建設物価調査会

トンネル工事、橋梁工事は全て BIM・CIM 対応に





国土交通省 関東地方整備局 横浜国道事務所
副所長 小澤 知幸 氏   工務課建設専門官 沼澤 俊伸 氏     藤沢出張所長 三浦 淳 氏



国土交通省では、2019年を生産性革命“ 貫徹の年”と位置付け「i-Construction」を推進している。発注者として、建設現場における生産性を向上させ、魅力ある建設現場を目指すi-Constructionを推進するために、BIM/CIMをどのように活用しているのだろうか。関東地方整備局 横浜国道事務所にBIM/CIMの取り組みについてうかがった。

沼澤 俊伸氏(左)と三浦 淳氏(右)

課横断でBIM/CIMを推進

 国土交通省 関東地方整備局 横浜国道事務所(以下、横浜国道事務所)は、神奈川県内の国道1号や246号など7路線、総延長約263kmの国道の整備や管理、維持修繕を行っている。平成31年4月に「i-Constructionサポート事務所」の認定を受け、管内のi-Constructionを推進するため、事務所内を横断した推進体制のもと、発注者側に必要な知識や技術、事業マネジメントを高める取り組みを行っている。「職員を対象にした現場見学会を開催し、3Dスキャナーを使った施工管理など、現場での実践を共有しています。また国土交通大学校での発注者向けBIM/CIM研修へも職員を派遣しています。各課横断の取り組みを行うことで、事務所全体の浸透、底上げを図っています」と副所長の小澤知幸さん。
 
 事務所内のi-Construction推進の取りまとめを している工務課建設専門官の沼澤俊伸さんは「基本的には、トンネル工事、橋梁に関する工事は全て BIM/CIM 対応で進めていく方針です。工務課としては発注者指定型と受注者希望型の2つの発注方式を検討しながら取り組んでいます」。

ARを利用しての現場打ち合わせ
ARに表示されている画面
栄インターチェンジの現況(空撮)

圏央道を構成する道路の設計段階からBIM/CIMを導入

 横浜国道事務所が進めている主な事業に首都圏中央連絡自動車道(圏央道)の一部となる高速横浜環状南線、横浜湘南道路がある。この2つの道路が整備されることで広域的な道路ネットワークが形成され、交通の円滑化や定時制の向上が期待されるとともに、物流の効率化や地域産業の活性化、より広域的な観光交流の実現などにつながっていく。
 
 現在、高速横浜環状南線と横浜湘南道路の接続する栄インターチェンジ・ジャンクション(以下、栄IC・JCT)で橋梁工事が進められているが、設計段階からBIM/CIMモデルが導入されている。下部工の橋脚が124基、上部工30橋、5層構造という栄IC・JCT は、2次元の図面では上下関係がわかりにくい。3次元モデルにすることで立体的で複雑な構造が把握でき、さまざまな工事関係者が情報共有しやすくなる。また「工事や発注の順番を検討するのにもBIM/CIMによるデータを活用しています。今後は他の橋梁工事にも展開していく計画です」と沼澤さん。「設計も複数の建設コンサルタント会社に発注していますので、BIM/CIMを活用して統合することで全体的なことが見えてきます。今はまだ過渡期ということもあり、完全な統合までには至っていませんが、将来を見据えながら、ひとつのBIM/CIMモデルをベースに進めています」
  

施工段階での調整や事前確認に活用


  施工の段階でもBIM/CIMの活用はさまざまなメリットがある。栄IC・JCTの工事監督をしている藤沢出張所長の三浦淳さんは「現場でもBIM/CIMを活用しながら、工事でどのようなことができるか調整をしています」。現場は広く、輻輳して工事が行われているため、各施工会社とヤードの調整などが必要になる。「BIM/CIMモデルを活用することで、ヤードの広さや地形、工事用道路などを考慮した上で、クレーンの配置などを決めることができます。作業員のみなさんが認識しやすくなり、ここまでヤードが使える、こういう形で施工しよう、というような意識の向上につながっています」と三浦さん。

 今はまだ各社が個別に取り組んでいる段階だが、それらを統合して情報共有をしていく計画だという。今年1月と5月に発注者側が入って現場でのCIM意見交換会を開催した。今後も3~4カ月に1度くらいの頻度で開催していく予定。「各社によって取り組みの状況はさまざまですので、少しでも底上げになっていけば良いと考えています」と三浦さん。
 
 
 また現場では「CIMを用いた作業手順周知会」を行っている。2次元の図面では自分の担当する部分しかわからないが、BIM/CIM による3次元モデルで全体像が見えるようになる。さらにARも活用し、リアルなイメージが体感できる工夫もしている。「元請け会社からは、協力会社との打ち合わせがしやすくなり、作業員さんにもスムーズに指示できるようになったと聞いています」と三浦さんがいうように3次元モデルは、現場の円滑なコミュニケーションにも役立っている。

栄IC・JCT 平面図

栄IC・JCT BIM/CIMモデル

鉄筋の干渉確認にも効果を発揮

 施工計画でも3次元モデルが効果的に活用されている。124基の橋脚のうち最も高いものは33.2m、鉄筋も多く密になっているため、杭の配筋とフーチングの配筋を3次元上で重ねあわせて影響が出る場所を確認した。沼澤さんは「構造物同士の干渉なども確認できるので、施工の段階で手戻りが減ることが期待できます」。三浦さんも「鉄筋はパーツごとに組み合わせますが、フーチング、柱、梁などの接続部はなかなか2次元の図面上では表せないため、3次元モデルで見える化することで、これまでは現場で合わせていたものを事前に確認して、作業の準備ができるようになりました」。BIM/CIMの活用が施工の効率化や品質確保に貢献していることがわかる。「設計の段階で干渉する場所を確認できるのもBIM/CIMを使った効果だといえます。工事発注の際に詳細が明確になることは発注者、受注者双方にとってメリットになります」と沼澤さん。

配筋図の干渉確認

足場作業の安全教育にも活用

 現場ではCIM データをVRに変換し、足場作業の安全教育に使い始めているという。室内でVRゴーグルを装着すると目の前に広がるのは高所の足場。足場の上を歩き、障害物を乗り越えると足場が固定されておらずストンと下に落ちてしまう。「VRで危険を体感することで安全に対する意識向上につながります。これは施工会社が行っているものですが、こういった取り組みを共有しています」と三浦さんはその効果を話してくれた。 「リーディングカンパニーの活動を紹介して各社に浸透させていくことも大切です。安全はいい切り口だと思います。効果に気付いてもらい、関心を持っている分野が見つかれば、そこを切り口に BIM/CIM に取り組むことができます。それが次のステップにつながっていきます」と小澤さんは普及のためのポイントを示唆する。沼澤さんは「BIM/CIMの活用を浸透させるためには、職員や現場に対して BIM/CIM を使って何ができ、どんな効果があるのかを伝えることが大事」だという。

神奈川県i-Construction 推進連絡会

 神奈川県内においては、関東地方整備局所管4事務所、神奈川県、横浜市、川崎市、相模原市の3政令指定都市、神奈川県建設業協会が連携し、県内での円滑な普及を図ることを目的に2017年2月に「神奈川県i-Construction推進連絡会」が設立された。今後は直轄工事だけでなく、自治体の道路事業など、いろいろな工事でBIM/CIMが活用されていくことになる。小澤さんは「『i-Constructionサポート事務所』としてこれまで培ってきたものを自治体に紹介していくことも私たちの役割ですので、これからは力を入れていかなければなりません。積極的にBIM/CIMのメリットを伝えることも必要だと考えています」という。
 
 3次元モデルは地域住民への説明会や見学会にも活用されている。現場では工事内容を告知する看板を設けているが、3次元モデルによる完成イメージや進捗状況などを写真で紹介している。「近隣の方が関心をもって見ていかれます。地域のみなさんに配布している広報誌にも3次元モデルを掲載するなど広報にも役立てています」と三浦さん。土木の専門知識を持たない地域の人たちにもビジュアルで訴求できることは、理解や関心を深めるために大いに役立つ。

VRを用いた安全訓練
国道事務所職員の3Dデータ現場見学会

検査や維持管理につなげる

 今後の活用について、三浦さんは「出来形と品質確保の手段として活用し、将来的には座標や断面など3次元データの精度が高まることで出来形確認(3Dモデル検査)ができるようになってくると良い」という。また「下部工事から上部工事に変わる時、これまでは設計図面に戻っていましたが、BIM/CIMデータを引き継いでいければ、地形の状況や出来形がわかるのでクレーンの位置なども合わせられますし、具体的な施工計画にも役立てられます」。
 
 沼澤さんは「今後はBIM/CIMによる3次元での設計がメインになり、最終的には ICT の活用につながっていくことになります。今はまだ過渡期ですので、全ての設計が3次元でできあがっていたわけではなく、途中から3次元化した部分もあります。私の経験からいえば、新たに取り組むのであれば、より上流の段階から進めていくことが最も効果があり、進めやすいやり方だといえます」。
 
 いかに管理や維持修繕で活用するかも重要になる。小澤さんは「今後は、管理系の部署とどのようなデータが必要なのかを議論しながら検討していきたい」という。横浜国道事務所の取り組みはさらに加速していく。




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