有限会社牧野建設 専務取締役 松田由紀子さんへインタビュー!
女性ならではの円滑なコミュニケーションで活躍
女性がどのように働いていますか?
当社では10年以上前から現場で働いている女性職員がおり、何かきっかけがあって女性活躍の取り組みを始めたわけではありません。しかし、当時現場で働く女性は珍しく、また相当苦労が多かったのも現実です。その苦労のおかげで、当社では女性が現場で働くことについて違和感なく働ける職場でもあります。また現場で働く職員だけでなく、事務職員も、男女関係なく、一級土木施工管理技士・建設機械の資格取得、出張など自然と行っています。
職員30数名中、5名が女性職員で、2名が現場で代理人の仕事に携わる仕事、建設機械の重機オペレーターをしています。現在は、新設の那覇空港第二滑走路の大型現場等にも携わり、日頃から、当社では事務職員の女性も安全パトロール等で現場にも行く為、ヘルメット・作業服・安全靴等も、持っています。事務所内にいるだけでは見えないものが、現場を通して現状を理解できることで、会社全体のチームワークにも繋がっています。また、重機オペレーターの20代女性職員は育休に入っています。本人は現場から離れたくなかったようですが、現場は振動等もあり危険を伴い、妊娠が判った時点ですぐに施工管理の補佐業務に異動しました。本人が早く現場に復帰したい気持ちも尊重しながら、お子さんの成長に合わせ、現場復帰できるようバックアップしていきたいと思います。
また、当社では女性ならではの発想も積極的に採用しています。例えば女性職員の会話の中で、会社のキャラクターがあると良いね! という話になり、「まき犬」が誕生しました。プロのデザイナーに外注したのではなく、女性職員が3才のお子さんと一緒にお絵かきをしているなかで誕生したキャラクターです。イメージアップの一取り組みの中で、現場で使用するカラーコーンや安全標語のノボリ等に様々な面で取り入れています。他にも作業服のリニューアルでは、女性職員の意見をたくさん取り入れました。また、女性目線だけではなく、業界のイメージアップのため、また若い男性が着たくなるようなスポーツブランドの空調服も導入しました。以前の空調服は機能性も含め格好悪い印象で不評でしたが、スタイリッシュになったことで好評を頂きました。
女性が働いていることでのメリットはありますか?
現場では体力的な面で男性と女性の差が出てしまうのは当たり前のことですが、女性ならではのきめ細かい配慮、コミュニケーションに対する評価があります。
また、社内では女性職員がいることで男性を含めた職員全員が休暇を取得しやすくなりました。現場最優先で子供の入学式にも行けないというような、昔は普通だった男性社会のルールも、皆で協力し合えば実現できる、働き方改革が求められていると実感します。人手不足な時代だからこそ、女性の知恵を活かせたらと思います。私が出産した当時は、育休制度はあったものの、カバーできる職員がいなかった為、退院した翌日から仕事と育児と本当に苦労しました。自分自身の苦い経験を活かして、在宅勤務の導入で、子育てやこれから増えてくる介護問題を通しながらカバーし合えるような、より女性が働きやすい体制を作っていきたいです。様々な取り組みの中で、女性職員がいるおかげで、色々なヒントを頂き、経営戦略にも繋がっています。
官民挙げた女性活躍推進について感想とご意見をお願いします!
当社では2018年に東京で行われた、第一回建設産業女性活躍セミナー全国大会に参加させて頂き、20代女性重機オペレーターが自分の目線で色々な意見や発表をさせて頂きました。その際、お会いした全国の女性技術者の方々・団体の方に、現場で抱えていた悩みや葛藤を共有できたことで、刺激をうけ、資格試験も積極的に挑み、彼女自身すごく成長させて頂きました。また、ここ数年で特に改善されてきたのが、男女別の快適トイレです。以前の建設現場では、汚く狭い共同の簡易式トイレが当たり前でしたが、現場で働く女性の方々の声が通じ、特に公共工事では劇的に変化しました。
また、仕事のやりがいは自分で見つけるものですが、働きやすい環境を整えることは必要です。危険を伴い、高度な技術力を要する仕事で、女性が活躍・働きやすいということは、“現場で働く男性が今よりも、もっと働きやすくなると”感じます。建設業界は男性社会のイメージが根強いですが、女性入職者が増えることで、もっと明るい前向きなイメージだけでなく、円滑なコミュニケーションで現場が無理なく安全に進む取り組みを推進していきたいです。またICT・IOT・AI等、官民挙げた様々な取り組みが加速する事で、より安全で働きやすい業界になれると期待しています。
建設業の魅力を教えてください。
工事を受注できた喜びは束の間、いざ現場では工事が始まると、緊張と苦悩の日々が始まります。その中で、すぐに結果が形として見えなくとも、悩み苦労した現場ほど無事故で完成し、施主や関係各社の皆様にご満足頂き、インフラ整備でお役にたてる仕事は、共に苦労した仲間と無事お互いケガもなく終えた事の喜びや、緊張から解放される安堵・達成感を存分に味わえる所が最大の魅力だと思います。協力し合った人間の力って本当にすごい!と、目に見える形として実感できます。また、その経験こそが自分自身の自信にも繋がると思います。 当社でも、職員全員が無事完成した現場を喜び分かち合えることが誇りです。
これからこの業界を目指す女性たちへのアドバイスをお願いします!
実際、入職してみるとイメージが180度違う業界かなぁ? と思います。私もそうでしたが、国家資格取得は勿論、高い専門性が求められ、また工種によっては、多くの業種の方々と関わりながら、専門知識や知恵を出し合い現場を完成させます。施主の意向を尊重しながらも、安全施工・技術提案・工期・品質・法令順守等、また職人さん達との情報共有・意思疎通等、厳しく現実的な課題が沢山求められます。しかし、この仕事を通して女性ならではの特色を生かせること、また沢山の方々と出会うことで、より多くのことを学び、成長させてもらえる業界だと思います。
チームひまわり 現場レポート
今回は女性活躍の先駆者、㈲牧野建設 松田専務にお話をお伺いしました。女活をごく自然なこととして前向きに取り組まれていて、事務方の女性も複数の建機の資格を保有されているなど、意外に感じることが牧野建設さんでは普通のことになっています。入社後に出産した女性社員が3名もいらっしゃるとのことで、何百人何千人の職場ではなくても育休制度を活用されている事実は、全国でこの記事を読んで下さる方々の希望になるのではないかと思います。女性の活躍の場がどんどん広がって欲しいと感じました。