国内の建設工事の統計資料をみると、2024年4月の公共工事請負額は全国で前年同月比18.8%増(建設業保証会社)、2024年3月の新設住宅着工戸数は、貸家、持家及び分譲住宅ともに減少したため、全体で前年同月比12.8%減少、民間非居住建築物着工床面積では店舗、工場及び倉庫が減少したが、事務所が増加したため13.5%増(国土交通省)となっている。一方、主要資材の需要動向は、小形棒鋼が3月の国内出荷量で前年同月比9.6%減、H形鋼が14.1%減(日本鉄鋼連盟)、生コンが4月の東京17区出荷量で16.7%増(東京地区生コンクリート協同組合)、アスファルト混合物が3月の東京地区出荷量で8.7%増(日本アスファルト合材協会)となっている。
東京地区の主要10資材の価格動向は、H形鋼、生コン、再生アスファルト混合物、600Vビニル絶縁電線の4資材が上伸、異形棒鋼、セメント、再生砕石、コンクリート型枠用合板、配管用炭素鋼鋼管(ガス管)、軽油の6資材が横ばい、下落した資材はなかった。
【H形鋼】 メーカー各社の値上げに加え、流通各社は自社の人件費や物流費などの流通コストの上昇分も含めた価格転嫁を進めたことで、小幅ながら1年8カ月ぶりに上伸。目先も強基調の見通し。
【生コン】 4月に入り価格交渉が本格化する中で、輸送能力の低下を懸念する需要家は、製造・輸送コスト増加分の価格転嫁に一定の理解を示し、値上げが浸透。協組は現行価格を維持する構えであり、先行き、横ばいの見通し。
【再生アスファルト混合物】 メーカー各社は、原材料のストアス価格の上昇による製造コスト増加を販売価格に転嫁すべく売り腰を強め交渉。需要家が一定の理解を示したことで、値上げ額の一部が浸透した。需要家は度重なる値上げに慎重な姿勢で、先行き、横ばいの見通し。
【電線】 高圧ケーブルは依然として需給がひっ迫しており長納期化は変わらず。メーカー各社は主原料の高騰を受け、値上げを実施。流通各社も採算確保に向け交渉を継続し、値上げ額の一部が浸透した。目先、横ばいの見通し。
【異形棒鋼】 横ばい。商いが盛り上がりを欠く状況下、需要家の購入姿勢は厳しく市況底上げには至っていない。鉄スクラップは依然として高値圏で推移しており、物流費や人件費の上昇による採算悪化を回避したいメーカーの売り腰はさらに強まるとみられ、目先、強含みの見通し。
【セメント】 横ばい。メーカー各社は現行価格の維持に注力する構えだが、一部メーカーで需要減少による採算悪化の改善や設備投資費用の確保などを理由とした値上げを表明。他メーカーの動向が注目される。先行き、横ばいの見通し。
【再生砕石】 横ばい。メーカー各社は、輸送コスト増加分を価格転嫁したい意向にあるが、工事の利益確保を優先する需要家の購入姿勢は厳しく、現行価格の維持が精いっぱいの状況。先行きも横ばいの見通し。
【コンクリート型枠用合板】 横ばい。流通筋は、採算確保のために価格を底上げしたい意向だが、実需に乏しい状況下、売り腰を強められずにいる。目先も横ばいの見通し。
【配管用炭素鋼鋼管(ガス管)】 横ばい。高炉メーカー各社は、エネルギーコストなどの高騰を理由に3月受付分から10%の値上げを実施。流通筋は、これまでの値上げ未転嫁分を含めた価格浸透を進めるべく交渉するも、採算悪化を懸念する需要家の購入姿勢は厳しい。目先も横ばいの見通し。
【軽油】 横ばい。歴史的な円安進行により原油調達コストは増加したが、補助金により元売り各社の実質仕切価格は小幅な値動き。原油相場は不透明な状況が続くものとみられるが、5月以降も補助金が継続されるため、目先も横ばいの見通し。