建設物価調査会

文化および風習の違いを教えることが肝要

株式会社菅工務店(型枠工事業)
兵庫県尼崎市

2015年から始まった国土交通省の「外国人建設就労者受入事業」や2017年11月1 日に施行された「技能実習法」により、建設分野における外国人が増加している。言葉や文化、習慣の違いを超えて外国人材が活躍できるようにするためには、受け入れ企業はどのような準備や対応が必要だろうか。ベトナム人技能実習生12人を受け入れている尼崎市の株式会社菅工務店にお話をうかがった。

株式会社菅工務店 専務取締役
菅 正文さん(右側)

同社 取締役
古川 敦夫さん(左側)

11年前から受け入れを開始

 菅工務店は型枠専門工事業者で従業員数150人、うち12人が外国人技能実習生(以下、実習生という)。11年前から実習生の受け入れを開始し、1 期生から3 期生までは中国から、その後はベトナムから受け入れを行っている。日本語を覚えた仲間同士で教えあえるように、できるだけ同じ国から受け入れるよう心掛けている。

 とはいえ、11年間ずっと受け入れているわけではない。2 期生から3 期生の受け入れまでは3 年の期間が空いているが、その後は毎年連続で受け入れを行っている。今年の夏も実習期間を無事に終えた3 人が母国に帰る予定とのことだ。

<菅工務店本社>

採用の基準は体格とやる気。そして最後は目で決める

 受け入れのきっかけは足場組合からの紹介。最初は戸惑いもあったものの、労働条件など話を進めていく内に、受け入れる意欲がわいた。「技術者の高齢化や若手の職人不足による、就労環境の問題を実習生の受け入れで少しでも解消できれば。また、若い労働力を入れることで多くの班を編成することができ、現場の助けになるのではないかと思った。」と菅さんはいう。

 組合からの紹介で、すぐに中国で面接を行い1 期生として5 人を受け入れることになった。初回の採用時は会長自らが現地に赴いて面接を行い、言語能力などを確認した。実際に会ってみると履歴書に書いてある内容と違う人もいたが、仕事に対する姿勢や誠意、なによりやる気がある人物を選考したという。「型枠大工の仕事はチカラ作業が伴うから、やはり重労働に耐えられるしっかりとした体が必要な資本となる。きゃしゃな子やったらやっぱりアカン」と古川さんはいう。

 また、責任感を持って働いてもらうため20~30歳までの妻帯者の人を選ぶそうだ。そして最後は目をみてしっかりと見定める。「目を見ればわかるよ、どんな子かは。そりゃあだいたいのところよ。人間的にどうかとね」とは菅さんの弁。

実習生はカバン1 つでやってくる

 実習生たちは体とカバン一つ(服や常備薬などのみ持参)で来日するため、組合から配られた資料をもとに古川さんがお箸や皿などの細かな物から家財道具一式に至るまで、すぐに生活ができるようすべて準備した。本社の4 階に2 LDK の2 部屋があり、以前は外部に貸していたが、1 期生を受け入れる際に寮に変更した。寮費と光熱費は実習生の負担である。

 その後も、実習生たちに足りないものはないかを確認し、その都度買い足してあげた。実際に要望があったもので印象に残っているのは麺棒。中国では北部と南部で食文化が異なり、北は小麦粉を練った饅マン頭トウや麺類を、南側は米を主食としているそうだ。同社で迎えた人たちは北部の出身だったのだ。「大容量の薄力粉を買ってほしい」と言われ、市内を探しまわり20kg という大袋を追加で買ってあげると、小麦粉を練って麺棒で伸ばし、蒸したパンのようなものを自分たちで作っては食べていた。

 「中国人は当番制で全員分の食事を作ったりとみんなで節約しようという感があったが、ベトナム人は自分の分は自分でと各々で食事を作るなど節約よりも好きなものと文化の違いを感じた。4 期生からのベトナム人たちは、日本と同じ米文化のため追加要望はあまりないが、やはり食べ慣れたものを日常で食べられるようにしてあげたいね」とは古川さんの心遣いだ。

資材センターで現物を見せる

 来日して最初の1 ヶ月は、国内にある組合で日本の習慣、スーパー・銀行の使い方、交通ルールなどを学ぶ。その後会社に配属され、現場の道具、安全、材料の名前の講習を独自に行っている。特に型枠大工はコミュニケーションが重要な職種である。使用する道具の種類も多く、辞書に載っていない言葉や略称も現場では飛び交う。そのため主要資材の一覧表を自社で作成し、1週間基本資材についての勉強を行う。その後、資材センターに赴き、「この資材は?」「セパレーター!」などの軽いテストを交えた学習を行う。

 実際の現場に出る前に資材整理を最初の仕事とし、これから使用していく資材に触れて覚えてもらう。また、カリキュラムとは別にこの地域の避難所や安いスーパーの場所、ゴミの出し方を教えるなど日常のサポートも日々行っているという。

<資材センター>
<実際の研修の様子>
<資材に触れて覚える>
<主要資材の一覧表の一部>
外国人実習生が分かりやすいように平仮名とカタカナで表記

受け入れ当初、日本語は正直あまり話せない

 半年間現地の日本語学校に通っていても日本語はほとんど話せないのが現状である。現場に入ったら協力会社と一緒に仕事を行わなければならないので「おはようございます」「お疲れ様です」などの挨拶や「危ない!」と言われたらすぐ気が付くように優先順位が高い言葉から教えている。実習生たちのためにローマ字の表記がある現場もあるが、ローマ字も読めない人がいる。「何度も根気よく教えることが必要だ」と古川さん。

 資材を壁に立てかけたため「危ない!」と現場で注意されたが何故だめなのか理由が分からず、次の日から「現場に行きたくない」とふさぎ込んでしまう実習生も多い。「日報を書きに毎日会社に寄るので、その際に現場で何かあったか聞くようにしている。気になることや不安なことがあればフォローを必ず行っている。現場では危ないことをしたら厳しい事も言うが、そのフォローを組合や自分たちが行う」と古川さん。怒られて上司や現場が怖くなるのも、コミュニケーションが必要なのは外国人も日本人も同じである。

<ベトナム人技能実習生の7 人>

◆その後

 実習期間を終えた実習生は現地に戻って型枠大工として働き始める人もいるが、多くは母国へ戻らず、台湾や中国など別の国に出稼ぎに行く。

 「国の法律が変わったため実習期間を終えても日本に居続けることが可能になった。もし本人の意思があれば離れて暮らす家族を日本に呼んで、これからもずっと一緒に頑張っていきたい」と菅さんはにこやかに語った。

 実習生と共に忘年会、花火などを楽しみ、今年は九州に旅行へ行った。旅のしおりは平仮名とカタカナで表記し、読みやすいように工夫。仲間として受け入れ、同じことをする、その思いが通じ、家族を日本に呼んで一緒に暮らしたいと語る実習生は多い。


<受け入れ側のポイント>

  1. 仕事のやり方だけではなく日本の生活ルールも説明する
  2. 暑さに強そうなベトナム人でも熱中症対策を
  3. 寮には無線Wifi を設置する
  4. 社員旅行など社内イベントには必ず誘う