日頃はなかなか土木職と建築職とで交流する機会がないという、4名の女性技術職員にお集まりいただき、座談会で交流を深めてもらうと同時に高知県庁でのお仕事や入庁したきっかけ、高知県への思いなどをお聞きしました。
大野 聡子さん
高知県土木部 技術管理課 主査
高知県高知市出身。地元の中高一貫の女子校を卒業後、大学生活を広島県で過ごしたことで故郷の環境の良さと人の温かさを再確認。就職するなら高知県でしたいと帰郷して入庁。県の資材単価に関わる業務などを担当。
宮地 稚奈さん
高知県安芸土木事務所 和食ダム建設事務所 工務課 主幹
高知県内の高専で土木工学を学んでいたが、大学では一旦高知と土木から離れてみようと、新潟の大学に進学し、環境システム工学を学ぶ。雪国越後よりも南国土佐の気候や風土、解放感が自分に合っていると帰郷し入庁。ダム本体工事、管理設備工事等の施工監理を担当。
島村 典子さん
高知県土木部 建築課 営繕第三担当 チーフ
勢登 文乃さん
高知県土木部 建築指導課 主幹
生まれも育ちも高知県。今まで県外で暮らしたことがない生粋の土佐っ子。県内の大学で建築工学を学び、女性として働きやすい職場環境を考え、大学の恩師の勧めもあって、公務員試験を受験。県有施設の設計積算に関わる業務を担当。
高知県高知市出身。広島の大学で建築工学を学び、そのままハウスメーカーに就職し広島で勤務。その後高知県に帰郷し、公務員試験を受験。前職で得た知識を活かせる職場として建築指導課で活躍。確認申請や建築に関する各種申請の審査を担当。
高知県の女性は、元気で働き者。良くも悪くも感情表現が豊かで、よく笑い、よく怒る。竹を割ったようなサッパリした性格で、面倒見の良い姉御肌。酒豪が多い高知県らしく、お酒好きも多いと言われています。
大野さん
もともと、土木に強い興味があったわけではないです。漠然と、建物に興味があって、建設系の分野に進みたいなぁとは思っていました。大学で土木と建築のどちらかを選択する際に、より幅広く学ぶことができると思って、土木を選択しました。研究室では、都市の広がりが好きで、都市計画を学んでいました。
宮地さん
中学生の頃から、人々の生活に安全や安心、便利さを提供できるような仕事に就きたいと思っていました。理数系の学科が得意だったので、先生から高等専門学校を勧められ、そのなかでも目に見えるモノが作りたいと思って、電気や化学ではなく、土木工学科へと進路を決めました。
高専を卒業する際、最終的には高知に戻ってくるつもりで一旦県外に出てみようと、新潟の大学に進学しました。大学では、土木とは少し違う分野を学ぼうと、環境システム工学の学科に進みました。そこでは活性炭の吸着メカニズムを活用した有害物の除去の研究をしていました。
島村さん
進学した高知工科大学では、建築工学も土木工学も学べるカリキュラムでした。私は住宅のデザインが学びたくて進学しましたが、実際に勉強していくなかで興味を惹かれたのは、橋梁などの構造美、構造デザインでした。レンゾ・ピアノ(イタリアの建築家)がデザインを手掛けた建築物・構造物のように、機能と美しさを併せ持ったデザインの勉強がしたくて、構造デザインが学べる研究室を選びました。
勢登さん
理系科目が得意でしたが、具体的に何を勉強して、どう仕事につなげたいかまでは思い浮かばなかったです。それでもその中で一番ピンと来たのが建築で、建築を学ぶために広島の大学に進学しました。
大野さん
父が高知県の技術職員なので、幼い頃から県庁は身近に感じていました。
宮地さん
新潟の大学に進学し、土木とは別の分野を学び始めた早い段階で、やっぱり土木がやりたかったという自分の気持ちに気が付きました。女性として土木分野での就職先を考えた時、定年まで働き続けることを考えると、やはり公務員という道が最初に思い浮かび、そこから高知県庁での土木の技術職というものを意識するようになりました。
島村さん
デザインの勉強をしていたので設計事務所への就職も考えましたが、女性の働きやすさを考えたら県庁がいいという大学の恩師の勧めもあって、公務員試験を受けることにしました。これからの女性ならではのライフステージの変化を考えると、公務員は産休や育休が取りやすいというイメージがありました。
勢登さん
安直に建物を建てる仕事しか浮かばなくて、最初ハウスメーカーに就職したのですが、その時に、建築確認申請などで県庁にはよく訪れていたので、なんとなく馴染みがありました。建築職は、庁内の他の部署よりも民間からの転職入庁が多いということもあり、転職を決断しました。
大野さん
すごくありました! 事務のデスクワークが多いのかなと思いきや、入庁して最初の担当が道路の維持・保全だったのですが、常に現場と関わっていました。現場に対して、様々な方からご意見やご要望も多く、県民の方々や建設業者さんはもちろんのこと、政治家の方から問い合わせを受けることもあって、対応しなければならない範囲の広さにびっくりしました。
宮地さん
具体的な仕事のイメージを抱かずに入庁したので、ギャップは特にありませんでした。ただ、自分が学生時代に学んできた知識を活かせる部署や自分が希望している部署に配属してもらえるわけではないということはあります。その時の職員の体制によって、ずっと同じ部署の人もいますし、最初は河川、その後は砂防と数年おきに担当が変わる人もいます。私はずっと道路の仕事をやってきましたが、昨年よりダムの現場に配属されています。
島村さん
建築でする仕事は主に建物の修繕や建て替えかな、とイメージ出来ていたのでそんなに大きなギャップはなかったです。ただ、思っていた以上に管理している県有施設があったのにはびっくりしました。
勢登さん
先輩や同僚が皆いい人たちだったので、仕事もプライベートも楽しくて、入庁時からいいイメージしかなかったです。自分が想像していた仕事以外の業務ももちろんありましたが、こういうものなんだ、と新鮮な気持ちで受け止めていたのでギャップはなかったです。この仕事も建築なんだな、という発見が多かったです。
大野さん
現場経験がまだまだ足りないと思っています。計画、設計、施工、維持の全てを監督する立場として、もっと色々な現場に出て勉強したいです。
宮地さん
今の業務と少し離れてしまうのですが、どうやったら子供や若い世代に、土木全般や私達の仕事にもっと興味を持ってもらえるようになるのかを考えてみたいです。土木の楽しさを皆に知ってもらいたいという思いが強いです。
島村さん
一口に建築、といっても新築、改修と多種多様で、その中で自分の携われた工事はまだ一握りだと思うので、もっと色々な現場を経験して知識をつけたいです。チーフという役職にもなりましたし、相談されたときに的確な判断ができるようにしたいです。
勢登さん
今、法律を扱う仕事をしているのですが、内容が頻繁に改定されるので、その都度よく勉強して常に最新の情報を頭に入れておきたいと思っています。知識をしっかり身に付けた状態で県民の皆さんや業者の方々への対応を行ない、常に頼られる存在でいたいです。
大野さん
高知県は台風などの自然災害が多いので、特に土木職は重要な役割をもっていると思います。大変なことも多いですけれど、その分やり甲斐はありますよ。
宮地さん
県庁の技術職には様々な仕事がありますが、工事の計画から一連の工程を担当することができ、その工程のすべてを経験できるのは大きな利点だと思います。自分にどの仕事があうのか迷っていたとしたら、まずは県庁で経験してみてからそれを見出してもらうのもいいと思います。
また、土木事務所は県内各地にありますが、子育てや介護等、家庭の事情を考慮して配属してくれます。もし県内を西から東、各地点々と異動するのは難しいな、と就職をためらっている方もいるかもしれませんが、個々の事情は考慮してもらえますよ。また民間採用枠もあり、中途採用も積極的に行っているので門戸は広いと思います。
島村さん
県職員のやり甲斐って感じにくいなと考えていた時期がありました。壁にぶつかることもあるかもしれませんが、周りの人も助けてくれます。担当していた工事が無事に終わったときには大きな達成感がありますよ!
勢登さん
まず高知県のいいところを見て、その良さを肌で感じてもらいたいです。気候や県民性など、その魅力を知ってもらって、高知県のことが好きな方に門を叩いて欲しいと思います。
大野さん
山・海・川など自然環境を楽しむには高知です!
宮地さん
南国ならではの解放感がありますね。あとは人の明るさ、熱意。よさこい祭りや毎年2月に開催される龍馬マラソンでも、沿道の応援がすごくて、熱い人が多いです。県を挙げてのイベントはほぼボランティアで成り立っていると言っても過言ではないくらいに皆さんにご協力いただいています。イベントを一致団結して盛り上げよう!という気持ちが強いのは、高知県ならではだと思います。おもてなしの気持ちも強く、みんなで楽しんでほしいという思いが強いからだと思います!
ぜひ、高知県においでいただいて、その良さを体感してもらえればと思います!
みなさんからお話を伺っていると、高知県を愛し、高知県に貢献したいという郷土愛が溢れていて、和気あいあいと、楽しく仕事をされている様子が伝わってきました。南国土佐の太陽のような眩しい笑顔、本当に素敵でした!
これからの皆さんの益々のご活躍をお祈りしています!
大野さん
私の名刺には2002年に開催されたよさこい高知国体のキャラクター「くろしおくん」のイラストが描かれています。太平洋の黒潮をイメージした波のキャラクターです。インスタグラムもやっていて人気なんですよ。県のイベントにもよく登場していますし、県庁1階にもくろしおくんの像が坂本龍馬の像と並んでおいてありますよ。
宮地さん
TOSAレンジャーというのもいます。高知県道路課が四国8の字ネットワーク(四国における高規格道路ネットワーク)の促進のため、制作したキャラクターです。
勢登さん
建築の「耐震3 兄弟」というのもいますよ! 高知県住宅課が建物の耐震改修促進のため制作したキャラクターです。
島村さん
キャラクターではないですが、高知県全体をイメージしてもらうためのコンセプトコピーに「高知家」があります。私の名刺にも高知家のロゴがデザインされていますよ。高知県の魅力は、人と人とのつながりが密で、家族のようにあたたかいところです。県外から来られた方にもそのあたたかさを感じて欲しいという意味が込められています。
和やかな雰囲気で迎えてくださった皆さんは、まさに高知のあたたかさそのもの。とても居心地よく、楽しくインタビューを行うことができました。
雑談のなかで「みなさん、やっぱりお酒お好きなんですか?」と聞いたところ、口を揃えて「えぇ、まぁ、私は好きです…」と控え目に答えてくださいました。その様子に、「本当に皆さんお酒がお好きなんだなぁ」と思い、また高知県人はお酒好きという噂は本当だったんだと感心しました。取材も終盤に差し掛かった頃、ある方の口から「お酒飲みながらだったら、もっと上手く喋れるのに…」という言葉がこぼれました。次はぜひ、鰹のタタキと高知の日本酒をいただきながら、お話をうかがえればと思います。