建設物価調査会

令和6年度港湾請負工事積算基準の改定について

令和6年度港湾請負工事積算基準の改定について

国土交通省 港湾局 技術企画課


  1. はじめに
  2. 施工実態調査の概要
  3. 令和6年度積算基準の主な改定
  4. おわりに

1.はじめに

 港湾工事は、施工場所の大部分が海上や海中であるため陸上土木工事に比べて気象・海象条件等の影響を受けやすく、また、施工規模の大型化や建設地の沖合展開、早期供用への対応等により、施工環境はより厳しいものとなってきている。加えて、2024年4月から適用される「時間外労働の上限規制」や休日確保をはじめとする「働き方改革」、適正利潤の支払いや安全性向上による「担い手の育成・確保」、インフラ分野のDX 推進による「生産性の向上」への対応が急務となっており、実態に即した積算基準の改定が求められている。

 この積算基準の編成は、工事内容の細分化方法を「港湾工事共通仕様書」の工種体系と整合をとっており、受発注者双方にとって工事内容の確認や事務処理手続きが容易になるように配慮している。

2.施工実態調査の概要

 積算基準改定の基礎データとなる実態調査の概要は、以下のとおりである。
 

2-1 施工実態調査

施工実態調査は港湾工事等の施工実態を調査・分析するもので、積算基準が施工実態を適切に反映しているかを検討するための最も重要な調査の一つであり、モニタリング調査と詳細調査に分類される。従来は国土交通省発注工事を対象に調査を実施してきたが、サンプル数をより多く確保するため、平成16年度からは各都道府県等港湾管理者にも調査を協力していただいている。

(1)モニタリング調査

 モニタリング調査は、次に述べる詳細調査の工種以外の全工種を対象に実施するものである。施工実態と積算基準との乖離傾向を概略的に把握し、詳細調査の必要性を判断する目的のものであり、継続的に実施する調査である。

(2)詳細調査

 モニタリング調査の結果等により、施工実態と積算基準とに乖離が認められると判断される場合に、該当工種について詳細に調査を実施するものである。積算基準の改定は、この調査結果を分析し、現行積算基準との比較検討を経て、とりまとめられている。

2-2 未制定歩掛の調査

 積算基準に歩掛が設定されていない工種のうち、汎用性が高く歩掛設定の需要が高い工種について、必要に応じ実態を調査し、積算基準の構築を目指し検討するものである。

2-3 作業船稼働実態調査

 港湾工事等で使用する各種作業船の機械経費を算定するための基準として「船舶および機械器具等の損料算定基準」を定めているが、その基礎となる民間各社が保有する作業船の稼働実態を調査するものである。

 なお、「船舶および機械器具等の損料算定基準」は、実態調査の結果を踏まえ2年に1度改定している(令和6年度改定)。

2-4 その他の調査

 港湾の積算基準に関係する調査のうち、浚渫工事や海岸工事など、国土交通省関係部局と農林水産省で共通する項目については、二省共同で調査を行っており、調査結果を踏まえて積算基準を改定している。

 この他、公共事業労務費調査、間接工事費等諸経費動向調査を毎年実施しており、公共工事設計労務単価や共通仮設費率、現場管理費率がより実態に即したものとなるよう努めている。

3.令和6年度積算基準の主な改定

3-1 間接工事費等諸経費動向調査に基づく改定

(1)間接工事費等諸経費動向調査に基づく改定

 間接工事費等諸経費動向調査によって得られたデータを分析した結果、現場環境改善費率(工種区分:浚渫工事及び海岸工事)の改定、現場管理費率(全工種区分)について改定を行った。

3-2 施工実態調査に基づく改定

 施工実態調査によって得られたデータを分析し、現行の積算基準との乖離が認められた下記の工種について改定を行った。

 ⑴  ブロック据付工の潜水士船に関して、施工水深が15m未満の場合は単独潜水方式、15m以上30m未満の場合は2人潜水方式ということが確認できたため改定。

 ⑵  これまで未制定であった、数値波動水槽(CADMAS-SURF)(2次元)について、人工数について確認できたことから、歩掛の新規制定を行った。

 ⑶  前年度から継続して分析を行っていた、測量・調査等に係る「協議・報告」の歩掛について、海象観測装置定期点検・保守業務の実態が確認できたため、歩掛の制定を行った。

3-3 その他の改定

 船舶供用係数について、適切な工期設定を行う観点から、荒天日数の考え方を見直し、船舶供用係数の改定を行った。

4.おわりに

 本積算基準の活用により、受発注者の共通認識が深まり、適切な予定価格の算出と適正な利潤の確保が図られ、ひいては、港湾工事等の品質確保や港湾業界の担い手確保の実現を期待する。今後も、関係各位から寄せられるご意見等を踏まえ、より実態に即した積算基準となるよう努力していく所存である。



建設物価2024年5月号

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