建設物価調査会

自ら試行し、3次元活用の価値を提案していくことが我々の役割



株式会社フジヤマ


株式会社フジヤマ 都市・地域創造部長 兼 事業開発営業担当部長 小林 鉄弥さん(左)
                    社会基盤整備部 次長 勝木 俊介さん(中)
                    空間情報部 部長代理 横山 虎男さん(右)

全国に先駆け、建設分野 のICT化と3次元データ活用を推進 し、 i-Constrction先進自治体のひとつとして注目されている静岡県。今回は、 県内トップの実績をもつ総合建設コンサルタント会社、株式会社フジヤマに今後の取り組みや課題についてうかがった。

CIM プロジェクト

 静岡県浜松市に本社を構える株式会社フジヤマは建設総合コンサルタントとして、測量・調査から情報整備、コンサルティングまで一貫した総合技術力を強みに地域社会の発展を支える社会基盤整備に貢献している。静岡県内でトップの実績をもち、主に国や県、市町などの公共団体から業務を受注し、東海4県、関東地方へも営業エリアを拡大している。

国土交通省は、2023年度からの BIM/CIM の原則適用を打ち出し、2021年度は直轄工事におけるすべての大規模構造物の詳細設計では3次元モデルの作成と納品が求められる。これを受け、フジヤマでは2020年に社内横断型のCIMプロジェクトチームを立ち上げた。

プロジェクトでは、主に国の業務を受注するための取り組みとして、CIM活用業務の事例収集を行い提案書のひな型を作成した。また、県や市町の業務では、3次元モデルの活用を提案し実施することで技術力をアピールし、今後の受注に繋げる取り組みを行った。今年1月には中間報告として活動の成果や進捗をまとめ、社内に共有した。

道路や構造物の分野では、CIM活用事例も多く、社内実績もある程度蓄積されてきた。今後は他の分野についても拡大していくという。2次元を3次元にする専門CADオペレーターを育成するのか、専門分野毎にCIM対応ソフトを使える設計技術者を育成したほうが良いのかなど、今後の業務消化体制も踏まえ検討していく。CIMモデル手法の活用として、県事業の道路設計において、地元説明会や用地幅の検証などを社内で3次元ソフトを使って取り組んだ。

分野ごとに使いやすいソフトを選定したが、詳細設計では、CIMソフトの操作性が悪く、実際にはできない作業もあったという。CIM ソフトやハイスペック PC は、機能や性能が日進月歩であるため、全社的に一斉に導入するのではなく、購入のタイミングを見極めながら整備をすすめているところだという。


自動化の課題と可能性

 メンバーが自らデータ作成などの作業を行うことで、CIM の可能性や課題が明らかになった。地元説明資料や概略・予備設計、工事用道路の詳細設計などは、計測から設計まで社内で対応できる。CIM プロジェクト責任者の横山虎男さんは「3次元計測は現場の状況、業務の目的に応じてUAV、UAV レーザ、TLS、MMS、実測を組み合わせてデータを取得してモデルを作成することが必要になる。今年度は、計測データと実測を組み合わせて必要な精度の確保と作業の効率化を目指し、実施業務での検証、検討を行うことで、他業務での利用など、社内、社外にも提案できれば」と話す。

維持管理では、調整池等の地下構造物の点検業務受注を見据えて、本社1階の駐車場で実証検討を行い、計測、点検、診断、データ管理までの一連の手法を検討した。損傷のAI判読の試行なども行い、課題や今後の進め方をまとめた。また、所属団体や協会での活動を通して情報収集を行い、社内への情報共有を図っていく。



 CIMプロジェクト責任者の勝木俊介さんは1年間のプロジェクトを振り返り「これまでは計画や設計の中で、2次元のCADソフトを使い設計図面を作成して数量を算出していくことがコンサルタントの作業の多くを占めていたが、仕組みが変わる中で、3次元化する作業を自らでできるようにしないといけないと感じました」という。プロジェクトメンバーには、さまざまな気づきがあり、今後の業務のあり方やCIMの将来像についても議論したという。人材育成の面でも大きな成果があった。

 設計ソフトの機能や性能の進化により、設計業務の一部自動化が実現されている。自動化により業務効率が上がる一方、技術者のオペレーター化が進行すると、ミスやトラブルに気づき、修正する技術力の低下が懸念される。当初から高機能な設計ソフトを使用している若手に対する知識や技術の育成が課題のひとつになっている



施工段階での CIM モデル

 BIM/CIMを浸透させ、建設業の業務効率化、生産性向上を実現するためには何が必要なのだろうか。小林鉄弥さんは「国が推進するBIM/CIMの仕組みを真に意義あるものにしなければなりません。それぞれの会社がCIM導入の理想を理解し、目的をもって進めていますが、その追求が全体最適につながりづらい合成の誤謬こそが課題」だと指摘する。

建設コンサルタントという役割の中で、どう対応していくべきか?それを探りに、先進的な取り組みで成功している県内の施工会社に、ICT重機を活用している現場を見せてもらったことがあるという。ICT重機を正確に動かすためには、精緻なデータが要求される。現場でトラブルが起こると、すぐに原因を追及してデータを修正し、フィードバックするという手順を繰り返し、ノウハウを蓄積している。こういった過程を目の当たりにして、施工会社との役割、ノウハウの違いを改めて認識したという。「われわれにはこれまで、数多くの計画・設計・点検・維持管理業務で蓄積した技術や深い知見という強みがあります。全体最適化を念頭に置きつつ、プロジェクトマネジャーとしての役割を果たすために、これまで蓄積した強みをさらに強化するツールという観点でBIM/CIM活用に取り組む必要がある」と小林さんは話す。

また、現場で働いている人材についても、強い衝撃を受けたという。「ICT 重機のデータ作成の担当者は、一見すると建設業とは無縁でまさしくデータを扱う IT のプロフェッショナルといった印象でした。今後は、こういった異業種の方々の力をいかに戦力にできるかが重要です。人材の採用や労働環境の整備も課題であると強く感じています」。



点群データを設計業務に活用

 静岡県は全国に先駆け、3次元点群データのオープンデータサイ ト「Shizuoka Point Cloud DB」を構築し、インフラの全プロセスにおける3次元点群データの利活用を促進している。同社でも、3次元計測機器により取得した点群データを、BIM/CIMをはじめ ICT 工事、各種設計業務に活用している。

横山さんは「当社でもさまざまな計測機器を持ち、県内では早くから取り組んできましたので、県のデータとともに計測機器を有効活用していきたい」という。点群データを活用することで作業の効率は高まってくるが、目的によっては精度を落としてしまうと正確な境界が分からず、権利関係に利用できないなどといったことが起きてしまう危険もあるため、利用目的を明確にしておくことが重要となる。

「道路の線形検討など、3次元データを使うことで効率化できることはたくさんあります」と勝木さんがいうように、計画・設計段階で3次元データを活用することの効果は大きい。完成イメージを関係者で共有できることも大きなメリットだ。3次元化することで、どの方向や角度からも形状を確認でき、事前に完成イメージを共有できれば、出来上がってからの不満の解消につながる。複雑な案件ではトラブルの改善にも役立つ。



3次元データ活用の価値を提案

 「県内 No.1の総合建設コンサルタント会社として、県内の建設業、さらには地域社会に貢献していくことが求められていますし、それを矜持にしています。これが当社のプレゼンスであり、顧客や社会からの期待に応えていくことが原動力になっています」と小林さんは力を込める。自ら試行し、3次元活用の価値を探して提案していくことが役割だという。

BIM/CIMの将来像を見据えて、社内の人材育成、設備や研究開発に投資し、トライアルの中で生産性向上につながるもの、実際にはうまくいかなかったことを発注者にフィードバックし、効果的であれば業務を受託して、利益を上げるという循環型コントローラーができる。自動化が進む中で、作業の範囲を増やし、時代の変化に合わせ、役割を変えながら社会に貢献していく。

組織の論理や利益を超えて社会の改善を目指す人たちが出てきて、イノベーションを起こせるような時代になった。建設コンサルタントの仕事の領域も、社会のニーズに合わせて変化が求められている。オールジャパンで概念や仕組みが変われば、建設コンサルタントの仕事も新しい領域にシフトしていくことになる。同社グループは事業者として都市計画事業に参画するなど、新たな事業にも積極的に取り組んでいる。商社などこれまでと違う領域の企業と組んで新しいことをすることも増えている。

これまでの仕組みや考え方を変えるのは簡単ではないが、新たな技術をきっかけにさまざまな変化が起こりつつある。