我が国では、人口減少や少子高齢化が進むなか、特に地方都市においては、地域の活力を維持するとともに、医療・福祉・商業等の生活機能を確保し、高齢者等が安心して暮らせるよう、地域公共交通と連携して、コンパクトなまちづくり(コンパクト・プラス・ネットワーク)を推進している。
また、コンパクト・プラス・ネットワークの核となる「まちなか」においては、官民が連携し、交流・滞在できる空間を創出するなど、「居心地が良く歩きたくなる」空間づくり(ウォーカブルなまちづくり)を促進し、魅力的なまちづくりも推進しているところである。
このような望ましい都市像を実現するにあたり、まちの課題解決に向けて自動運転技術をより良い空間創出のために活用していく、そのための手段として計画的に取り入れていくという能動的な発想が重要である。
一方、自動運転技術の普及により、人の移動の自由度が高まることで、人々の生活やまちづくりに大きな影響を与えることが想定されるため、将来的な自動運転技術の活用に向けた、自動運転技術の都市への影響可能性を抽出・整理し、都市にとって望ましい自動運転技術の活用のあり方を検討することが求められている。
そのため、国土交通省都市局では、平成29年11月に有識者からなる「都市交通における自動運転技術の活用方策に関する検討会」を設置し、議論を重ねてきたところである。
本稿では、検討会での議論を踏まえ「自動運転を都市に実装するには」というスタンスではなく、自動運転技術が本格的に社会実装される時代を見据え、まちづくりとして目指すべき政策の方向性や取り組むべき施策に関する考え方についてとりまとめた「都市空間における自動運転技術の活用に向けたポイント集(以下、「本ポイント集」という)」(図-1)と、実際の都市空間に自動運転技術を活用するための知見の共有を図ることを目的として開催した「望ましい都市像の実現に向けた自動運転技術の活用に関するシンポジウム」について紹介する。

(1 )自動運転技術の普及により想定されるメリットと留意事項
まちなかで自動運転技術が本格的に実装された時代においては、自家用車両の利用から公共交通利用に転換されることで、自動車交通量が減少し、主要幹線道路や中心市街地の道路混雑の緩和といった効果が期待される。
一方、自動運転車両の普及により、免許を持たない人やこれまで自動車による移動をしなかった人が徒歩・自転車や公共交通から転換し、自動車を利用する可能性がある。また、外出機会が増加することで、移動量全体が増加する可能性もある。
そのため、留意事項を踏まえつつメリットを最大化できるような自動運転技術の活用が、まちづくりにおいて重要な視点となる。
(2)望ましい都市像の実現に向けて
今後、自動運転技術が本格的に社会実装される時代が到来しても、人口減少や少子高齢化といった社会背景にかわりはなく、都市経営の効率化や地域経済の活性化等、都市の総合的な観点からの課題解決を考えれば、コンパクト・プラス・ネットワークやウォーカブルな空間づくりという望ましい都市像と齟齬をきたさないようにする必要がある。
そのため、都市マスタープランや立地適正化計画、都市・地域総合交通戦略などの各種都市計画や交通戦略の取組の中に、自動運転技術を活用しながら、まちのマネジメントを行うことが重要となる。
(1)前提条件と対象とするエリア
本ポイント集では、本格的に自動運転社会が到来したまちの姿を見据えつつ、自動運転技術が公共交通等の車両から先行して導入され、手動運転車両と自動運転車両が混在しつつ、空間的にも限定的に導入される時代を想定したポイントを中心に整理している。ただし、いずれは自家用車両も自動運転化し、空間を限定無く走行することも想定されるため、本格的に自動運転社会が到来した時代も見据えた目指すべき都市像についても整理している。
なお、現時点では直接自動運転技術と関連しない取組であっても、将来自動運転技術を活用したまちづくりにつながると考えられる取組や、ICT技術の活用について記載している。
対象とするエリアは、主に都市部にて公共交通軸となる街路空間や結節点、都市機能誘導区域や居住誘導区域内(それらを結ぶ公共交通軸も含む)の限定されたエリア(図-2)としている。

対策ポイントについては、都市構造や都市交通施設の観点から「都市交通」、「街路空間」、「駅前広場」、「身近なエリア」の4つのシーンに分類し、自動運転技術の活用イメージと併せて、参考となる取組や事例を紹介している。
(2)都市交通のポイント(図-3)
公共交通を維持・向上させながら望ましい都市構造の実現を図るためには、公共交通を優先して走行させたいエリア・路線(公共交通軸)の設定、計画、整備が望まれる。併せて、公共交通を優先するエリアへの自動車の流入抑制や、AI 技術等を活用した交通量予測に基づく所要時間の平準化をしながらフィーダーも含む公共交通を自動運転化することが考えられる。
そのため、MaaS などを活用しながら公共交通の利用環境の向上を図り、他の交通も適正にマネジメントしながら、自動運転技術を活用した都市交通施策を進めることが重要となる。
(3)街路空間のポイント(図-4)
公共交通サービスを中心とした円滑な交通が図られるよう、自動運転車両に対応した街路空間の再構築が重要である。誰もが利用しやすい乗り換え環境整備として、シームレスな乗降空間の整備、公共交通の円滑な運行を支える駐車環境の確保に向けたフリンジ部への駐車場整備が考えられる。
また、自動車中心から人中心の空間へ転換を図るには、無秩序な駐停車を避けることも必要となるため、沿道ニーズの多様化に対応したカーブサイドの利用を検討し、荷さばき車両の駐停車場所やタクシーの乗降場所を確保しながら、パークレット等を整備することで、無秩序な駐停車の抑止や、歩行者のための賑わい・憩いの空間創出に繋がることが想定される。
(4)駅前広場のポイント(図-5)
人々の移動・滞在の拠点となる駅前の広場空間は、多様な人々の活動があふれる空間への転換が重要となる。自動運転車両が普及することにより、乗降・待機場所の確保が課題となるが、自動運転車両の待機方法の合理化検討を行いながら、周辺市街地の駐車場や空きスペースを有効活用し、隔地での待機場所の確保やバースを集約化することで、広場空間の創出に繋がることが考えられる。
併せて、公共交通を優先とした流入車両のコントロールも行うことで、自動車中心から人中心の空間へと転換し、創出された広場空間をウォーカブルな空間として活用されることが期待される。
(5)身近なエリアのポイント(図-6)
自動運転技術が普及した社会でも、居住誘導区域などは、歩行者の安全性や快適性の確保は優先すべき課題である。快適な歩行空間を確保しながら各種モビリティと共存した空間を創出するため、歩行者も自動運転車両の特性を理解することが重要となる。
また、バス停等と連携したモビリティハブの整備や、道路幅員に応じた歩行者と他の交通の適切な分離・混在させる空間づくりをすることで、低速モビリティ・自律移動ロボットの交通安全性や、住民の利便性の向上、交通弱者の外出支援等への寄与にも繋がることが想定される。
現在の自動運転に関する取組は、道路、交通、DX など多様な切り口で実証実験や実装が進められている。各自治体で考える「望ましい都市像の実現」に向け、自動運転技術を有効活用していくためには、関係者がめざすべき目標を共有し、それぞれの役割分担を明確にして取り組むことが望まれる。
そのために、まずは自動運転技術の活用に向けたポイントについて、まちづくりの計画に位置付けることが重要であり、まちづくり部局と連携して取り組む必要がある。
本ポイント集では、自動運転技術の活用に向けた取組の方向性を基に、都市・地域交通戦略を例として、計画への位置付け方を示している。
また、「都市・地域総合交通戦略」や「地域公共交通計画」に、自動運転に関する内容を位置付けた事例や、将来像への位置付け、具体的に活用を想定するエリアが書かれている自治体の紹介をしている。
本ポイント集を基に、まちづくりと連携した都市空間における自動運転技術の活用に向けた計画や空間の活用、さらに実際の都市空間へ自動運転技術を活用するための知見の共有を図ることを目的として、地方自治体や事業者等が参加するシンポジウムを令和7年10月に開催し、対面およびWeb を通じて約450名の参加があった。
シンポジウムでは、検討会の座長である早稲田大学の森本章倫教授による基調講演に加え、本ポイント集の紹介、自動運転に関する近年の省庁の動きに関する話題提供(国土交通省、警察庁)、自動運転をまちづくりの計画に位置づけながら実証実験等を進めている先進自治体(広島県東広島市・岐阜県岐阜市・大阪府堺市)の事例紹介やパネルディスカッションを行った。
パネルディスカッションのトークテーマを設定するために行った事前アンケートから、自動運転に取り組んでいる、または今後取り組む予定の自治体では、「駅前広場」や「市街地の街路」で自動運転車両の走行を検討しており、実装時の課題として「事業性の確保」や「技術的課題」を挙げる回答が多く見られた。
また、各種計画への位置付けについて、既に各種計画に自動運転を位置付けている、または今後位置付ける予定の自治体では、課題として「特になし」が最も多く、次いで「実装の見通し」が挙げられている。
一方、位置付ける予定がない自治体では、そもそも自動運転に関する取組や方針が決まっておらず、検討自体を行っていないとの回答が多くあった。
以上の事前アンケート結果を踏まえ、下記のトークテーマを提示し議論を行った。
① 自動運転に対応した都市空間の創出に向けた課題
② 都市空間に自動運転を実装させる際の課題
③ 自動運転を上位・関連計画に位置付ける際の課題
議論を通じて、自動運転の導入に向けて各自治体が取り組む際のポイントとして以下の4つが重要であることが示された。
・ 関係者間で情報を共有しながら導入を進めること
・ 導入までのシナリオを時系列で検討し、ドライバー不足などの課題を解決しつつ推進すること
・ 担当者の入れ替わりによる取組の停滞を防ぐため、中長期的な計画に自動運転を位置付けること
・ 交通事業者や大学などの関係者を巻き込み、産官学が連携したネットワークを構築すること
こうして得られた知見を基に、国土交通省都市局としても、自動運転の実装に向けて、都市空間の整備が自治体で進展するよう、取組を深めてまいりたい。
自動運転技術の進展は見通せないところがあり、対応するインフラ整備等に先行投資しづらい場合もあると想定されるが、現状の社会課題に対応するために、まずは実現可能なものから取り入れつつ、自動運転技術が本格的に社会実装される時代の到来に備えたまちづくりを実施していくことが重要である。
本ポイント集では、自動運転の実証実験等に取り組む自動運転に関心の高い自治体関係者等、まちづくりを担うプレーヤーを主なターゲットとして想定しているが、その他にも幅広い方々にもご覧いただき、将来の自動運転を活用したまちづくりについての議論が活性化し、全国で行われている持続可能なまちづくりの一助になることを期待している。
<参考資料>
1)都市交通における自動運転技術の活用方策に関する検討会
https://www.mlit.go.jp/toshi/toshi_gairo_tk_000079.html
2)都市空間における自動運転技術の活用に向けたポイント集
https://www.mlit.go.jp/toshi/content/001890965.pdf

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