建設物価調査会

建設物価2017年10月号

「しまね建設産業イメージアップ女子会」建設業で働く人を増やしたい!輝く女性を紹介したい!

島根県県央県土整備事務所 大田事業所 今川 文

「建設業での女性活躍を支援するプロジェクト」

当調査会では、「建設業での女性活躍を支援するプロジェクト」として、女性職員を中心としたプロジェクトチーム(愛称“チームひまわり”)を立ち上げています。第21回目は、島根県の「 しまね建設産業イメージアップ女子会」の活動と、長良通商株式会社を訪ねてを紹介します。


業界初!?イメージアップカレンダー

4年前に島根県の「建設興業タイムス」という業界紙が建設業のイメージアップのため、建設業界で働く女性に焦点を当てたカレンダーを制作しました。

カレンダーは仕事中の写真(オンの写真)とオフの写真を掲載し、働く女性の活き活きとした表情やオンとオフの印象の違い(ギャップ)を見てもらい、建設業のイメージアップを図ろうという目的で作られ、制作した2014カレンダー(A2サイズ7枚つづり)は興業タイムスにより販売され、全国的に例のない取り組みとして注目されました。

女子会はこうして誕生した

2014カレンダーでモデルをした女性技術者を中心に平成26年に「しまね建設産業イメージアップ女子会」が発足しました。女子会では、カレンダーのモデルの選定やレイアウト等について相談し、2015カレンダーを制作し、販売されました(女子会:企画制作、興業タイムス:販売)。リピーターの方もおられ、問い合わせなども多くいただきました。

カレンダー制作は女性技術者の集まるきっかけづくりとなり、仕事の話やプライベートの話などで盛り上がり、カレンダー制作以外のイメージアップのアイデアなども生まれていきました。

カフェでのミーティングの様子
カフェでのミーティングの様子

「しまね建設女子図鑑」を作ろう!

2016カレンダー制作の相談をしていた頃、女子会メンバーから「なぜ彼女たちは建設業界に入ったのだろう?」という話になりました。それなら、カレンダーモデルにインタビューして、建設業に入ったきっかけや建設業の魅力について聞いてみようということになり、 それらをまとめて「しまね建設女子図鑑」を作成しました。

A5サイズの冊子はコンビニなどに置いてもらい、就職フェアなどでも配布しました。

しまね建設女子図書

国土交通省「もっと女性 が活躍できる建設業」地域協働事業に採択

平成27年に「もっと女性が活躍できる建設業」地域協働推進事業に採択されました。女子会を中心に建設業協会や島根県、松江高専などで構成される「しまね建設女子魅力向上委員会」という委員会を立ち上げました。委員会では「島根でなりたい職業No.1」を目指して、さまざまなイメージアップの活動をしました。

補助金により、他県の女子会との交流や東京などで開催されるUIターンフェアなどに参加することができ、販売していたカレンダーを無料で県内全中学校へ配布することができました。一気に女子会の活動の幅が広がり、活発になりました。

UIターンフェア
UIターンフェア
中学校へのカレンダー贈呈
中学校へのカレンダー贈呈

女性交流会を開催

女子会のメンバーにこだわらず、建設業界で働く女性を対象に女性交流会を開催しました。アロママッサージ教室や料理教室、防災キャンプなどを企画し、建設産業のさまざまな分野で働く女性に参加いただきました。女性交流会がきっかけで女子会のメンバーになった女性もいます。女性交流会は楽しみながら、普段の仕事の悩みなどを相談する機会として好評で、これからも開催していきたいと思っています(ただし、普通に募集していても参加者が集まらない現状…口コミでのPRなどしっかりやっていかなければならないという課題もあります)。

アロママッサージ教室
アロママッサージ教室
防災キャンプ
防災キャンプ

出前講座の実施

小学生に建設業のことを知ってもらうために、出前講座を開催しました。出前講座は冬休み中の学童保育(学童クラブ)の中で実施し、小学校1年生~3年生の児童が参加しました。

防災についての紙芝居(土砂災害の恐ろしさを伝える紙芝居)とハザードマップを使った緊急時の避難場所についての学習をしました。

また、島根県内で実際に起きた災害の写真や、緊急対応中、復旧後のパネルにおいて、建設業の重要な役割についても説明しました。

出前講座の様子
出前講座の様子
ハザードマップによる学習
ハザードマップによる学習

H29年度の活動

今年度も2018カレンダーの制作をしています。これまでのA2サイズのカレンダーに加え、ご要望の多かった卓上サイズのカレンダーも制作予定です。卓上カレンダーはアンケートに協力いただいた方に配布するなどし、アンケート結果を今後の女子会の活動の参考にしていきたいと思っています。

女子会のメンバーも徐々に増え、新しいメンバーによる「親子でDIY講座」を企画しており、親子で建設業の仕事に触れてもらい、ものづくりの楽しさを体験してもらおうと考えています。

また、建設業協会と合同で、高校生の現場見学会などを開催予定にしております。

おわりに

女子会の活動を通じて、全国的にない取り組みをしていることで、取材なども増えました。それだけ、めずらしく、業界にとって切実な課題に向かって活動しているのだと感じています。

一方で女子会のメンバーでも「なぜ今女性なのか?」という疑問

にもぶつかっています。私たちは男性も女性も関係なく働いていきたいと思っています。しかし、女性を全面に出すことで建設業自体のイメージアップをしようとしているようにも見えます。矛盾していると思われるかもしれませんが、私たちは建設業に携わる人が男女問わず一人でも増えることを願って、活動を楽しく続けていきたいと思います。私たちの手探りの活動に対する意見もお待ちしております。

カレンダー

意見交換を行いました。

去る2017年7月4日、島根県 土木部 土木総務課 建設産業対策室 朝山健企画幹と、島根県 県央県土整備事務所 大田事業所 維持ダム課 維持ダム第一係 今川文主任にご来会いただき、私たちチームひまわりと意見交換を行いました。

今川主任の「しまね建設産業イメージアップ女子会」(以下女子会)の活動において、なかでも印象的だったエピソードを紹介したいと思います。

島根県において建設産業の担い手確保・育成に向けて様々な取り組みを行っている朝山企画幹(左)と「しまね建設産業イメージアップ女子会」の一員として建設業の魅力を発信する活動に尽力されている今川主任(右)

「行政」と「民間」の融合

国や県などの「行政」側女性数名と、民間企業の「民間」側女性十数名で構成されている「しまね建設産業イメージアップ女子会」。実際に現場で作業をする「民間」側のメンバーは、作業場に若者と女性がいないことに危機感を抱いていました。しかし、「行政」側のメンバーはそこまでの危機とは実感していなかったのが実情でした。女子会で話をするなかで建設業が直面している状況を共有するうちに、「どんな手段を使ってでもPRをしていかないと建設業が危ない」と全員が『建設業を盛り上げる』という、ひとつの共通の目標を持つことができたのは大きな収穫でした。こうして、この女子会で「行政」と「民間」の融合が生まれました。

女子会が建設業を変える!

カレンダー等で女子会の活動が有名になると、県内でも事務職だけでなく、技術職として女性を採用することに関心を示す企業が増えてきました。また、県内の建設業各社では、女性用トイレの理解も高まり、産休・育休などの制度も整ってきているように感じています。ただ、女性の置かれた環境は個々違います。

この女子会は、就職したばかりの若手が仕事をする上での悩みや不安等を共有し支えていく場も担っています。女子会で出た意見を社会にフィードバックし、さらに女性が働きやすい建設業にしていくこと、建設業の魅力を発信していくことで、建設業を取り巻く環境も変えていけるのではないかと思っています。

朝山企画幹(左)と「しまね建設産業イメージアップ女子会」の一員

カレンダーをはじめ、「しまね建設産業イメージアップ女子会」の取り組みから、より女性が働きやすい建設業にしていきたい! していく! という強い思いが伝わってきました。朝山企画幹、今川主任、どうもありがとうございました!

宮川さん、伊沢さん