建設物価調査会

建設物価2022年11月号

ハード・ソフト両面から社員をバックアップ  株式会社マサルを訪ねて

東京都江東区にある株式会社マサルは、1957年の創業以来、数多くの高層ビル・マンションの施工をはじめ、文化遺産的建造物や集合住宅などの改修工事も手掛けるシーリング防水・改修工事のリーディングカンパニーです。

多能工の育成やIT化推進による作業の効率化、生産性の向上にも積極的に取り組むなかで、活躍する女性総合職が増えています。今回は勝又社長と人材開発室の有田室長、そして総合職として働く2人の女性社員にお話を伺いました。


左:第2営業部 小林ももさん 右:たてもの改装部 今野杏梨さん



進路や入社のきっかけについて教えてください


今野さん

ものづくりに興味があって理系の高校に進み、進路は電子・情報系を考えていました。でも『フリーター、家を買う。』というテレビドラマを見て、ゼネコンの女性ってかっこいいと思い、大学で土木を学びました。大学院では都市防災を専攻し、ゼネコンへの就職を考えましたが、社会人になっても地元の消防団や地域の活動を続けていきたかったので、転勤のないメーカーやサブコンを中心に就活するなかでマサルに出会いました。

ワンデーインターンに参加して、年齢の近い先輩やお子さんがいらっしゃる先輩とお話しでき、女性の施工管理の方たちのキラキラ働く姿に魅力を感じました。女性活躍推進をうたっていても実際聞いてみると制度だけあって利用が進んでいない会社もありましたので、その点マサルは、きちんと運用されていると感じました。人材開発室に有田室長がいらっしゃることも大きいです。いつでも何でも相談できる、頼れる女性がそばにいることで安心して業務に励むことができます。

小林さん

小さい頃から家を見たり描いたりするのが好きで、親の勧めもあり大学で建築を学びました。最初は、設計の仕事をしたいと思っていましたが、設計業務は残業も多く、家庭との両立は難しいと感じました。また、図面の作成だけではなく、施工現場も見たいなと思い、施工管理の仕事ができる会社を探して、マサルに出会いました。

転勤がないことに加え、風通しのよい社風や出産してからも総合職としてバリバリ働いている女性社員を見て、働く環境や福利厚生制度がしっかりしている会社だと感じ、この会社で長く働きたいと思いました。

今野さん

施工管理が主な仕事です。私が所属している「たてもの改装部」は、元請けとして建物の修繕や改装をしています。入社当時は教育担当の先輩の後ろについて業務を覚え、現場の写真を撮ったり、お客様との打ち合わせの議事録を作成したり、報告書の写真をまとめたりしていました。

最近は私に直接工事の依頼が来るようになり、自分が中心となってお客様と話をして仕事を進めることもあります。その場合は、現地調査のあとに見積を作成。工事が決まったら日程調整や協力会社・職人さんとの打ち合わせをして、工事を実施。最後は報告完了して請求を出すという一連の流れを1人で担当しています。まだ、1、2日で終わる小さな工事で、金額もそれほど大きくはありませんが、先輩の手を借りずにできるようになりました。お客様から信頼していただけることにやりがいを感じています。

会社でテレワークを推奨しているので、現場への直行直帰や、自宅でのメールのやり取り、朝礼もオンラインですることもあります。

担当する現場で先輩と打ち合わせをする
今野さん(手前)

小林さん

今年4月に入社して、主に大規模なビルの改修工事を行う第2営業部に所属しています。大規模なオフィスビルの全体改修から、漏水や床の剥離の改修といった一部の工事など規模は様々です。仕事は施工管理ですが、まだ4カ月ですので、OJTで上司について現場調査や会議に参加して、職人さんや元請業者との打ち合わせの様子を勉強しています。最近は、積算や見積作成を任せてもらうこともあります。

 今は、目の前にある与えられた仕事をこなしていって、2年後には自分で考えて仕事を進められるようになりたいと思っています。将来、結婚や出産をしても仕事を続けられるようになるためには今の頑張りが大事だと思っています。

教育担当の先輩から指導を受ける小林さん

現場で女性だからと、仕事がやりにくかった事などはありませんか?


今野さん

10年ほど前まではそんなこともあったと先輩に聞いたことはありますが、自分自身の経験ではまったくそんなことはありません。名前や顔をすぐに覚えてもらえるので、むしろ得しているなと思う時もあります。職人さんも優しいですよ。それも現場で頑張ってきた先輩方のおかげだと感謝しています。


小林さん

みなさん、とても優しく、職人さんたちもいろいろ教えてくださいます。あまり男性だから、女性だからと意識したことはありません。


仕事で苦労したことや嬉しかったことは?


今野さん

任せてもらえることが増えた分、タスクがたくさん溜まることがあります。二つの担当工事がほぼ同時期にあり、タスクオーバーになった時には先輩に助けてもらいました。複数の現場を同時並行で進めることの大変さを知り、10件以上の案件を担当している先輩から仕事の上手な進め方を学んでいます。

 当社は都内の超高層ビルの約7割のシーリング・防水工事をしています。新宿や秋葉原を歩いていると先輩がこのビルは誰が担当したかを教えてくれます。もちろんプロジェクトの一部ですが、みんなが知っているビルに携われるのはすごく嬉しいですね。昨年、ある結婚式場の改修工事に私も携わったのですが、地元の知り合いから「すごいね」と言ってもらえました。それ以外の工事でも言ってもらえる機会が増えてやりがいを感じています。

小林さん

学生の頃とは違い幅広い年代の方とお話しをすることが多くなりました。シーリング工事という業務がまずあって、そこにプラスして社会人としての気遣いが必要になるので、常に社会人としてのマナーやスキルを意識しています。 嬉しかったことは、単独で調査に行かせてもらって、私が作った見積がお客様に採用してもらえたことです。9月から工事が始まりましたが、とてもやりがいを感じています。


左:勝又社長、右:有田室長


代表取締役社長 勝又 健さん

1人ひとりがどこでも働ける環境を整備

 女性活躍を推進していますが、それを意識して取り組んできたというより、男女関係なく、1人ひとりが活躍できる環境を作ってきました。今、育休を6カ月取得している男性社員がいますが、これからは分割して取得できるようになるので、制度を利用する男性社員も増えていくと考えています。育児休業から職場復帰し、総合職として活躍している女性社員もいます。子育てとの両立は大変だと思いますが、あまり努力しなくても両立できるようになるのが理想ですね。

 業務の環境整備の面では、どこでも仕事ができるようにノートパソコンとタブレット、モバイルWi-Fiを配布しました。現場や自宅、出先から会議に参加したり、書類や図面を見たりできるようになったので、うまく活用して生産性の向上につながればいいと考えています。また、勤務時間もフレキシブルに調整できるようにしています。

 若い人は、福利厚生や会社の雰囲気を重視しています。自分のライフスタイルを大切にする人が増えていて、休みを取って自分の趣味を楽しんだり、地域の活動を通して社会貢献している社員もいます。プライベートを充実させることで柔軟な発想が生まれ、仕事にもプラスになるのではないでしょうか。

総合職に求められるコミュニケーション力

 我々のような専門工事の施工管理は、建築学科を出て知識を持っている人がおそらく有利ですし、仕事の飲み込みも早いと思いますが、一方でお客様とのコミュニケーションはもちろん、現場をまとめるためには協力会社とうまく人間関係を構築することが重要です。

そのため、文系理系を問わず採用活動をしています。自分の親、場合によっては祖父母の年代の人たちをうまくまとめて仕事をしてもらわないといけない。しかも圧倒的な知識を持つ職人さんが多いのです。かわいがられ、熱意を持って自分の思いが伝えられないと職人さんは動いてくれません。営業も同じです。お客様は広い知識をお持ちですが、シーリングの専門分野については、安心して我々に頼ってもらえるというような信頼関係を築ける人材を必要としています。



人材開発室 室長 有田智賀子さん

社員が安心できる環境を

 女性社員の割合は、現在8~9%と多くはありませんが、毎年、女性を採用しています。総合職は毎年男女数人ずつ採用してきましたが、来年度は男性4人、女性4人を採用する予定です。

 女性総合職のロールモデルとなる同じ世代の先輩がいることで将来を見据えることができるとともに、人材育成のプログラムや福利厚生の諸制度を設け、活躍できる環境が整っています。

 人材はものすごく大事ですから、心身の健康には注意を払っています。時には少しおせっかいかなと思うこともありますが、アットホームな雰囲気は社風なのかもしれません。特に地方から出てきて、初めて1人暮らしをするような場合は、年齢の近い会社の人が近くにいる方が安心だと考え、借り上げの社員寮を設けています。先日も、体調を崩した時に同じ寮に住む先輩が病院に付き添ってくれたり、薬を届けてくれたりしたということがあり、社員が1人で心細い思いをせずに済んだと、私たちもほっとしたところです。


チームひまわり 現場レポート

 「職場の女性活躍」がさけばれて数年が経ちましたが、政府の目標に向かって制度を整えたものの、なかなか実態がともなわない会社も多くあると思います。今回インタビューさせていただいた若手社員の2人は、しっかりとそれを入社前に見極め、自分のやりたいことを両立・実現できる会社だと確信して入社されています。そのため入社してまだ日は浅くとも、ビジョンがしっかりしていて頼もしい話しぶりでした。

 また、そのあとにお話を伺った勝又社長と人材開発室室長の有田さんは、そんな2人を父と母のように温かく見守っていました。ハード面の整備が進んだ働きやすい環境と、頼れる有田室長の存在が、2人の成長を後押ししていくことでしょう。今野さん、小林さんの今後の活躍が楽しみです! 

稲村