建設物価調査会

建設物価2016年11月号

「えるぼし」女性活躍推進法に基づく最上級(認定段階3)認定取得! 「多様な人材活躍を推進する清水建設株式会社」を訪ねて

「建設業での女性活躍を支援するプロジェクト」

当調査会では、「建設業での女性活躍を支援するプロジェクト」として、女性職員を中心としたプロジェクトチーム(愛称“チームひまわり”)を立ち上げています。第14 回目は、ゼネコンでは初となる「えるぼし」の認定段階3 を取得した清水建設株式会社を取材しました。


厚生労働省では、厚生労働大臣の認定を受けた企業が認定マーク(愛称「えるぼし」)を商品や広告などに付すことができ、女性活躍推進事業主であることのPRや、優秀な人材の確保や企業イメージの向上等につながることが期待できる制度を創設しました。この制度は、平成28年4月1日に全面施行された女性活躍推進法で、一定の基準を満たし、女性の活躍推進に関する状況等が優良な企業について、厚生労働大臣の認定を受けることができるというものです。この認定は、基準を満たす項目数に応じて3段階あります。

女性が活躍しています!女性活躍推進法に基づく認定マーク「えるぼし」(3段階目)

同年4月末日までに全国で46社の企業が「えるぼし」企業として認定されています。今回はその企業の中から、ゼネコンでは初となる3つ星(認定段階3)に認定された清水建設株式会社人事部企画グループ長の秋山さんと、ダイバーシティ推進室室長の西岡さんにお話しを伺いました。

ダイバーシティ推進室

2009年に新設したダイバーシティ推進室は、働きやすい環境づくりやさまざまな施策の検討・充実を進めています。
「男女問わず多様な個性を活かし、企業価値を高めること」を目標とし、様々な制度を試みた結果、えるぼし認定を取得する事が出来ました。
同室では、①女性活躍推進、② 外国籍(留学生)の採用と育成、③ 障害者の雇用が取り組みの3本柱となっています。外国籍の方達については、毎年3~4人の採用をしていましたが、最近留学生の人数が増えてきているため、来年度は採用人数も増える可能性があります。障害者の雇用については、法定雇用率に対してプラスの目標値を設定して取り組んでいます。女性活躍推進については、女性活躍だけにとらわれず、会社の風土を変える意味もあり、イクボスを増やすことに一番のウエイトを置いています。イクボスを通じていろんな方に活躍して欲しいと考えています。また、もう一歩進めていきたいのは、働き方の改革です。労働時間削減の方に意識が変わっていくのを期待しながら取り組んでいます。

●主な女性活躍推進施策

主な女性活躍推進施策

「えるぼし」を取得するうえで大変だったことは

女性活躍推進を継続して実施した結果がえるぼし取得につながったという面では、大変ではなかったです。しかし、「えるぼし」を取得したことで、今後は実現可能な取り組みであるのか、継続的に続けて行けるのか、何にフォーカスしていくのか。この3点を踏まえたうえで女性活躍推進を継続していくというコミットメントになるため、そこは大変だと思っています。
 会社全体のマネジメントに関わることですので、女性だけでなく社員全員が自分のことのように取り組めるような体制が不可欠だと考えます。

女性活躍推進の中で重要だと感じることは

女性のまわりを取り巻く人、上司や経営陣の意識改革だと考えています。また、女性が長く働き続けられるかどうかに関しては労働時間の問題があります。
 様々な働き方があるなかで、現在は誰もが、ライフスタイルに合わせて働き続けられる制度を作ることが私たちの使命だと感じています。そのためには、意識改革が重要と考え、上司向けの研修を行うなど、女性社員以外への働きかけを積極的に行ってきました。
 また今後は、女性総合職を増やし始めた時に採用した社員がライフイベント(結婚、出産)を迎える時期になります。これまでとは違う視点での施策が必要になるので、試行錯誤しながら進めていきたいと思います。

イクボス

 働きやすい環境を実現するうえで、各組織のリーダーの意識改革の必要性から「イクボスによる働き方の改革」を推進しています。部下の育児休業取得などを促したり、仕事と育児の両立をしやすい環境の整備に努めるリーダーをイクボスと呼んでいます。
 社内活動として、以下の定義にふさわしい役職者を推薦し、イクボスアワードを開催し優秀者には金ボス賞が贈られます。今年で2年目になりますが、今年は3名が表彰されました。

  1. 部下の私生活とキャリアを応援
  2. 自らもワークライフバランスを実現
  3. 生産性向上・業務効率化による働き方改革を実践している役職者

女性の活躍推進というと、女性のみがクローズアップされるので、男性にはあまりかかわりがないと思われがちです。皆が意識を持って取り組んでほしいという想いがあります。男性の方から自主的に「イクボスになります宣言」をもらったことはとても嬉しかったです。

ワークライフバランス

 ワークライフバランス推進の一貫として、働き方改革にも力を入れており、2015年10月から水曜日をノー残業デーとする取り組みを開始しました。初めは、仕事量の多い業界であるため、実現は難しいかと思われたこの取り組みも、一人一人の意識によって、今では会社全体の習慣となってきています。週に一日自由な時間が増えた事で、「趣味や家族と過ごす時間が多くなった「」飲み会が増えてコミュニケーションを取る機会が増えた」との声が多く聞かれました。なかには、「旦那さんが水曜日は早く帰って来てくれて、子供をお風呂に入れてくれるのが凄く嬉しい」という声もありました。
 また2016年4月から育児・介護のためのフレックスタイム制度を取り入れており、10時から15時まではコアタイムでその前後は就業時間を自由に設定出来るようにしています。この制度は女性はもちろん、男性の方も取得しており、夫婦で家事を分担しながら育児と仕事を両立している方もいます。しかし、現場勤務の方の使用は現在はありません。現場でも使えるようになって初めて改革と言えると思っているので、これからも普及活動を続けていきたいと考えています。

「イクボスアワード2016」表彰式の様子
「イクボスアワード2016」表彰式の様子

西岡さんの女性活躍推進に対する想いをお伺いしました。

人事部ダイバーシティ推進室室長 
西岡 真帆さん
人事部ダイバーシティ推進室室長
西岡 真帆さん

インフラ整備に関わりたいと思って土木や建築を勉強し、その夢を実現する建設業で働き続けたい、という女性の想いを実現するのが、当社における女性活躍推進の取り組みだと考えています。建設業界が本格的に女性活躍推進の取り組みに着手してから2年程度しか経過していませんが、当社では既に活躍している女性や、新たな活躍の場を広げている女性が少数ではありますが在籍しています。様々な取り組みの効果は、すぐには目に見える形で現れることはありませんが、継続的に取組むことで、必ず結果はついてくると想っています。いつの日か“女性活躍推進”という言葉がなくなると良いですね。


チームひまわり 現場レポート

11月号ではゼネコンで初めてえるぼしの3つ星認定を受けた清水建設さんへ伺い、その認定に至るまでの経緯や社内での取り組みについて取材しました。
 現在は、人事部で様々な取り組みをされている西岡さんですが、もともとは土木出身で、現場監督や実験などをされていました。現場勤務の時は、まだ女性の技術者が少なく、ロールモデルとなる方もいない環境だったそうです。その中で、「男性と肩を並べて働き、自分の技術を磨くことで働き方を確立した。」という話がとても印象的でした。

最近では、建設業においてもロールモデルを求めるようになってきており、女性が現場にいることが少しずつ「普通」に近づいているのだと感じました。
今回は、えるぼしを初めとする制度や環境が「普通」へ向かって変化していることを実感した取材となりました。私も建設業に携わる一員として、微力ながら参画していきたいと思います。その取り組みの1つとして「チームひまわり」も活用されればと感じました。
 ひまわりレポートは不定期掲載になりますが、今後もホットな情報を皆様にお届けできるよう取り組んでいきます。次回も是非ご覧ください。

チームひまわり 現場レポート 杉山

杉山

私たちチームひまわりが取材に伺います!