建設物価調査会

建設工事における猛暑対策<br>サポートパッケージについて

建設工事における猛暑対策
サポートパッケージについて

(前)国土交通省 大臣官房 技術調査課
企画専門官 谷口 雄一郎



1.はじめに

 建設業は、社会資本整備や災害時の応急復旧等、重要な役割を担っており、将来に渡って建設業の担い手を確保するためには、他産業と遜色のない労働条件・労働環境の実現、更なる向上・改善が必要である。

そのような中、猛暑対策として、国土交通省直轄土木工事においては、発注段階における猛暑日を考慮した工期設定、熱中症対策に係る経費の充実、i-Construction 2.0による遠隔施工の促進等を実施してきており、地方公共団体等に対しても、同様の働きかけを行ってきた。

 一方、近年、夏の猛暑は厳しさを増し、今後も続くと想定されることから、厳しい作業環境に対応するため、地域の実情を踏まえ、最新の知見・技術を総動員した多様な働き方の実現が必要となってきている。

 そのため、国土交通省では、建設業団体の意見も踏まえ、施工者の自主性を尊重しつつ、地域の実情や現場の状況等に応じて、受注者が施工の時期、時間や方法を柔軟に選択できるよう、工期の設定、新技術の導入や熱中症対策に係る費用等について支援する取組を「建設工事における猛暑対策サポートパッケージ」として令和7年12月にとりまとめた。

本稿では、本パッケージの概要(図1)及び来季(令和8年夏)に向けた取組状況について概説する。


2 .来季に向けて実施する具体的な施策・取組

(1)猛暑期間を回避した工事発注

 発注者が猛暑日を考慮した工期設定を実施するため「直轄土木工事における適切な工期設定指針」を令和5年3月に改定し、年毎のWBGT 値31以上の時間を日数換算し、5年間の平均値を猛暑日日数として、雨休率における天候等による作業不能日として工期を設定している。

当初発注時に発注者の積算で見込んでいる以上に猛暑日等があり、かつ、作業を休止せざるを得なかった場合には、工期延長日数に応じて精算することとしている(図2)。

 さらに、来季に向けて、直轄土木工事において、発注者は、熱中症のリスクが高い作業が猛暑期間にかからないよう、事業全体の工程や工事の重要度、予算の配分状況等を考慮し、可能な範囲で、余裕期間、準備期間、工場製作等外業を伴わない期間、後片付け期間等が猛暑期間に収まるよう調整する等、猛暑期間の現場施工を回避した工事発注を行っていく。

なお、猛暑期間については、気象条件、作業環境等を踏まえ、地域毎に設定する。

(2)猛暑期間を休工可能とする工事発注

 受注者の判断に基づき猛暑期間を一定期間休工とすることができるよう、発注者が猛暑期間を考慮した工期設定を行うことを目指し、取組の効果や必要となる費用・取組を把握するため、猛暑期間を工期に含む直轄土木工事において、試行工事を実施していく。

 猛暑期間を休工とした場合の課題としては、工程調整や資機材の管理方法、技能労働者の再募集等の課題がこれまでも確認されており、また、休工期間経費の考え方や休工を考慮した工期設定により事故繰越が必要となる場合がある等の課題も想定される。

 そのため、各地方整備局等において、舗装修繕工事等を対象に、試行工事を選定し、猛暑期間を避けることができる工期設定を行うことにより、受注者が計画的に休工しやすい環境を整えた場合、これらの課題がどの程度解消されるかを確認するとともに、追加費用についての当初発注時における明示方法や積算方法、必要な取組等について検討していく。

なお、試行の目的を考慮し、最低2週間程度は休工する。

(3 )猛暑期間における現場施工回避の協議の明記

 受注者が猛暑期間の現場施工を回避しやすくするため、特記仕様書において、監督職員と協議を行うことができる旨、規定する等、受注者の取組を促進している事例が、既に、関東地方整備局宇都宮国道事務所等でみられる(図3)。

 全国の他の直轄土木工事においても、受注者の判断により、猛暑期間の現場施工を回避しやすくするため、特記仕様書において、監督職員と協議を行うことができる旨、規定する等、受注者の取組を促進していく。

<特記仕様書記載例>
猛暑期間の現場施工を回避することにより工期延期が必要となる場合には、監督職員と協議を行うことができる。

(4)猛暑時間の施工回避

 猛暑時間の現場施工を回避するため、監督職員と協議の上、必要があると認められる際には、作業の開始時間、終了時間を変更することができることから、受注者は、施工・工程を工夫して、早朝施工や休憩時間の延長等の取組が既に実施されている(図4)。

 近隣に住戸がある場合等は早朝の作業開始が難しい場合もあることから、受注者が猛暑時間の現場施工を回避しやすくなるよう、早朝・夜間施工に係る警察や地元等への協議について、必要がある場合、発注者が協力することを直轄土木工事における特記仕様書へ記載する等して、受注者の取組を促進していく。

<特記仕様書記載例>
受注者は、猛暑時間における現場施工回避(早朝・夜間施工)するにあたり、警察や地元等との調整を行う際に、監督職員の臨場について協議することができる。

(5)1年単位の変形労働時間制

 受注者は、労働基準法の規定により、特定の季節等で業務の繁閑が大きい場合には、1年単位の変形労働時間制を用いることができる。具体的には、繁忙期の所定労働時間を長くする代わりに、閑散期の所定労働時間を短くするといったように、業務の繁閑に応じて、工夫しながら労働時間の配分を行う取組であり、導入にあたっては、就業規則への規定、労使協定の締結(労働基準監督署への届出)が必要となる。

 本制度について、(2)~(4)の猛暑期間・時間の作業回避の取組に加え、変形労働時間制により年間の総労働時間を配分する工夫が求められる。30日前に全ての労働者の勤務カレンダーを作成する等といった運用面の解釈・改善等について、関係機関と連携しつつ、活用に取り組んでいく。

(1)i-Construction 2.0の推進

 国土交通省では、i-Construction 2.0を掲げ、建設現場で働く一人ひとりが生み出す価値を向上し、少ない人数で、安全に、快適な環境で働く生産性の高い建設現場の実現を目指して、建設現場のオートメーション化に取り組んでいるが、限られた時間で効率的に現場施工を実施することは熱中症対策にも資するため、引き続き、i-Construction 2.0 を推進していく。

(2)作業環境の改善

 定置式水平ジブクレーン、アシストスーツ、水冷服・空調服、バイタルチェック機器等、猛暑対策に資する既存の技術・製品の導入が個社毎に行われている。

 さらに、既存技術の現場実装を促すため、直轄土木工事での総合評価落札方式の技術提案評価型S型において、猛暑対策に関する技術提案テーマを設定し、競争参加者から、猛暑期間・時間の作業回避、人力作業の削減といった作業環境の改善に資する施工上の工夫等の技術提案を求めて評価する試行を実施することとしている。

本試行は、分任官工事等で、屋外での作業が多い等、猛暑対策の効果が大きいと想定される工事、入札参加者が多く見込まれる工事等を対象に行うこととしている。

 また、熱中症対策に係る技術開発を促進するため、SBIR 制度によるスタートアップ等への支援に向け、令和7年12月からの公募においては、労働環境向上(避暑・避寒、苦渋作業軽減等)もテーマに加え、技術の公募を実施した。

(1)熱中症対策に係る経費

 工事現場の熱中症対策における備品等対応に係る経費に関して、直轄土木工事においては、工事期間中の真夏日の日数に応じた補正値による現場管理費の補正を令和元年度より試行している。塩飴、経口保水液等効果的な飲料水、空調服、熱中症対策キット等、主に作業員個人に対する熱中症対策として用いることができる。

 また、工事現場の熱中症対策における施設対応に係る経費に関して、直轄土木工事においては、共通仮設費の現場環境改善費の率分で計上される額の50%を上限に、積み上げ計上できる積算要領を令和7年度より適用している。遮光ネット、大型扇風機、製氷機、日除けテント、ミストファン等、主に現場の施設等における熱中症対策として用いることができる。

 さらに、令和8年度からは、より効果的な現場環境改善が図られるよう、実施内容の絞り込みを行うとともに、現場環境改善費の率分で計上される額の100% を上限に積み上げ計上できることとし、熱中症対策・防寒対策への充当の強化を図った(図5)。

(2)直接工事費

 猛暑による日当たり作業量の減少への懸念に対し、施工合理化調査の結果を分析したところ、建設現場の作業管理として行われている作業休止時間(熱中症予防対策、振動作業対策や腰痛予防対策等)が増えたことにより、実作業時間に減少している傾向が見られた鉄筋工や仮囲い設置撤去工等6工種について、令和8年度歩掛改正に反映した(図6)。

 猛暑対策を建設業全体で取り組むためには、国土交通省直轄工事のみならず、地方公共団体発注工事、民間発注工事を含む全ての工事で対策を徹底する必要があるため、本パッケージを踏まえ、国土交通省直轄工事における取組を参考に、地方公共団体、民間発注者等全ての発注者に対し、各発注者の事情に応じて可能な限り、取組の拡充を促す他、既に取り組まれている好事例について、横展開が図られるよう「建設工事における猛暑対策事例集」として適宜とりまとめ、地方公共団体・民間発注者含め、周知を行っていく。


3.中長期的な課題への対応

 本パッケージでは、主に来季に向けて、実施する施策・取組をとりまとめているが、建設業団体との意見交換においては、下記のような意見も出ており、引き続き議論を行っていく。



・ 猛暑期間や豪雪地帯における冬期間を回避するため、休工することに関して、日給制の技能労働者の年間総労働時間・年収を確保する方策について検討する必要がある。


・ 建設業における1年単位の変形労働時間制の活用促進に向けた運用改善等について、制度を所管する厚生労働省とも議論を重ねていく必要がある。


・ 現場で働く技能労働者の生命・健康を守るため、猛暑日における作業について、厚生労働省とも議論を重ねていく必要がある。


4 .建設コンサルタント業務等における猛暑対策

 本パッケージは建設工事を対象としているが、国土交通省発注の建設コンサルタント業務等においても、取り入れ可能な対策については、導入することとしている。

 具体的には、履行期間の設定にあたって、猛暑期間を回避するよう努めることや、受注者の判断により、猛暑期間の現場施工を回避しやすくするため、監督職員と協議を行うことができること、受注者が猛暑時間の現場施工を回避しやすくなるよう、早朝・夜間施工に係る警察や地元等への協議について、必要がある場合、発注者が協力すること等について、工事に倣って、建設コンサルタント業務等においても運用をしていく。

 また、熱中症対策に係る経費の確保にあたっては、令和8年度の積算基準において、諸経費等へ積み上げ計上できる運用を開始した。


5.おわりに

 国土交通省では、本パッケージに基づき、来季の猛暑に向け、取組を推進するとともに、実施状況を踏まえ、本パッケージは適宜見直していく。

また、猛暑対策のみならず、冬季に現場施工ができなくなる積雪寒冷地等の地域性についても、猛暑対策と同様に引き続き、配慮を行っていく。

参考文献
建設工事における猛暑対策サポートパッケージ及び事例集
https://www.mlit.go.jp/about/nettyuu.html


建設物価2026年6月号

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