建設物価調査会

建設物価2020年7月号

日本建築仕上学会「女性ネットワークの会」の紹介

 みなさんこんにちは! 日本建築仕上学会 女性ネットワークの会です。
 この会は日本建築仕上学会、企画事業委員会のWG活動として会を結成し、今年で7年目を迎えました。今までいろいろな活動を行ってきましたので紹介いたします。

日本建築仕上学会の紹介

 学会というと、一般の人にとっては難しい学問に取り組んでいるところ、または大学の偉い先生方の集まるところという硬いイメージがあるかもしれません。日本建築仕上学会でも、論文投稿による学術講演会を年に1度行っています。建築仕上材に関する研究についてのシンポジウムなども実施しています。しかし、そればかりが学会活動ではありません。建築仕上材に関する知識や理解を一般の方にも広く知っていただくために、いろいろな活動をしています。学術講演会では職人さんや学生さんにも発表していただいていますが、最近は女性の発表者も増えています。
 しかし、建築仕上材料はどんなによい製品が開発されても、それを建築物に使う設計士や、職人、建築現場の工事を管理する方の協力がなければ性能を発揮することができません。日本建築仕上学会は、いろいろな立場の方が入会できるオープンな学会です。

女性ネットワークの会発足

 一昔前は、建築仕上業界で働く人はほとんどが男性でしたが、近年では、設計や材料開発の他、職人、現場監督まで女性が進出しています。しかしまだ少数派であり、会社では1 人しか女性の技術者がいない、女性が同じ立場の人とお話ししてみたい、そんな女性仕上技術者の活動のお手伝いをしたいと女性ネットワークの会は発足しました。
 発足当時は、安倍政権の女性活躍推進政策や国土交通省の建築現場で働く女性を倍増させる計画の発表があった時期でした。
 「FINEX(日本建築仕上学会誌)」の2014年1.2月号に連載をはじめたのが最初の活動でした。学会誌連載は今でも休まず続けています。最近では、高校での左官体験や塗装体験など学生向けのイベントも行っています。建築業に将来進んでいただけるように、建築現場見学会なども実施しています。
 最初の企画は第1 回講演会(2014年5月23日)でした。私自身このような企画を立てたことも初めてで場所探しにも苦労しましたが「東京都美術館に講堂がある」ということを見つけることができました。今でも東京都美術館で年1回講演会を実施しています。第1回講演会の特別講演は劇的ビフォーアフターに出演されている長岡造形大学川口とし子教授にお願いし、テレビ番組での取り組み事例などたくさんのお話しをしていただきました。
 講演会は1回目からずっときてくださる方もいます。また学生が行事に参加していただけるのもうれしいことです。

第5回講演会東京会場 特別講演後のトークイベントの模様

さまざまな活動

① 講演会(第1回〜第6回)

 前項で第1回講演会について紹介しましたが、毎年6月もしくは7月の末に講演会を行っています。女性ネットワークの会の一番メインの行事です。毎回、特別講演をお願いする人を決めるのが一番の大変な仕事で、特別講演をお願いしてきた方は以下の通りです。(敬称略)

【第1回】川口とし子(長岡造形大学教授)
【第2回】服部道江(元㈱大林組)
【第3回】宮川理香(関西ペイント㈱)
服部道江(元㈱大林組)
【第4回】鳥生由起江(大和ハウス工業㈱)
【第5回】〈東京会場〉
川口とし子(長岡造形大学教授)
服部道江(元㈱大林組)
門田真乍子(㈱カラー集団トータリア)
〈大阪会場〉
鳥生由起江(大和ハウス工業㈱)
奥田章子(㈱大林組)
〈名古屋会場〉
長谷川恵美(ミサワホーム総合技術研究所)
児山奈央美(菊水化学工業㈱)
楢崎早百合(名古屋市総務局総合調整部男女平等参画推進室長)
〈札幌会場〉
奥田章子(㈱大林組)
熊野康子(女性ネットワークの会)
【第6回】高山美幸(エスケー化研㈱)
阿部美恵子(JFE鋼板㈱)

 特別講演の後には、トークイベントを行います。第2回、第4回、第6回のトークイベントでは「建築現場で働く女性へのアンケート」の結果を発表してきました。
 こういった講演会は出席者のほとんどが女性ということも多いようですが、女性ネットワークの会の講演会は毎年、男女の比率がほぼ半数です。講演会の後のアンケートを見ると、男性の参加者の方から「男性のための女性活用の講演をお願いします」という内容をいただくこともあります。女性に参加していただくのはもちろん意義のあることですが、男性が参加することで、女性が頑張っていることがわかる講演会でもあってほしいと思っています。

② 見学会

 建築現場の現場見学会というと、実際に現場を見て質疑応答のあと解散という形が多いと思います。女性ネットワークの会が主催する現場見学会は、現場見学のあとトークイベントを行います。女性の施工管理を行っている方や、現場所長、男性の職員の方も参加することがあります。パネラーは大体女性と男性が半々で、いつも盛り上がる人気企画です。
 各施設の見学会も実施しています。2015年2月に行ったミサワパーク東京は、地震体験や、最新の住宅モデルルームや建築材料について見学をしました。
 2017年12月には、東リ株式会社厚木工場の床材工場に見学に伺いました。本格的な工場見学は初めてという方もいました。なかなか建材の工場は個人では行けないと思います。
 2会場でも、各社の代表の方にも参加していただきトークイベントを行いました。ミサワパーク東京のトークイベントで話題になったことは、共働きに便利な家電についてです。ダントツ一番人気は自動走行型の掃除機で、すでに2台目という人もいました。

③ 各種セミナー、展示会への参加

 2017年から、各種のセミナーに招かれたり、展示会に参加する機会が増えました。
 2018年1月に、北海道の建設産業ふれあい展に出展、3年連続で参加しています。KENTEN(大阪)、しずおか建設まつりも2年連続で出展しています。準備はいつも大変ですが、「また来年もお願いします」と主催者に言っていただけると、疲れは吹き飛びます。
 他の女子会との交流もあります。じゅうたく小町1周年記念式典に招待いただき、これを機に女性ネットワークの会講演会や見学会にじゅうたく小町のメンバーの方が出席されるようになりました。第3回目の建設現場で働く女性へのアンケートでは、地方の建設系女子会に多数参加していただき、最終的には295枚ものアンケートを回収できました。今後交流によりお互いの活動がさらに充実していくのではと思います。

④ 出版物

 2016年に女性ネットワークの会は、ミドリ安全株式会社「ワーク女子力」2016のカタログに参加しました。
 また、2018年には日本建築仕上学会の法人会員である株式会社総合資格が企画した、女子学生のための冊子「ブリリアント」に参加しました。他にも、雑誌とのコラボ企画ですが、立教女学院高校で左官授業、桃山学院高校で塗装体験も行いました。左官ごてや塗装ローラーが上手に扱えるようになった女子学生の笑顔は今でも忘れられません。
 2018年に創立5周年を記念し、大胆にも電子図書を出すことになりました。悪戦苦闘しながらもなんとか本を一冊作ることができました。私たちが普段働いている建築仕上業界を女性目線からも熱く語る、そんな本に出来上がりました。「今、建築仕上げ女子がアツい」という題名で、2018年7月に販売開始しました。
 意外であったことは、実際の読者は男性が多いということです。建設業の会社や組織で女性を活用するとき、参考にされている方がいるようです。出産を経て現場で働きながら子育てをしている女性に数名執筆していただきましたが、これらは女性だけでなく男性にも読まれているようです。
 第2弾として2020年7月に「続・今、建築仕上げ女子がアツい」を発刊する予定です。
 もちろんロールモデルとなる出産し子育てしている現場女性にも執筆していただく予定です。現場で働く女性へのアンケート結果も掲載していきたいと思います。 ぜひ、楽しみにしてください。

創立5周年記念図書

執筆者:熊野康子
日本建築仕上学会 女性ネットワークの会 主査/株式会社フジタ 技術センター 企画調査部


女性ネットワークの会活動年表

2014年・第1回講演会・建築現場見学会
2015年・ミサワパーク東京見学会
・第2回講演会
・日本色彩学会第2回秋の大会出席
・第1回「現場で働く女性へのアンケート」実施
・作業服座談会
・ 日本建築仕上学会 大会学術講演会 論文発表3件
2016年・作業服試着会
・建築現場見学会
・建設再生展
・第3回講演会
・ ミドリ安全株式会社「ワーク女子力」カタログに参加
・ 日本建築仕上学会 大会学術講演会 論文発表2件
・日本建築学会大会(九州) 発表1件
2017年・小規模建築現場見学会
・鳶1グランプリ副審査員長
・じゅうたく小町一周年記念式典出席
・第2回「現場で働く女性へのアンケート」実施
・建築再生展
・工場見学会(東リ厚木工場)
・女子学生のための冊子「ブリリアント」に参加
・ 建設産業女性活躍セミナー出席(埼玉、名古屋、全国)
・トイレ産業展セミナー
・北海道庁セミナー
・建設産業ふれあい展(北海道)
・高校での左官体験(東京・立教女学院高校)
・ 日本建築仕上学会 大会学術講演会 論文発表2件
・日本建築学会大会(中国) 発表1件
2018年・ 5周年記念行事 書籍「今、建築仕上げ女子がアツい」執筆発刊
・ 全国4か所(東京、大阪、名古屋、札幌)での講演会
・ KENTEN2018にて展示・講演会(インテックス大阪)
・しずおか建設まつり
・TOKYOで輝く女性たち〜建設業編〜(東京都)
・建設産業ふれあい展(北海道)
・塗装体験学習(桃山学院高校)
・第27回 塗料産業フォーラム(日本塗料工業会)
・ 左官工事業における女性活躍推進ワークショップ(東京都左官工業協同組合)
2019年・ 第3回「建設現場で働く女性へのアンケート」を実施
・ KENTEN2019にて展示・講演会(インテックス大阪)
・第6回講演会
・夏のリコチャレ
・㈱大林組技術研究所見学会
・しずおか建設まつり
・ 建設業におけるワークショップ(主催 東京都建設局)
・大和ハウス工業㈱総合技術研究所見学会
・建設産業ふれあい展(北海道)
・大東建託株式会社 工事課 女性社員交流会

チームひまわり 現場レポート

 建築仕上業界に携わる女性の活動をお手伝いしたいという熊野さんの想いのもと、日本建築仕上学会女性ネットワークの会は発足しました。近年業界で活躍する女性が増えてきていると伺う機会も多くなりましたが、建築・建設業界はもともと男性社会であったこともあり、女性技術者が悩みを共有したり、やりがいを発信したりしづらい状況にあったと思います。熊野さんに会をご紹介いただき、このような会ができたことによって女性技術者たちはより一層一体感を感じながら日々の業務や活動に取り組むことが出来るようになったのだろうと感じました。 講演会の参加者や会誌の読者には男性も多いとの事で、業界全体で女性活用の機運が高まっていることがわかります。いままで業界に少なかった女性目線の意見が加わることで、さらなる業界の魅力発見にも繋がっていくのではないでしょうか。会の今後の活躍も楽しみですね。次号もお楽しみに!

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