建設物価調査会

建設物価2023年2月号

株式会社大林組四国支店 金澤楓花さんにインタビュー

見知らぬ誰かの「 ありがとう」のために

 2020年2月号で取材させていただいた株式会社大林組四国支店の齋藤久仁子さんから、新たに若手の女性土木技術者が配属されたとの連絡をいただき、取材に行ってきました!

今回インタビューさせていただいたのは、入社3年目の金澤楓花さんです。






松山駅付近高架化
南江戸工区その1工事共同企業体
JR松山高架JV工事事務所
金澤 楓花さん



どうして建設業に就職しようと思いましたか?

 私は岩手県宮古市出身で、中学1年生の時に東日本大震災で被災しました。家の前の国道が被災し、公道を通行しての移動が困難な状況になりました。でも、びっくりするほど復旧が早かったです。その時は、何一つ土木のことを知らなかった私でしたが、復旧工事に携わってくれた人たちに対して、心の底から「ありがとう」と思いました。私もほかの誰かに心の底から「ありがとう」と思ってもらえるようなモノづくりがしたい。それがあの時、素早い復旧工事で助けてくれた建設業界への恩返しになるのではないかと考え、土木の道に進むことを決心しました。

 大学では土木学科(土質力学専攻)に進みました。授業では屋外で行う実習が多く、土木の道には体力が必要だと思い、アーチェリー部に入部しました。アーチェリーは競技時間が長いので基礎体力をつけることができました。




大林組に就職したきっかけは?

 伊丹空港を利用した際に、大林組の大きな看板を目にして、「こんな大きな看板を出せる会社ってすごい!」と気になったのが最初です。それがきっかけでインターンに参加したのですが、大林組の若い社員さんがノビノビと仕事をしていらっしゃる印象がとても強かったです。そうやって働けるのはきっと会社全体が楽しく仕事をしているからだろうと考え、自分もそういう環境で働きたいと思いました。若手がいきいきと働けるのは会社のサポートもしっかりしているのだろうとも思い、大林組を希望して就職しました。

 入社直後は、トンネル工事の現場に1年半いましたが、異動で四国支店に来てからは瀬戸大橋や鳴門大橋などの大きな橋に魅力を感じ、希望して今の高架橋の現場に配属となりました。

実際仕事をしてみてどうでしたか?

 想像していた以上に女性技術者が多く、また、女性に対する配慮もきちんとしていることにびっくりしました。

最初に配属された山間のトンネル工事の現場では、私と事務の方しか女性がいなかったのにも関わらず、きちんと女性用化粧室や更衣室、休憩所が設置されていました。実際に現場に出る女性社員は私しかいないのに、そのために専用の設備を置いていただける配慮に感銘を受けました。

 建設業界に就職したいと両親に打ち明けた時に、女性が工事現場で働くのは大変だからと反対されていた時期もありましたが、この状況を説明した今では私がこの業界で働くことに安心してもらっています。



現場での担務とこれまでの現場のエピソード

 今の現場では踏切を除却するために、駅周辺の道路に高架橋を架ける工事をしています。私は出来形管理や品質管理といった仕事を任されていて、設計図面どおりに協力会社さんが施工できるように、事前に測量を行うなどしています。経験を積むにつれて、関わることのできる仕事が増えるのが楽しみです。これまで携わった仕事は地下埋設物ばかりでしたが、今回の現場は高架橋という誰の目にも見えるモノなので、竣工を想像してワクワクしています。

 以前に携わった用水路の工事現場は、4カ月で4kmの水路を修復するという工事内容で、工期内に完成させられたのはとてもいい経験になりましたし、自信にもなりました。出来形をとるために径が1mくらいの管の中を2時間くらいかけて歩く作業を何回も繰り返したので、完成時に「問題なく通水しました」と聞いた時には、込み上げるものがありました。

ただ、地下の用水路なので人の目に触れることもなく、「こんなものができたんだ!」ということを誰からも言われないですし、地図にも載りません。それでも私には「この道の下には私の携わった用水路が通っているんだ!」と分かっているので、満足しています。見えなくても誰かの役に立っている。それがやりがいなんだなと思っています。




今後やってみたいことは?

 将来は設計業務に携わってみたいです。今は現場のことしかわからないので、現場の目線でしか工事を見ることができませんが、設計を経験したら別の視点で現場を見ることができると思っています。同じものでも違う角度から見たら新しい気づきがあると思うので、設計業務はぜひやってみたいです。




女性がもっと活躍するために何が必要?

 会社の制度やサポートはもうだいぶ充実していて、現状でも女性技術者が多くなってきていますが、一方では「建設業で女性が働いているのは珍しいね」と思っている人がまだまだたくさんいると思います。実際はそうではないのに、現状を知らない人や実際に女性技術者に関わったことのない人がずっとその考えを持ち続けているのではないでしょうか。多くの女性が活躍している現状を知ってもらい、その意識を変えることができれば、今以上に女性が活躍できる業界になるのではないかと思います。


国内の建設業が将来的にどうなっていると嬉しいですか?

 まだ建設業にキツい、汚いというイメージを抱いている方は少なくないと思います。でも実際はやりがいがあってとても魅力的な業界であることを、働いている私達が伝えていかないといけないと考えています。目には見えなくても、誰かの役に立っている建設業の素晴らしさをすべての人に知ってもらいたいです。

※写真撮影時のみマスクを外しています。



 金澤さんの最近の趣味はゴルフ。お休みの日は社内の誰かと予定を合わせてゴルフ場に出かけてリフレッシュしているそうです。仕事上、直接関わりがない人でも、ゴルフを通じて仲良くなるコトもあるそうで、社内コミュニケーションもバッチリですね。仕事もプライベートも充実している金澤さん。これからの益々のご活躍をお祈りしています!




より働きやすい職場を目指して  -株式会社大林組-

株式会社大林組 四国支店
土木工事部長 鯉田 昭雄さん
総務部 総務課長 中島 英之さん

鯉田さん
中島さん

 株式会社大林組四国支店には、技術系女性社員が土木で2名、建築と設備で6名在籍しています(2022年7月1日現在)。

 2021年4月には、本社に「ダイバーシティ&インクルージョン推進部」を設置し、全社的にダイバーシティ&インクルージョンを推進しています。全社員のワークエンゲージメントの向上とウェルビーイングの実現を目指して、性別、国籍、年齢などにとらわれることなく、各々が能力を発揮し活躍できる職場づくりを進めています。また、推進の評価指標として、2024年度までに女性役職者と技術系女性社員の比率を12%程度にすること、男性社員の育児休職・育児目的休暇(男性育休)取得率を100%とすること等を目標に設定しています。

 配属先は性別に関係なく決定しており、ジョブローテーションにより色々な職場を体験しながら、社員一人ひとりがどのような業務に適性があるかを見極め、目指す理想の自分像に近づけるよう、会社としてサポートしています。

 女性社員へのフォローとしては、キャリア支援やライフステージ転換期のサポートにも力を入れています。女性社員が現場で勤務しやすい環境や制度の整備はもちろんのこと、固定的な男女の役割分担意識の払拭を目的としたアンコンシャスバイアス研修の実施や、女性リーダー育成を目的としたセルフリーダーシップ研修の実施、育児休職中や復職後のサポートも行っています。

 また、有志の女性社員で、オンラインのランチミーティングを開催し、日常の課題について相談し合うといった活動もしており、女性社員同士で気軽に意見交換できる場として好評です。

 株式会社大林組のブランドビジョンは「MAKEBEYOND つくるを拓く」です。モノ作りが好きで、チームで成し遂げることにやりがいを感じ、これまでの建設産業の枠を超えた挑戦を忘れず、常に新しいことに取り組める人にぜひ門を叩いて欲しいと思います。




チームひまわり 現場レポート

 東日本大震災の被災後、津波で流された幹線道路などの生活に必要なインフラ機能を素早く復旧させてくれた建設業に対して、感謝の念を持ち続けた金澤さん。建設業へ恩返しがしたいという思いを叶えて就職した今、インタビューに答える姿はキラキラと輝いて見えました。

就職することがゴールではなく、知識を身に付けて自分のできることを増やし、今以上に貢献したいという希望に満ち溢れていて、また、心の底から建設業を愛して止まない気持ちが、言葉の端々から伝わってきて、感動して少し涙ぐんでしまいました。一人でも多くの人に、金澤さんの大好きな建設業の良さが伝わるといいですね!

                      伊沢