女性も、男性も安心して仕事に向き合えるよう、働き方改革を推進するオリジナル設計株式会社を訪ねて
「建設業での女性活躍を支援するプロジェクト」
当調査会では、「建設業での女性活躍を支援するプロジェクト」として、女性職員を中心としたプロジェクトチーム(愛称“チームひまわり”)を立ち上げています。第28回目は、オリジナル設計㈱で働く女性の皆さんを取材しました。
上下水道コンサルタント業のオリジナル設計㈱は、東京の本社をはじめ、全国にある事務所に多数の女性が勤務しており、5人に1人、アルバイト社員を含めると3人に1人が女性で占められています。そのなかで、女性も、男性も安心して仕事に向き合えるように、様々な働き方改革の実現に向けて取り組んでいます。今回は、本社や地方の事務所に勤務する管理部門、技術職、営業職等の9名の女性社員にお集まりいただきお話しを伺いました。
女性唯一の管理職として引っ張る
●総務部総務課 次長 五十嵐八穂子 さん
派遣社員として入社し、正社員を経て2014年から総務部の課長職を、2018年からは次長職をしています。現在唯一の女性管理職ですが、定年を機に故郷に戻った前任者が会社初の女性の課長職でした。男性がまだまだ多い中で、異性が話すから聞いてくれると感じることもあります。一方で、うまくいったら当然、失敗すると「やっぱり女性だから」と見られてしまわないかと、難しさを感じるところはあります。
社内では目指すべき女性のロールモデルが少ない現状ですが、男女ともに働きやすい職場づくりのために、全社を挙げて制度の改善等に取り組んでいます。そのためには、制度を利用する方達が受け身にならず、積極的に活用すること、男性も意識を変えて育休等を取得してもらうことも必要だと思います。会社の制度整備、個人の意識改革等、ひとつずつ積み上げながらよりよい職場環境づくりができるように、皆で頑張っていきたいと考えています。その一環として、課長に昇進した2014年には、女性社員向けの研修会として「ウーマン・スタッフ・カンファレンス」を企画・運営しました。
仕事と家庭の両立を目指して
●ICT開発部 情報処理 高木恵美 さん
主に上下水道の台帳システムのデータ更新の担当をしています。アルバイト社員として入社後3年で正社員として採用されました。当社の台帳システムを導入頂いている役所の窓口で、当社のシステムが実際に利用されているのを見ると、自分の仕事が市民の役に立っているということを実感して嬉しく思います。一方で外部での打ち合わせの際に、女性だからか、技術面が至らないからか、一人前扱いされないことがあり、もっと認められたいと思うこともあります。
また、以前はなるべく仕事を進めてから帰ろうと思って残業していましたが、昨年に結婚してからは、家族の時間も大事にしたいと考えるようになりました。これから繁忙期になるので、仕事と家庭を両立できるよううまくバランスをとっていきたいと思っています。
●成長戦略部技術サポート&ダイバーシティ推進室兼務
阿部真由美 さん
現在、時短勤務を利用して二児の育児をしながら、所属する成長戦略部でエンジニアとしての経験を活かした技術サポートと、ダイバーシティ推進室の職務を兼務しています。2017年の11月と12月の2ケ月、在宅勤務の試験導入に参加しました。通勤時間を削減できる分、早く保育園に迎えに行ける等、時間を有効に使うことができ、かつ、業務に集中できるといったメリットがありました。しかし、業務中のちょっとした疑問をすぐに聞けない、勤務内容をどのように評価するか等の課題も見えてきました。こうしたことをクリアすることができれば、在宅勤務等のテレワークを実施しても生産性を落とさず仕事が進められると思っています。2018年度中には、実効性のある制度の導入を提案したいと考えています。
女性同士のコミュニケーションが図れた「ウーマン・スタッフ・カンファレンス」
2014年5月に2日間、同社の女性社員同士のネットワーク強化による生産性向上を目的とした女性社員研修「ウーマン・スタッフ・カンファレンス」が行われました。
創立以来、初めての試みとなったこの研修会には、全国から約60名の女性社員とアルバイト社員の女性が参加しました。1日目は効果的なコミュニケーションを図るためのポイントや技法等の習得、2日目は外部の女性講師によるモチベーションコントロールのスキルを学ぶ研修等が開催されました。「同じ会社でも以前は電話の声だけでのつながりでしたが、研修で話をしたことで距離が近くなった「」同じ業務をやっている人と実際に話す機会を経て、業務で分からないことを直接聞くことができるようになったので仕事の効率も上がった」等の相談しやすい環境となったという感想も参加者からあがりました。
女性社員同士のコミュニケーションが深まったこの企画については、第2回も近々開催する予定です。
ダイバーシティ推進室を設置
高木さんや阿部さんのように仕事と家庭の両立を図る社員や、介護、育児等様々な家庭の事情がある社員でも働き続けられる社内環境・制度の整備を目指して2017年4月に設置された部署がダイバーシティ推進室です。『女性が働きやすい職場は当然男性も働きやすい職場』という視点を踏まえながら、多様な働き方ができるように午前8時から午前10時の間の時差出勤制度の本格的な導入や、子どもが3才になるまでの6時間の減給なしの時短勤務、有休取得率の向上を目指した有給休暇取得奨励日の促進等の働き方改革をすでに実現しています。また、有給休暇の申請方法の見直し、キャリアアップ制度や評価制度の見直し、退職者の再雇用制度等について検討し経営層に提案して、社員の働きやすい仕組みづくりをすることを目的として活動しています。
「今春に会社復帰を予定している育休中の社員が複数います。職場や家庭の事情が一人ひとり異なるため、制度を整えるだけではなく、各自の要望を確認してきめ細かく柔軟に対応していきたいと思います。」(総務次長 五十嵐さん)
●東日本施設部 施設設計(2016年入社)千葉有紀 さん
下水処理場、ポンプ場の設計を主に担当しています。なるべく早く設計担当者となれるよう、上司の指導の下で実務経験を積んでいます。 1年目よりも担当できる仕事が増えたと実感していますが、もっと技術力を身に付けて早く設計担当を任せてもらえるようになりたいです。
●東日本施設部 施設設計(2017年入社)伏見あかね さん
下水道処理場やポンプ場の耐震基準を満たすために、補強工法の決定、概算の工事費等を積算する仕事をしています。仕事を理解するのに時間がかかり残業時間も多くなっているため、さらに知識を身に付け経験を重ねて仕事を効率的に行うことが当面の目標です。
●下水道部 計画(2016年入社)小城由莉 さん
地方自治体の下水道事業に関する将来計画の策定等に関わっています。女性社員が多いということが、就職する際の決め手となりました。実際に入社してみて、女性がたくさんいて雰囲気も和やかだなと感じています。仕事面では同じ課の先輩のように早く仕事の全体が見えるような技術者になりたいと思っています。
作業着の見直しを検討しています!
オリジナル設計では、若手社員の意見も積極的に取り入れていく会社方針の下、若手技術者を中心に現地調査等で着用する作業ウェアの新調プロジェクトを進めています。今回出席された千葉さん・伏見さん・小城さんもそのメンバーとしてプロジェクトに参加しています。
「作業ウェアについての社内アンケート結果では、『汚れが目立ちにくいもの『』軽く丈夫な素材』等の要望が出ました。また、現場での作業後は自分で気付かなくてもにおいがついていることがあるので、においがつきにくい素材があるといいなと思います。出てきた要望や他社の事例を参考に、現在作業ウェアのデザインや仕様の選定を進めているところです。(」千葉さん、伏見さん、小城さん)
地方で頑張っています!
●新潟事務所 営業 小宮萌 さん
現在当社で唯一の女性営業職です。アルバイト社員として入社後、営業事務の正社員を経て営業職に移りました。現在営業職としては4年目です。今後は技術的な知識を増やし、今以上に技術営業を行うことが目標です。女性の営業職が少ない業界なので、周囲と馴染みにくいなと感じることもあります。しかし、逆に女性だと私の存在をお客様に覚えてもらいやすいので、その強みを生かしてお客様のニーズを引き出せたらと思います。
●大阪事務所 管路実施設計上田知香子 さん
2017年入社です。大阪事務所の技術1課は計画設計チームと管路設計チームがあり、私は客先との打ち合わせが多い管路チームに所属しています。設計担当者になること、技術士の資格を取ることが目標です。
●大阪事務所 営業事務・総務植田千尋 さん
外線電話の応答、来訪者対応、社内業務書類の作成やチェック、入札書類や発注事業体への提出書類作成、所属部署の衛生委員会の委員、採用活動のアシスタント等をしており、所属部署の仕事が円滑に進むよう心掛けています。今後は技術的な知識も身につけていきたいと思っています。
オリジナル設計㈱の働き方改革
社員が使用するパソコンのモニター上には退社予定時間がわかるプレートを設置。早い時間帯のプレートは白だが、時間が遅くなるとプレートの色が黄色や赤になり、早く帰ろうという意識を高める工夫がなされている。各自が帰る時間を意識しながら仕事をするとともに、特定の人に仕事が偏らないよう仕事の負荷の平準化を図ることを管理職の重要な仕事と位置付け、残業時間の削減と就労時間内の生産性向上を実現。全社員1年を通じて月間最大60時間以下を達成。
「社員の健康を保つための労働時間削減の実現に向け、業務時間外の電話や、週明け納期の依頼を控えていただくよう、発注者の自治体等にもご理解をいただいているところです。」(菅伸彦社長)
また、外出や出張の多い全社約6割の社員のPCをデスクトップ型からノート型に移行してテレワーク環境を整備、固定席を設けないフリーアドレス化等も進め、生産性向上とともにコミュニケーションの活性化を図っている。
菅社長が全国を回り、アルバイト社員を含む全社員との対話の機会を設ける「意見交換会」は始めて6年。時差出勤もこの意見交換から生まれたものだ。「約450名いる社員一人一人と対話しながら、社員の顔と名前を憶え、個々の家庭の事情等も思い浮かべた上で社員が安心できる企業運営をしたいと思います。」(菅伸彦社長)
チームひまわり 現場レポート
今回は、上下水道を軸としたコンサルティングサービスを提供しているオリジナル設計㈱に伺いました。
現在、唯一の女性管理職である五十嵐さんからは、「男性が多い建設業界で、女性だから…のマイナスではなく、女性だから、異性だから話をしてくれたり聞いてくれたりすることもある。女性ということを生かして仕事すべき。」と女性という立場をプラスに生かして活躍している姿や、「以心伝心では気持ちは伝わらない。つらいときは『つらい!』などと自分で声をあげるべき。」との、きちんと言葉で伝えることの大切さを学びました。
新入社員の方々の「今は先輩に教えてもらってばかりなので、早く自分1人 事をこなせるようにで仕なりたい。」「資格をたくさん取って会社に貢献した今後の目標を聞い。」などの いて、向上心が高いなぁと感じました。私も負けずに、将来会社を引っ張っていく人材になりたいと改めて思った取材でした。次回も是非ご覧ください。
松村
チームひまわりの小冊子を活用していただきました!
平成29年12月16日、奈良県県土マネジメント部主催で若手技術者の確保・育成支援事業の一環として、建設業界で活躍する様々な職種の女性技術者の方と、将来建設業界へ入職することを視野に入れている県内女子高生との意見交換会が開催されました。
当日は、女性技術者の方によるプレゼンテーション(業務内容の紹介・この仕事を選んだきっかけ・やりがいを感じていること)や奈良県における女性活躍推進の取り組みについての紹介などが行われました。また質疑応答では、働かれている方の実体験を聞くことができるなど、参加者からは「とてもいい機会になった」との声があったそうです。
この会の場で、当会のチームひまわりの小冊子を参加者の皆さんに配布していただいたほか、意見交換会の内容等をとりまとめたパンフレット「いきいきと女性が活躍できる建設業」で紹介していただきました。
これから建設業界を目指そうとする学生さんにも是非読んでいただきたいと思っています。小冊子は無料配布しておりますので、ご希望の方は下記までお問合せください!
E-mail: himawari@kensetu-bukka.or.jp