建設物価調査会

建設物価2018年10月号

北海道の建設業界を明るく楽しく盛り上げる「建設どさん娘の会」にインタビュー

「建設業での女性活躍を支援するプロジェクト」

当調査会では、「建設業での女性活躍を支援するプロジェクト」として、女性職員を中心としたプロジェクトチーム(愛称“チームひまわり”)を立ち上げています。第33回目は、「建設どさん娘の会」の座談会の様子をレポートします。


今回は、北海道の「建設どさん娘の会」を取材しました。建設どさん娘の会(以下、どさん娘の会)は、北海道の建設業に関わる女性で組織された団体です。勉強会などを自ら主体となって実施し、参加した会員の知識や見聞を広め、業界団体や行政に対して提言などを行うことで、建設産業における女性の活躍に資することを目的として、2016年11月に発足しました。

どさん娘の会では、自主的に活動することをモットーに勉強会や意見交換会、現場見学会などを開催し年度ごとに活動報告書を作成し
ています。

2016年の発足後、年々会員数が増え活動の場を拡げているどさん娘の会の皆さんに、北海道内の建設業の現状や女性活躍推進の取り組みについて取材してきました。

2017年度活動報告書、どさん娘の会の勉強会の様子
2017年度活動報告書、どさん娘の会の勉強会の様子

会員条件は『少しのやる気とちょっと前のめりな気持ち』を持っていること!

Q.こういった女子会は例えば組織の上の方からとか、男性から「やってみたら?」と声がかかるケースが多いのかなと思うのですが、どさん娘の会はどのようにスタートされたのでしょうか?

飯田さん
以前から、私は個人的に別の女性技術者の会に参加しています。その中で、他社の女性技術者と繋がりができ、相談にのってもらったり、元気を貰ったりしたことがどさん娘の会発足のきっかけです。
組織の上層部や男性から言われてスタートすると、男性の目線で「こういう風にして欲しい」という思惑というか、ある程度レールを敷かれてしまうこともあるかと思います。本当はこういう風に言いたいけれど言いづらい、というような会にはしたくありませんでした。

そのような想いから女性同士が、「自主的に取り組み」繋がりをつくれる場が必要だとの気持ちが強くなりました。まずは個人的に繋がりのある方に声掛けをし、7名で立上げの運びとなりました。そこから段々と会員が増えていき、現在に至ります。

Q.会員も増え、活動の機会も増えていると思いますが、皆さん会社から気持ちよく送り出してもらえているのでしょうか?

飯田さん
イベントの参加希望を募る際に皆さんに必ずお願いしているのは「少しのやる気とちょっと前のめりな気持ちを持ってきてください。そして上司・所属会社の許可を取って参加してください。」ということです。事務局から案内を流していただけるので、その案内を見せて各自所属先の許可を取って参加しています。新しく入会を希望される方には「入会を上司・会社から渋られるようでしたら、ご説明に伺います!」とお伝えしています。

大久保さん
日建連さんが企画してくださった、北海道のけんせつ小町の方たちとの合同現場見学会と会食に参加しました。30名近くが集まり、北海道の建設業界にこんなに女性がいたんだ! と驚きました。見学した現場が自社の設計、自身が解析を行った現場ということもあり印象に残っています。

鳥潟さん
現場見学のバスツアーでは、鉄筋探査のためのハンディサーチの使い方を教えてもらいました。後日実際の現場で使う機会があったのですが、そこで習った知識を活かして、使い方を周りに教えてあげることができました。

また、工業高校の女子生徒と私たち女性技術者が話す機会もありました。私は高校時代から参加しているので、教えてもらう立場から教える立場になりましたが、学生さんとも年齢が近いこともあり「会社ってこういう感じだよ」「どさん娘の会という活動もあるよ」と色々なことを話しやすいと感じました。

稲垣さん
室蘭の白鳥大橋(北海道で一番大きなつり橋)の現場見学に行きました。普段は入れない橋の一番上に行かせていただきました。

また当時、高校生だった鳥潟さんと別の現場見学会で出会い、話をした思い出があります。今、同じ会社で働いており縁を感じますね。

白鳥大橋の現場見学会
白鳥大橋の現場見学会

古口さん
北海道開発局長、建青会(どさん娘の会のサポート会員)の方々とお話する機会がありました。

北海道をインフラの観点からどう良くしていこうかと考えられている方がいて、実際にインフラの整備をされている方がいる。そしてそれをサポートをしている自分たちがいる。それぞれの立場のお話を聞くことができて、視野が広がったなと感じました。

北海道では「食」「観光」が2大テーマになっていますが、私も北海道発展のための歯車の1つとして働けているのだと実感できました。

塩原さん
これまで仕事をしてきて、何が大切かと考えたときに、技術力・知識は当然なのですが、それに匹敵するほど大切なのが「人脈」だなと感じています。どさん娘の会で普段出会えないような人たちが出会うということにとても意義があります。そこから何を得られるか学ぶかは人それぞれですが、まず初めて出会うというその現場に立ち会えることが貴重だなと感じています。

松本彩子さん
建青会主催の円山動物園のホッキョクグマ館の現場見学会に姪っ子と一緒に参加させていただきました。小学3年生の姪っ子に「建設業にはこんな仕事もあるんだよ」というのを見せてあげることができて、私自身とても嬉しかったです。

円山動物園の現場見学会の様子
円山動物園の現場見学会の様子

北海道の建設業界のこれから、どさん娘の会のこれから

古口さん
男性の人数が圧倒的に多い業界なので、セクハラについての研修などがあるといいかもしれません。建設業の場合はこういうケースがあるという具体例を会員から出してもらうことで、女性が入りやすい環境づくりにもつながると思います。

飯田さん
同じ言葉でも相手との関係性でセクハラになったり、ならなかったり…。お互い意識しすぎて、コミュニケーションがうまく取れなくなるのはよくないことだと思います。

女性特有の体調面についてもしっかり伝えなければならない場面が出てきます。男性には理解しづらい部分ですし、言いづらい方もいると思います。直接伝えるのが難しい場合には、間に入って伝える役割を自分が担う必要もあるのかなと考えています。

平塚さん
私が就職した数年前から建設系の会社でも求人が増えてきましたが、男性しか募集していないという会社も多かったように思います。女性を採用しているのか、女性も安心して働ける取り組みをされているのかといった情報は求人票の紙面だけでは伝わってきません。

そういう部分のPRをもっと学校にしに行く必要があるのではないかなと感じています。

どさん娘の会の存在も学生向けにもっとPRしていくといいのではないでしょうか。

松本彩子さん
現在、世間で取り上げられている「輝く女性像」「女性の活躍」は、男性が思い描く女性像ではないかと感じています。いわゆる「バリキャリ(バリバリのキャリアウーマン)」でなくては活躍していると言えないのか、未婚や子育て未経験の働く女性は輝いていないのか。

生き方や考え方が様々あるなか、ただ単に「女性」としてひとくくりにしてしまうのは偏った考えではないでしょうか。

今後、意思決定機関に占める女性の割合が男性と同数か、それに近くなりバランスが取れ、男性と同レベルの発言力・影響力を得ることができたときに初めて、女性達自身が描く「等身大の働き方」に近づくことができるのではないかと思います。

飯田さん
女性への配慮は大変喜ばしいことですが、「逆差別」のようになってしまうと男女双方にとっていい環境とは言えません。きっかけは「女性」でもいいのですが、男性も含めた労働環境の充実が大切だと感じます。男性も、家庭や自分の時間を大切にしてもらえるといいなと思います。

どさん娘の会の活動で、こんないいことがありました!

  • 女性用の作業着を検討する際に、現場に従事している会員の現状を参考にすることができました!
  • 会社が女性技術者の採用に前向きになったと感じます!
  • 「どさん娘の会」という名前が広まり、会話の糸口になっています!
  • 応援してくださる方がたくさんいてくださいます。そういった方々に恥ずかしくないよう、これからも努力していきます!
建設どさん娘の会のみなさん(当日は㈱北海道建設新聞社記者 塩原歩さんにもご参加いただきました)
建設どさん娘の会のみなさん(当日は㈱北海道建設新聞社記者 塩原歩さんにもご参加いただきました)

普段のお仕事教えてください!

飯田さん
技術部に所属しています。現在は現場支援・構造解析等の業務を担当しています。以前は現場で施工管理業務をしていました。

菊川さん
積算を担当しています。入社当時は施工管理業務をしていました。

本庄さん
安全ISO部に所属しています。北海道開発局の工事で担当技術者として派遣されています。

平塚さん
建築部に所属しています。最近は、分譲マンションの定期点検を担当しています。

松本彩子さん
営業部に所属し、営業職全般を担当しています。具体的には、新規顧客の開拓や入札業務等です。秘書として入社したので、転職したような気分になるくらい業務内容が変わりました。

塩原さん
新聞記者をしています。どさん娘の会では勉強会等で、講師の方の調整・依頼を担当しています。

稲垣さん
土木部に所属しています。主に現場に出ています。

鳥潟さん
土木部に所属しています。現場に出ていることが多く、現在は、測量や写真管理に携わっています。

松本光代さん
建設業協会では、建設労働者の方の退職金に関する仕事(建退共)をしています。会の中では、イベント通知文書の作成や名簿の管理等を担当しています。

大久保さん
地質部に所属しています。地盤の状況を把握し、安全に構造物が建設できるか、また地震が起きたときにどのような影響があるかなどを調査・解析しています。社内に女性技術者の会があり、リーダーを務めています。

古口さん
営業部に所属しています。建設業関連のお客様に対して測量機・コピー機の販売や貸し出し、i-Construction関係の仕事をしています。


チームひまわり 現場レポート

今回は北海道から現場レポートをお送りします! 取材したのは2016年に発足した「建設どさん娘の会」の皆さんです。北海道の建設業の現状や今後の展望について、会員の皆さんから貴重な意見を伺うことができました。

私が今回の取材で最も印象的だったのは「会員の自主性の強さ」です。今年で発足3年目を迎え、年々メンバーが増えているどさん娘の会。会としてやりたいこと・伝えたいことは何なのか、会員が増えても個人の主体性を失うことなく活動していこう! という想いを飯田さんはじめ会員の方々から感じました。やらされている感が全くなく、主体的に活動している様子はイキイキしていて、私自身よい刺激をもらいました。

今月は、北海道内の女性活躍推進の取り組みをお届けしました。女性主体の他団体と交流できる大変有意義な時間で、あっという間に取材時間が過ぎてしまいました。

私たちチームひまわりでは全国の取り組みをもっと広く発信していきたいと思います。今後もホットな情報を皆様にお届けできるよう取り組んでいきます。次回は福岡の会社を紹介する予定ですので是非ご覧ください。

杉山

日本地図

team HIMAWARI冊子

チームひまわりが夏のリコチャレ2018に参加しました。

●2018年8月9日、日本大学理工学部駿河台校舎において、学生のための建設産業界体感イベント「わたしの住むまちをデザインする仕事」が開催されました。

●女子の理工系進学を後押しする取り組み「理工チャレンジ(リコチャレ)」の一環として、内閣府・文部科学省・日本経済団体連合会が主催する産官学一体となったイベントです。中学生から大学生を中心としたイベントですが、誰でも参加OK! 当日は各ブースで熱心に話を聞く学生の姿も見受けられました!

当日は出展者お揃いのTシャツを着ました。
当日は出展者お揃いのTシャツを着ました。

●会場は「暮らしの技術紹介ゾーン」、「巨大災害に立ち向かうゾーン」、東京都の各局のブース、そしてチームひまわりも参加した女性の活躍を支える団体のブースと分かれており、様々な仕事や技術が紹介されていました。

●日常生活を支えるたくさんの建設技術、災害時に一刻も早い復旧・復興のために活躍する建設業界の方々。地震や豪雨などの被害が相次いでいる日本において、重要な役割を担っているということを学生たちに知ってもらうよい機会だったのではないでしょうか。

イベント画像

●今年、デザインにもこだわった小冊子は「かわいい」と女子に好評でした。女性の活躍推進に取り組まれている、企業の担当の方々が特に興味を持ってくださり、チームひまわりの活動についてご説明をさせていただきました。

●こういったイベントに参加するのは初めての経験でしたが、チームひまわりの活動を知っていただくよい機会になったと思います。今後も、機会がありましたら色々なところにひまわりの花を咲かせにお邪魔したいと思います!

[お詫びと訂正] 平成30年9月号 巻頭記事中で、松浦さんのお名前が一部松村さんとなっておりました。お詫びして訂正いたします。