建設物価調査会

公益社団法人土木学会 国際センター留学生Gr.主催2020年留学生対象企業説明会を開催しました

公益社団法人土木学会 国際センター 澁谷有希子



土木学会国際センターでは、日本における国際人材の育成とともに日本で学ぶ外国人留学生や若手外国人技術者の支援を行っている。2020年12月12日(土)に行われた留学生対象企業説明会の様子をお伝えします。(前回、土木学会国際センターの活動を紹介した記事は2021年1 月号です。(2021年1月号の記事を見る


 今年も国際センター留学生グループ主催による「留学生対象企業説明会」の時期がやってきました。毎年、土木学会の土木学会講堂で行っていましたが、このコロナ禍の状況下、例年のように留学生と企業が集まることは困難と判断し、今年はオンライン開催に踏み切りました。

説明会の目的

 本説明会は2013年から毎年実施し、今年で8 年目を迎えます。説明会の目的は、日本で勉強する留学生に日本の土木業界の動きや企業の事業を紹介することで、留学生が描くキャリアパスの選択肢の一つとして「日本」を考えてもらうきっかけを作ることにあります。

毎年、大学・大学院で学ぶ留学生が50名近く参加しています。当日は土木学会講堂に集まり、日本の建設関連企業の事業説明と日本企業で実際に働いている外国人技術者の経験談を聞き、その後、各参加企業ブースを訪問し、事業内容の詳細や留学生の採用に関する情報を得ています。

昨年の説明会の様子


オンライン開催の不安

 本説明会のオンライン開催は初の試みであり、手探りで準備に取り掛かりました。参加企業や留学生への案内、プログラム構成と運営、オンラインシステム機器の配置、さらにオンライン行事に伴う個人情報の取扱い等について検討し、何度も修正を繰り返しました。その中で、スムーズに運営するには、参加者のオンライン説明会の入退室誘導と簡単なガイドラインも必要であることに気づきました。外部のオンライン開催事例を参照、参加者の立場に立ってシミュレーションを行うなど、試行錯誤を続けました。また、参加企業への事前説明会を設け、課題や懸念をクリアしつつ本番のイメージを掴んでいきました。

 当日、早めにログインして参加者が説明会に接続・入室するのを待ちました。その間、インターネット回線に不良はないだろうか、企業とうまく接続できるだろうか、留学生は入室するだろうかという不安ばかり考えていました。気づけば開催時刻が近づき、次々に企業と繋がり、全参加予定企業13社が揃い、留学生も続々と入室してきました。まるで、朝、校門が閉まろうとするところに学生が駆け込んでくるような感じでした。

 結果、説明会スタートの13時には参加者は100名を超え、その内、留学生は約80名と参加登録数の9 割以上に上りました。これはうれしい驚きであり、ほっとした瞬間でもありました。


説明会 スタート

 説明会は13:00~17:15まで開催し、13:00~14:00「オープニングセッション」、14:00~17:15までは各社の説明会「カンパニーセッション」「先輩セッション」に分かれています。

 オープニングセッションでは、本説明会担当の留学生グループリーダー、党 紀准教授(埼玉大学)の挨拶から始まり、㈱安藤・ハザマで現在働いているLuisa Santa Spitia 氏の就職活動と日本企業で働く海外出身技術者としての経験談を発表していただきました。コミュニケーションの難しさ、日本語での事務処理・資料作成の大変さなど、働いていて感じる悩みはあるものの、日本で働くことのやりがい・面白さ。そして、悩むだけではなく同じ技術者同士で交流を持ち、共有し合い、海外出身だからこその自分の強みを理解することが重要だと話しました。Santa Spitia 氏の発表は“先輩”から説明会に参加した留学生に向けたエールのように感じ、留学生は身近な経験談に真剣に耳を傾けていました。その後の“先輩セッション”ではSanta Spitia 氏へ質問が相次ぎました。

 最後に参加企業13社の1 分間PR を行いました。この企業PR は、初めて試みた工夫の一つでしたが、短時間だからこそ簡潔にテンポよく進み、留学生に各企業の特徴を印象付ける効果があったようで留学生にも好評でした。

カンパニーセッション

 連続した20分× 2 コマ、休憩含む計45分を1 枠とし、各社に時間の使い方はお任せしました。業務紹介ビデオを流したり、海外出身技術者が主体となって会社概要を説明したり、若手技術者が質疑に応じるなど、各企業の工夫を凝らした説明となっていました。

 私が聴講した範囲ですが、このセッションに共通して感じたことは、各企業の使命感、海外出身技術者採用への前向きな姿勢と職場環境への配慮でした。そして、ある企業の海外出身技術者から“仕事が好きだ“という言葉を聞いた時、この説明会に来ている留学生からも同じ言葉を聞きたい、彼らがそう言える企業に就職するよう、この説明会をより良い形にしたいと強く思いました。




オープニングセッションを行う党先生

留学生と技能者の交流“先輩セッション”

 今回の説明会で、もう一つ工夫した点は“先輩セッション”です。留学生が、日本に留学し学位を修めた後も、日本に残り就職することを選択した先輩たちと直接話す場として、14:00以降、カンパニーセッションと並行して行いました。“先輩”にはSanta Spitia 氏(㈱安藤・ハザマ)、Amirfarkhan Radzali 氏( 西松建設㈱)、Jiyuan Shi 氏( 日中コンサルタント㈱)、Zuo Rongzhi 氏(㈱川金コアテック)の4 名を迎えました。

 彼らの経験は、留学生がイメージしやすいロールモデルであり、相談できる“先輩”であり、日々の職場を知る情報源でもあります。セッションが始まり、留学生は、就職活動に向けた具体的な準備、インターンシップ制度の有無、日本人と海外出身者の採用枠と手順の違い、求められる日本語能力と実務で必要な日本語能力、実際の業務等、具体的な質問を投げかけ、先輩たちは自身の経験を基にアドバイスしました。セッションが終わる頃には、留学生は自身の不安点を解消でき、これからの挑戦に向けて熱量が高まったように見えました。一方、先輩も“先輩”としての自覚と自信を深め、後輩たちを応援しているようでした。短い時間で消化不足感も拭えませんが、有意義なセッションにすることができました。

 カンパニーセッションも、「もう少し時間が欲しい」という声もあったようですが、説明会後に連絡を取りあう企業と留学生もいるようです。多少なりともこの説明会が役割を果たすことができ、うれしく思います。今回、初のオンライン説明会であるため、どのような支障や問題が発生するか分からず、検討段階から何度もアイデアを出し合い、思いつく事柄から対応を考えて実施に至りました。この経験は当会としても有益な情報となり、次回の実施を支えてくれるだろうと考えています。

スケジュールイメージ
先輩セッションの様子

最後に

 この度のオンライン企業説明会の実施に向けてご協力、ご支援くださった企業の皆様、留学生、彼らを支援してくださった大学・大学院の先生方々に心から感謝を申し上げます。また、先輩として留学生を応援してくださったSanta Spitia氏、Radzali 氏、Shi 氏、Zuo 氏、にもお礼を申し上げます。彼らの協力無くしては“先輩セッション”は実現しませんでした。彼らの元気に働く姿と実経験に基づくアドバイスは留学生には印象的であり刺激にもなったと思います。今回の経験を次回の留学生対象企業説明会に活かして参ります。