国土交通省では、建設事業に使用される主要な建設資材の年間需要量の見通しを公表することにより、建設資材の安定的な確保を図り、円滑に建設事業を推進することを目的として、昭和51年度より「主要建設資材需要見通し」を毎年公表している。
本稿では、令和5年9月27日に公表した「令和5年度主要建設資材需要見通し」の概要を報告する。
令和5年度主要建設資材需要見通しでは、「①セメント」、「②生コンクリート」、「③砕石」、「④木材」、「⑤普通鋼鋼材、形鋼、小形棒鋼」および「⑥アスファルト」の6資材8品目を対象とする。
令和5年度の主要建設資材の需要見通しは、「令和5年度建設投資見通し(国土交通省総合政策局情報政策課建設経済統計調査室 令和5年8月8日公表)」の建築(住宅、非住宅)、土木(政府、民間)等の項目ごとの建設投資見通し額(建築補修(改装・改修)投資除く)に、建設資材ごとの原単位(工事費100万円当たりの建設資材需要量)を乗じ、さらに各建設資材の需要実績等を考慮して、令和5年度の主要な建設資材の国内需要の推計を行った。
(1)令和4年度及び令和5年度の概況
令和4年度の主要建設資材の需要量実績は、同年度の建設投資見込み(名目値)が前年度比1.5%の増加で、うち建築部門は0.6%の増加、土木部門は3.0%の増加となったが、令和3年度の実績値と比べ全ての資材で減少となった。
令和5年度の主要建設資材の需要見通しは、同年度の建設投資見通し(名目値)が前年度比2.2%の増加で、うち建築部門は0.6%の増加、土木部門は4.9%の増加と見通されており、木材は昨年度実績値と比べて増加、その他の資材は減少と見通される。(※骨材、砕石は比較対象外としている。)
令和5年度主要建設資材需要見通しは、図-1および表-1のとおりである。
(2)主要建設資材の需要見通し
①セメント、②生コンクリート
令和4年度における需要量実績は、セメントが前年度比1.6%減少の3,728万t、生コンクリートが前年度比2.2%減少の7,445万㎥であった。令和5年度については、セメントが前年度比0.8%減少の3,700万t、生コンクリートが前年度比2.0%減少の7,300万㎥と見通される。
③砕石
令和5年度については、砕石が10,000万㎥と見通される。※ 砕石の見通しの値は令和元年度までの「砕石等動態統計調査」と今年度の「建設投資見通し」「生コンクリート、アスファルトの需要見通し」等を考慮し、推計を行っている。
④木材
令和4年度における需要量実績は、前年度比6.4%減少の854万㎥であった。令和5年度については、前年度比5.4%増加の900万㎥と見通される。
⑤普通鋼鋼材、形鋼、小形棒鋼
令和4年度における需要量実績は、普通鋼鋼材が前年度比7.5%減少の1,747万t、うち形鋼が前年度比1.1%減少の412万t、小形棒鋼は前年度比0.8%減少の642万tとなると推計される。令和5年度については、普通鋼鋼材が前年度比2.7%減少の1,700万t、うち形鋼が7.7%減少の380万t、小形棒鋼が1.8%減少の630万tと見通される。
⑥アスファルト
令和4年度における需要量実績は、前年度比7.9%減少の98万tであった。令和5年度については、前年度比8.0%減少の90万tと見通される。
主要建設資材の国内需要量推移を表-2および図-2に示す。各主要建設資材の需要量実績、需要見通しの対象は、次の(1)~(8)のとおりである。
(1)セメント
国内メーカーの国内販売量に海外メーカーからの輸入量を加えた販売等の量を対象としている。「内需量」=「国内販売量」+「輸入量」。
なお、表-2および図-2の令和4年度までは実績値で、(一社)セメント協会の「セメント需給実績」の値を用いている。
(2)生コンクリート
全国生コンクリート工業組合連合会組合員工場の出荷量とその他の工場の推定出荷量とを加えた出荷量を対象としている。「出荷量」=「組合員工場出荷量」+「その他工場推定出荷量」。
なお、表-2および図-2の令和4年度までは実績値で、全国生コンクリート工業組合連合会・協同組合連合会の「出荷実績の推移」の値を用いている。
(3)砕石
メーカーの国内向け出荷量を対象としている。 なお、表-2および図-2の令和元年度までは経済産業省の「砕石等統計年報」、「採石業者の業務の状況に関する報告書の集計結果実績値」の実績値から推計を行い、令和2年度以降は、(一社)日本砕石協会の「砕石動態調査」の実績値から推計を行っている。
(4)木材
国内メーカーの製材品出荷量を対象としており、建設向け以外の量を含んでいる。また、製材用素材として外材を含んでいる。
なお、表-2および図-2の令和4年度までは実績値で、農林水産省「製材統計」の値を用いている。
(5)普通鋼鋼材及び(6)形鋼
国内メーカーの国内建設向け受注量を対象としている。
なお、表-2および図-2の令和4年度までは実績値で、(一社)日本鉄鋼連盟の資料の値(国内向け受注総量から国内建設向け受注量を推計したもの)を用いている。
(7)小形棒鋼
国内メーカーおよび国内販売業者からの国内建設向け出荷量を対象としている。ただし、海外メーカーからの輸入量は含まれていない。
なお、表-2および図-2の平成29年度までは実績値で、経済産業省「鉄鋼需給動態統計」の値を用いて算出している。平成30年度以降は経済産業省の「鉄鋼需給動態統計調査」等を用いた推計値。
(8)アスファルト
国内メーカーの建設向けストレートアスファルト内需量のうち、燃焼用および工業用を除いた国内建設向け等内需量を対象としている。「建設向け等内需量」=「国内建設向け内需量」+「建設向け輸入量」。
なお、表-2および図-2の令和4年度までは実績値で、石油連盟の「石油アスファルト統計月報」の値を用いている。
※ 骨材については国内における供給量を対象としており、表-2および図-2の令和元年度までは実績値で、経済産業省の「骨材需給表」等をもとに推計した値である。なお、令和2年度以降は関連統計が終了したため、掲載を終了する。
「主要建設資材需要見通し」は、国土交通省のホームページ(統計情報のページ)で公表しているので参照されたい。
(https://www.mlit.go.jp/statistics/details/kgyo_list.html)
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