建設物価調査会

PC橋梁の施工にBIM/CIMを活用し、現場の生産性向上に大きく貢献




株式会社日本ピーエス 中国支店 技術グループ
松本 正之氏

株式会社日本ピーエス 営業本部 営業推進グループ技術チーム
中川 文周氏

株式会社日本ピーエス 技術本部 設計グループ 第2 設計チーム
丹羽 克斗氏

 


 福井県敦賀市の株式会社日本ピーエスは、PC橋梁メーカーのパイオニアとしてこれまで全国各地で15,000 橋を超える橋梁づくりに携わっている。3年前からBIM/CIMを導入し、関係者協議や住民説明会での活用はもちろん、社内の情報共有や教育、人材採用にも活用している。

株式会社日本ピーエス 中国支店
技術グループ
松本 正之氏
(左)
株式会社日本ピーエス 営業本部 営業推進グループ技術チーム
中川 文周氏

(右)
株式会社日本ピーエス 技術本部 設計グループ 第2 設計チーム
丹羽 克斗氏

試行事業をきっかけにBIM/CIMにチャレンジ

 同社では国土交通省のBIM/CIMの試行事業をきっかけに、3年ほど前からBIM/CIMに取り組んでいる。社内でBIM/CIMを推進してきた松本正之さんは「何もないところからスタートしました。どんなソフトウェアを使つて、自分たちはどんなことができるのかを皆で話し合いました」と当時を振り返る。講習会への参加や講師を招いて話を聞くなどして、BIM/CIMの知識を深めていった。

 最初は3次元モデルの制作を外部に委託し、施工の流れを確認するためにAutodesk社のNavisworks Manageを導入した。「3次元モデルをつくる会社に依頼しても、橋梁を詳しく知っている方でないとスタイルが違うことがあります。例えば、張出し架設の工程を動画で見せたいといったことも、事前に伝えておくことが大切です。最初はその辺りのことを何回かやり取りをしました」と松本氏。BIM/CIM活用による第1号の現場は、今年6月末に竣工した。

4次元施工シミュレーション

内製化のきっかけ

 1年半ほど前からは、社内でBIM/CIMモデルを作成するようになった。その理由を松本氏は次のように語る。「施工現場では、設計変更や小さな変更を確認したいということがよくあります。施工シミュレーションでは、現場から連絡がくるとその都度、外注先に修正の依頼をしていましたが、どうしても時間がかかってしまいます。施工が終わってからモデルが来ても意味がないのです。内製化し、時間や精度も上げたいと考えました」。

 社内でBIM/CIMを担当しているのは、設計チームの丹羽克斗さんだ。「現場から帰ってくるとPCにAutodesk社のAEC COLLECTIONが入っていて、BIM/CIMを担当するようにいわれました」という丹羽氏は、講習会に参加し、勉強しながら試していった。BIM/CIMモデルを扱う会社からのサポートを受けながら、次第に社内で完結できるようになった。丹羽氏は「当社で入れたソフトは操作がわかりやすいのが特徴です。使っていく中で感覚がつかめてきます」。「丹羽君は格段の速さでBIM/CIMを習得していきました。若い人にどんどんチャレンジしてもらいたいですね」と松本氏は笑顔でいう。丹羽氏は現場と設計の両方を経験したことが役立っているという。「設計だけでは現場の細かいことまでイメージがつかめませんし、現場をある程度わかっているので現場が求めていることを理解できます」。

 営業推進グループの中川文周さんは、土木や橋梁のシンポジウムなどで最先端のBIM/CIM導入事例や技術を見てきた。「見た目や伝わりやすさがBIM/CIMの魅力です。自社でも導入したいという思いがありました」と振り返る。「お客様は我々のようなエンジニアではないので、言葉で説明してもなかなか伝わりません。こちらの意図を視覚的にイメージしていただけるツールとしてBIM/CIMは非常に有効です」という。

 中間検査では、3次元モデルを使い、周辺道路の状況などを説明した。また住民説明会や見学会でも活用の効果は大きい。全く橋梁の構造を知らない人でも3次元モデルやアニメーションを見れば完成後をイメージできる。子ども向けの見学会でも好評だった。

 さらに「3次元モデルを活用することで、営業や設計と現場の意識が近くなり、同じ土俵で話ができるようになりました」という。3次元モデルは社内コミュニケーションを円滑にするための有効なツールでもある。最近では、安全教育にVRを使ったり、採用活動にも3次元モデルが活用されているという。

地元説明資料 支保工検討
地元説明資料 走行イメージ
地元説明資料

施工方法の検討や安全性向上に貢献

 3次元モデル上では、現場に実物大で橋梁を設置することができることが魅力だという。ある工事では、支保工・足場を設置すると車両の通行できる道路幅が確保できないという問題があった。それを3次元モデルで検討し、当初は固定の外周足場を組む計画だったが、張り出し足場に変更した。地域への説明会でも、道幅は変わらず安全に通行できることを示すためにアニメーションを作成し理解を得た。「少し先の未来を具体的な形で見ていただくことで安心感を与えられます」と丹羽氏。

 ワーゲン(移動式作業車)による張出し施工の現場では、施工シミュレーションの結果、ワーゲンの設備を変えた。「 ワーゲンの組み立て解体についても説明がしやすいこともメリットです。どういう順番で組むかを現場の作業員さんに事前に見てもらいました。ゆくゆくはワーゲンの組み立てや解体手順を示す動画をつくりたいと考えています」と松本氏はいう。

 橋梁の下に道路が交差する現場では、3次元モデルを使って防護範囲を協議した。「2次元の図面でもやってみましたが、複雑な地形にある道路なので、剥落防止の対策範囲も3次元的に変わってきます。これは効果的に使うことができました」。さらにこの現場では、橋脚が鉄道の線路から近いため、移動作業車の下段作業台を先行設置し、下方への落下物防止対策などの安全対策を施してから架設機材の組立を行う手順に変更した。事前に3次元や4次元でシミュレーションしたことで施工の効率や精度が格段に高まった。施工管理へ反映させたり、事前に危険なエリアを作業員に伝えるなど、安全性の向上にも役立つ。

 「この現場は傾斜地で森林もあり、3次元モデル上でシミュレーションして、このブロックまでいったら、どのくらい樹木の伐採が必要か、どのくらい切土や盛土すればよいかという検討にも使いました。実際の現場も3次元モデルとほぼ同じ結果になり、干渉を避けることができました。かなり早い段階で分かりますので、施工の手戻りがなくなりました」と丹羽氏はいう。松本氏は「発注者も交え下部工施工会社と3次元モデルを見ながら協議しました。下部工の計画では「地山はここまでしか切らないけれど、もう少し切ってもらえますか」というような具体的な話もしました」。

 丹羽氏は「生産性が上がるように現場の手助けになりたいという思いがあります。3次元モデルで配筋モデルをつくり、干渉チェックするのは時間がかかります。でもそれで現場の仕事が楽になるのなら手間も惜しみません」とBIM/CIMに取り組む意義を語ってくれた。


ワーゲンと樹木の干渉
剥落防止対策範囲

将来の維持管理に役立てたい

 BIM/CIMは調査から設計、施工、維持管理のすべての段階で3次元モデルを活用することで情報を共有し、生産性を高める仕組みである。
 BIM/CIMは3次元モデル自体にさまざまな属性情報を入れ込めるので、データの保管庫として活用できる。中川氏は「お客様にファイリングして渡していた膨大な提出書類も全部データ化し、3次元モデル上で見ることができます。維持管理までつなげるのがBIM/CIMの便利なところ。 インフラも手当をして長寿命化を図っていくという時代の中で、施工会社がどういう施工をして、どんな部品や材料を使っているかといった情報が3次元モデルの中に一元化されていれば、手当てをする際に便利です。5年後10年後には必ず役に立つという確信があります」と力を込める。それがBIM/CIM活用の最大のポイントであり、ストック効果の最大化に貢献するツールだという。例えば、箱桁の外ケーブルと定着突起の干渉シミュレーションのようなツールがあれば、一部の人しか入ることのできない箱桁の中を見ることができ、将来的には維持管理にも活用できる。BIM/CIMの普及は施工者だけでなく、発注者にとってもメリットは大きい。

属性情報
箱桁内部(外ケーブルおよび定着突起の干渉チェック)

すべての施工関係者をつなぐツールに

 ゆくゆくは現場担当者でも3次元モデルを使いこなせるようにしたいと松本氏はいう。そのためにはもう少しソフトの操作性や使いやすさの向上が必要だと考えている。「材料を納品してくれる会社や下部工、土工といった施工関係者のすべてが同じモデルを共有しながら、施工が一連で流れていくようにできればいいと考えています。今回は下部工施工会社に協力してもらい、施工の手順をもらって当社でモデルをつくり、それを見ながら一緒に打ち合わせをしました。下部工からも好評でした。今後は外部の関係者とモデルの情報を共有できるようにしたいと考えています」と松本氏は抱負を語る。

 丹羽氏は「今後BIM/CIMは普及すると考えられますので、社内でも広めていきたいと思っています。現場で使っていけば、 地形計測などにも活用できます。既存のソフトを使って最大限できることを探しています。今後はさらに生産性が向上する活用方法を考えていきます」。

 中川さんはBIM/CIMをきっかけに、材料や設計、施工の工法や手順など、発注者からコンサルタント、材料メーカー、協力会社まで、関係者がシームレスにつながるようになると良いという。「発注者にも施工の進め方は妥当かを確認していただけますし、検査もスムーズになります。現在、計画・設計段階からの3次元化というのも発注者と設計会社の方で進んでいると思いますが、今後は施工時には3次元モデルが用意され、施工会社としての色をそこに追加し、いろいろな関係者が共有することで同じモデルをどんどん色濃くしていければいいと思います」。

 まずは3次元モデルを導入してできることから取り組んでいくことでBIM/CIMの効果やメリットを実感してみる。そして徐々に活用の範囲を広げて、さまざまな関係者と情報を共有しながら、精度を上げていくことがBIM/CIM活用成功の秘訣だといえる。


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