建設物価調査会

建設物価2018年2月号

女性が働きやすい環境作りを積極的に行なっている国土交通省近畿地方整備局を訪ねて

「建設業での女性活躍を支援するプロジェクト」

当調査会では、「建設業での女性活躍を支援するプロジェクト」として、女性職員を中心としたプロジェクトチーム(愛称“チームひまわり”)を立ち上げています。第25回目は、国土交通省における女性活躍の取組について、近畿地方整備局でのインタビューを紹介します。


国土交通省では女性の採用、登用の拡大に向けた取り組みを積極的に行なっています。近畿地方整備局の採用ホームページでは育児をしながら勤務している女性職員の声や、女性のための「仕事と育児を両立する支援制度」を紹介しており、実際に働いている多くの女性はその制度を活用し仕事と育児を両立されています。

女性の働きやすい環境作りに尽力されている国土交通省近畿地方整備局 企画部企画課の寺尾直樹課長補佐と、実際にその制度を活用しながら職場に復帰し、前線で仕事をされている国土交通省近畿地方整備局 企画部技術管理課工事品質確保係長 西村知子さんにチームひまわりがインタビューを行いました。

国土交通省近畿地方整備局企画部技術管理課
西村知子 工事品質確保係長
国土交通省近畿地方整備局企画部技術管理課
西村知子 工事品質確保係長

入省したきっかけ

学生時代からこの道に進むと決めていました。土木の仕事で、福利厚生が整っていて女性が働きやすい職場は…と考えた時に浮かんだのが近畿地方整備局でした。入省してから今現在まで土木に携わる仕事をしています。

入省した当時は女性が極端に少なく、近畿地方整備局の道路分野では私が2人目でした。そのため、「女性初の」というような職務を沢山経験させていただくことができました。いずれ結婚して子供を産むという気持ちがあったので、入省後は積極的に大阪から離れた事務所での勤務を希望しました。

配属先では、工事発注、事業計画の作成など、多種多様な業務への対応が求められ、自分の能力不足を痛感する毎日でしたが、大変な思いをした分得られたものも多く、力の入れどころ、いい意味での力の抜き方を会得できたのではないかと思っています。

産休前は最前線でお仕事をされていました

産休に入る前は基準第一係長を務めていました。当時、基準第一係長を女性が務めるのは全国で初めてということで、ここでも「女性初」とクローズアップされました。基準第一係は積算基準を決定する責任の重い職務です。他の地方整備局や地方自治体、外部からの積算に関する問い合わせに追われる日々で、会議のための外出も多く、毎日慌ただしく過ごしていました。体調が優れない時もありましたが、責任感を持って、仕事は最後までやりきるという強い思いで乗り切りました。

産休前には、様々なことに対し常にアンテナを高くしていなければと気を張っていたので、仕事から離れることに対して不安を感じていました。しかし、産休・育休期間中も毎日が楽しく、仕事のことを考えたことは一度もありませんでした。育児休暇を経験したことで視野が広がり、今までとは違った視点で物事を捉えられるようになったと感じています。

子供が3歳になるまで育児休暇を取得できる

子供が2歳になる前に復職しました。子供が初めて歩く瞬間は必ず自分の目で見たいと強く望んでいたため、1歳未満での仕事復帰は考えられませんでした。子供の成長をある程度見守ることができ、子供を保育園の環境にも慣れさせていきたいという気持ちになってから、復帰を決めました。

子供が3歳を迎えるまで育児休暇を取得する選択肢もありましたが、このままでは休みを満喫しすぎて仕事に復帰できなくなるのではとの思いから、早めの復帰を選択しました。復帰の時期を自分のタイミングで決められたのはありがたかったです。

今どのような勤務形態で仕事をされていますか?

早出・遅出勤務の制度を活用しています。出社時間を早め、昼休みも短縮して、退社時間を早めています。この制度がないと子供の保育園への迎えに間に合わないので助かっています。

私が入省したときには産前産後休暇くらいしか制度としてはなく、早くに出産された女性の先輩たちは仕事と育児の両立にとても苦労したという話を聞いていました。苦労がありながら仕事を続けてこられた先輩方がいらっしゃったからこそ今この制度が整備されたと思っています。

現在、日常の業務として現場に出るようなことはないですが、たまに外出する時には帰宅時間にも配慮してもらっています。また、管内別事務所への異動の可能性もありますが、家庭の事情も考慮してもらえるので助かっています。

あったらいいなと思う制度はありますか

霞ヶ関の国土交通省には省内に保育園が併設されていますが、近畿地整にも併設されていれば子供の急病時の対応ができて助かると思います。どうしても小さい子供は病気にかかりやすいので、熱を出した時に早く仕事を切り上げて迎えに行く必要があったり、休務せざるを得ない場面が多々あります。併設の保育園があれば特に病気の時すぐに迎えに行けますし、仕事に折り合いをつけるにも近くに子供がいる環境のほうが安心感はあります。今は早めに出来ることは処理しておくとか、常に何かある可能性があるということを前提に先手先手で仕事をこなすよう心がけています。

今の私もそうですが、仕事と育児を両立されている方は、時間と闘いながらお仕事をされているので、ゆっくりお話しするような時間を作る余裕がないかと思います。産休に入る前に先輩方の体験談や活用されている制度などのお話を聞く機会があればもっと心強かったと思うので、これから産休・育休を考えられている方々との交流の場を設けていただければいいなと思います。

女性の後輩に一言お願いします!

同じことをするなら仕事も育児も何事も楽しんで欲しいです。これに尽きます!

何事にも前向きに楽しみながら取り組んでいる西村さん。西村さんの体験を生かして今後も制度が充実し、さらに女性が働きやすい環境作りが進むといいですね。寺尾補佐、西村係長、どうもありがとうございました!

インタビュー風景

女性の採用、女性のための環境作りに力を入れています

国土交通省近畿地方整備局
企画部企画課
寺尾直樹 課長補佐

政府として女性活躍推進に力を入れているということもあり、近畿地方整備局でも積極的に女性が働きやすい環境を整えていくことを目標としています。独自のリクルートパンフレットを作成し、女性の職員がどういうやりがいをもって、どのように1日を過ごしているのか、女性の視点から見た職場を紹介しています。また、このパンフレットは採用活動だけでなく、すでに地整局で働く女性にも読んで参考にしてもらえればという思いもあります。

産前産後休暇や育児休業のみならず、職場に復帰した後に利用できる時間短縮勤務等、様々な仕事と育児の両立を支援する制度を設けています(下表参照)。実際にこれらの制度を利用している女性職員は大勢います。これら制度の整備のみならず、周りの理解等、女性が気兼ねなく職場に復帰できるような環境作りに努める必要があるとも感じています。さらに、仕事の量の調整や効率的な仕事の進め方の確認(仕事の取捨選択、優先順位つけ等)もより働きやすい環境作りに欠かせない要素と考えています。

●国土交通省の『仕事と育児を両立する支援制度』

出典:国土交通省近畿地方整備局 採用サイト http://www.kkr.mlit.go.jp/recruit/ladies/ikuji/index.html

チームひまわり 現場レポート

今までは実際の現場で働く女性に対する取材が多く、発注者側の取材は数えるほど。どんな話が聞けるのだろうと、取材前からとても楽しみにしていました。

西村さんはとても明るく前向きで、何事も楽しんでがモットー。今まで「女性初」という数々のポストを歴任したという話、妊娠中も大きいお腹で職務を全うした話、子育てと仕事の両立の話など、何を聞いても自分も見習わなくてはという思いでした。

伊沢さん

西村さんが復帰後も前線で活躍されているのは、近畿地方整備局の「仕事と育児の両立を支援する制度」があるからこそ。整った制度があることで、育児と仕事を両立する女性が働きやすい環境となることを改めて感じた取材となりました。

伊沢


女性活躍に関することを取材させてください!