建設物価調査会

コラム 第1回 IFCとは何か

BIMにおける「情報表現の共通ルール」を理解する



はじめに

BIM の活用が広がるにつれて、「IFC」という用語を目にする機会が増えています。IFCは、設計情報の施工者との共有、発注者への成果の納品、異なるソフトウェア間の情報連携などに用いられることがあります。


一方、実務では「IFCを使えば、どのソフトウェアでも同じように扱えるはずだ」「IFCは3次元形状を渡すためのものだ」「BIMの納品では、とりあえずIFCに対応していればよい」といった理解も見られます。では、IFCとは、本当にそれだけのものなのでしょうか。


第1 回では、IFCそのものが、BIMにおいてなぜ必要とされるのか、どのような情報を表すために使われるのか、実務上どのような意味を持つのかを整理します。


なお、建築分野では「BIM」、土木分野では「BIM/CIM」という用語が用いられていますが、本稿では、特別に区別する必要がある場合を除き、建設分野で扱う情報全般を対象とするものとして「BIM」と表記します。


IFCとは何か

IFCとは、Industry Foundation Classes※[1] の略称です。buildingSMART International※ [2]によって開発され、継続的に拡張・維持されています。IFCは、特定のソフトウェアや企業に固有の考え方に依存せず、建築物や土木構造物に関する情報の種類、意味、構造および相互の関係を表現するための共通ルールを定めた標準です。ISO 16739-1:2024※ [3]として国際規格になっています。

IFCの目的は、単に3次元形状を表示したり、異なるソフトウェア間で形状を受け渡したりすることではありません。建設プロジェクトに用いる情報を、関係者、業務段階、および使用するソフトウェアが異なる場合でも、可能な限り共通の意味で理解し、利用できるようにすることです。


IFCが表現する対象には、建築物や土木構造物を構成する部材、空間、設備、線形などがあります。それぞれの対象について、名称、分類、材料、性能、数量などの情報に加え、他の対象との位置関係、構成関係、接続関係などを表現できます。3次元形状も、対象の形状、大きさや位置を表す情報の一つとして扱われます。


以上を踏まえると、IFCの共通ルールは、BIMに含まれる一つ一つの対象について、「それが何であるか」「どのような情報を持つか」「他の対象とどのようにつながっているか」を、異なるソフトウェア間で受け渡す場合でも、関係者が可能な限り共通の意味で扱えるようにするものです。IFCを、3次元形状を受け渡すためのファイル形式としてのみ捉えることは適切ではありません。


なぜ共通ルールが必要なのか

建設プロジェクトでは、多くの関係者が、それぞれ異なる目的で情報を利用します。発注者は、事業内容の説明、品質の確保、維持管理への引き継ぎのために情報を利用します。設計者は、設計意図の伝達、設計内容の整合性確認、図面作成、数量算出、協議資料の作成などに情報を利用します。施工者は、施工手順や仮設計画の検討、干渉確認、出来形管理、資材調達などに情報を利用します。維持管理者は、完成後の点検、補修履歴の管理、設備更新、長期的な資産管理などに情報を利用します。


これらの情報は、関係者ごとに個別に利用されるだけではありません。設計段階で作成された情報は施工計画や数量確認に利用され、施工段階で更新された情報は完成後の維持管理に利用されます。このように、各業務段階の成果が後続する業務の基礎となるため、同じ建築物や土木構造物に関する情報を、関係者や業務段階の間で共有し、引き継ぐ必要があります。


一方、各関係者は、それぞれの業務に適したソフトウェアを用いて情報を作成し、管理し、利用しています。測量、構造解析、線形計算、積算、施工計画、維持管理など、業務分野ごとの目的に応じたソフトウェアが使用されており、一般に、それぞれ独自のデータ構造やファイル形式によって情報を保持しています。そのため、関係者や業務段階の間で情報を共有し、引き継ぐ際には、異なるソフトウェア間で情報を連携する必要が生じます。


異なるソフトウェア間で情報を連携する場合、それぞれのデータ構造やファイル形式の違いに応じた変換が必要です。この変換によって、あるソフトウェアで保持されている情報を、別のソフトウェアで読み取れる形式に置き換えることができます。


しかし、ファイル形式を置き換えるだけでは、変換する情報の種類や意味、情報同士の関係を、変換元と変換先でどのように対応させるかは定まりません。個別の変換ごとに対応方法が異なれば、同じ情報であっても、ソフトウェアによって異なる意味で扱われる可能性があります。そのため、異なるソフトウェア間で情報を連携するには、データを変換する方法だけでなく、「何を表しているのか」「その情報がどのような意味を持つのか」「他の情報とどのような関係にあるのか」を共通に解釈するためのルールが必要です。


情報の意味や構造を一致させる方法として、すべての業務で同じソフトウェアを使用することも考えられます。同じソフトウェアの内部であれば、共通のデータ構造に基づいて情報を扱えるためです。しかし、建設プロジェクトにおけるあらゆる業務や利用場面に、一つのソフトウェアだけで対応することは困難です。


そのため、使用するソフトウェアが異なることを前提として、建設プロジェクトに用いる情報を可能な限り共通の意味と構造で表現できるルールが必要です。そのような共通ルールを建設分野の標準として定めたものがIFCです。


BIMにおけるIFCの位置付け

情報の解釈のずれは、使用するソフトウェアの違いによって生じるだけではありません。BIMの利用場面では、同じ建築物や土木構造物に関する情報であっても、関係者の立場、専門分野または利用目的の違いによって、着目する内容や受け取り方に差が生じる可能性があります。


例えば、同じ鉄筋に関する情報であっても、関係者によって着目する内容は異なります。設計者は、鉄筋の径、材質、配置、定着、継手、構造上の役割などを確認します。施工者は、加工形状、組立手順、施工性、数量、継手位置、干渉の有無などを確認します。発注者は、設計条件への適合、品質、数量、完成後の管理に必要な情報などを確認します。


このように、同じ鉄筋を対象としていても、情報の名称、意味、単位、対象範囲、他の部材との関係が明確でなければ、関係者ごとに異なる解釈をする可能性があります。IFCでは、鉄筋の種類、属性、数量、配置される部材との関係などを共通ルールに従って表現することで、関係者間で情報の意味を確認しやすくします。


ただし、IFCは、個々のプロジェクトで、どの情報を、何の目的で、どの程度の詳細さで受け渡すかまでは定めていません。これらは、プロジェクトごとに情報要求として事前に明確にする必要があります。つまり、情報を作成する側と受け取る側が、IFCにおける情報の表現方法や意味を理解していなければ、同じIFCデータを扱っていても、解釈が一致しない可能性があります。


BIMにおいてIFCは、プロジェクトごとに定めた情報要求を、関係者が共通に理解できる意味と構造で表現するための標準として位置付けられます。情報要求を明確にし、関係者がIFCの表現方法を理解したうえで情報を作成・確認することにより、作成する側と受け取る側との間に生じる解釈のずれを少なくすることができます。


IFCで表現される情報

IFCでは、建設プロジェクトに用いる情報を「オブジェクト」「属性」「関係」の三つの観点で表現します。

「オブジェクト」は、建築物や土木構造物に関する対象を一つの単位として表します。例えば、建築物、道路、橋梁などの構造物全体のほか、空間、線形、壁、柱、床版、橋脚、設備機器などが該当します。オブジェクトは、IFCにおける情報表現の中心となります。IFCでは、各々の対象をオブジェクトとして表し、その形状や性質を属性によって示すとともに、他のオブジェクトとのつながりを関係によって表現します。


「属性」は、そのオブジェクトの形状、性質、用途などを表します。ここでは、形状もオブジェクトが持つ属性の一つとして扱います。形状は、対象の位置、大きさ、向き、外形などを表します。例えば、柱であれば断面寸法や高さ、道路や線形であれば中心線の位置や形状、縦断・横断方向の構成などが該当します。このほか、名称、分類、材料、性能、数量、コスト、耐用年数、維持管理要件なども属性として扱います。これらは、情報の種類に応じて、オブジェクト自体の属性、形状表現、属性セット、数量セット、分類、材料など、それぞれに適した方法で表現されます。


「関係」は、そのオブジェクトが他のオブジェクトや空間、階層、分類、システムなどと、どのようにつながっているかを表します。例えば、ドアがどの壁に取り付いているか、部屋がどの階に属しているか、設備機器がどの系統に含まれるか、部材がどの構造物を構成しているか、といった関係が該当します。


このように、IFCでは、対象そのものをオブジェクトとして表し、その形状や性質を属性として持たせ、他の対象とのつながりを関係として表現します。この三つを組み合わせることで、その対象が何であり、どのような特徴・性質を持ち、モデル全体の中でどのように位置付けられているかを記述できます。


以上の内容を、「オブジェクト」「属性」「関係」の三つに分けて整理すると、次の表のようになります。


表 IFCにおける情報表現の三つの観点

情報表現内容実務上の意味
オブジェクト建築物、道路、橋梁、空間、線形、部材、設備など、個別の情報単位として扱う対象情報が何を対象としているかを示す
属性形状、名称、分類、材料、性能、数量、コスト、維持管理に必要な情報など対象の形状、性質および利用に必要な情報を示す
関係空間構造への所属、部材間の接続、集約、包含、システムへの所属などモデル全体の構造の中におけるオブジェクトの位置付けを示す


IFCの主なバージョンと選び方

ソフトウェアからIFCを書き出す際には、IFC2x3、IFC4、IFC4.3など、複数のバージョンが選択肢として示されることがあります。各バージョンでは表現できる対象や内容が異なるため、どのバージョンを選べばよいのか分かりにくいことがあります。IFCのバージョンは、建設分野で扱う情報や利用範囲の拡大に対応して、段階的に改訂されてきました。以下では、IFC2x3、IFC4、IFC4.3の主な違いを整理します。

IFC2x3※[4]は、長期間にわたって実務で使用されてきたバージョンです。建築分野を中心としたオブジェクト、属性、関係および形状を表現するための仕組みを備えています。


IFC4※[5]は、IFC2x3を見直し、形状、材料、設備、作業などの表現方法を追加・変更するとともに、オブジェクトの種類や関係を表すデータ構造を拡張したバージョンです。


IFC4.3※[6]は、IFC4を基礎として、線形、道路、鉄道、橋梁、港湾など、インフラ分野を表現するためのオブジェクトやデータ構造を追加・拡張したバージョンです。ISO 16739-1:2024は、IFC4.3 ADD2(版番号4.3.2.0)に対応しています。


現在、IFC2x3、IFC4、IFC4.3への対応状況は、ソフトウェアによって異なります。IFC4に対応するソフトウェアが増え、一部ではIFC4.3への対応も進んでいますが、IFC2x3に対応するソフトウェアや既存の運用も多いため、IFC2x3も引き続き使用されています。そのため、IFCのバージョンは、技術的な新しさだけでなく、発注者の要求、必要な情報の表現可否、使用するソフトウェアの入出力対応、受け渡した情報の確認方法を踏まえて選択する必要があります。


国内のBIM施策におけるIFC

日本では、国土交通省を中心にBIMや BIM/CIMの活用が進められています。国土交通省は、BIM/CIM推進委員会※[7]、建築BIM推進会議※[8]の資料をはじめ、実施方針、基準、要領、ガイドラインなどを公開しています。実務で参照する際には、その時点の公式情報を確認する必要があります。


土木分野では、BIM/CIMモデルの電子納品に関する要領において、構造物モデルの受け渡しにIFC形式が用いられてきました。この場合、IFCだけを納品するのではなく、モデルを作成したソフトウェアのオリジナル形式と併せて納品する方法が示されています。

建築分野では、BIMを活用した建築確認において、BIMデータから出力したIFCデータをビューアで表示し、形状の把握や図書間の整合性確認などに利用する取り組みが進められています。この運用では、IFCデータとPDF形式の申請図書を組み合わせて利用することが想定されています。


このように、IFCの用途は一つではありません。成果品の受け渡し、確認・審査、関係者間の情報共有など、利用目的によって、IFCで必要となる情報や、併用する資料などが異なります。そのため、実務でIFCを使用する際には、適用する制度や要領を確認したうえで、利用目的、受け渡す情報およびその確認方法を明確にする必要があります。


まとめ

IFCを理解するうえで重要なのは、IFCを単なる中間的な出力形式や、3次元形状を受け渡すためだけのファイル形式と見なさないことです。IFCは、BIMで扱う建設プロジェクトに用いる情報の種類、意味、構造および相互の関係を、特定のソフトウェアに依存せずに表現するための共通ルールを定めた標準です。

この共通ルールに基づいて情報を表現することで、関係者や業務段階、使用するソフトウェアが異なる場合でも、情報の内容を確認し、共有し、引き継ぎやすくなります。また、プロジェクトごとに定めた情報要求をIFCによって表現することで、情報を作成する側と受け取る側との間に生じる解釈のずれを少なくすることができます。


ただし、IFCを使用するだけで、異なるソフトウェア間の情報連携やBIMの作成・運用に関する課題がすべて解決されるわけではありません。どの情報を、何の目的で、どの程度の詳細さで受け渡すかを事前に明確にし、元となるモデルの品質を確保したうえで、その内容をIFCの共通ルールに従って表現する必要があります。


実務でIFCを使用する際には、適用する制度や要領、利用目的、必要な情報、使用するIFCのバージョン、ソフトウェアの入出力対応および受け渡した情報の確認方法を整理する必要があります。IFCは、これらの条件を踏まえて用いることにより、BIMにおける情報の共有、引き継ぎおよび継続的な活用を支える役割を担います 。


※[1] https://technical.buildingsmart.org/standards/ifc/

※[2] https://www.buildingsmart.org/

※[3] https://www.iso.org/standard/84123.html

※[4] https://standards.buildingsmart.org/IFC/RELEASE/IFC2x3/TC1/HTML/

※[5] https://standards.buildingsmart.org/IFC/RELEASE/IFC4/ADD2_TC1/HTML/

※[6] https://standards.buildingsmart.org/IFC/RELEASE/IFC4_3/

※[7] https://www.nilim.go.jp/lab/qbg/bimcim/committee_parent.html

※[8] https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/kenchikuBIMsuishinkaigi.html