建設物価調査会

会社の仲間として受け入れ、接することが大切

有限会社赤波江組(とび・土工工事業)
神奈川県横浜市

2015年から始まった国土交通省の「外国人建設就労者受入事業」や2017年11月1 日に施行された「外国人技能実習制度」により、建設分野における外国人が増加している。言葉や文化、習慣の違いを超えて外国人材が活躍できるようにするためには、受け入れ企業はどのような準備や対応が必要だろうか。ベトナム人技能実習生3 人を受け入れた横浜市の有限会社赤波江組にお話をうかがった。

有限会社赤波江組代表取締役
大居靖夫さん

現地での選考では人柄を重視

 建設工事の現場でとび工事を担う有限会社赤波江組は、外国人技能実習制度を活用し、2018年11月からベトナム人技能実習生3 人を受け入れている。背景にはやはり人手不足がある。転職サイトと連動したHP開設など、人材募集のために大きな投資をしたが、なかなか人が集まらない。採用してもすぐに辞めてしまう。同社代表取締役の大居靖夫さんは複数の企業や関係者から話を聞き、技能実習生の受け入れを決意した。

 受け入れをサポートしているのは、実習生をさまざまな業種に紹介している協同組合(以下、組合)。大居さんは昨年1 月にベトナムに行き、日本語学校で半年ほど学んだ十数人の候補者と面談して20代から30代の3人を選んだ。学歴は中卒1 人と高卒2人。「選考にあたっては筆記試験と足場を組む実技試験と面談がありますが、重視したのは人柄です」と大居さんはいう。面接では相手の目を見て話しているか、実技試験の順番を待つ時の態度もチェックした。

 ベトナムへは単独で行った。数社で行く場合もあるが、良い人材を取り合いになったり、お互い遠慮してしまうことを避けたいという。

実際の実習生候補者の履歴書

寮にはwi-fi を設置

 実習生たちは、来日して約1カ月間、組合の研修施設で日本語をはじめ、日本での生活ルールや習慣など実践的に学んだ。大居さんは3DK マンションを寮として用意し、すぐに生活できるように家電や収納棚、布団から洗剤、調味料に至るまで必要な備品や日用品を一通り揃えた。組合から事前に用意する物のリストが渡されていたので、準備に困ることはなかった。実習生はベトナムにいる家族とはテレビ電話で毎日連絡を取っている。寮には必ず無線 wi-fi の設置が必要だという。

 寮費は水道光熱費込みで2万5千円。備品や日用品などの経費は、実習生の負担としてもいいが、会社で購入した。大居さんは「最初の投資は結構お金がかかります。でも実習生が一生懸命頑張ってくれるのだったら先行投資も必要だと思っています」という。

 保温機能のある弁当箱、水筒、さらに自転車も用意した。ベトナムに比べると日本は物価が高いので自炊し、職場にも毎日手作りの弁当を持参する。3 人は寮で食事係、 洗濯掃除係、買い物係と役割分担をしているという。 これからは気温が高くなるので熱中症への備えも欠かせない。「現場でも冷水機や製氷機を入れてくれるなど熱中症対策をしてくれますが、ファンが回る空調服を購入して支給しようと思っています」。

 「実習生の1人は、以前に台湾で3 年ほど働いていたが月の給料は3万円程度で、家族への送金もあまりできなかったと聞きました。 現地の日本語学校に入学するのに60~120万円かかるため、彼らは銀行の融資を受けて学費を払っていました。銀行への返済のために毎月10万円ずつベトナムへ送金しています。既婚者も未婚者もいますが、ベトナムの家族と離れて頑張っているのです」と大居さんは実習生を思いやる。

同じ現場でマンツーマンの指導

 3人を同じ現場に配置し、実習生1人に対し日本人従業員1人がマンツーマンで指導する。「他の会社では指導の負担を軽減するため実習生を1人ずつ違う現場に配置するケースが多いようですが、それでは実習生も心細い。3人いれば助け合えるし、孤独にもなりません。今の現場は長期のプロジェクトなので、仕事もしっかり覚えられます。日本人従業員も実習生に怪我をさせたら大変だと、いろいろ教えています」と大居さんはいう。

 ベトナムで6カ月間日本語を学んできた実習生だが、日本語のレベルはあいさつ程度だった。最初はできるだけ早く日本に馴染んで仕事を覚えて欲しいという思いから、現場ではベトナム語を禁止した。しかし、実習生たちが休み時間に黙って下を向いている姿を見て、今はベトナム語も許可している。仕事で分からないことをベトナム語で教え合ったり、休み時間は楽しそうに談笑するようになった。

最初に教える日本語は「危ない」

 「危ない」「立ち入り禁止」など安全に関わることは最初に教えた。とっさの時は、大声を出すこともある。その後には必ず、なぜ危険なのかを説明するといったフォローが重要だという。外国人だから英語が通じるという思い込みにも注意が必要だ。危険な時に「ストップ」といっても通じないことがある。

 文化の違いもある。大居さんは「こちらが真剣に注意しても、ただ微笑んでいるのです。最初は戸惑いましたが、ベトナムは微笑みの国といわれていますので文化の違いなのだと考えるようになりました」。

 建設工事ではたくさんの用具があり日本語で名前を覚えるのも大変だ。組合では、建設現場で使う用具の写真とともに日本語とベトナム語で名称が書かれたマニュアルを用意して勉強させてくれたという。現場で長さ1.5mのパイプ「イチゴウ」と言ったら、「ヤゴ」(850㎜)を持ってくることもあったが、日本人従業員も粘り強く教えているので、覚えるのも早い。

現場用語の説明資料

指導する日本人にも配慮

 とび職の仕事はチームで作業をするのでコミュニケーションが大事になる。「私は彼らに日本語を覚えろといっていますが、自分が外国に行っても、そんなに簡単にはその国の言葉を覚えられません。もし自分たちが、外国に行って言葉が分からないからといって馬鹿にされたり、仲間外れにされたら怒りますよね。それと同じことです。会社の仲間だと思わないと絶対うまくいきません」と大居さんは仲間意識の醸成こそが重要だという。職場でお酒を呑みに行く時にも必ず誘うようにしている。

 一方で、教える日本人従業員への配慮も欠かせない。「ただ面倒を見ろといっても難しいので、指導をする従業員の給料を上げました。一生懸命やってくれています。最初は苦労していましたが、人に教えることによって自分も伸びていきます」。

会社も実習生も安心できる支援体制

 受け入れ企業は、従事させた業務や指導の内容を記録する技能実習日誌を作成し、技能実習終了後1 年以上保管することが求められている。大居さんは、組合からの的確なアドバイスに助けられているという。組合の担当者は毎月1回、実習生3人にヒアリングをして、実習生巡回報告書を提出してくれる。面談時には会社側からの要望も伝える。サポートには1 人に対して毎月定額を支払うが、さまざまな支援を受けられるメリットは大きいという。「最初の時は組合の担当者とベトナム人通訳も一緒に来てくれました。どうしても話が通じない時は通訳に連絡をして電話で話してもらったこともあります」と大居さんは当時を振り返る。 困ったことがあれば相談できるなど、実習生にとっても安心できる。

2 期生の受け入れもベトナムから

 大居さんは工事部長とともに今年5月にベトナムに行き2期生の面接と試験を実施した。インドネシアやミャンマーの実習生も注目されているが、2期生もベトナム人を受け入れることにした。2期生には1期生の先輩もいるので、受け入れもスムーズにいくと考えている。「仕事はOJT で覚えればよいので、とにかく日本語を教えて欲しいとお願いしています。1期生の1人はベトナムに帰ってからもとびの仕事を続けたいといっています」といって大居さんは笑顔になった。

ベトナム人技能実習生の3 人


<受け入れ側のポイント>

  1. 会社の仲間として接する
  2. 指導する日本人従業員にも配慮する
  3. 寮には無線wi-fi を設置する
  4. 職場の呑み会や懇親会には必ず誘う