建設物価調査会

他業界からの人材を活用し、建設業の全体最適化を目指す



株式会社昭和土木設計


左から ICT 推進室リーダー  藤原 聖子さん
代表取締役  村上 功さん
ICT 推進室室長  佐々木 高志さん


2019年度i-Construction大賞国土交通大臣賞を受賞した岩手県の昭和土木設計は、2013年から社内にワーキンググループを立ち上げて、ICTに取り組んできた。他業界の3次元設計経験者を採用し、社内のBIM/CIMを推進するとともに地域の建設業全体のBIM/CIM、 i-Construction推進を図るために積極的な取り組みを行っている。

 昭和土木設計は、1981年の営業開始以来40年にわたり、建設コンサルタントとして道路、橋梁、河川などの社会インフラ整備に携わってきた。代表取締役の村上功さんは、岩手県内で最初に2次元CAD を導入するなど、常に新しい技術を取り入れてきた。国産の3次元CAD を開発する「カイザー・プロジェクト」に携わっていた岩手県立大学の窪田諭さん(現・関西大学教授)に、当時会長をしていた建設コンサルタント協会で講演を依頼するなど、早い時期から3次元CAD の可能性にも着目していた。

 2012年に国土交通省からCIM 導入ガイドラインが発表され、それを契機に2013年、 社内にCIM ワーキンググループを立ち上げた。「ドラフターの時代は、電卓で計算しながら図面を描き、設計はたいへんな苦労でしたが、CAD の導入で作業効率や設計精度は格段に上がりました。2次元から3次元になればさらに効果が期待できると考えました」と振り返る。

異業種から人材を採用 2015年には3次元CAD の社内浸透を図るためにICT 推進室を開設した。現在7人のメンバーがいるが、全員が他業種出身者である。「3次元CAD を自由に使いこなせる人材を採用し、土木の知識を継承してもらった方がより成果があがると考えました」と村上社長はその理由を語る。

 ICT 推進室の佐々木高志室長は、同社の先進的な取り組みに魅力を感じ、2014年に入社した。それまでは人工衛星関連の設計やポータブル製品の商品設計に携わってきた。「会社からBIM/CIM を学ぶ機会をいただき、土木の3次元設計の可能性を感じました。
入社後、最初の業務がUAV 写真測量を活用した橋梁景観設計でしたが、ソフトやツールを使いこなせば、自分のやりたいことが実現できると実感しました。固定概念がなかったことやCIM が始まったところから携われたことで、いろんな挑戦ができたのだと思います。土木分野ではドローンやレーザーなど、最先端の技術を使っていますが、まだまだ活用しきれておらず、これからの可能性が期待できます」。

 ICT 推進室リーダーの藤原聖子さんは、佐々木さんの1年後に入社した。「10年以上携わってきた精密金型設計の3次元スキルを生かせると思いました。建設の専門知識もなく、土木のソフトも使ったことがありませんでしたが、CAD 自体は、ユーザーインターフェースの違いはあれど割とすぐ理解できました。それよりも土木の図面の見方や描き方、基準類や受注形態などに慣れるまでに時間がかかりましたが、相談できる人がいたので今まで取り組んでこられました」。

藤原さんは、ソフトウェア会社のユーザーコミュニティでの交流も励みになったという。佐々木さんも藤原さんも製造業にいたときには、設計したものが現場でつくられて、世に出ていく過程をすべて見てきた。コストや時間を含めたトータルマネジメントの経験が建設業でも役立っているという。推進室には、情報系の学部を卒業した新人も配属された。「IT のリテラシーが高いので、そこに社会人経験と土木の知識を社内で育んでもらえば、成長が早いと考えています」と藤原さんは期待する。


異業種から人材を採用

 2015年には3次元CAD の社内浸透を図るためにICT 推進室を開設した。現在7人のメンバーがいるが、全員が他業種出身者である。「3次元CAD を自由に使いこなせる人材を採用し、土木の知識を継承してもらった方がより成果があがると考えました」と村上社長はその理由を語る。

 ICT 推進室の佐々木高志室長は、同社の先進的な取り組みに魅力を感じ、2014年に入社した。それまでは人工衛星関連の設計やポータブル製品の商品設計に携わってきた。「会社からBIM/CIM を学ぶ機会をいただき、土木の3次元設計の可能性を感じました。入社後、最初の業務がUAV 写真測量を活用した橋梁景観設計でしたが、ソフトやツールを使いこなせば、自分のやりたいことが実現できると実感しました。固定概念がなかったことやCIM が始まったところから携われたことで、いろんな挑戦ができたのだと思います。土木分野ではドローンやレーザーなど、最先端の技術を使っていますが、まだまだ活用しきれておらず、これからの可能性が期待できます」。

 ICT 推進室リーダーの藤原聖子さんは、佐々木さんの1年後に入社した。「10年以上携わってきた精密金型設計の3次元スキルを生かせると思いました。建設の専門知識もなく、土木のソフトも使ったことがありませんでしたが、CAD 自体は、ユーザーインターフェースの違いはあれど割とすぐ理解できました。それよりも土木の図面の見方や描き方,基準類や受注形態などに慣れるまでに時間がかかりましたが、相談できる人がいたので今まで取り組んでこられました」。藤原さんは、ソフトウェア会社のユーザーコミュニティでの交流も励みになったという。

 佐々木さんも藤原さんも製造業にいたときには、設計したものが現場でつくられて、世に出ていく過程をすべて見てきた。コストや時間を含めたトータルマネジメントの経験が建設業でも役立っているという。推進室には、情報系の学部を卒業した新人も配属された。「IT のリテラシーが高いので、そこに社会人経験と土木の知識を社内で育んでもらえば、成長が早いと考えています」と藤原さんは期待する。


3次元完成形可視化モデル

 同社では、ICT 推進室を中心に建設業界の既成概念にとらわれないBIM/CIM、 i-Construction推進のさまざまな取り組みを行っている。その成果のひとつが「3次元完成形可視化モデル」。UAV を利用した3次元空間計測データをもとに、3次元現況地形モデルを作成し、3次元設計モデルと連係・統合した新たな設計表現技法である。橋梁設計、トンネル、道路設計、多自然川づくりなど幅広い分野で活用されている。

 佐々木さんは「2次元図面を見て完成形を頭の中で想像するのはむずかしいですが、この可視化モデルで完成形のイメージを共有することで、関係者間の合意形成に役立っています」という。藤原さんも「住民の方からもGoogle マップみたいだと好評です。今はスマートフォンのマップを立体表示で見る時代ですので、3次元モデルが必須になってきていると感じています。早期合意形成に寄与するため、発注者からも評価を得ています」。


外部へのBIM/CIM 普及活動

 ICT 推進室には、社内への浸透とともに地域や業界全体にBIM/CIM を普及させていくという大きなミッションがある。その一環として、発注者、同業他社、施工会社の実務者を対象にした事例紹介やCAD ハンズオン講習などを実施し、これまで延べ2,900人が受講している。「同業他社向けのハンズオン講習も、以前は違う業界や県外の方が多かったのですが、最近は、県内からの参加が増えました」と佐々木さん。BIM/CIM への関心が高まっており、導入する企業も増えてきているという。
 
 また最新技術を紹介するイベントへの出展や出前講座なども積極的に行っている。佐々木さんは「県主催の先端技術を集めたイベントでは、子ども向けにドローンや3次元完成計可視化モデル、VR 体験などをしていただき、付き添いの親御さんにも関心を持っていただけました」。こういったPR 活動が建設業への理解促進や担い手確保につながっていく。 2019年度から岩手県では工業高校生と協働した橋梁点検を実施しており、同社が業務を受託している現場でドローンなどの新技術を使った診断を行っている。「建設の現場に興味を持ち、将来の担い手となってくれることを期待しています」と佐々木さん。


発注者、コンサルタント、施工会社の連携を目指す

 村上社長は「公共事業に携わるものとして、我々コンサルタントも公益性を持ち、国の政策を広め、普及させることが使命だと考えています。1社だけが高い技術を持っていても、地域の建設業全体の技術力を上げていかないと健全な成長は実現できません」という。

 2021年9月に岩手県内の建設コンサルタント業界と建設業界が連携し、建設 ICT を普及させるために「いわて建設ICT 活用協議会」が設立され、村上社長が会長に就任した。「協議会は、私の提案ではなく、BIM/CIM の重要性を感じている若い建設業の経営者からの発案でした。BIM/CIMの目的は全体最適化を図ることです。これまで他の業界で行われてきた全体最適化を建設業では行ってきませんでした。発注者、コンサルタント、施工会社の3者が連携していくことが大切です」。

 また村上社長は、「現在の土工を主としたICT活用工事では、測量段階で3次元計測したものを契約に沿って2次元にして納品している。これを施工段階で再度3次元計測するといったフローになっており、非効率です。こうした状況を改善するためにもBIM/CIM が必要です」と現状の課題を分析する。設計施工分離を原則とした従来の入札契約方式が連携できない要因になっているという指摘もある。近年では、生産性や品質向上のために設計段階から施工者が関与するECI 方式や補修工事における逆ECI 方式といった流れもある。
 
 同社でも、測量・設計・施工のフロントローディングや逆ECIの3次元データ作成を行っている。藤原さんは「発注されたものをただ作って納品して終わりではなく、その後も活用できる3次元設計データを目指しています。測量側、施工側の技術者と協業しながら取組んだ事例もあり、コンサルが施工者へアドバイスするような逆ECI 的な取り組みはデータのサイクルを回すためにメリットがあると感じています」と話してくれた。
 
 「建設工程の全体最適化の中で、コンサルタントの工数は増えますが、設計の精緻化が進み効率が上がっているといわれています」と村上社長。藤原さんも「設計がきちんとデザインするので施工は作ることに集中でき、より効率的になると思います」。村上社長は「全体の効率を上げるためには現場を止めないことが重要です。3次元設計による精緻化が進めば、手戻りや工事が止まるようなことが少なくなります。それを皆さんが理解すればBIM/CIM は普及していくはずです」と力を込める。


BIM/CIMを変革の道具に

 国土交通省はICT 施工の普及拡大を図るために2020年度から、施工者希望Ⅱ型(土工)に簡易型ICT 活用工事を導入した。大規模工事であれば確実に効果が表れるが、中小の工事にどれだけの効果があるのかは、まだ分からないが、中小の工事での活用がBIM/CIM 普及の鍵になっていく。施工会社の中には、今後の需要が分からないから投資ができないという声があるという。

 村上社長は「発注者側が、ICT 活用工事の需要をある程度示すことで、受注者も先行投資ができます。例えば、県の工事であれば、A 級工事だけでなく、B 級C 級工事でもICT 活用工事になると宣言すれば、施工会社も準備ができるようになるでしょう」と示唆する。一方で、公共事業の受注者側も補助金だけに頼っているといつまでも変革はできないという。「日本の1 人当たりのGDP は、OECD 加盟国の中で下位になっています。建設業だけでなく、日本全体の生産性が低迷するなか、国全体の生産性を上げるためには、変革が必要です」と村上社長。

 多くの自治体と同様、岩手県も人口減少が続いている。建設業の就労者も減っていき、高齢化も進んでいく。「自然災害も頻発し、冬になれば除雪も重要な仕事ですから、建設業そのものを維持していかないと、住民生活が成り立ちません。建設業が従来通りに役割を果たしていくためにもBIM/CIM を推進していくことが不可欠です」。

 同社のように高い志を持ち、企業や業種の垣根を越えて全体最適を実現するための取り組みこそが求められている。