建設物価調査会

建設物価2015年12月号

女性の活躍を推進−けんせつ小町− (一社)日本建設業連合会

「建設業での女性活躍を支援するプロジェクト」

当調査会では、「建設業での女性活躍を支援するプロジェクト」として、女性職員を中心としたプロジェクトチーム(愛称“チームひまわり”)を立ち上げています。第5回目は、(一社)日本建設業連合会の取組みを紹介します。

女性が注目されている理由

安倍内閣が日本再興戦略において女性の活躍推進を柱の一つとしたことを契機に各業界で取組みが活発化しており、建設業界においても大きく注目を集めていますが、建設業が女性の活躍を推進する理由は、まずは、人材不足対策そのものです。日建連が今年3月に公表した長期ビジョンでは、2025年までに128万人程度の技能労働者の減少を見込んでおり、生産性の向上で35万人分の省人化と、 90万人の新規入職者確保という目標を掲げています。

少子化で生産年齢人口の減少が見込まれる状況で、90万人はかなり高い目標であり、20万人以上を女性で確保することを目標としています。なお、90万人は目標であり、決して、90万人が不足するということではありません。

次に、男性を含めた入職・定着促進です。建設業と言えば、3K(きつい、汚い、危険)というイメージですが、女性が働きやすい職場にすることで、男性、特に若年層も働きやすくなり、入職・定着促進になります。

三つめは、ダイバーシティの推進です。建設業といえば長時間労働が恒常化し、週休2日も定着していないのが実態ですが、女性の活躍によって、今までの建設業における働き方をダイバーシティ(多様性)の観点から変革していくことが期待できます(図1)。

そして、建設業のイメージアップです。建設業というと男性社会というイメージですが、多くの女性が建設現場で多様な職種で活躍していることを広く国民に発信することで、建設現場や建設業に対するイメージの改善・向上が期待できます。

【図1】 年間労働時間の比較
【図1】 年間労働時間の比較

女性の就業状況

建設業の就業者数は505万人ですが、うち女性は75万人で、建設業における女性の割合は14.9%です。全産業での就業者数6,351万人のうち女性は2,729万人で、女性の割合は43.0%ですから、建設業は全産業の3分の1程度しか女性がいないことになります。特に、主に下請として建設作業に従事する技能者は全体で344万人ですが、女性は8万人(2.3%)しかいません(表1)。

【表1】 就業者に占める女性の割合

高齢化の進行

高齢化が著しいのも建設業の特徴です。図2は建設業と全産業で就業者の年齢構成を比較したものですが、建設業は55歳以上の高齢者が多く、29歳以下の若者が少ないのが見て取れます。 20年近くにも及ぶ建設投資の減少局面の中で若者の採用を抑制し続け、団塊世代が高齢化した結果です。

【図2】 建設業と全産業の年齢構成の比較
【図2】 建設業と全産業の年齢構成の比較

日建連の取組み

日建連では、団塊世代の大量離職を見据え、平成21年から建設技能者の確保・育成を重点課題として取り組んできましたが、平成25年の秋、首相官邸で開催された「経済の好循環実現に向けた政労使会議」において、中村会長が「女性を活用するための対策を早急に講じたい」と発言したことを機に、女性活躍推進の取組みを開始しました。

以降、専門工事業団体へのヒアリング、女性技能者へのアンケートなどを行い、平成26年3月に「女性技能労働者活用のためのアクションプラン」を発表しました(図3)。

【図3】 女性技能労働者活用のためのアクションプラン
【図3】 女性技能労働者活用のためのアクションプラン

「女性技能者について5年以内に倍増を目指す」ことを目標にしており、具体的には「建設業には女性が活躍できる職種が多数あり、女性の入職を歓迎することを積極的にアピールする「」女性が安心して使用できるトイレの設置など、環境整備に最大限配慮する」「時差出勤、帰宅制度など、出産や子育てを支援する制度を導入する」ことなどに取り組むこととしました。

また、平成26年8月には国土交通省と建設業5団体連名で「もっと女性が活躍できる建設業行動計画」を策定しました(図4)。

【図4】 もっと女性が活躍できる建設業行動計画
【図4】 もっと女性が活躍できる建設業行動計画

技能者のみならず、主に元請として施工管理を担当する女性技術者も5年以内の倍増を目指すこととし、女性を登用するモデル工事を実施することや、女性を主体とするチームの情報発信を行うことなどを決定しました。

日建連では同時に「もっと女性が活躍できる建設業を目指して-日建連の決意-」も公表し、女性管理職を5年間で倍増、将来においては管理職に占める女性の割合を3割にすることを念頭に、意識改革を促すことなどを決定しました(図5)。

【図5】 「もっと女性が活躍できる建設業を目指して-日建連の決意-」
【図5】 「もっと女性が活躍できる建設業を目指して-日建連の決意-」

なでしこ工事チーム

「もっと女性が活躍できる建設業行動計画」を受けて、日建連では工事現場において女性の技術者・技能者で組織するチームとして「なでしこ工事チーム」の登録を開始し、平成27年9月3日現在、53チームが登録しています。マスコミにも多く取り上げられており、第1号の登録チームには太田国土交通大臣(当時)に現地で激励していただきました(写真1)。

また、夏休みの女子小中学生向けに現場見学会を実施するなど、建設業のイメージアップに貢献してくれています(図6)。

【写真1】 太田国土交通大臣(当時)となでしこ工事チーム
【写真1】 太田国土交通大臣(当時)となでしこ工事チーム
【図6】 けんせつ小町活躍現場見学会のポスター
【図6】 けんせつ小町活躍現場見学会のポスター

けんせつ小町

建設業で働く女性を表す言葉には「ドボジョ」という呼び方が以前からありました。日建連は「ドボジョ」という「呼び方」を否定するわけではありませんが、「ドボジョ」は「土木女子」の略称です。建設業で働く女性には建築系で働く女性もおり、「ドボジョ」は建設業で働く女性全体を指す呼び方としては相応しくありません。

日建連では、建設業には女性が力を発揮できる仕事が数多くあること、そして建設業界を挙げて女性の更なる活躍を歓迎していることに広く関心を持っていただくことを目的として、愛称の募集を行いました。平成26年9月から10月にかけて2,940件の応募があり、「けんせつ小町」が選定されました。

選定理由は、ストレートに「建設」と、美しく聡明な女性を表現した「小町」の組合せは、建設業界の呼称として解りやすく、また、「けんせつ」はひらがな表記で、柔らかい雰囲気と親しみやすさが表現されているからです。

愛称の決定を受けて、ロゴマークも作成しました。ヘルメットをオレンジ系の花びらに見立て、建設業で明るく活き活きと活躍する女性を表現しています。5枚の花びらは、建設業の重要なファクターであるQ(品質)、C(費用)、D(工期)、S(安全)、E(環境)に因んでいます(図7)。

【写真2】 太田国土交通大臣(当時)に愛称を報告
【写真2】 太田国土交通大臣(当時)に愛称を報告

【図7】 けんせつ小町のロゴマーク
【図7】 けんせつ小町のロゴマーク

このロゴマークを活用して、ピンバッジやシールを作成して広く配布しています。また、建設業で働く女性を表す共通の愛称として、会員各社、マスコミ等にも広く活用するよう呼びかけています。

現場環境の整備

アンケートやヒアリングを行った中で多くの女性技術者・技能者から寄せられたのが、「安心して利用できるトイレや更衣室がない」といった、現場環境が女性を受け入れる体制になっていないという指摘でした。

こうした状況を踏まえ、日建連では建設現場において早急に女性に配慮した環境整備を進める必要があると考え、今年の4月13日に建設現場を女性たちが働きやすい環境にするための指針として『「けんせつ小町」が働きやすい現場環境整備マニュアル』を決定し、公表しました(図8)。

【図8】 「けんせつ小町」が働きやすい現場環境整備マニュアルの一部
【図8】 「けんせつ小町」が働きやすい現場環境整備マニュアルの一部

本マニュアルは、現場経験のある女性を中心としたワーキンググループで策定されたもので、元請企業が、まずやらなければならないことを「MUST」とし、更にそこから充実させるべきことを「BEST」とする区分けにより、現場に応じた具体的な改善方策を提示しています。

例えばトイレであれば、「女性専用で施錠管理可能とする」ことは「MUST」、「女性用と男性用を明確にエリア分けし、さらに入口を分ける」こと「BEST」としています。

けんせつ小町委員会

日建連では今年4月に「けんせつ小町委員会」を設置しました。これは常設の委員会であり、女性活躍推進の取組みを一時的なブームで終わらせてはならないというメッセージでもあります。

当委員会は委員40名のうち女性が15名という、日建連としてはかつてない構成で発足しました。4月13日には第1回目の委員会を開催し、女性を部会長とする部会を設置することや、部会の下に二つの専門部会を設置することなどを決定しました(写真3)。

【写真3】 けんせつ小町委員会の初会合の様子
【写真3】 けんせつ小町委員会の初会合の様子

今後、この検討体制で活動を具体化していくことになりますが、まずは建設業には女性が働ける職種が多数あり、建設業は女性の入職を歓迎していることをもっと広く知ってもらう必要があります。「けんせつ小町」の愛称とロゴマークを活用して、あらゆる機会を通してPRしていきたいと考えています。

次に、女性に建設業で働いてもらうためには、まず、現場環境を整備することが不可欠であり、『「けんせつ小町」が働きやすい現場環境整備マニュアル』がしっかりと現場に浸透するようフォーローをしていく必要があります。そのため、チェックリストを作成して、公表することを考えています。

また、女性の活躍を後押しするような表彰制度の創設や、上司・女性双方の意識改革を促す研修会の開催等も検討しています。

最後に、日建連は大手建設会社の団体ですが、女性技能者を採用するのは元請ではなく主として専門工事業者です。専門工事業者が女性を積極的に採用するよう、専門工事業者と十分に意思疎通を図っていきたいと考えています。



西園寺ルミがナビゲート「頑張れ!けんせつ小町おはようございます!」

新人現場監督が奮闘する姿を描いた物語

公演初日の9月29日、早速見に行ってきました。たくさんのお客さんでいっぱいです。「けんせつ小町」の認知度向上が背景にあるとも思いますが、予想以上の賑わいに正直驚きました。

この舞台はわたしと同じけんせつ小町の彩音(あやね)が新人現場監督として奮闘する姿を描いているそうです。同じけんせつ小町として共感する部分が多いのではないかと期待が膨らみます。

彩音役は元SDN48のAKANEさんです。歌手活動のほか、様々な舞台でもご活躍されているとのことで、どんなけんせつ小町を演じるかも見どころのひとつだと思います。いよいよ開演です。

頑張れ! けんせつ小町
舞台 頑張れ! けんせつ小町おはようございます! 案内
みんなで懇親会を開催
台風直撃、現場を守れるか?
フィナーレはみんなに元気に挨拶

主催者の建設マン.com山本代表に伺いました

発注者にとって建設物は夢や希望であり、人生そのものかも知れません。ものづくりの最前線で働く建設マンとけんせつ小町には、それを実現させる責任があります。安全で安心な暮らし、命を守る使命があります。

建設マン・けんせつ小町は日本の未来を創る担い手です。建設マン.comは、その仕事の意義や拘りそしてやりがいを伝えて参ります。 HP・FBもご覧いただければ幸いです。舞台次回作もご期待下さい。

日本建設業連合会 広報部 五百木副参事に伺いました

日本建設業連合会も特別協賛している今回の舞台は、涙あり、笑いありのあっと言う間の1時間半でした。初めて現場に配属された女性現場監督の意気込みや、それを受け入れる現場の男性陣の戸惑い・葛藤が丁寧に描かれていて共感する場面がたくさん! 今から次回作が楽しみです。


西園寺ルミの編集後記

舞台に登場したけんせつ小町は、現場監督だけでなくクレーンオペレータ、左官工、鉄筋工と様々。また、それぞれの台詞に建設関係の専門用語も多くあり、限られた舞台空間にも関わらず、建設現場の様子がリアルに再現できていてびっくり。このような素敵な舞台を通じて、少しでも多くの方々にけんせつ小町を知っていただいて、とてもうれしく思いました。

西園寺

西園寺

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新人・若手社員が現場監督になるまでの物語

めざせ!現場監督

AB判/約170ページ
本体 2,000円+税

建設会社の新人・若手社員が現場監督になるまでの成長ストーリーを通して現場監督に必要な知識や考え方を「まんが」でわかりやすく描いています。「まんが」で表現しきれない部分は「解説ページ」で補足説明しています。