応用、「Farm & Food」では、農・食に対するプロの極みを学び未来につなげる、というような内容を検討しています。


village イメージ


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6.会場計画

(1)基本方針

 会場計画に当たっては、時代認識や開催意義を踏まえ、世界から地域レベルに至る様々な今日の課題の解決策を提示しながら、さらには会場内の様々な展示出展の意図を来場者に効果的かつ魅力的に伝えることが可能な会場づくりを目標とし、次の3つを基本方針としています。

①自然環境ポテンシャルを取り入れた会場
 計画地の自然環境(地形、土、水、風、緑)を読み込み、そのポテンシャルを効果的に取り入れた計画を行い、魅力ある、快適・安全な空間基盤を形成する。

②あらゆる主体がつながり、将来につながる会場
 国際園芸博覧会に参加・来場する多様な主体同士のつながりを生み出し、地域・国内外の課題解決や新たな産業の創出につなげることが可能な空間を効果的に配置するとともに、将来のまちづくりに向けて、本博覧会で生まれた取組が地域に継承される工夫を会場計画の中に取り入れる。

③誰もが使いやすい会場
 来場者、出展者、管理者等、本博覧会に関わる全ての人にとって分かりやすく、使いやすい会場空間をつくる。

 会場の基盤としての空間領域と各施設等に加え、出展者及び管理者の様々なニーズや多様な事業展開に柔軟に対応できる仕組みを連動させることで国際園芸博覧会事業の魅力を最大限に演出する会場とする。



会場イメージ





7.新たな推進体制と機運醸成の取組

(1)新たな推進体制

 2023年2月8日に開催1500日前を迎え、博覧会を推進する専門家体制である「GREEN×EXPOラボ(創生組織)」が発足しました。博覧会の開催に向け、独自の議論・調査・提言を行う組織となります。また、博覧会の開催だけでなく、そのレガシーやこれからの横浜のまちづくりも視野に入れ、テーマである「幸せを創る明日の風景」を実現する観点から活動を行う組織となります。

総合監修・ランドスケープを担当するチェアパーソンとして涌井史郎氏、建築を担当する隈研吾氏、花き園芸・造園・農の展示・出展、植物監理を担当する農&園藝チーフコーディネーターの賀来宏和氏、会場運営・管理、催事、広報を担当する運営事業チーフディレクターの若松浩文氏の4名の方々に就任していただきました。

 また、広報・プロモーションツール作成、展示コンテンツの企画を担当するクリエイターとして蜷川実花氏に就任していただきました。有識者の皆様のお力添えをいただき、博覧会の内容をより充実したものにしていきます。

1500日前記者発表会


蜷川実花氏


(2)公式ロゴマークの決定

 2023年4月28日に首相官邸にて「2027年国際園芸博覧会関係閣僚会議(第1回)」(議長:内閣官房長官)が開催され、公式ロゴマークが公表されるとともに、岸田首相が「多くの方々に夢や希望をもたらすもの(博覧会)にしたい」と述べました。

 公式ロゴマークは、2022年10月から公募を行い、1204点の応募作品の中から、厳正な審査と選考を経て、喜多祐子(きたゆうこ)さんの作品が最優秀賞作品として選出されました。木の葉や花びらが重なり合い、私たちの暮らしに様々な幸福を積み重ねている様子を表現しています。今後、開催に向けて本公式ロゴマークを積極的に活用することで開催認知を高め、機運醸成を図っていきます。

公式ロゴマーク


(3)インターネットでの情報発信

 博覧会の最新情報については公式Web サイト、公式Twitter でご確認いただけます。

公式Web サイトQR コード

公益社団法人2027年国際園芸博覧会協会【横浜・上瀬谷開催】 (expo2027yokohama.or.jp)




8.おわりに

 本博覧会は、地球規模の課題を意識し、不確実な時代の先にある地球、社会、故郷、私たちが幸せであり続ける明日はどのような風景であるかと問いかけ、GREEN の力と産業活動が融合した姿を示し、テーマ「幸せを創る明日の風景」の実現を目指します。

 本博覧会の開催まで4年を切り、国、自治体、関係諸団体、民間企業の皆様との連携のもと、記憶に深く刻まれる「新しいグリーン万博」を創るべく準備を加速していきます。




建設物価2023年8月号

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