建設物価調査会

建設物価2018年4月号

「見られている現場」から「魅せる現場」へ(仮称)八王子計画新築工事を訪ねて

「建設業での女性活躍を支援するプロジェクト」

当調査会では、「建設業での女性活躍を支援するプロジェクト」として、女性職員を中心としたプロジェクトチーム(愛称“チームひまわり”)を立ち上げています。第27回目は、三井住友建設㈱の「(仮称)八王子計画新築工事」の現場とそこで働く女性の皆さんを取材しました。


JR八王子駅と直結するペデストリアンデッキから『(仮称)八王子計画新築工事』の現場の様子を見ることができます。ここではこうした立地条件をうまく活用し、「HACHIガール」を立ち上げ建設業の魅力を伝えていくための現場づくりに積極的に取り組んでいます。

(仮称)八王子計画新築工事の概要

JR八王子駅南側の敷地に地下1階地上26階建ての住宅棟と地上6階建ての店舗棟を施工中。三井住友建設㈱の設計施工で2018年10月末に完成予定である。 延床面積は住宅棟約2万2,029㎡、店舗棟約1万295㎡。

着工当初の2ケ月間は山留め工法で地盤強化を図った。構造には三井住友建設㈱が独自に開発した「スクライム工法」を採用。工期短縮を図るために主要構造部をプレキャストコンクリート工法とし、1フロアを2工区に分けて4日間で施工している(在来のRC工法では11日間かかる)。また制震壁を3階から20階までのフロアに各階7ケ所設置し、高層建築でも地震の揺れが抑制されるようになっている。

空から見た建設現場
空から見た建設現場
タワークレーンには現場の作業員作のゾウとキリンの絵が描かれている
タワークレーンには現場の作業員作のゾウとキリンの絵が描かれている

この現場は、敷地南側に隣接しておりペデストリアンデッキから工事現場の様子を見ることができます。親子連れなどが現場を眺める姿や、現場の写真を撮る人がいるのを見て「この現場は一般の方から常に『見られている』現場だ」と感じました。私たちが現場で一生懸命に仕事に取り組む姿を皆さんに見ていただくことで「3K(危険・汚ない・きつい)」と言われる建設業のイメージを払しょくできるのではないか。これが「見られている現場」から「魅せる現場」へ、発想の転換でした。

由利宏幸所長
由利宏幸所長

まず現場で働く人たちにとって魅力があること。男女別のトイレ、独立した職長会室、女性休憩室を設置するなど、より快適な環境づくりを目指しました。また、朝礼会場には花壇や大型モニターを設置。花壇によって毎朝気持ちよく仕事を始められるような雰囲気作りを、モニターには連絡事項・注意事項を映し出し視覚でよりわかり易く伝えることができればと考えています。

そして市民の皆さんへ魅力を発信する現場であること。現場で働く女性社員
を中心に「HACHIガール」を結成し、季節ごとに様々な取り組みをしてきました。これからもいろいろなアイディアを出し合って、より充実した魅力ある現場となるよう彼女たちの活躍に期待しています!

「HACHIガール」が活躍する現場

「HACHIガール」は日建連の「けんせつ小町工事チーム」にも登録されており、これまで季節に合わせて様々なイベントを実施し「魅せる現場」づくりに貢献してきました。「職長会の中に安全部会や環境部会がありますが、部会を利用して何かできないかと話し合い、5月の端午の節句にお手製の鯉のぼりを作成しようということになりました。白地の鯉のぼりにイラストやロゴマークなどをあしらい、各部会や会社で思い思いの色や模様を付けて敷地内に揚げました。また、七夕の短冊づくり、ハロウィンの写真コンテスト、クリスマスのイルミネーションなども『HACHIガール』が率先して行い好評でした。(」三井住友建設㈱ 本山綾乃さん)その他にも、現場の2階にある朝礼会場に花を飾ったり、現場の仮囲いには女性が活躍していることを知ってもらうための看板を設置したりしています。

「内装工事が始まると女性の職人さんがもっと増えてくると思います。今後も女性を巻き込んで、魅せる現場づくりをより充実させていきたいと考えています。」(由利所長)

「HACHIガール」は現場で働く女性を対象として組織されています。建設が進み、協力業者の女性技術者が増えることでメンバーも増えていきますが、取材当時(2017年12月22日)は次の7名の方々で構成されていました。「魅せる現場」づくりのために活躍する「HACHIガール」の存在は、現場内のコミュニケーションをスムーズにするだけではなく、住民の方々に建設業のイメージを払しょくしてもらうための原動力として、これからも現場のイメージアップに貢献していくことでしょう。

私達がHACHIガールです。

経塚工業㈱ 荻田菜美さん(設備の施工管理)
写真:左上
夏には由利所長からアイスの差し入れがあるなど和やかな現場です。「HACHIガール」としては鯉のぼり、ハロウィン、クリスマスのイルミネーションの活動をお手伝いしました。

㈲末広工業 通山由稀奈さん(配管工事)
写真:左上から2番目
男性と比較すると体力的に不利なこともいろいろありますが、女性の私でもできる仕事の仕方に親方が変えてくれるので助かっています。女性休憩室を積極的に利用したいと思っています。

ダイケンエンジニアリング㈱ 関星芳さん(内装ボード工事)
写真:右上から2番目
現場では天井と壁のボード張りを担当しています。これから季節ごとにいろいろなイベントがあるので楽しいことができそうだと期待しています。

㈱フォルモント セキュリティサービス 三瓶裕美さん (交通誘導)
写真:右上
女性トイレが現場の中にあり清潔なので、気持ちよく使用することができます。「 HACHIガール」には仕事の合間を見て参加しています。

三井住友建設㈱ 東京建築支店 本山綾乃さん
写真:左下
数ケ所の大型現場を経験してきました。前の現場で行っていたことなども参考に、毎月開かれる職長会などで「こんなイベントはどうですか」と提案しています。魅力あふれる現場づくりに少しでも貢献できるようにこれからも女性ならではの発想で様々なイベントに取り組んでいきます。

三井住友建設㈱ 東京建築支店 上原千佳さん
写真:左下から2番目
ここが初めての現場です。現場が好きなので建物ができあがっていく過程を見られて幸せです。現場で働く協力業者の方々には大きな声で挨拶をするように心がけています。七夕ではワクワクしながら短冊を作りました。

三井住友建設㈱ 東京建築支店 石井由里さん
写真:右下
事務職として働いています。今までの現場は女性が私一人ということもあったのですが、この現場は女性が多いので楽しく過ごしています。「HACHIガール」の活動は楽しいので積極的に関わっています。


チームひまわり 現場レポート

HACHIガールの活動は季節ごとのイベント以外にも、空き部屋を女性専用の休憩室に活用し、そこに端材のスタイロフォームとベニヤ板を用いて作成したソファを設置するなど、様々な活動を行っていました。この活動には「横になって休憩できたら嬉しい。」と言う現場の意見が反映されており、現場にある資材や条件を利用して、より良い現場づくりを目指されていました。大規模な工事のためメンバーの入れ替えが多いようですが、これからもHACHIガールの活動が楽しみです。

由利所長が感じた現場の工夫点を「Good Jobボード」に貼り出す、無事故の月には「安全の木」を1本ずつ増やしていくなど、所長の取組にも感動しました。言葉だけではなく視覚的な工夫を用いることで、働く方達のモチベーション維持に繋がるのだと思います。現場環境の向上に前向きな所長がいるからこそ、HACHIガールの活動も活発なのだと感じました。

「見られている現場」から「魅せる現場」をキーワードとしてこの現場で働いている方々の熱い思いとモチベーションの高さがひしひしと伝わってきました。これからも安全の木が増え続けることを心からお祈り致します。

勝亦

女性休憩室にはお手製ソファが置かれている
所長発案のGood Jobボード
着々と増え続ける安全の木
勝亦さん