一般社団法人石川県建設業協会では、「建設現場に女性が積極的に参加して活躍できる建設業の実現」に向けて、女性部会である「百万石小町『結』」を令和2年10月29日に発足させました。それまでの協会主催の会合や現場見学会などを通じて、会員企業の女性技術者同士が交流を深めていたこともあり、近隣県の建設業協会の女性部会との意見交換会などを経て、発足に至りました。一般社団法人 石川県建設業協会女性部会 一般社団法人石川県建設業協会では、「建設現場に女性が積極的に参加して活躍できる建設業の実現」に向けて、女性部会である「百万石小町『結』」を令和2年10月29日に発足させました。それまでの協会主催の会合や現場見学会などを通じて、会員企業の女性技術者同士が交流を深めていたこともあり、近隣県の建設業協会の女性部会との意見交換会などを経て、発足に至りました。
『結(ゆい)』のネーミングは、江戸時代より「加賀百万石」として栄えた石川県をイメージし、「金沢・能登・加賀地域の多くの会員が集い、相互に連携して結びつくように」との思いが込められています。
令和5年9月20日現在、会員企業88社の236名で構成されており、協会の会員企業に所属する女性社員であれば、技術職、事務職を問わず参加することができます。
令和5年6月21日に、部会員85名が参加して開催され、令和4年度の活動報告ならびに令和5年度の活動予定について話し合われました。会議の後には、誰もがイキイキと働くことができる職場環境の構築について、外部講師を招いての講習会を開催しました。グループディスカッションなども行なわれ、参加者同士の交流もより密になったと好評でした。
ひとりでも多くの高校生に、就職先として建設業を選んでもらいたいという思いから、県内の工業高校の生徒との意見交換会を企画し、女性の目線から見た建設業の魅力や、女性が活躇している建設業の現状などを伝えています。質問コーナーでは、聞きづらい質問に対しても実際に建設業で働く女性たちが答えてくれるので、高校生も質問しやすいようで、毎年和やかな雰囲気ながらも、大変盛り上がります。
SNS(インスタグラム)への投稿を通じて、建設業の魅力を随時発信しています。投稿内容は、女性部会での活動報告や部会員が実際に働いている姿の紹介の他に、県内の各地域の観光名所の紹介など、部会員から集めた情報が盛りだくさん。是非皆さんにご覧いただければと思います。
令和5年9月1日には、白山市のご協力のもと、白山市立高速鉄道ビジターセンターの建設現場見学会ならびに令和5年5月にユネスコ世界ジオパークに認定された「白山手取川ジオパーク」で現場見学を行いました。皆が皆大規模な現場に携わったことがあるわけではないため、このような大きな現場を見学することは刺激になる、と皆さん毎年参加を楽しみにしているそう。今回は部会員47名が参加しました。
令和5年10月9日には、金沢市の奥卯辰山健民公園において開催された「いしかわのこどもみらいキャンペーン『はだしの王国』」に参加し、建設機械の試乗体験や写真撮影会、土木に関するクイズラリーや実験コーナーを通して、建設業の魅力をPRしました。
令和3年2月14日のバレンタインデーには、コロナ禍中ということもあり、石川県看護協会をはじめとした県内24の医療機関に手書きのメッセージカードを添えた約1,000個のチョコレートを贈呈いたしました。
建設業と同じように社会を支えるエッセンシャルワーカーである、医療従事者の方々に感謝と応援の気持ちを伝えました。
一般社団法人 石川県建設業協会
専務理事 山岸 勇 さん
百万石小町『結』発足前は、会員企業の女性技術者に話を聞くと、「会社の中に女性がひとりしかいないので相談したくても出来ない」「女性同士話ができる場があるといいな」という声が多く聞かれました。そういった声を受けて、「定期的に意見交換の場を設けたらどうだろう」「現場見学会もできたらいいな」という女性技術者からの意見や要望をさらに集め、発足したのがこの女性部会、百万石小町『結』です。
女性が建設業で活躍していることを外部に発信していくのはもちろんですが、性別を問わず皆が建設業に定着してもらうことが何よ
も大切だと考えています。就職先に建設業を選択してもらい、定着して長く働き続けてもらうためには、知識やスキルの向上も大切ですし、働きやすい環境や人間関係の構築も必要です。そのなかで、女性部会も働きやすい職場づくりの一端を担えたらと思っています。
『結』では年間を通じて様々な活動を行っていますが、現場見学会や意見交換会など、地道な活動を繰り返し行うことで、少しずつ裾野を広げていくことが必要だと思っています。そして、ゆくゆくはこれまでのイメージを払拭して、働きやすい建設業のイメージに変えていきたいです。少しずつ積み重ねていくことで、仕事でも、部会の活動でも、皆にやりがいを見出してもらいたい。そして、皆が活躍し、これからの建設産業を盛り上げていって欲しいと願っています。
一般社団法人 石川県建設業協会
女性部会 百万石小町『結』 会長
加賀建設株式会社 土木部課長
森高 靖子さん
この『結』の文字のとおり、多くの方との結びつきや縁を広げ、多くの若者が建設業に集い、男女関係なく現場で活躍できる、働きやすい産業となるよう盛り上げていきたいと先頭に立って奮闘するのは、この百万石小町『結』の代表、女性部会の部会長である森高靖子さんです。森高さんは生まれも育ちも石川県。県内の高等専門学校で環境都市工学を専攻し、高専卒業後に加賀建設株式会社に入社され、現在は土木部の課長として活躍されています。
森高さんは石川県内の建設業界では女性技術者のパイオニア的存在。これまで女性技術者の就業がなかったために、女性を受け入れる制度がなかったのが、森高さんが入社したことによって、女性が働きやすいよう制度を整備する動きが生まれたそうです。森高さんは2児の母であり、育児経験を通じて産休制度や育休制度の大切さを身をもって感じたことから、それらの制度の充実に取り組んできたという経緯があるそう。森高さんが所属する加賀建設株式会社では、いち早く「子育てサポート企業」としての厚生労働大臣認定の証「くるみん認定」を受けたとのことです。
今回、そんな県内女性技術者のパイオニアである森高さんにもインタビューさせていただきました。
もともと、建設業への道を志していたわけではありませんでした。強いて言えば、父親方が建具屋でしたので、ものづくりの環境は身近にあったのかなという程度でした。高等専門学校に入学した時も、まだ建設業で働く自分を思い描けてなかったのが正直なところです。高等専門学校4年生の時、インターンシップで建設会社での仕事体験をした時に、現場監督の仕事っぷりを目の当たりにして「カッコよくてやりがいがありそう」と感銘を受けました。それがきっかけで、ぼんやりしていた将来がハッキリと思い描けるようになり、建設技術者を志すようになりました。
会社に入社をしてすぐは、現場の写真を撮ったり、出来形管理をしたりしながら仕事を覚えていきました。また、入社3年目に二級土木施工管理技士の資格を取得し、入社4年目で現場代理人になることができました。
公園の造成の現場です。突貫工事で大変忙しい現場だったのですが、毎日変わっていく風景を見るのがとても楽しかったです。公園が出来上がってから、子供と一緒に遊びに行けたこともいい思い出です。その経験は、技術者としての今の私の大きな支えになっています。この公園だけではなく、自分が携わっていた現場を子供と一緒に見て回ることもモチベーションに繋がりました。
制度面ではだいぶ変わってきて、育児休暇や時短勤務などはもちろんですが、1時間単位で取得できる休暇など、現場勤務でも個々の事情に配慮して柔軟に対応してもらえるようになりました。また、コロナウイルスがまん延したときには在宅勤務制度も導入されました。これらの制度は男性も取得可能です。
また、書類が電子化されたことも大きな変化です。現場では、台帳や図面をA1サイズの大きさに印刷して、製本することからスタートするので、台帳をめくる手間や図面を持ち運びすることを考えると、負担は少なくなっていると思います。私も就職したての頃の感想として、書類が重くて大変だったと記憶しているのですが、今はそういうことはほとんどなくなっていると思います。
建設業界に限りませんが、託児所(病児保育)があるといいなと思っています。幼い子供が熱を出すなど体調を崩すと、仕事を休まざるを得ないという方は多いと思います。昔は自分の親や家族に預けることもできたでしょうが、今は核家族化が進んで、身近に子供を任せられる家族や親類がいないという場合の方が多いでしょう。金沢市内でも病児保育を行っている託児施設は数えるほどしかありませんし、この問題は切実だと思うので、是非整備していただきたいです。
ただただ「子供に恥ずかしくない姿を見せたかった」に尽きますね。建設業は子供に誇れる仕事です。建設産業で仕事をしている! と自分の子供にも胸を張って言えるから、ここまで頑張ってこれたのだと思います。
若い技術者の教育に力を入れたいです。自分だけが理解しているのではダメで、たとえ自分がいなくても作業が進むような環境を作らないといけないと、最近強く思うようになりました。知識や技術の伝承はもちろんのこと、トラブル発生時にどう決断して、どう対応するかなども伝えていきたいです。
経験に拠るところもありますが、ベストでなくてもベターな対応ができるよう、サポートを得るための社内・社外における信頼できる人間関係の構築は欠かせません。協力会社さんにはそれぞれの分野でのプロがいらっしゃるので、いざ自分が困ったときに助けてもらえるような関係を作り上げることが大切です。
私はそのために現場作業員の皆さんと同じ作業をしてきたつもりです。土のうを作る作業にしても、作業員さんと並んで同じように作ってきました。その作業がどれだけ大変か、自分自身が体験することで作業員さんに対してより敬意をもって接することができると思うからです。同じ目線で同じ作業をすることで、作業員さんからも信頼してもらえる。泥臭いですけど、こういう地道な努力が実を結ぶことをこれからの若い人に伝えていきたいです。
建設業は、男性でも女性でも、建築科・土木科を出たからできるとか、普通科卒だからできないとかはありません。みんな同じところからのスタートだと思います。建設業に就職して、現場で初めにやる作業は知識がなくても誰でもできると思います! そこから向上心を持って、自分がこうなりたいという目標をモチベーションにして仕事に取り組むことが大切です! 頑張ってください!
加賀藩が豊かであった様子を表す『加賀百万石』に、人との繋がりを示す『結』を合わせた「百万石小町『結』」。まず、そのネーミングがとても印象的で、どんなお話を聞かせていただけるのかと取材前からワクワクしていました。
先駆者である森高さんの苦労された体験等をもとに、山岸専務をはじめ、協会の皆さんのアイディアを織り交ぜて、どうやって働きやすい環境を構築するかを組織的に、前向きに取り組んでいらっしゃるのが印象に残りました。年間の活動もスケジュールがしっかり組まれていて、女性同士が話せる機会もかなりあるので、安心して働くことができると思いました。
取材を終えて、建設業に入職した後、「人とのつながりを大切に、皆がやりがいを見つけ、活躍して欲しい」「ひとりひとりが充実感をもって、輝いて欲しい」という思いが『結』には込められているんだな、深い! と感じました。
「百万石小町『結』」ならびに森高さんの益々の
ご活躍をお祈り申し上げます!
伊沢