建設物価調査会

3Dデータ活用に初めて取り組む利用者が行うべき効果的な手法

株式会社鴻池組 土木技術本部技術企画部ICT 推進課長
藤原 祐一郎氏

1.はじめに

 国土交通省が掲げるi-Constructionは「生産性革命元年」として平成28年にスタートし、翌平成29年は「前進の年」、平成30年は「深化の年」として取り組みが加速されてきた。これまでの3年間を踏まえ、4年目の令和元年は「貫徹の年」と名付けられ、建設生産プロセス全体の3次元化に向けたシステム・要領・基準類の整備やインフラ・データプラットフォームの構築、AI・IoT等の先端技術の現場実装等の取り組みが進められている。これらの取り組みにより、全ての建設生産プロセスでICTや3次元データ等を活用し、令和7年までに建設現場の生産性を2割向上させることを目指している。

 建設現場の生産性向上を図るi-Constructionの取組において、これまで3次元モデルを活用し社会資本の整備、管理を行うBIM/CIM(Buildingand Construction Information Modeling/Management)を導入することで受発注者双方の業務効率化・高度化が推進されており、今後3Dデータの活用は必須である。

2.情報収集

 「3Dデータを活用するぞ!」と、いきなり3Dソフトを購入しても、使い方がよくわからず挫折する可能性が高い。そこで、参考になると思われるホームページを紹介する。まずは情報収集をして基礎知識を身につけてから取り組むことをお勧めする。

① 国土交通省 BIM/CIM関連

 BIM/CIMに関する基準・要領等やBIM/CIM推進委員会の資料が掲載されており、BIM/CIMに取り組む際には要確認のページである。
 「CIM導入ガイドライン(案)」にはCIM導入の目的や活用方法、用語の定義などが記述されているので必読である。

国土交通省 BIM/CIM 関連
(http://www.mlit.go.jp/tec/tec_tk_000037.html)

② 国土交通省 ICTの全面的な活用

 ICT導入協議会の資料や「ICTの全面的活用」を実施する上での技術基準類が掲載されている。

③ (一財)日本建設情報総合センター CIM 人材育成

 日本建設情報総合センター(JACIC)のCIMページの人材育成ページに取り組み事例などを紹介した冊子「CIMを学ぶ(Ⅰ~Ⅲ)」が掲載されている。

④ (一社)日本建設業連合会 刊行物一覧・検索

 “CIM事例集”で検索すると、2015年から刊行されている「施工CIM事例集」が閲覧できる。各社のCIM導入目的や概要、効果、運用体制、今後の課題が掲載されており、非常に参考となる。

日本建設業連合会 刊行物一覧・検索
(https://www.nikkenren.com/publication/search.html)

⑤ (一社)オープンCADフォーマット評議会 OpenCIMForum

 オープンCADフォーマット評議会(OCF)のBIM/CIMの試行・導入をベンダーサイドから支援するページである。
 国土交通省 国土技術政策総合研究所「LandXML1.2に準じた3次元設計データ交換標準(案)」対応ソフトウエアの一覧や国土交通省「CIM導入ガイドライン・CIM 事業における成果品作成の手引き」対応ソフトウエアの一覧が掲載されており、ソフトウエア選定の参考となる。また、セミナー案内なども掲載されている。

3.ソフトウエアの試用


① 無償体験版を利用

 ソフトウエアのベンダーの中には無償体験版を提供している企業があるので、ダウンロードして使ってみることをお勧めする。

無償体験版ダウンロードページの一例(Autodesk 社)
(https://www.autodesk.co.jp/products/civil-3d/free-trial)


③ BIM/CIMに関する講習会・セミナーへの参加

 様々な団体・企業がBIM/CIMに関する講習会やセミナーを開催しており、次ページの表に例を示す。中にはパソコンが用意されたハンズオン講習会もあるので、活用することをお勧めする。無料の講習会もあるが、有料の講習会の方が内容は充実している。


④ オンラインセミナーへの参加

 遠隔地などで前述のセミナー等に参加できない場合は、オンラインセミナーを開催している企業もあるのでインターネットで検索してみることをお勧めする。

4.ソフトウエアの利活用


① トレーニング教材の利用

 ソフトウエアのベンダーの中にはトレーニング教材を提供している企業があるので、ダウンロードして使ってみることをお勧めする。

トレーニング教材ページの一例(Autodesk 社)
(http://bim-design.com/infra/training/)

BIM/CIMに関する講習会・セミナーの例



② BIM/CIMに関する講習会・セミナーへの参加

 ソフトウエアを導入後も、前ページで紹介したBIM/CIMに関する講習会やセミナーに参加することは、最新情報の入手や質問できる人脈の形成などに非常に有効である。



③ 外注の活用

 自社内で3Dモデルを活用できる人員が十分で無い場合は、外注するのも一つの手である。
 初心者が一から3Dモデルを作るのはかなり大変なので、プロが作った3Dモデルを弄ることは勉強になる。また、プロが作った3Dモデルを見ることで、自分が知らなかったプロのテクニックを学ぶこともできる。

5.3次元部品モデルの利活用

 インターネット上に重機(クレーン、運搬車両、掘削機等)や仮設機材(足場、支保工、ベント等)、二次製品(支承、伸縮装置、JIS 桁等)などの3次元部品モデルが公開されている(有償、無償)。これらをうまく活用することで、3Dモデル作成の効率化を図ることができる。
 掲載されているページの例を以下に示す。

① (一社) Civil ユーザー会(CUG)

 CUGメンバーによって作成された3次元部品モデルをアップロード/ダウンロードをすることができる(要登録)。

CUG 3次元部品モデル
(https://cim-cug.jp/library/)

② (一財)建設物価調査会

 メーカ ー等と連携し、コンクリート2次製品や橋梁関連部材を中心に部品データが提供されている(要登録)。

建設物価調査会 i- 部品Get
https://www.i-buhinget.com/

6.おわりに

 今後、3次元モデルの契約図書化に向けた取り組みや3次元オブジェクトの供給に関する検討、3次元データの流通・利活用に向けた環境整備等が進むので、3Dデータ活用の必要性はさらに高まると思われる。さらに、時間情報を加えた4Dやコスト情報を加えた5Dの検討も進められている。

 これらに対応していくには人材の育成が重要となるが、日々の業務の中で3Dデータに触れる機会を増やしていけば、徐々にスキルアップできると考える。

 今回紹介した手法が3Dデータの効果的な活用の一助となれば幸いである。



株式会社鴻池組(外部リンク)



小冊子「3Dを活用しようVol1」