建設物価調査会

発注者、受注者の連携によるICTフル活用で、工事管理の効率化・高度化を目指す



中日本高速道路株式会社 東京支社 秦野工事事務所
清水建設株式会社・岩田地崎建設株式会社特定建設工事共同企業体


新東名高速道路川西工事では、大規模土工の品質を確保しながら効率化するために、測量、図面、設計数量、施工、出来形管理、納品のすべてを3次元で行うICTフル活用工事に取り組んでいる。

発注者、受注者、協力会社が情報共有し、議論をしながら、3次元データの活用の幅が広がっていった。

新東名高速道路川西工事塩沢工区にて

大規模土工の管理を効率化する

 新東名高速道路は、神奈川県海老名市を起点として、東名高速道路と並走しながら愛知県豊田市へ至る約270㎞の高速道路。東京・名古屋・大阪の3大都市を結ぶ新しい大動脈として広域的な経済発展へ寄与し、災害時には東名高速道路の代替ネットワークとしての役割が期待されている。

 NECXO中日本東京支社秦野工事事務所管内の新東名高速道路川西工事は、神奈川県山北町向原及び川西地区の延長約2.6㎞。16年7月に着工し、2023年度の供用を目指す。現場は総盛土量約320万㎥、最大盛土高70mを超える高盛土・大規模重機土工事の塩沢工区と切土量約83万㎥、最大高低差約70mの大規模切土工事を行う向原工区の2工区。大規模な土工事の管理を高度化・効率化するためにICTフル活用工事に取り組んでいる。

 秦野工事事務所所長の上村信一さんは「これまでも新東名の工事では測量などにGNSS(高精度GPS)を使用してきましたが、ICTフル活用工事は初の試みです」。ICT土工やi-Constructionが推進され、世の中の流れが追い風になったという。

 松田工事区工事長の中村洋丈さんは「品質管理のレベルを担保しながら効率化して、生産性を高めるためにICTをフル活用していこうと受発注者間で協調して取り組んでいます」。

具体的には、
  ①ICTフル活用のための実施体制
  ②3次元データによる現場の可視化
  ③現場管理の効率化・高度化
  ④コミュニケーションツールとしての活用
  ⑤受発注者間の情報共有と実施環境の構築
  ⑥建設から保全~維持管理における活用
の6つのチャレンジを掲げている。

清水建設・岩田地崎建設JV川西工事副所長の藏重(くらしげ)幹夫さんは「議論を重ねる中で前向きな意見がどんどん出てきました。NEXCO中日本さん、協力会社、当社の技術スタッフの協力により、最先端のICT工事の現場になっています」。


ICT の専門チームを組織

 ICTフル活用工事を進めるにあたり、現場と本社、協力会社やベンダーの窓口として、ICT専門チームを現場に組織した。清水建設の若手中心のメンバーの中には、情報技術を学んだ新人もいる。ICT活用の発展には、土木だけでなく機械、電気、情報など様々な分野の人たちの協働が必要だ。

 川西工事ICTチームの石川七恵さんは「設計、測量、施工、検査・納品がスムーズに流れていくように協力会社とタッグを組みチームとして取り組んでいます」。従来のJVと協力会社という縦のつながりだけでなく、協力会社間の横のつながりを持たせることで各段階における3次元データのやり取りを円滑に行うことが可能になったという。


点群データの活用と現場の可視化

 3次元測量では、出来形、出来高それぞれに要求される精度によって、レーザースキャナーと3種類のドローンを使い分けている。点群データ共有システム「EverydayDrone」は、UAV測量のデータがリアルタイムにクラウド上にアップされる。ひとつの点に対してXYZ座標とRGBの色情報を持ち合わせる点群データは、重機の配置計画、土配計画などの施工計画に活用している。盛土量や切土量の算出も簡単に行うことができ、より具体的な検討が可能となった。点群データと設計モデルを重ね合わせれば進捗状況も確認できる。

 協力会社の丸磯建設は、自らドローンによるUAV測量を行い、3次元データ作成を内製化している。「工事が日々進んで行く中でスピード感が求められます。専任スタッフを配置しチームとして進めています」と丸磯建設関東支店土木部部長の川野豊さんはいう。

 3次元データを活用することで受発注者間のイメージの共有もスムーズに行える。施工後はドローンやレーザースキャナーを使って測量し、点群データと設計データを比較した出来形ヒートマップをつくり、従来現場における立会検査から、ヒートマップによる調書提出に変更した。さらに「日々蓄積されていく施工履歴を福井コンピューターと一緒に見える化するシステムを開発しました。3次元モデルの中に重機の種類、転圧の規定回数など施工に関する情報を入れています。さらに盛土材料のトレーサビリティに活用するなど、後々の維持管理にも目を向けて取り組んでいます」と川西工事ICTリーダーの池田昇平さん。 


3次元出来形管理(出来形ヒートマップ)
点群データを活用した土配計画

マシンガイダンスによる施工

 精度の高い3次元設計図は、重機のマシンガイダンスにも活用されている。現場事務所や詰所のPCから施工データを重機に転送し、オペレーターは重機内のモニターで位置情報を確認しながら作業を行う。丁張りや測量作業の省人化や重機近くの作業がなくなるため安全性向上につながっている。現在、マシンガイダンスのブルドーザー4台とローラー2台が稼働している。

 経験の浅いオペレーターでも正確な作業ができ、熟練者が使うとさらに施工精度とスピードがあがり、ガイダンスの利用価値が高まるという。また、車両の安全運行を管理するシステムはドライバーの安全意識向上につながっている。塩沢工区へ土を運搬するダンプカーに端末を搭載しリアルタイムの位置情報、運搬回数に加えて速度超過や急発進などが記録され、安全管理や優良表彰に活用されている。


VR の活用

 向原工区から土を運搬するベルトコンベアを架設する工事では、東名高速とクレーンの離隔がわずか70㎝と近接するため施工ステップのアニメーションを作成し、危険箇所を明示するなど、協力会社と事前に施工イメージを共有した。220tクレーンを実物大にモデル化し、ブームの角度やアウトリガーを張る場所なども3次元上で決定することができた。また3次元点群データから周辺道路を再現しドライバーの視点を動画にして地域住民や行政への説明や合意形成に活用した。VRは安全教育にも使われ、危険個所や作業手順を共有し、安全意識向上を図っている。


 個別検討会では、遠隔地のユーザーが同時にモデル空間に入ってVRを体験できる「VRネットワークシステム」を使い、本社専門部署で同種工事の施工実績のある経験者から施工指導を受けることもできた。現場に行かなくても、3次元設計データの中に入って自由に移動でき、リアルな検討ができることは3次元活用のメリットだという。


「将来的に自動化が進めば、オペレーターは在宅勤務でバックホーを操作することも可能になってます。現場に備えた定点カメラで取得した点群データなど、現場のリアルタイムの3次元情報を見ながら操作できる時代がすぐに来るのではないかと思っています。印鑑の代わりの電子承認やVRの会議など、将来の建設業の働き方についても皆さんと議論しています」と藏重さん。


マシンガイダンスバックホウによる施工状況
遠隔参加型 VR を活用した施工検討会

遠隔立会

 山北町と静岡県小山町を結ぶ全長約2.8㎞の谷ケ山トンネルは清水建設が開発した山岳トンネルの発破掘削を効率化する「ブラストマスター」や覆工コンクリートの自動打ち込みなど最新の工法を使い施工された。谷ヶ山トンネルは、演算工房のクラウドシステムを使い覆工厚や吹付け厚の出来形検査を遠隔立会で行っている。

 トンネル坑内では受注者職員がタブレットを使い計測値や映像データをリアルタイムに共有する。発注者が承認すると立会確認が完了し、次のステップにいける仕組みだ。クラウド上には履歴や写真なども格納され、出来形調書も自動で作成される。さらにNEXCO中日本の工事情報共有・保存システム「Kcube2」に登録される。発注者との時間調整などは、清水建設のビジネスチャット・社内SNS「WowTalk(ワウトーク)」を活用することで、スムーズな遠隔立会が行える。発注者側は工事事務所から現場まで往復2時間の移動時間が短縮でき、施工者側はデータ管理の自動化や写真整理の簡略化が図れる。

遠隔立ち合い(受注者側の状況)

受注者と発注者の情報共有

 受発注者間のデータの共有ではAutodeskのBIM360DOCSを活用し、図面管理や工事書類のファイルの共有、受け渡し、図面の指摘事項や承認のフローなどがひとつのクラウド環境上で行える。最終的には納品にも活用していきたいという。3次元データもGoogleChromeなどのブラウザ上で扱うなど、既存のソフトウェアを活用しながら取り組んでいる。情報共有は業務の効率化に大きく寄与している。

「検査の時にだけデータを見るのではなく、日ごろの工事管理からデータ共有することで、課題や次の工程がお互いにリアルタイムで見えてきて工事管理もスムーズにできます。検討も3次元データ上で確認するなど手戻りも減っています。」と中村さん。

情報の共有により、受発注者双方の業務を効率化しながら、コミュニケーションを活性化させている。コロナ禍においても工程会議をテレビ会議で行うなどスムーズな移行ができた。

契約図書や維持管理への展開

 今後は、契約図書としての3次元設計図や3次元による数量算出、BIM/CIMを維持管理にどのようにつなげていくか現場、支社、本社の専門部署で検討していくという。契約図書の仕様や契約項目に紐づく数量算出は、3次元データによる算出の内容や範囲を決めていくことが必要になる。モデルの作成に当たっても、3次元モデルの詳細度の設定やファイルフォーマットなど、維持管理につなげていくためのルール化が必要になる。

 「当社では最先端のICT技術やロボティクスを活用したi︲MOVEMENT(アイムーブメント)という高度な高速道路の保全マネジメントを目指しています。今後は、そこから逆算して保全に引き継ぐ建設段階のデータを検討していく計画です」とNEXCO中日本技術企画・開発課長の落合孝朗さんがいうように建設、保全の両者の視点からの議論が望まれる。

 ICT活用では、出来形管理や建機の自動化が注目されているが、発注者、受注者が協力しながら3次元データを活用し、すべてのプロセスへ展開していくことで工事管理の高度化、効率化が実現できる。