2022年の建設業界は、過去に例のない資材価格の高騰に直面した。ウクライナ情勢の悪化や急激な円安進行により原油や鉄鉱石、石炭、銅など主要な原料価格が高騰し、その影響から資材価格が広範囲かつ大幅に上昇した。
建設業界においては、受注業者や資材メーカーの採算悪化が懸念され、原材料費などの取引価格を反映した適切な請負金額の設定やスライド条項適用に関する議論が活発となった。
これを受け、国土交通省による単品スライド条項の運用ルールの見直しなど、資材価格高騰に対応すべく対策が図られている。こうした背景のもと、調査リポートでも、アスファルト混合物、生コンクリート、鋼材、燃料油といった価格動向が注目される資材を中心に取り上げてきた。
建設工事で使用される資材の総合的な価格動向を示している建設資材物価指数(10 月)は、建設総合全国平均で137.2 と前月比1.7Pt の増加。2020 年8 月から27 カ月連続プラスとなり最高値を更新した(図表-1 参照)。
直近4カ月は増加幅が縮小傾向で推移していたが再び拡大した。石炭価格上昇の影響を大きく受けたセメント、生コンクリートの上伸が指数上昇に大きな影響を与えた。建設資材価格の上昇傾向が表れ始めた2020 年6月号(東京)時点と比較すると幅広い資材で値上げが進展している(図表-2 参照)。
図表-2 主な品目の価格推移【東京】
(2020年6月号から2022年12月号の推移)
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この一年間で見ると異形棒鋼、生コンクリート、コンクリート型枠用合板、電線、ガス管は過去最高値を更新しており、資材価格が歴史的に高騰した一年だといえる。なお、異形棒鋼は原料の鉄スクラップ急落を受け下落、昨年のウッドショックで急騰した管柱は、欧米からの入荷量の回復、国内の住宅需要の落ち込みから下げ基調に転換している。総じて、値上げが一部浸透した資材では踊り場を迎えており、足元では「横ばい」で推移する資材が目立っている。
一方、生コンクリート、アスファルト混合物は、原材料高や輸送コストの増加を背景に各地で値上げ交渉が続いており、上げ幅及び上伸都市数が拡大している傾向が顕著である。5 月号から12月号までの価格変動状況を見ると、生コンクリートは1 都市・1 回当たり上伸額が2,000 円以上となる都市が掲載520 都市の半数を超え、アスファルト混合物はほぼ全ての掲載都市で値上がりし、250都市で2回以上の値上げが浸透している(図表-3、4 参照)。
建設物価主要資材40 品目の先行き気配を半年前と比較すると「強含み」が21品目から5品目に減少、「横ばい」は15 品目から33品目に増加、「弱含み」は4品目から2品目に減少している。価格は安定化したように見えるが、現状の価格転嫁ではコストアップ分を吸収できないとして値上げ交渉を継続している資材は多い。
今後は、これまでの価格転嫁未達分に加えて、エネルギー価格の上昇分や副資材の値上がり分を含めた値上げ交渉が行われる見通しにある。しかし、原料価格の高騰を背景とした大幅な値上げ進展後の断続的な値上げに対して需要家の理解をどこまで得られるかなど、各資材・地域ごとの価格動向は目が離せない状況。引き続き、建設物価で公表する最新の価格情報に注目されたい。
注1. 主要資材の最新市況動向は、当会ホームページで毎⽉18 ⽇(⼟⽇祝⽇の場合は翌営業⽇)に更新しています
注2. Web 建設物価では資材の価格推移グラフや指定した時点間での価格変動が容易に確認できます
注3. 建設資材物価指数は、建設資材の総合的な価格動向を⽰し、分析・観察など幅広く活⽤されています
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⼀般財団法⼈ 建設物価調査会
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調査統括部 03-3663-3892