国内の建設資材は、原材料価格の影響が大きい一次製品から二次製品に値上げの勢いを移しながら価格転嫁が進展している。販売側の強い危機感の高まりに加え、適切な価格転嫁を求める行政、需要家の意識変化が重なったことで交渉は一気に進み、建設物価6 月号以降、多くの資材で最高値を更新した。
一方、ロシアのウクライナ侵攻直後に急騰した鉄鉱石、鉄スクラップ、原油等の国際商品相場は、欧米の中央銀行による金融引き締めに伴う景気後退懸念、中国のロックダウン後の内需不振などから下落し、これまでの急騰分を一気に吐き出すなど主な原材料の動向は様変わりした。
建設工事で使用される資材の総合的な価格動向を示している建設資材物価指数(7月)は、建設総合全国平均で134.1 と前月比1.4Pt の増加。2020 年8 月から24カ月連続プラスとなり最高値を更新した(図表-1 参照)。特に土木部門はコンクリート製品等の値上がりが大きく寄与し、131.0 と前月比2.1Pt 増加した。
建設資材価格の上昇気運が表れはじめた2020年6月号(東京)時点と比較すると、鋼材、木材、石油関連製品で大幅に上伸したほか、アルミサッシ、ガラス等の建築関連資材、配管用炭素鋼鋼管、硬質ポリ塩化ビニル管等の設備関連資材など幅広く値上げが進展している。
資材別に見るとコンクリート型枠用合板は、現地の原木不足等による入荷減の影響で依然として市中の品薄感は解消されておらず、19 カ月連続で上伸し最高値を更新、ビル用アルミサッシは約15 年ぶりに値上がりするなど各種資材メーカーの価格改定が急速に浸透している(図表-2 参照)。
また、5 月の調査リポート以降、目立ったのは生コン、アスファルト混合物で、価格転嫁が全国各地で進み建設物価8 月号では多くの都市で上伸した(図表-3参照)。一方、異形棒鋼、電線は鉄スクラップ、銅等の原料価格が弱基調で推移していることか、これまで値上げを受け入れてきた需要家の購入姿勢は厳しさを増しており最高値から一転、下落に転じる資材もあらわれている。
建設物価主要資材40 品目の気配を3 カ月前と比較すると「強含み」が21 品目から7 品目に減少、「横ばい」は15 品目から27品目に増加しており、騰勢に一服感が見られる。異形棒鋼は、先安観から流通筋の販売競争が広がり始めており、木材は、新設住宅着工数が前年同月を下回るなか市況に天井感が台頭してきている。
しかし、セメント、板ガラス、硬質ポリ塩化ビニル管等はメーカーがさらなる値上げを表明しており、値上げの到達点を探る交渉は今後も続くとみられる。建設資材の価格を取り巻く状況は、原料や需給の動向にもより強弱入り混じっているが、現状の価格転嫁ではコストアップ分を吸収できないとして値上げ交渉を継続している資材は多い。資材・地域ごとに背景や要因の異なる価格変動が続くため、なお一層の注目が必要となる。
注1. 主要資材の最新市況動向は、当会ホームページで毎⽉18 ⽇(⼟⽇祝⽇の場合は翌営業⽇)に更新しています
注2. Web 建設物価では資材の価格推移グラフや指定した時点間での価格変動が容易に確認できます
注3. 建設資材物価指数は、建設資材の総合的な価格動向を⽰し、分析・観察など幅広く活⽤されています
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