建設物価調査会

関商工でドローン実習
青協建設の卒業生が母校で指導
i-Construction2.0の社会実装と地域循環型の人材育成

 

関商工建設工学科と青協建設の皆さん(ドローンで撮影)

ドローン実習の講師を務めた
青協建設株式会社土木部の技術者
(左から)チーフマネージャー 浅野 克弥さん、
     担当部長 小森 明弘さん、
     木村 優花さん、林 千里さん
関市立関商工高等学校 建設工学科 辻 藍 先生

少子高齢化に伴う労働力不足は深刻で、特に地方における担い手確保は大きな課題だ。学校と地域の企業が協力して新たな技術をとおして建設業の魅力を伝える取り組みが始まっている。ドローン等のICT実習や現場見学会は、次世代の技術者を育てるだけでなく、建設業のイメージそのものを塗り替えようとしている。岐阜県関市立関商工高等学校(以下、関商工)の建設工学科1年生を対象としたドローン体験実習授業を取材した。

 

一人ひとりがドローン操作を体験

 

 2月下旬、朝のグラウンドは息が白くなる寒さだった。この日は、授業の一環として関商工建設工学科1年生の半数にあたる19人が参加し、一人ひとりがドローン操作を体験した。事前に室内で軽量トイドローンを操作する練習もしてきた。最初に手を挙げたのは、田腰唯大さん。ゲームをするように慣れた手つきでコントローラーを操作してドローンを飛ばすと空を見上げる生徒たちから歓声が上がる。操作を体験した19人の反応は、驚きと興奮に満ちていた。髙井惟愛さんは「以前練習した機体(小型トイドローンTello)よりも反応が良く、モニタでいろいろなところを見られて楽しかったです」。新井健斗さんや安藤陸人さんは「室内での小型トイドローンとは全然違う。こういう実習や見学会は本当に楽しい」。

 

 ドローンを操作した小島玲恩さんは「扱いやすいし、操作がスムーズで動きが速い」。小林凌久さんも「機体性能が良くて自分でも欲しいと思いました。これを活用して測量しているのは凄い」。

 

 関商工の建設工学科は、2年生から建築類型と土木類型に分かれる。1年生の段階で共通してドローンやCAD に触れることで、最新技術への関心を高め、意欲を持って専門課程へと進んでいく。2年生から土木類型に進むと本格的なドローン測量の実習も行われる。そのため、今回の実習は、すべての生徒がドローンに触れ、操作することに主眼が置かれている。

 

 

母校へつなぐ技術のバトン

 

 ドローンの実習を支援しているのが青協建設だ。岐阜県関市に拠点を置く青協建設は、土木、建築、そして地域の防災までを担う総合建設会社だ。同社の強みは、ICT 活用の全工程を社内で一貫して対応できる点にある。2013年度、東海環状自動車道の工事で初めてICT 施工に着手して以来、2015年には測量用ドローン(UAV)や3次元解析ソフトウェアをいち早く導入。現在は、写真測量用ドローンに加え、レーザーで空間情報を取得するドローン搭載型レーザースキャナや地上型レーザースキャナを併用し、精緻な3次元データを取得し、3次元設計データの作成を行っている。この正確な3次元データをICT 建機による施工に活用し、省力化と効率化、安全性の向上を図っている。

 

 こうした先進的な取り組みを青協建設は地域貢献として教育現場へ還元している。本社近くの関商工建設工学科との連携は、すでに10年近い歴史を持つ。2017年、学校側からの「ドローン測量を教えたい」という要望に応え、青協建設はドローンを寄贈。さらに、卒業生を中心とした同社技術者が講師として操作指導を続けてきた。2024年10月には、最新の解析ソフトも追加で寄贈している。

 

 関商工建設工学科の辻先生は、この連携の意義をこう語る。「国土交通省が進めているi-Construction 2.0を生徒たちに知ってもらえるように授業をしています。ドローン測量をして3Dモデルを作成する実習は、青協建設さんの協力があってこそ成り立っています。卒業後も地域に残る生徒が多く、将来的に地域のインフラを支える存在になってほしい。それが安全で豊かな地域の持続性に繋がっていきます。デジタルに親しんでいる世代ですから、PC 操作が得意な若手として地域の建設業で活躍できるはずです」。辻先生は、現代の教育の難しさについても触れる。「生徒たちは最初から3D が当たり前。しかし現状の仕事では、2次元図面から3D モデルを作成することも多いので、平面図や断面図から立体をイメージできるような基礎的な指導も大切にしています」。

ドローン操作の手順を説
配布された手順書を見ながら熱心に説明を聞く生徒たち
生徒一人ひとりが実際に操作を体験
生徒が操作したドローンが空高く…

 

女性技術者を増やす取り組み

 

 この取り組みの成果が、青協建設で働く若手技術者たちの存在だ。現在、社内で3次元測量やデータ解析を担っているのは、関商工の卒業生である女性技術者たちだ。木村優花さんは「学校でのドローン実習で興味を持った」ことが入社の決め手だった。林千里さんも「ドローンを見た時から面白そうだと思い、仕事でもやってみたいと感じた」と振り返る。

 現在、彼女たちはドローン搭載型・地上型のレーザースキャナを使いこなし、現場での測量、点群処理、設計データの作成、出来形管理までを担っている。木村さんと林さんはドローンの国家資格も取得している。さらにICT アドバイザー(2026年国土交通省中部地方整備局登録)として、見学会や実習の講師、現場の助言や技術支援を行っている。

 

 木村さんは、現在、岐阜県建設業協会の女性専門委員会・副委員長としても活動中だ。「今は社内でドローンを使う女性技術者が4人になりました。専門委員会では、地域の建設業に女性技術者を増やす取り組みを進めています。あわせて、若い技術者を増やすこともテーマとしています。生徒たちは建設技術者というと現場監督(施工管理)をイメージしがちですが、実際には測量や設計など、いろいろな分野の仕事があります。実習を通して、そうした職域の広さを知ってほしいですね」。林さんも、後輩たちへの指導に喜びを感じている。「生徒たちがドローンに興味を持ってくれるのは嬉しいですね。自分が習得した技術を生かして、母校に恩返しできる良い機会になっています」。

 

さらなる進化と防災への活用

 

 昨年、青協建設は、新たに最新式のドローンを導入した。今回のドローン購入にあたっては、岐阜県建設業協会の補助金制度を活用。その要件である「防災活用」に基づき、昨年10月に山中に取り残された要救助者(人形)をドローンで遠隔捜索する実証を行った。これを見学した関商工の生徒たちは、建設業が災害時に真っ先に駆けつけ、地域を守る存在であることを肌で感じたはずだ。

 

 青協建設の浅野克弥さんは、機材維持の現実についても語る。「ドローンは1年に一度の定期点検が義務付けられており、進化も非常に速い。性能が上がり価格が下がる一方で、古い部品のストックがなくなれば買い替える必要が出てきます。高性能機種はやはり高価ですので、補助金は非常に助かります。他社でも導入が進んでいるからこそ、当社は測量だけでなく、設計などのより広い活用を追求しています」と前向きだ。

 

地域を支え、未来に繋ぐ

 

 まだ高校1年生(取材当時)なので、将来の具体的な進路を決めている生徒は少ないが、中には明確な将来像を描く生徒もいる。尾村世里南さんは「父が建設会社を経営しているので、建築を学ぶためにこの学校に入りました」と前を向く。佐藤璃奈さんは 「将来は土木の現場監督を目指しています。今はクレーンに乗ってみたい」と頼もしい。

 

 青協建設の小森明弘さんは、社員の約半数が関商工出身ということもあり、より広い視点で生徒を見守っている。「建設業に就職してほしい気持ちはもちろんありますが、ドローンは今や多くの分野で活用されています。どのような進路に進むにしても、こうした先進技術に触れることが、人生の選択肢を増やすきっかけになればいい」という。

 

 青協建設と関商工の取り組みは、単なる機材の寄贈だけではなく、卒業生がプロとして母校を訪れ、後輩たちに「仕事の楽しさ」と「技術の可能性」を伝える。学校、地域の企業、生徒による「技術の地産地消」とも言える地域一体型の人材育成の好循環が建設業を維持し、発展させることに繋がっている。

※青協建設には、以前本誌特集記事でもご協力いただいています。詳しくは当会ホームページをご覧ください。

建設物価2026年7月号