建設物価調査会

建設物価2018年1月号

女性活躍推進室を開設 ※通称:「たおやかルーム」女性が働きやすい現場づくりをサポート

「建設業での女性活躍を支援するプロジェクト」

当調査会では、「建設業での女性活躍を支援するプロジェクト」として、女性職員を中心としたプロジェクトチーム(愛称“チームひまわり”)を立ち上げています。第24回目は、株式会社森本組への取材と西松建設株式会社の女性技術者が活躍する「横浜湘南道路トンネル工事」を紹介します。


建設労働者の減少が建設業界全体の課題となっています。有名大学でさえ建設関連の学部は定員割れしてしまうほど建設業を希望する若者は減少しており、将来の担い手を確保することが困難な状況が続いています。株式会社森本組では、女性が働きやすい職場づくりや女性の活躍の場を広げることで労働力不足を解消しようと、平成29年4月に大阪本社3名、東京支店2名計5名の女性社員で構成する女性活躍推進室(通称:「たおやかルーム」)を開設し様々な活動を行っています。今回はそのメンバーの皆様にお話を伺いました。

「 たおやかルーム」のみなさん
左から 木村あゆみさん(東京支店)、本多優子さん(大阪本社)、佐藤吉彦女性活躍推進室長、西山絵里奈さん(大阪本社)、川邊桂子さん(大阪本社)、千島恵美子さん(東京支店)
「 たおやかルーム」のみなさん
左から 木村あゆみさん(東京支店)、本多優子さん(大阪本社)、佐藤吉彦女性活躍推進室長、西山絵里奈さん(大阪本社)、川邊桂子さん(大阪本社)、千島恵美子さん(東京支店)

女性の採用を強化

「たおやかルーム」という通称は、女性活躍推進室を立ち上げる際に全社員から名前を募集し決定しました。周囲に流されない確固たる芯の強さと女性特有のしなやかさ・やさしさを兼ね備えた女性社員が、森本組の求める人材像であると考え、そのイメージにぴったりな「たおやか」という言葉を選びました。メンバーは大阪と東京に分かれて在席しているため、テレビ会議や、現場見学等の機会に合わせて上京し打ち合わせを行っています。

「たおやかルーム」の陣頭指揮を執る佐藤吉彦管理本部総務部長 兼 女性活躍推進室長は、「貴重な労働力として女性を積極的に採用していきたいと考えています。現在当社では、全社員376名のうち、女性社員は34名、女性技術者も5名と少数です。そのため、今後5年間で、採用者に占める割合は12%以上を目標に女性の採用を強化していきます。」と具体的な目標を立てて女性の採用に取り組んでいます。

たおやかルームの取り組み

「たおやかルーム」は、女性が働きやすい職場づくりとして現場環境の整備と研修の充実を大きな柱とし、女性の活躍の場を広げようと活動を行っています。

現場環境の整備として、「女性向けの小さなヘルメットがほしい」「ヘルメットの紐は日焼けの跡がつかないビニール製にしてほしい「」女性専用の仮設トイレや更衣室を導入してほしい」など現場で活躍する女性技術者ならではの要望を取り入れようと取り組んでいます。また、こうした要望を基に女性が働きやすい職場づくりに対して全社員が共通認識を持つことができるよう、マニュアルの整備にも取り組んでいます。

ロールプレイング型の研修を実施

研修の充実として、男性の管理職や現場所長を対象としたロールプレイング型の研修を「たおやかルーム」のメンバーが中心となって全社を挙げて行っています。女性技術者が配属されていない現場の所長が「戸惑うことのないようにしたい!」、「女性技術者に安心感や信頼感をもってもらいたい!」という強い思いで研修を実施しています。実際の研修では、男性管理職にメンバーの女性社員が『結婚するので仕事をやめます』、『子どものことで時短にしてもらいたいのですが…』などのアドリブを入れるなど、参加型の自由な研修スタイルで進められています。あらかじめ質問の内容を聞かされていない男性管理職は、戸惑うことも…。和やかな雰囲気で研修が行われています。

ロールプレイング型の研修風景
ロールプレイング型の研修風景

「研修の頻度が多い東京支店は一定のレベルに到達していますが、本社や他の営業所のレベルを高めていくこともこれからの課題だと思っています。仕事に携わる女性が増えるほど真剣に向き合わなくてはいけない問題なので、自然に会社全体がお互いに配慮できるようになっていることが理想です。」
(佐藤吉彦女性活躍推進室長)

女性技術者が工事のイメージを柔らかくする

入社2年目の入江沙耶佳さんは、「小名木川護岸耐震補強工事(その2)」(森本・アクアスペース建設共同企業体)の現場で唯一の女性技術者として働いています。この現場で入江さんは、測量・安全管理・地域貢献という仕事しています。その中でも、地域貢献に係る仕事では、地域住民への挨拶はもとより、遊歩道沿いで犬の散歩をされている飼い主さんに声をかけ、犬の写真を撮って現場に掲示したり、子供たちに楽しんでもらえるように「ぬりえコーナー」を設けたりするなど工夫しています。女性ならではの柔軟性を生かし、現場周辺地域の方々との円滑なコミュニケーションづくりに大きく貢献しています。入江さんは「女性ならではの観点や気配りを生かして、優しいイメージの現場づくりができるようこれからも頑張っていきたいです。」と話していました。

工事現場の遊歩道に入江さんの提案で設置されたコーナー
工事現場の遊歩道に入江さんの提案で設置されたコーナー

入社2年目の入江沙耶佳さんは、「小名木川護岸耐震補強工事(その2)」(森本・アクアスペース建設共同企業体)の現場で唯一の女性技術者として働いています。この現場で入江さんは、測量・安全管理・地域貢献という仕事しています。その中でも、地域貢献に係る仕事では、地域住民への挨拶はもとより、遊歩道沿いで犬の散歩をされている飼い主さんに声をかけ、犬の写真を撮って現場に掲示したり、子供たちに楽しんでもらえるように「ぬりえコーナー」を設けたりするなど工夫しています。女性ならではの柔軟性を生かし、現場周辺地域の方々との円滑なコミュニケーションづくりに大きく貢献しています。入江さんは「女性ならではの観点や気配りを生かして、優しいイメージの現場づくりができるようこれからも頑張っていきたいです。」と話していました。

入江さんの上司である小名木川護岸作業所阿部秀策所長は、「入江さんには私から積極的に声をかけるようにするなど、男性ばかりの現場で疎外感を感じさせないようになればと常に心がけています。小名木川護岸耐震補強工事は、現場周辺地域の方々と接することが多い現場ですが、女性技術者の入江さんがいることで当工事のイメージが柔らかくなって助かっています。」と女性技術者の入江さんを高く評価していました。

入江沙耶佳さんが担当している小名木川護岸耐震補強工事(平成30年3月に完成予定)
入江沙耶佳さんが担当している小名木川護岸耐震補強工事(平成30年3月に完成予定)
女性技術者として働く入江さん(写真左)と阿部所長(同右)
女性技術者として働く入江さん(写真左)と阿部所長(同右)
工事の進捗看板の管理もしている入江さん
工事の進捗看板の管理もしている入江さん

「たおやかルーム」を設置して女性の活躍を推進している森本組では、30年度は5名の女性技術者が入社する予定です。女性が働きやすい現場の環境づくりには、女性ならではのきめ細かな視点や柔軟性が不可欠です。「たおやかルーム」が女性だけのためではなく会社全体の活性化のために、さらに活躍できるよう期待しています。それが将来の建設業の担い手確保やイメージアップへとつながっていくはずです。

たおやかルーム連絡先

06-7711-8800
女性活躍推進室 西山
erina_nishiyama@morimoto gumi.co.jp


小名木川護岸耐震補強工事(その2)工事概要と森本・アクアスペース建設共同企業体の取り組み

本工事は、東京都が策定した「東部低地帯の河川施設整備計画」に基づき、地震に対する安全性を高めるため、小名木川の高橋上流~西深川橋下流間の両岸(河心延長約173m)で既設護岸の耐震補強工事(鋼管矢板自立式特殊提護岸の新設及び前面河床部の地盤改良等)を行なっています。目的は、将来にわたって考えられる最大級の地震が発生した場合でも護岸等の機能を保持し、津波等による浸水を防止することです。全て河川内から一般航行船舶や他現場の航行船舶に留意して工事を行なっています。

森本・アクアスペース建設共同企業体では、橋梁上(高橋、西深川橋)や遊歩道沿いから工事の状況を地域住民の方々に見て頂ける環境であるため、工事の雰囲気を柔らかいイメージにすることを目標としています。承諾を得た上で、お散歩している犬の写真を掲示したり、B型フェンスや侵入扉はすべてCO2削減効果も期待できる木製を採用する等の工夫を行なっています。さらに、遊歩道でお散歩されている園児や子供たちに楽しんでもらえるように 、「 ぬりえコーナー」を設け、足を止めた時には工事を見てもらえるようにするなど、地域に解け込めるように日々創意工夫をしながら工事を行なっています。

小名木川護岸耐震補強工事 図

チームひまわり 現場レポート

今回取材にご協力頂いた女性社員の皆さんからは「たおやか」という言葉通り芯の強い凛とした印象を受けました。会社をあげて研修を実施したり、たおやかルームでは、実際に現場で働く女性社員の方々の声を聞いてマニュアルを作成されるなど、女性の働く環境にとても配慮されていると感じました。女性だから男性だからということではなく、会社全体でより良い労働環境にしていこうという気持ちが随所に感じられました。

髙木さん

入社2年目の女性技術職の入江さんは、「普段からとてもよくしてもらっており、女性だからと気を使わせないような仕事をしたい」と仰っていました。一方で会社としては「自然にお互いが気付いていけるような職場環境にしていきたい」と、皆さんが同じ方向を向いて熱意をもって社員の活躍のために取り組んでおられました。取材中もとてもあたたかい雰囲気を感じ、これからの女性活躍のロールモデルとして更なる活躍をされてほしいと思います。

髙木