建設物価調査会

緑化樹木の需給概況

緑化樹木の需給概況

一般財団法人 日本緑化センター
理事 瀧 邦夫


Ⅰ 需要の動向

 「建設工事施工統計調査」(国土交通省)によると、2023年度の造園工事完成工事高は6,037億円、前年度比12.8%と大きく伸びている。このうち、造園工事業種が元請で受注している金額は3,289億円とこちらも前年度に比べ23.1%と大幅に増進している。元請比率は54.5 %を占め、 前年度(49.9%)に比べ上昇している(図1)。

 また、2023年度の元請完成工事高を発注者別にみると、公共は1,540億円(46.8%)、民間は1,749億円(53.2%)となり、民間の発注額が公共を上回り、3年続けて民間優位となっている(図2)。

 なお、造園工事業を含む総合工事業8業種全体の完成工事高は前年度に比べ7.6%増となっており、造園工事業の完成工事高は8業種の中で一番高い伸び率を示している。

(1)公共工事の動向

 公共工事の全体的状況を、「公共工事前払金保証統計」(北海道・東日本・西日本建設業保証㈱)によって検討する。2024年度の件数は217,163件、前年度に比較し2.1%の減、請負金額は15兆2,054億円、前年度に比べ3.2%増となっている(図3)。発注者別では、市区町村が最も大きく件数で49.2%、請負金額で36.3%を占めている。2番目は都道府県が各々39.4%、28.5%となる。地域別には、関東のウェイトが大きく件数で22.3%、請負金額で27.2%を占める。

 造園植栽工事に結びつきの強い公園および道路工事の請負金額について、2024年度の道路部門は4兆2,015億円、対前年度比106.8%と増加、公園部門は6,748億円、対前年度比126.0%と大幅に増加している(図4)。

(2)屋上・壁面緑化

「全国屋上・壁面緑化施工実績調査」(国土交通省)によると、2023年に約15.7ha の屋上、約5.0haの壁面が新たに緑化された。これまでの累積で、屋上は約615ha、壁面は約125ha が整備された。建物用途別にみると、累積で屋上は住宅/共同住宅(119.6ha、19.6%)、商業施設(82.4ha、13.5%)、教育文化施設(79.1ha、12.9%)が上位を占めている。壁面は商業施設(34.6ha、28.0%)、工場・倉庫・車庫(19.9ha、16.0 %)、 教育文化施設(12.9ha、10.4%)の順となる。

 屋上緑化に使用される植栽材料の形態別累積面積をみると、 複合27.5 %、セダムを主に植栽27.2%、芝生を主16.9%などである(図5)。一方、壁面緑化の累計面積は、やはりツル性植物を主73.3%(90.3ha)、複合10.8%(13.3ha)、ツル性を除く草本を主8.0%(9.9ha)となる。

 屋上に造成される植栽基盤の厚さをみると、累計面積で5cm 以下23.3%、5~20cm37.9%、20cm以上28.4%となっている。2019年以降の最近5年間では、各々、22.2%、42.5%、26.2%となり、植栽基盤を配慮する傾向が見られる。

 「建設工事受注動態統計調査(大手50社)」(国土交通省)をもとに、民間の建築・土木工事の動向を把握する。2024年度の受注高は13兆6,457億円、民間工事は、サービス業、製造業、電気・ガス・熱供給・水道業等が増えたため、前年度比8.9%増、4年連続で増加している(図6)。

 工場緑化の情勢に関連のある「工場立地動向調査」(経済産業省)によると、2024年の製造業等の新設工場の立地件数は854件で、前年(799件)と比較すると6.9%の増、立地面積は1,982ha、前年(1,544ha)に比べ28.4%の大幅増となる。立地件数を敷地面積規模別にみると、工場立地法による一定の緑地面積整備を求められ、「全国緑の工場大賞」(緑化優良工場等表彰制度、(一財)日本緑化センター)の対象となる敷地面積9,000㎡以上の工場は、少なくとも3割を上回る数(敷地面積1万㎡以上の299件、35.0%)を見込める(図7)。

Ⅱ 供給動向

 2024年度の供給可能量は3,614万本となり、対2023年度比(3,665万本)98.6%と6年連続の減少となっている。形態別内訳は、グラウンドカバープランツ(GCP) が最も多く全体の5 割弱(48.1 %)、 次にコンテナ樹木がおよそ2 割強(22.5%)、3番目に低木常緑樹が2割弱(17.0%)の順となる( 図8)。露地栽培物のシェアが29.4%に対し、コンテナ栽培物のシェアは70.6%、3対7を維持している。高中木本数の形態別内訳は、おおむね常緑広葉樹5、落葉広葉樹3、針葉樹2の割合を保っている。

 主な形態について種類別の内訳をみると、GCPでは、タマリュウ323万鉢(GCP 全体の19%)、シバザクラ類156万鉢(同9%)、コグマザサ102万鉢(同6%)、さらに、フイリヤブラン85万鉢(同5%)、リュウノヒゲ63万鉢(同4%)の順となる。

 コンテナ樹木は、シャリンバイ39万鉢(コンテナ樹木全体の5%)、マホニア・コンフューサ25万鉢(同3%)、セイヨウベニカナメモチ23万鉢(同3%)、シラカシ20万鉢(同2.5%)、ハマヒサカキ16万鉢(同2%)が上位を占めている。

 低木常緑樹ではサツキ208万本(低木常緑樹全体の34 %)、オオムラサキツツジ103万本( 同17%)、ヒラドツツジ77万本(同13%)、キンメツゲ29万本(同5%)、カンツバキ19万本(同3%)が上位5樹種を構成している。サツキは2018年度まで400万本台、19・20年度に300万本台、21年度より200万本台へ供給力を下げている。

 なお、GCP のタマリュウは鉢径7.5cm、5芽立の規格の他に、マット栽培による供給(露地7,980㎡、コンテナ25,000㎡)も行われている。

 2024年度における総数の対前年度比は98.6%と減少し、露地物は94.2%の減少に対し、コンテナ物は100.6%の増加となっている(図9)。さらに、露地栽培物高木の対前年度比は95.9%、低木は93.3%であることから、主に低木の減産が全体の動きに影響している。

トピックス

 ブタクサは北米の原産、ブタクサ属は世界に25種ある。わが国へ広く定着したのは昭和年代に入ってから。世界でブタクサが引き起こす被害、その被害を拡大する要因について紹介する。

 2016年11月21日、豪州・メルボルン市で大気が一変して危険な状態になった。呼吸に苦しむ人たちが病院に殺到し、救急処置室は通常の8倍の人たちを収容し、亡くなった人は10名にのぼった。

 メルボルン市は雷雨喘息の初めての不幸な震源地となると同時に、1984年以降7回の雷雨喘息に見舞われた。類似の出来事が英国・バーミンガム市から米国・アトランタ市まで、世界中で発生した。これらは依然として稀な出来事としても、気候変動がある程度、花粉シーズンを延ばし、暴風雨を含む極端な気象事象の頻度を増やしていることから、雷雨喘息の公算を増大していると考えられる。

 豪州・マッコーリー大学教授のP. Beggs は2024年に発表した論文で次のように解説している。「厳密に雷雨がこのように喘息を引き起こしたり、悪化させたりするかは依然として完全に理解されていない。中心的な理論によると、冷たい空気は下に向かう気流となり、地表レベルで吹く強い横風を生み出し、草地や植物から花粉粒や真菌性の胞子を素早く集める。これらは、その後上昇気流により高く暴風雨系の中に運ばれ、雲の中の水分がそれらを膨らませ、より小さな断片に分解して、空気中に大量のアレルゲン粒子数を増やす。雷雨の間に発達する強力な電場はさらに花粉の破裂を高めることになる。このより小さな粒子サイズは冷たい下降気流の風により地表に戻されるので、さらに容易に花粉破片を人の気道に入り込み易くする。花粉レベルは雷雨の最初20~30分間に急上昇すると考えられ、若い人たちが特に影響を受けやすいと指摘される。

 米国やヨーロッパを含む世界各地で、花粉を放出する、主犯の1つはブタクサである。米国喘息アレルギー財団によると、ブタクサ花粉に対するアレルギーはすでに米国だけでおよそ5千万人に影響を及ぼしている²

 米国コロンビア大学の研究者は、1995~2015年に北アメリカの11か所から得られたデータを解析し、10か所はより長期のブタクサ花粉シーズンを経験していたことを明らかにした。冬が暖かく、春が早く始まり、秋は遅くなると、アレルギー性花粉に接する屋外で過ごす時間が確実に増える³

 米国ミシガン大学の研究者によれば、大気の状態は風媒花粉の放出に影響を及ぼし、その時期と規模は気候変動により変わる。

 花粉放出モデルと将来の気候データに基づく予測では、世紀末の気温が4~6℃暖かく移行すると、春の花粉放出の開始は10~40日早まり、夏と秋の雑草やイネ科植物は5~15日遅くなり、花粉シーズンの期間は長くなる。言い換えると、花粉症の症状のある人は1年間でさらに2か月間長く苦しむことを意味する。

 生物季節の変化は個々の分類群の温度応答に基づき、花粉の放出はいくつかの地域では収束し、その他では発散する。気温と降水量は1日の花粉放出最大値を-35~40%の範囲で変化させ、生物季節と温度に駆動される花粉生産量の変化によって、年間総花粉放出量は16~40%で増加する。大気中のCO2増加は花粉生産を増やし、気候と連動して花粉の世紀末の排出は200%まで倍増する。土地被覆の変化は花粉放出源の分布を緩和し、気候やCO2の影響に比べて、相対的に小さい。

 このようなシミュレーションは増加する花粉と長引く季節が季節性アレルギーの可能性を高めることを示す

 米国ラットガーズ大学の研究者は、複数の分類群について、アレルゲン活性のある空中花粉の季節的時期と水準について調査した。代表的な樹木、雑草、イネ科植物のアレルゲン活性のある花粉シーズンは、米国本土において2001~2010年の方が、1994-2000年よりも平均で3.0日早く始まったことを観察している。平均のピーク時数値と毎日計測された空中花粉の年間総数を比較すると、1990年代よりも2000年代では各々、42.4 % と46.0%増加している。花粉シーズンの時期と空中花粉水準の変化は緯度、有効積算温度、無霜日数、降水量の変化と関連している。これらの変化は近年の気候変動、とりわけ、米国本土のより緯度の高い地域での強められた温暖化と降水量による可能性が高い

 米国ハーバード大学の研究者は、オゾン(O3)とCO2の2種類の温室効果ガスの濃度上昇がティモシーグラス(Phleum pratense)の花粉やアレルゲン生産に及ぼす影響を調べた。各処理区において花から花粉を捕捉しカウントし、Phl p 5(アレルゲンタンパク質)の濃度を評価した。CO2レベルの下でティモシーグラスを育成したところ、800ppm のCO2を含む空気の中で育てた植物は、400ppm で育った植物よりもおよそ50%花粉を多く生産する花を付けたことを明らかにした

 そもそも、ブタクサとの戦いは1世紀前の1930年代に始まる。

 1932年8月12日のニューヨークタイムズ紙は、「シカゴ市花粉症との戦いに1,350人を雇用;失業者を都市が抱える多産なブタクサ刈取りに活用」という見出しを掲げた。

 男たちは、ブタクサシーズンの終了まで、1日3ドルを支給(1週間分の食糧・宿泊代相当)される。イリノイ州の救済委員会が1日750人を動員し、残り600人はCook 郡によって猛威を振るうブタクサの供給源となっている森林保護区での作業に投入された。

 地元の植物学者は、現在、シカゴ市を覆う大気はすでに1立方ヤード当たり5から6個の花粉で汚染され、

 2、3日以内に1立方の花粉容量は500~600個に急増する、と言った

 ニューヨーク市は1946~1954年までの9年間「ブタクサ根絶作戦」を実施した。ニューヨーク市のブタクサ花粉のおよそ半分は市内で産出され、残りは隣接するニュージャージー州、ペンシルベニア州などからの西風で運ばれる。作戦の実施によりブタクサ花粉による大気汚染を最大2分の1まで削減が可能と算定した。1956年に公表された報告書は、しかしながら、作戦の有効性を究めて限定的に伝えた

 ブタクサ根絶キャンペーンとして、ドイツ・ベルリン市は、いわゆるブタクサ・スカウトを任命し、この雑草を見つけ取り除く役割を与えられた。2014年に花粉の健康影響を調査した論文が公表され、13.8か月に及ぶブタクサと密接な接触に従事した20名のスカウトを対象とする肺機能検査などの調査結果は、参加者の一人もブタクサに感作ないしアレルギーとならなかったことを報告している

 スイスの首都ベルン市では、植物学者のボランティアグループが侵略的植物を取り除き、市民に情報提供する目的で公園をパトロールしている。活動の様子を伝える2019年3月の動画が公開されている10

 フランスLSCE の研究者による2015年発表の論文は、空中花粉濃度に関わる気候と土地利用の変化の影響を予測した。ヨーロッパにおいて2050年までにブタクサの空中花粉の濃度は今よりも約4倍高くなる。

 空中花粉増加のおよそ3分の1は気候変動にかかわらず進行中の種子散布による。残り3分の2は気候と土地利用の変化に関連する。すなわち、ヨーロッパ北部・東部においてブタクサのハビタット適応性を拡げ、進行中の増加するCO2のせいで既成のブタクサ生育地における花粉生産を増やす。それによって、現在および将来にブタクサの生育に適する地域における気候変動とブタクサ種子散布が空中花粉の濃度を高め、ブタクサアレルギーの発生率と有病率を高めることになる11

 EU の資金提供を受けた2023年の研究は、ヨーロッパ全体の人たちのブタクサを含む感受性を確かめるために、標準プリックテストを実施した。驚くべきことに、検査されたすべての国において、唯一フィンランド(2.4%)を除き、ブタクサに対する感作(感受性の増加)が高有病率の閾値とされる2.5%よりも高かった。感受性はハンガリーが最高で、検査された人の58~60%がブタクサに敏感であることが判明した。さらに、高率の感作はデンマーク(ほぼ20%)、オランダ(15%)、ドイツ(14%)で検出された。興味深いことに、ブタクサに敏感であると分かったおおむね4分の1の人たちは喘息の症状を持っていた12

 わが国におけるブタクサ花粉はスギ・ヒノキ花粉に比べ相対的に影響が低いものの、秋にはアレルギー発症の主役となる。温室効果ガス排出をただちに削減することなしに、花粉症アレルギーへの影響は悪化の一途をたどる。

参考文献
1)Amanda Ruggeri(2025):Climate change issupercharging pollen and making allergies worse,
 https://www.bbc.com/future/article/20250410-how-climate-driven-thunderstorms-superchargepollen-allergies

2) Asthma and Allergy Foundation of America
(AAFA):
 https://aafa.org/allergies/types-of-allergies/pollen-allergy/ragweed-pollen/

3) EPA:Climate Change Indicators: Ragweed Pollen Season,
 https://www.epa.gov/climate-indicators/climate-change-indicators-ragweed-pollen-season

4) Yingxiao Zhang & Allison L. Steiner(2022):
 https://www.nature.com/articles/s41467-022-28764-0

5) YONG ZHANG et al.(2014):Allergenic pollenseason variations in the past two decades under changing climate in the United States,
 https://climate.envsci.rutgers.edu/pdf/Zhang_GCB2014_Allergenic-Pollen-Variations-CONUS.pdf

6) Jennifer M. Albertine et al.(2014):Projected
Carbon Dioxide to Increase Grass Pollen and Allergen Exposure Despite Higher Ozone Levels,
 https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0111712

7) NewYork Times(1932):CHICAGO EMPLOYS
1,350 IN HAY FEVER FIGHT;Jobless Used to Cut Down Ragweed, of Which City Has Prolific Crop.,
 https://www.nytimes.com/1932/08/12/archives/chicago-employs-1350-in-hay-fever-fight-joblessused-to-cut-down.html

8) Matthew Walzer et al.(1956):The effectiveness of the ragweed eradication campaigns in New
York City A 9-year study( 1946-1954),
 https://www.jacionline.org/article/0021-8707(56)90002-8/fulltext

9) Oliver Brandt et al.(2014):Risk of sensitization and allergy in Ragweed workers - a pilot study,
 https://aacijournal.biomedcentral.com/articles/10.1186/1710-1492-10-42

10) swissinfo.ch:How Switzerland is battling invasive species,
 https://www.swissinfo.ch/eng/sci-tech/invasivespecies-in-switzerland-_foreign-elementsendangering-swiss-biodiversity/44978842

11) Lynda Hamaoui-Laguel et al.(2015):Efects of climate change and seed dispersal on airborne ragweed pollen loads in Europe,
 https://www.nature.com/articles/nclimate2652.epdf

12) CORDIS(2023):Ragweed allergy on the rise in Europe,
 https://cordis.europa.eu/article/id/30447-ragweedallergy-on-the-rise-in-europe


建設物価2025年8月号

おすすめ書籍・サービス

まんが 土木積算入門-実行予算編-
まんが 土木積算入門-実行予算編-
若手社員の研修教材として
「土木積算」、特に「実行予算」作成(基本的な考え方・手順等について)の入門書として、マンガで分かりやすく解説
改訂7版 土木施工の実際と解説 上巻
改訂7版 土木施工の実際と解説 上巻
若手社員のテキストとして最適です。
土木工事の施工法について、施工手順のフロー、施工機種の選定及び工程ごとの施工写真、イラスト等を掲載し施工実態をわかりやすく解説
改訂版 まんが めざせ!現場監督
改訂版 まんが めざせ!現場監督
工業高校を卒業し建設会社に入社したての若者と、入社3年目の女性の2人が、一人前の現場監督に成長する姿をストーリー仕立てで描いています。
若手社員やこれから建設業を目指す学生さんたちに、ぜひ読んでいただきたい一冊です。