建設物価調査会

建設物価2020年2月号

株式会社大林組 四国支店 齋藤 久仁子さんへインタビュー!
周りへの感謝、上司や同僚と積み上げてきた22年間とこれから

現在までの職務経歴

 新卒で入社し2年間は四国支店土木工事部計画課で会社全体の業務の流れや施工支援を内勤で勉強しました。その後、現場で施工管理を任されるようになり、造成・宅地工事などで施工管理のノウハウを学んでから都市土木の大きな交差点のアンダーパス工事などを担当しました。タイプが異なる構造物の施工に従事することにより、様々な施工管理の手法を学ぶことができました。

 2001年に結婚して一度は内勤になりましたが、再度出産前まで現場勤務をし、出産後は内勤で現場支援業務に携わりました。入社23年目の現在は子育て(高校生と中学生)との両立をしつつ積算業務を主に担当しています。

大林組を目指したきっかけ

 当時の就職担当の教授から、私にふさわしい会社があるから1回話を聞きに行ってみないかと、声をかけてもらったのがきっかけです。

 当時は建設業への女性就職者率は低く、就職先はコンサルタントや公務員が多かったので、自分の中にゼネコンという選択肢はありませんでした。しかし、実際に話を聞いてみると施工管理、設計、そして施工支援という様々な部署があり、女性の自分が生きがいを持って働き続けられる仕事に出会えるのではないかと考え、大林組を目指しました。

 教授は、私の授業態度や日々のコミュニケーションの様子を見て助言して下さったようです。私をこの会社へと導いてくれた教授には、今でも感謝しています。

現在の職場
波介川工事事務所、齋藤さんが入札に携わり受注した工事をお子さんと見学

仕事のやりがい

 土木の仕事というのは1つとして同じものがありません。大変さもありますが、その分とてもやりがいを感じる仕事でもあります。私が担当したアンダーパスは現在も残っていて、子供たちに「お母さんが造ったんだよ。」と伝えると、キラキラした顔で「お母さん、すごい!」と言ってくれるのが嬉しいですね。これは「建設技術者あるある。」だと思います。

東京スカイツリーへ竣工見学

育児と仕事の両立

 子供が2人いるので産休と育児休職をそれぞれ2回取らせて頂きました。短時間勤務も選択肢の中にありましたが、子供を0歳から保育所に預けてフルタイムで働くことにしました。当時、社内の育児休職制度の適用は子供が1歳になるまでだったので、急いで保育所に入所させた思い出があります。

 現在、育児休職は子供が3歳になるまで、短時間勤務は小学校3年生まで適用されます。周りに小学校の低学年の子を持つ親も多く、時短勤務を利用されている方もいます。時代の変化と共に会社の理解も得られるようになり、子育てに良い職場環境になりつつあると実感しています。

現場見学会の開催、展示会への参加

 四国支店の女性土木技術者は私しかいませんが、技術者はもちろん、役職者や新入社員の女性の比率はとても上がっています。先日、日建連の「けんせつ小町」の現場見学会を四国支店で開催し、弊社の女性職員で対応しました。昨年は、2年に1度行われる四国建設フェアや、地盤工学会のなどの展示会に説明員として参加しましたが、工業高校、高専や大学の女子学生の参加者が多く来場され驚きました。女性も男性も、熱心に話を聞いてくださる学生ばかりでとても嬉しかったです。

パネル展にてブースコンテスト最優秀賞受賞

やりたい「意思」だけではだめ

 最初の現場では施工管理ではなく、書類の作成を主とする現場内のデスクワーク(工務)を任されました。「私は現場に出てヘルメットをかぶって、施工管理をしたい。後輩の男性はすぐ現場に出ているのに、私は工務なの?」と当時は差別されているのではないかと思い、とても悩みました。実際に所長へ「私は現場に出たいです。」と訴えたこともありましたが、その度に「あなたは工務をやってください。」と突き返されてしまいました。何度かやり取りを続けているうちに「まずは工務をやって、結果を残したら現場に出ましょう。やりたい気持ちはわかるけれども、何でも、『やりたいから、はいどうぞ』ではなくて、順番があるのだ。」と言われました。女性だから出してくれないと、思い込んでいましたが、そういうわけではないのだなと考えなおしました。

 目の前の仕事に励み、最終的には無事現場に出してもらうことができましたが、中身のない主張は通用しないし、主張するのであればそれに見合ったスキルも必要。ただ「やりたいんです。」と言うだけではいけないということを学びました。

現場勤務時、上天神工事事務所にて

ターニングポイント

 結婚して、仕事を辞めようかなと考えていたときに、上司に相談すると「せっかく土木という職業を選ぶために大学も出て、勉強して、自分のスキルとして築いてきたのだから、手放すのはもったいないぞ。取りあえず、仕事も育児も家庭のこともやってみて、やはり駄目だと思ったときに、もう一回考えたらどうだ。」と言ってもらいました。私の人生悔いの無いようにしたいと考え、理解ある上司に背中を押してもらい、仕事を続けることになりました。

 仕事と子育ての両立が始まりましたが、夫は単身赴任、両親も近くに住んでいなかったので「ワンオペ育児」でした。精神的なものよりも、肉体的に両立がつらかったです。しかし、会社の理解もあり、精神的な負担はかなり軽減されたと思います。業務量の調整や「帰ってもいいよ」という雰囲気づくり、さらには「業務時間内で100%の力を出してくれたらいいのです。」と上司から声をかけてくださったのです。

 当時、子育てには無縁な男性が多かったなか、私の上司や周囲の方は理解のある方ばかりで、大きな分岐点にたった時、いつも踏みとどまることができ、22年間仕事を続けることができました。

 節々に良い方と巡りあい、そのおかげで今の私があるのだと感謝しています。私は周りのサポートで仕事を続けてこられました。だからこそ、「土木っていいですよ。」、「大林組はいいですよ。」と言えます。実際に大林組に女性が多い理由はここかなとも思います。

会社のイベントで阿波踊りに参加

齋藤さんのこれから

 今いるポジションで、自分がなくてはならない存在になりたいと思っています。「この仕事は、齋藤に頼めば大丈夫。」と思ってもらえるように、日々今いる環境を大事に仕事しています。

 後輩で女性が入ってきたときには、自分の経験を伝えて、結婚や子育てに悩んだときにはアドバイスをすることで、少しでも不安を取り除いてあげたいと思いますし、仕事を続けてくれたらいいなと思っています。 女性の現場監督がクローズアップされていますが、「女性」ということにこだわらなくてもいいのかなとも感じています。多様な形で女性と男性共に活躍されるというのも素敵ではないのかなと考えています。


チームひまわり 現場レポート

 印象に残っているのは齋藤さんの感謝の言葉です。「一緒に働いている方へ、環境へ、会社へ、今の自分があるのは周りの方々のおかげです。」と、インタビュー中何度もお話しいただきました。如何なる時も全力で真摯に仕事に向き合い、感謝を忘れない齋藤さんだからこそ、このような素敵な巡り合わせが起こっているのではないかと感じました。

 自分が将来について漠然と抱いている不安を乗り越えてきた齋藤さんとお話することができ、私にとっても貴重な取材となりました。お忙しいなか、これから建設業界を目指す方々にとって、より働きやすい環境になればと丁寧にインタビューにお答えくださいました。本当にありがとうございました!

勝亦