建設物価調査会

建設物価2018年12月号

造園業の魅力を発信し、女性の活躍を応援する一般社団法人日本造園建設業協会を訪ねて

「建設業での女性活躍を支援するプロジェクト」

当調査会では、「建設業での女性活躍を支援するプロジェクト」として、女性職員を中心としたプロジェクトチーム(愛称“チームひまわり”)を立ち上げています。第35回目は、2014年に女性活躍推進部会を立ち上げ、女性のネットワークづくりを進める一般社団法人日本造園建設業協会を取材しました。


造園の仕事は施工が完了した時はいわば「赤ちゃん」。そこから手をかけ続けて育てていく仕事というのが、土木や建築と大きく違うところだと思います。

今回、取材に伺った一般社団法人日本造園建設業協会は、全国47都道府県に支部を持ち、造園工事業を営む862社の企業会員で構成されています。緑豊かでゆとりと潤いのある快適な環境と美しい景観の創造をめざし、国内外で様々な事業に取り組んでいます。

造園建設業は他の建設業と異なり、ひとつの会社で調査から計画、設計、施工、維持管理までを総合的に行うことが多く、一連の仕事をマスターするにはかなりの経験が必要です。そのため、担い手の確保や人材育成が業界全体の課題になっています。

2014年度にできた女性活躍推進部会は、女性技術者・技能者の技術向上や業界で働く多様な女性たちの仕事と生活の両立を支援し、長く、楽しく仕事ができるようにすることを活動の目的にしています。

設立の経緯

「母校の東京農業大学で講義をした時に、女子学生の造園業への就労意欲が低いことを感じました。一方で、造園業に就職したいけれど窓口が分からないといった他分野からの声もあり、常任顧問に多様な女子学生の就業に力を入れてはどうかと相談しました。」と部会長の酒井一江さんが活動を始めるきっかけを話して下さいました。

して協会の2014年度事業計画の中に、次代の造園建設業界を担う若手人材育成や女性の登用が示され、アクションプログラム推進等特別委員会の部会として女性就業促進検討特別部会を設立。 2016年度には「女性活動推進部会」に名称を変更し、現在は造園領域発展戦略委員会の3つの部会の1つとして活動を行っています。

多様なメンバー構成

現在、18人が委員として活動をしています。通常、協会の委員は企業の代表者や役員が務めますが、女性活躍推進部会は経営者から一般社員まで多様なメンバーで構成されています。年代は30代から60代と幅広くコンサルタント、設計、施工、施工管理、指定管理者や事務職と職種も様々です。ライフスタイルも既婚、離婚、未婚、子育て中の人と色々な立場の方がいます。「メンバーは千差万別ですが、その多様性がとてもよいと思っています。フラットな関係で何でも話し合えます。現業をまずは優先して、各々が仕事で感じたことを部会に持ち寄ってもらっています。」と酒井さん。

通常はメールで様々な問題提起しては、メンバーそれぞれの意見を返信してもらい、効率的な意見交流を図っています。また、見学会・勉強会、農業高校への出前講座や意見交換会など、造園に係わる多彩な活動を展開。さらに、東京都が開催した「平成30年度第1回女性が輝くTOKYO懇話会~建設業編」にメンバーの代表が参加し、小池百合子東京都知事と意見交換を行いました。

現場で働く女性の声を伝える

2014年度には、業界で働く女性の現状や課題を知るために会員企業へのアンケートを実施。会員企業は大企業から家族経営の会社まで規模は様々で、そこで働く女性も1社で400人から1人までと幅があります。大人数の会社の場合は女性職員もたくさんいて、支えあうことができますが、まだまだ女性は1人という職場も多いです。

1人を2人にすれば二人三脚で頑張っていけるのではないか? ということで2016年に女性活躍推進部会では『女子力アップで二人三脚ワーキング』という小冊子を作成。造園業界のみならず、社会人としての基礎、社会に出る上で必要な心構えなどがわかりやすく書かれています。また女性が少ない会社だと声をあげづらい場合もあると思いますが、「女性部会から経営者様へのお願い」として女性たちの声を代弁してくれるようなコーナーもあり、会社全体で読んでいただきたいという思いを込めました。

さらに2017年に作成した『造園建設業の仕事入門』は、造園建設業について簡潔に説明するともに、女性の職場として魅力的であることを伝えるため働く女性たちの仕事ぶりを紹介しています。(男性も取り上げて欲しいという要望に応え、次の改定では『業界で働く男前たち』の記事を掲載予定。「ハサミを使う」という共通点で、美容師から造園業界へ転職された方のエピソードも。どんな冊子が完成するのか楽しみです!)

女子力アップで二人三脚ワーキング

新たな発想が求められる時代

公共事業では指定管理者制度が導入され、マネジメント力や企画力、コミュニケーション力などが以前にも増して求められています。「造園は、国土交通省の海外日本庭園再生プロジェクトや、まちづくりにも貢献する文化的価値の高い仕事です。時代の変化に合わせて新たな発想や仕組みが必要になりますから、今後は造園領域発展戦略委員会の各部会とも連携して、横断的な取り組みをしていく予定です。」と酒井さん。

日本庭園や伝統の半纏
日本庭園や伝統の半纏
日本庭園や伝統の地下足袋
日本庭園や伝統の地下足袋
今年度の女性活躍推進部会メンバーの皆さん

取材当日は酒井さんへのインタビュー後に女性

部会の今年度新メンバーの顔合わせが行われ、全国からメンバーが集まり今年の活動について話し合われました。今年も明るく楽しく活動されていくことと思います。


酒井 一江

造園建設業界で働く女性にエールを送る

一般社団法人日本造園建設業協会
造園領域発展戦略委員会 女性活躍推進部会会長
酒井 一江

色々な立場、状況の人がいていい。お給料が下がったとしても、自分がイニシアティブをもって、限られた時間の中でも自分がやりたい仕事を組み立てていく、自分の考えを会社に伝える、そういったことも大切なのではないか。何かを犠牲にしてまで仕事をすることが輝いていると言えるのか…。

法律で決められたことを守り、制度や設備を整えることは、もちろん大事ですが、女性が自主的に自分の働き方や時間の使い方を選べるようになることが、これからの時代の働き方だと考えています。それを実現するためには、まず私たちが業界で働く女性の現状を知り、経営者に伝えることが必要です。

『二人三脚ワーキング』は、造園建設業界で働いている女性、そして将来、働きたいと考えている人たちにエールを送るために作成しました。仕事の楽しさややりがい、課題など、現場で働く女性たちの生の声を伝えています。そして、経営者の方々に業界で働く女性たちの気持ちや現状を理解していただき、女性が活躍できるような環境づくりをお願いしていきます。


チームひまわり 現場レポート

インタビューさせていただいた酒井さんはチャーミング・エネルギッシュという言葉がピッタリの方でした。造園業界のためにできることを楽しくやろう! をモットーに活動をされています。

二人三脚ワーキングの小冊子、見た目がカッコイイ作業着を着てモチベーションをアップ、造園業界で働く男前の取材、学生向けの出前講座で造園の仕事をもっと知ってもらいたい…業界全体を盛り上げるアイディアがまだまだ飛び出してきそうです!

宮川さん

造園のお仕事は多岐にわたるので、女性が活躍できる仕事も多いとのこと。自分のスタイルで出来る仕事が見つかるかもしれません。

明るく魅力的な造園業界となりますよう、応援させていただきたいと思います! 次回も是非ご覧ください!

宮川

team HIMAWARI 冊子