我が国の建設投資は、社会経済活動・市場動向等に与える影響が極めて大きい。
このため、国土交通省では、国内建設市場の規模とその構造を明らかにすることを目的とし、
1960年度から毎年度、建設投資推計及び建設投資見通しを作成し、「建設投資見通し」として公表している。
■作成の方法
・ 「建設投資推計」とは、我が国の全建設活動の実績を出来高ベースで把握したものであり、建築着工統計調査、建設工事施工統計調査、建設総合統計や建設事業費の実績値等を基に作成している。今回は、2022年度分までを確定値とし、2023年度及び2024年度分については見込み額として公表している。
・ 「建設投資見通し」とは、我が国の全建設活動について出来高ベースの投資額を推計したものである。政府投資、民間住宅投資については、政府経済見通し、内閣府年央試算により推計している。それ以外の投資については、建築着工統計調査、建設総合統計等により推計している。
(留意点)
・ 建築補修(改装・改修)は、2019年度から平成27年(2015年)産業連関表に準じ、2015年度分以降を建設投資額として新たに計上している。
・ 建設工事施工統計調査は、2020年度分から新たな推計方法を用いている。
■公共事業関係費予算,政府建設投資及び公的固定資本形成の関係
■建設投資の区分
(区分の変遷)
・2001年度の建設投資から電源開発㈱を政府その他から民間に変更している。
・2005年10月より道路関係公団は民営化されて高速道路会社(東日本高速㈱,中日本高速㈱,西日本高速㈱,首都高速㈱,阪神高速㈱,本州四国連絡高速㈱)になったが,政府公共事業として計上している。
・2010年度の建設投資からJR各社のうちJR北海道㈱,JR四国㈱,JR九州㈱,JR貨物㈱を民間から政府その他に変更している。
・2010年度の建設投資から東京地下鉄㈱を民間から政府その他に変更している。
・2010年度の建設投資から日本電信電話㈱を民間から政府その他に変更している。
・2016年度の建設投資からJR九州㈱を政府その他から民間に変更している。
・2015年度の建設投資から建築補修(改装・改修)投資額を新たに計上している
(2020年度より建築物リフォーム・リニューアルから名称を改める)。
(対象範囲)
1 建築-住宅
居住用建築物及び居住産業併用建築物(うち居住の用に供せられる部分)の新築・増築・改築工事を範囲としている。
2 建築-非住宅
「建築住宅投資」以外の新築・増築・改築工事を範囲としている。
3 土木-公共事業(政府)
国、地方公共団体、独立行政法人、政府企業等が行う公共工事を範囲とし、新設工事のほか維持・補修工事を含む。
4 土木-その他(政府)
独立行政法人、政府企業等が行う構造物の新設工事を範囲としている。
なお、鉄道軌道工事においては、線路、電力・信号設備等の取替補修工事、電力施設及び電気通信施設に関する工事においては取替補修工事を含めている。
5 土木-民間
上記3、4の行う公共事業以外の民間が行う構造物の新設工事を範囲としている。
6 建築補修(改装・改修)
建築補修工事のうち、改装・改修工事に該当するものを範囲としている。
2025年度の建設投資は、前年度比3.2%増の75兆5,700億円
となる見通しである。
2025年度の建設投資は、前年度比3.2%増の75兆5,700億円となる見通しである。このうち、政府投資が25兆2,100億円(前年度比0.7%増)、民間投資が50兆3,600億円(前年度比4.5%増)となる見通しである。これを建築・土木別に見ると、建築投資が49兆2,000億円(前年度比4.2%増)、土木投資が26兆3,700億円(前年度比1.5%増)となる見通しである。
2024年度の建設投資は、前年度比2.4%増の73兆2,100億円となる見込みである。このうち、政府投資が25兆400億円(前年度比2.6%増)、民間投資が48兆1,700億円(前年度比2.4%増)と見込まれる。これを建築・土木別に見ると、建築投資が47兆2,300億円(前年度比2.9%増)、土木投資が25兆9,800億円(前年度比1.6%増)となる見込みである。
建設投資は、1992年度の84兆円をピークに減少基調となり、2010年度には1992年度の半分程度にまで減少した。その後、東日本大震災からの復興等により回復傾向となっている。2025年度の建設投資については、2024年度の補正予算等に係る政府建設投資が見込まれること等から、総額として75兆5,700億円となる見通しである。
2025年度の建設投資が国内総生産に占める比率は、12.0%
となる見通しである。
国内総生産に占める建設投資の比率は、1975年頃は20%以上あったが、その後、減少傾向となった。1986年度から1990年度にかけて一時増加したものの、その後再び減少基調となった。近年では、約10%程度で推移しており、実績額で比較可能な2022年度では12.0%となっている。
また、2025年度では12.0%となる見通しである。
(1)建設投資の構成と推移
2025年度建設投資見通しにおける建設投資の構成を見ると、
政府土木投資と民間建築投資の合計が全体の78%を占めている。
2025年度の建設投資の構成を見ると、民間投資が67%、政府投資が33%である。
民間投資のうち住宅、非住宅及び建築補修(改装・改修)投資を合わせた建築投資が全体の55%を占めている。政府投資は土木投資が全体の23%を占めており、この両者で建設投資全体の78%を占めている。
(2)建築・土木別構成比の推移
2025年度の建設投資は、建築投資が65%で、土木投資が35%
となる見通しである。
建築と土木との構成比については、1998年度以降、建築投資が増加する一方で政府土木投資が減少し、建築投資の占める比率が2006年度には60%となった。
その後、一時的に土木投資が増加したが、2015年度以降、建築投資が60%台、土木投資が30%台で推移している。
(3)政府建設投資の動向
2025年度の政府建設投資は、前年度比0.7%増の25兆2,100億円
となる見通しである。
2025年度は、前年度比0.7%増加し、25兆2,100億円となる見通しである。
2024年度は、前年度比2.6%増加し、25兆400億円となる見込みである。
(4)住宅投資の動向
2025年度の住宅投資は、前年度比1.1%増の16兆7,800億円
となる見通しである。
2025年度の民間住宅投資は、前年度比1.2%増の16兆3,600億円となる見通しである。また、政府住宅投資を合わせた2025年度の住宅投資全体では、前年度比1.1%増の16兆7,800億円となる見通しである。
(参考)
2024年度の新設住宅着工戸数は、前年度比2.0%増の81.6万戸であった。利用関係別に見ると、持家は22.3万戸(前年度比1.6%増)、貸家は35.7万戸(前年度比4.9%増)、給与住宅は0.7万戸(前年度比29.1%増)、分譲住宅は23.0万戸(前年度比2.3%減)となっている。
(5)建築補修(改装・改修)投資の動向
2025年度の建築補修(改装・改修)投資は、前年度比2.2%増の15兆7,000億円
となる見通しである。
2025年度の民間建築補修(改装・改修)投資は、前年度比2.5%増の13兆500億円となる見通しである。また、政府建築補修(改装・改修)投資を合わせた2024年度の建築補修(改装・改修)投資全体では、前年度比2.2%増の15兆7,000億円となる見通しである。
建築補修(改装・改修)投資は、建築投資全体に対し約30%を占めている。
(6)民間非住宅建設(非住宅建築及び土木)投資の動向
2025年度の民間非住宅建設(非住宅建築及び土木)投資は、前年度比8.7%増の20兆9,500億円
となる見通しである。
2025年度の民間非住宅建築投資は、前年度比12.9%増の12兆3,300億円となる見通しである。また、民間土木投資は、前年度比3.2%増の8兆6,200億円となる見通しである。
これにより、2025年度の民間非住宅建設(非住宅建築及び土木)投資は、前年度比8.7%増の20兆9,500億円となる見通しである。
2024年度の民間非住宅建設(非住宅建築及び土木)投資は、前年度比2.3%増の19兆2,700億円となる見込みである。
このうち、民間非住宅建築投資は10兆9,200億円(前年度比1.2%増)、民間土木投資は8兆3,500億円(前年度比3.9%増)となる見込みである。
建設投資見通しは,国土交通省のホームページで公表しているので参照されたい
(https://www.mlit.go.jp/report/press/joho04_hh_001319.html)。
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