建設物価調査会

建設物価2024年8月号

佐藤工業株式会社
一つひとつの仕事と丁寧に向き合い
「 建設品質。」を笑顔で支える女性社員にインタビュー

 【宇田川さん】 昔から建設業界を目指していたわけではありませんでした。
 高校は、何か面白そうなことが高校は、何か面白そうなことができるところはないかなと思って
いたのですが、元々興味のあった生物に関係するバイオ系のコースのある学校を選びました。『。
 大学では、気象の研究室に所属し、気候の変動モデルを作成していました。研究室に所属する前は実習で山に行き昆虫を採取して、記録を行ったり、水田で田植えをしつつ、イネの遺伝子と品種改良について学習したりとフィールドワークが多かったです。遊んでいるだけのように聞こえるかもしれませんが、自然を相手にする以上、外での活動は必須です。自分の足で確かめて、必要な情報を収集する。この時の経験は今の自分の根幹にもなっていると感じます。
 就職活動を始めて、屋外で働きたいと思い農業系の仕事を探していたのですが、よく考えると建築や土木関係も選択肢に入ってくるな、と。
 面白そうだし、やってみたい! と思ってこの仕事を選びました。


 【平野さん】 土木業界を目指したのは地元が好きで、地元を守りたいという気持ちがあったのが大きいですね。
 当初、公務員になりたいと考えていたのですが、尊敬する兄から公務員になる前に手に職をつけることを考えたら? とアドバイスをもらい、ゼネコンへの就職を決意しました。

 【宇田川さん】 トンネルの新設工事の現場、調整池を作る工事現場に関わってきました。
 トンネルの現場に女性はNG…というのはもう昔の話です。
 トンネルの現場は200メートルの自動車専用道路の現場で、写真撮影や測量を担当していました。
 この現場にいた時に、私達、現場の女性達と地元の工業系の学生が集まって、普段どのような仕事をしているか、休みの日の過ごし方、仕事をする上での大変なこと、就職活動に対する不安などを、座談会形式で話し合いました。現場見学も兼ねたこの交流会で、橋梁や山の切土の工事を見て回ったのですが、学生たちの今後の進路の参考になればいいなと思う一方、私としても他の現場がどのような工法でどんなことをしているのか知ることができたので、学生と一緒になって驚くこともたくさんありました。同じ「道路を作るための工事」でも、いろいろな工種と工法があることが分かって勉強になりました。
 今は朝霞市の調整池の現場に配属されています。
 すぐそばに川が流れているので、水位が上昇し危険になった際、一時的に水を貯めるための施設を作っており、進捗度としては終盤という段階です。

 【宇田川さん】 まず、トンネルの現場でのことですが、「サインコサイン…覚えてる?」と言われて、計算しながら測量をしました。学生時代の数学がここで活きるのか! とびっくりしました。
 また、コンクリートを作る施設があり、そこで材料管理をしていた時のことですが、当初は昼だけで、1日3~4メートルくらいしか進まないような現場だったのが、そのうち夜間作業も始まり、倍のペースで進むようになって管理がより大変になりました。
 施設もそんなに大きくはないので日々砕石とセメントを発注するのですが、足らなくてもダメですし、余ってもよくないのでその調整が難しかったです。
 一度、発注数量全部を現場に入れてもらったところ、入りきらず…
ということがありました。
 職人さんとのエピソードでいうと、以前、自分の測量結果を伝えたところ「なんか違わない?」と指摘されたことがありました。
 やり直してみたらやっぱり自分が間違っていて、経験からくる勘みたいなものがあるんだなと感じました。
 年齢的には自分よりも上の方が多く、経験豊富な方ばかりなので積極的に話しかけて色々なことを吸収したいなと思っています。
 現場をスムーズに進めるためには職人さんとのいい関係が大切だと思うので、自分の話し方などにも気を付けていく必要があると感じています。

 【平野さん】 入社して最初の7年は現場にいて、積算を半年、その後、営業に配属されました。
 当時の現場はなかなか大変でした。がむしゃらに働いていましたね。それでも現場は楽しかったです!
 現場時代は、水道局、橋の耐震補強、鉄道の現場に2年くらいずついました。
 土木の現場は完成までが長いので、最初から最後まで同じ現場にいるということは少ないです。
 印象に残っているのは鉄道の現場で、基本夜勤で終電から始発まで電車が止まっている3時間ほ
どしか作業ができないのでいかに効率よく仕事を進められるかを考えるのが楽しかったです。
 あと、鉄道の現場では安全上、絶対に忘れ物はできません。
 現場に入る時に、自分が持ってきた物すべてを申告をして、帰りにそれが1つでも欠けていたら現
場から出られない。
 ボールペン1本でも事故につながる可能性があるので、見つかるまで帰れません。
 通常の電車は動いていないとはいえ、夜中でも荷物の運搬や新しい車両の搬入などで電車が通っているので、かなりの制約があります。その制約の中でいかにスムーズに仕事を進められるかが勝負です。
 隣の工区の女性の方とすごく仲良くなって、今でもプライベートでもお付き合いが続いているのです
が、そんな出会いもあった現場なのでとても印象に残っています。

 【平野さん】 先ほど、宇田川さんの話に出てきた写真撮影は現場において重要な仕事であり、大きく変わったところだと思います。
 基本的に現場は地中に埋まってしまうので、写真を撮ることでここまで仕事が終わりましたよという証明になり、それがお金をいただく根拠になります。
 危険を思わせてしまう写真は使えませんし、きちんと現場が収まっていないと意味がありません。
 1枚の写真がないだけで、工事が終わっていないということになってしまうのですごく気を遣いますし、膨大な量の撮影をすることになります。
 地中はどこも似たような感じなので、近づきすぎてどこを撮影したかわからなくなり、もう一度掘
り起こしてもらった、なんてこともありました。
 昔はカメラで撮り、現像して、自分で確認し、写真帳に貼るという作業をしていたようですが、今は
撮影すると勝手にフォルダに振り分けてくれたりするので、作業的には大きく軽減されていると思います。現像代もかかりませんしね。他にも機械に任せられるところはドンドンやってもらうべきだなと感じます。
 埋設物の確認方法も変わってきています。地中にはいろんなものが埋まっているので図面を頼りにしますが、昔の図面は頼りにならなくて掘っても何も出てこないなんていうこともありました。今は地中レーダーみたいなものを使って、波形の違いをチェックしこの辺に埋設物がありそうだという予測ができるようになっているのも変化を感じるところです。

 【宇田川さん】 法令を守ることはもちろんですが、現場において尖ったところや角になる部分を極
力なくすために単管にはキャップ、クランプにはカバーをつけたり、頭をぶつけそうなところにはスポ
ンジをつけるなどしています。ケガ防止のためにすべての単管とクランプに取り付けるので、百単位になることもあります。
 また、注意喚起のために大量の案内板をラミネートで作っています。
 外国人の労働者の方もいるのですが、日本語は話せるけれど読めないという方が多いので、英語、
中国語、ベトナム語、インドネシア語、フィリピン語の5か国語を表示したりと危険を伝えることに関しては特に注意を払っています。
 安全対策という面でいうと、現場にカメラが付いていて、現場の様子を本社の人もモニターでチェックできるようになっているところもあります。現場内に確認したい箇所や危険のありそうな箇所があればすぐに連絡が来て是正します。

 【平野さん】 モニターから現場チェックをしていると、時代と共に、機械の安全性は向上している
けれど、人間の安全への意識が下がっている、というか「危ないものを危ないと感じていない」という風に見えるようです。
 昔は細心の注意を払った上で、状況に応じて作業を進めるということもあったと思いますが、今の建設現場の機械は、安全に働きすぎて「できない」ことが多いと感じます。
 これまで吊ることができていた資材でも、角度と重さが安全設定の範囲外だと止まってしまう。確
かに安全ではあるんですが。
 なにをどうしたら危ないというのがわかっているから気を付けるわけですが、そもそも危ない状態
にならないから何が危ないかがわからない。
 全部が安全すぎて、危険に気づけないという矛盾というか、絶対事故が起こらない仕組みになっているからこそ、危険性がわからなくなっている気がしています。

 【宇田川さん】 吊り橋の現場にいた先輩から話を聞いて、橋の現場
は楽しそうだなと思っています。
 トンネルが得意な会社に来たので、シールドの現場は行ってみたいと思っていますが、シールドの現場は見ているだけだよと言われたので…。
 ただ、どこの現場に行ってもやらなくてはいけないことは変わらないと思っています。現場がどんな手順でどんな作業をするのか理解して、それに必要な資材の発注や安全設備の手配をする。だからこそ、「見通せる人になる」のが、今の目標です。上司や作業員さんに指摘される前に次の作業に合った準備をし続けることでより重要な仕事を任され、頼られる人になることができると考えています。
 今の自分はまだまだ伸びしろの塊なので、まずは経験したことがある作業をする時に、前と同じ
だけの準備ができるようになるところからですね。そのために、日々の作業を記録して今後の参考にしています。
 【平野さん】 できる仕事をもっと増やして、上からも下からも誰からも頼られる何でもできる人になろうと日々努力していきます。

 同じ会社ですが、普段顔を合わせることはほとん
どないというお2人。
 入社2年目、日々勉強中! これからの仕事につい
ての想いを話してくれた宇田川さん。入社11年目、
これまでの経験を楽しく聞かせてくださった、平野
さん。
 ひまわりの取材でお邪魔しましたが、お互いの経験
や考えを共有する機会になったとしたら嬉しいです。
 「好奇心をもって、面白そうなことにトライしてみ
る」という宇田川さんの今後が楽しみです!
 すでに色んなエピソードをお持ちの平野さん。女
性職員を引っ張っていくという役割も求められてい
くのだろうなと感じました。
 お2人の益々の活躍を陰ながら応援させていただ
きます!                   

                     

                      宮川