新たなインフラマネジメントに向けた5つの道すじ
我が国では、高度経済成長期以降に集中的に整備されたインフラの老朽化が加速度的に進んでおり、2012(平成24)年12月に発生した中央自動車道笹子トンネルの天井板崩落事故を契機に、翌2013(平成25)年を「社会資本メンテナンス元年」と定め、点検・診断、対策実施というメンテナンスサイクルのもと抜本的に対策を強化して取り組んできました。特に、施設に不具合が発生してからではなく、あらかじめ定期的に点検・診断を実施し、その結果に基づき不具合が生じる前に修繕等を実施する「予防保全型」メンテナンスへの転換に向けて取組が進められてきました(図1)。

一方、インフラの多くを維持管理する市区町村は財政面・組織体制面ともに極めて厳しい状況にあり、インフラを持続的に維持管理するための体制が脆弱になってきています。
このような中で、2025(令和7)年1月28日に埼玉県八潮市において発生した下水道管破損に起因する道路陥没事故によって、適切にインフラの点検・修繕・更新を図るとともに、計画・設計・整備・修繕・改築などを統合的にマネジメントすることの重要性と不具合のあった際の国民生活への影響の大きさを再認識したところです。
埼玉県八潮市の道路陥没事故を受けて、同様の事故の発生を未然に防ぐため、国土交通省では有識者委員会を設置し、地下管路の施設管理のあり方などの検討を進めてきました。
昨年12月には、下水道の管路マネジメントの具体的方策の考え方に加え、インフラ全般に共通する課題について整理し、新たなインフラマネジメントに向けた5つの道すじについて、第3次提言として取りまとめられました(写真1)。

第3次提言(第Ⅱ部)の概要は以下のとおりです。
(第3次提言の概要)
(1)社会インフラの信頼性に対する国民の懸念
○ 社会インフラの信頼性に対する国民の懸念を払拭し、老朽化対策に万全を期す
(2)新たなインフラマネジメントに向けた5つの道すじ
① 2つの『見える化』の徹底
《管理者や担い手にとっての『見える化』》
《市民への『見える化』》
○ 点検・調査・診断における新技術の導入やデジタル管理体制の早期確立など、管理者や担い手にとっての「テクニカルな見える化」を推進
○ インフラの老朽化を「自分ごと化」するよう促すため、「市民への見える化」を推進
② 2つの『メリハリ』が不可欠
《重点化する『メリハリ』》
《軽量化する『メリハリ』》
○ 技術的な知見に基づいて、点検・調査の頻度や方法等の効率化を推進
○ 地域の将来像を踏まえた、対策の優先度の設定や計画的な集約・再編を推進
③ 現場(リアルワールド)に『もっと光を』
○ 地域を支えるエッセンシャルサービスとして地域の活力と雇用創出につなげていくよう、「業界力」を向上
○ 「エッセンシャルジョブ」の世界にもっと光が当たるよう、表彰制度や待遇改善等の総合的な対策を推進
○ インフラを支えている「現場の担い手」が働きがいをもって活躍できるようにするため、匠としてリスペクトし、待遇面などの対策を推進
④ 統合的『マネジメント』体制の構築
○ 点検・調査のみならず、計画・設計・整備・修繕・改築など全てを一体的に考える統合的『マネジメント』体制を構築
○ 構造物の特性を踏まえ、供用期間にわたり、適切な維持管理が容易に実施できるよう設計段階からメンテナビリティ(維持管理の容易性)やリダンダンシー(冗長性)の確保を推進
○ 道路管理者と占用者が連帯した占用物の点検計画等の確認や効率的な路面下空洞調査の実施等による適切な維持管理、地下空間情報のデジタル化・統合化を推進
○地域課題の解決に向け、分野横断的に連携
⑤ 改革推進のための『モーメンタム』
○ 管理者と利用者などが一体となって、市民がインフラマネジメントの取組に参加したくなるよう、社会全体を動かすモーメンタムを醸成
○ 政産学官民が一丸となって取り組む「インフラメンテナンス国民会議」や「インフラメンテナンス市区町村長会議」の活動等を強化
(3)実現に向けた仕組みづくり
○ 地域インフラ群再生戦略マネジメント(群マネ)の推進
○ 「人の群マネ」を積極的に取り入れることなどによる協力体制の強化
○ 群マネの導入や新技術の活用促進の支援、専門家を派遣する等の地方公共団体支援の体制を構築
○ 予算の安定的な確保、予防的インフラマネジメントへの重点的な財政支援や制度改正の検討
こうしたことを背景に、インフラのマネジメントを効率的・効果的に進めるためには、国管理分はもとより、インフラの大部分を占める地方公共団体管理分のインフラの管理機能を持続可能なものとするため、地域のインフラのマネジメントを支える主体間の連携・協働体制の強化やAI・ロボット等の新技術の導入、維持管理の容易な構造の採用等を通じたメリハリのある維持管理をしていく必要性が高まっています。
さらに、今後人口減少が加速する中、地域の将来像を踏まえてインフラの整備や管理を行い、集約・再編等により、インフラストックを適正な水準に再構築していくインフラのマネジメントのあり方について、技術的な観点から検討することが必要です。
このため、令和7年12月16日に国土交通大臣より「今後のインフラのマネジメントのあり方」について諮問が行われ、同月25日、社会資本整備審議会及び交通政策審議会技術分科会の技術部会の下に、「インフラマネジメント戦略小委員会」(委員長:家田仁政策研究大学院大学特別教授)が設置されました(図2)。

令和8年1月30日、酒井副大臣出席のもと開催された第1回委員会では、限られた人員・予算で効率的なマネジメントをしていくメリハリ等、新たなインフラマネジメントという視点で取り組む必要性について意見が示され、今後のインフラマネジメントのあり方について本格的な議論が開始されたところです(写真2、写真3、図3)。



本委員会においては、今後、次の事項を中心に審議を行い、令和8年夏頃を目途に中間的な取りまとめを行う予定です。
(主な審議事項)
・ 地方公共団体管理分も含めた様々な分野のインフラに関する実態の把握
・ 維持管理の容易な構造の採用等を通じたメリハリのある維持管理
・AI・ロボット等の新技術の導入の方向性
・ インフラのマネジメントを支える主体間の連携・協働体制
・今後のインフラのマネジメントのあり方
第3次提言を踏まえ、点検の方法等の効率化や地域の将来像を踏まえた、対策の優先度の設定や計画的な集約・再編等、限られた人員・予算で効率的なマネジメントをしていくメリハリや、適切な維持管理が容易に実施できるように設計段階からメンテナビリティを確保する他、社会的影響が大きい施設はリダンダンシーを確保する等、新たなインフラマネジメントという視点で議論を重ね、具現化に向けて取り組んでまいります。
