生コン女子の”生”の声をお届け!「 生コン女子」座談会に潜入!
「建設業での女性活躍を支援するプロジェクト」
当調査会では、「建設業での女性活躍を支援するプロジェクト」として、女性職員を中心としたプロジェクトチーム(愛称“チームひまわり”)を立ち上げています。第32回目は、「生コン女子」の座談会の様子をレポートします。
「水の次に流れている」と言われるほど社会インフラの形成においてなくてはならない“生コン”ですが、就労環境の厳しいイメージから若手の担い手不足が叫ばれています。その状況を打開すべく、業界を挙げて動き始めており、6月号では日本コンクリート工学会の取り組みを紹介しました。今回は、現場で働く「生コン女子」の座談会を開催し、生コン女子の“生”の声をお届けします。
今の業務を教えて下さい
村川さん
総合高校の商業科を卒業後に入社しました。入社して2年間は工場と現場で、生コンをはじめ骨材や薬など様々な試験を実施したり品質管理をしたりする部署にいました。現在は生コンを製造する部署でオペレーション業務をしています。
松浦さん
現在は生産部というコンクリートを製造する部署にいますが、うちの工場では、一人抜けて生産できなくなる工場ではダメだ、という方針から、全員が何でもできるようジョブローテーションしています。入社後まずは試験を担当し生コンの品質を理解してから、オペレーションの業務や製造の機械管理の業務に配属になります。全部の部署がスムーズに動かないと現場のニーズに応えられないので、一通り経験して相手の状況も理解できるようにするというメリットを考えてのことだと思います。
井上さん
今は週4日工場、1日本社で勤務しています。工場では品質管理を担当し、本社では材料価格などの管理業務をしています。
なぜ今の仕事を選んだのですか?
松浦さん
高校卒業後に入った4年制の専門学校で、建築科とコンクリート科で分かれる時に、コンクリート科に進みました。コンクリート科の実習の時に、生コン工場で2ヶ月間研修生として働かせてもらい、こういった仕事があるのだと知りました。初めて生コンに触り、興味がわいて働きたいなと思いました。
猪熊さん
生コンに触って楽しくて…ということですね。他の女性に聞いても、実際触ってみると楽しいと聞きますが、なかなかそんな機会が無いですよね。
松浦さん
学校の授業だけではここまで生コンに興味がわかなかったと思います。授業も楽しかったけど、あくまで「課題」であって、「仕事」になかなか結びつきませんでした。研修でお世話になった工場の方々がいい人ばかりだったのもあると思います。
この工場で働きたい! と思ったのですが、当時社員の募集はしておらず。学校の先生の勧めもあって、会社に直接、ぜひ採用してほしい旨の手紙を送り、入社に至りました。
村川さん
元々生コンクリートというものを全然知りませんでした。高校の近くに生コン工場があって、進路指導の先生にその工場の見学に行ってみたら? と言われたのがきっかけです。行ったときに会社の雰囲気が良かったのが第一印象で、この工場で働けば楽しそうだと思いました。入社した時はまだ、生コンクリートのことは知りませんでしたが、働いていくうちに知識も増え、仕事が楽しいので今でも続けられています。
猪熊さん
やっぱり女性が“居着く”生コン工場って雰囲気がいいのだろうなと思います。
村川さん
そうですね。明るくて、若い人が多くいます。
何も分からないけど、雰囲気が良かったので入ってみたら楽しいのかなと思いました。高校の近所に工場がなければ入社していないし、ミキサー車も何なのか分からないまま日々を過ごしていたと思います。
井上さん
合同説明会に参加していた会社に縁があって入社しました。大学の専攻も全く関係ありませんでした。
猪熊さん
合同説明会で色んな会社がある中で、しかも全然学んでいたことと関係ない業界で何に魅かれたのですか?
井上さん
採用の選考が進むなかで、工場と土質試験所を見学する機会があったのですが、土質試験所で地盤改良の試験の説明を受けている際、所長がその年起こった洪水被害について話してくれました。「堤防の地盤に対してしっかり検査し、対処していれば防げたかもしれないのに…」と悲しそうにつぶやいていた事がとても印象に残りました。予期せぬ災害に対して、自分たちが守っていかなければという強い思いで仕事に取り組む姿勢に心打たれたとともに、社会貢献ができる仕事なんだなと思い、興味を持ち始めました。
就職前と比べてギャップはありましたか?
村川さん
生コン自体もそうですが、試験等で使う道具も全て重たい物ばかりで、力仕事面では大変です。だけど汚れるだけじゃなくて、私たちの生活の基盤になる物を造っていると思うと楽しいです。試験業務の時は、工事現場で男性の中に女性一人でトイレなど大変だなと思うこともありますが、現場の人も明るく接してくれるし、自分がいる事で現場が明るくなるのかなと女性がいる事の良さを実感しました。今は、現場に行って自分の練ったコンクリートが実際建物になっていくのを見るとやりがいを感じます。
松浦さん
インターンでの経験はありましたが、入社してみたら、実際大変でした。元々スポーツが好きで一般的な女性よりは体力があると思っていたのですが、入社当初は周りが気を遣って「やらないでいいよ」と言われることもあり、凄く悔しかったです。皆に負けじと同じように重い物を持ったり、猫車を引いたり、プラントのはつりをしたりしているうちに、少しずつ楽しくなってきてやりがいが出てきて、徐々に男性の方からも頼られるようになりました。
社内社外の方問わず、女性が少ない分どう接していいのか最初のころは分からなかったのだと思います。
猪熊さん
も松浦さんが入社して頑張ってくれているから、会社としても今後女性が入ってきた時にどう接すればいいのかが分かるようになったのではないのではないでしょうか。
会社で女性支援の制度はありますか?
松浦さん
入社当初はありませんでしたが、前社長がこれからはそういう制度も必要だと、産休の制度を整えてくれました。本社で私の前に一人出産した方がいたので、会社で産休を取得したのは二人目です。
猪熊さん
生コン業界で女性が増えるような取り組みの一つとして、「生コン女子認定工場」を作りたいと構想を練っています。実際働いている方が、「トイレが男女別」とか「帰社時間が早い」といった項目を考えて、いくつクリアしたら認定されるという制度です。それぞれの会社が認定を目指して社内の設備や制度を整えられれば、それが会社のPRになり、人材も集められるのではないかと思います。
一 同
うんうん(頷く)
猪熊さん
一日工場体験をやるのもいいですね。実際松村さんのようにインターンをして入社している人もいるので、女子校で一日体験の募集をすれば、興味を持ってくれる子がいるんじゃないかと思います。
女性に向いているよ!というおススメポイント
村川さん
女性も楽しくできる仕事だと思います。建設業は朝が早くて夜遅いというイメージがありますが、当社は16時40分の定時で帰れることもあり、プライベートの時間もしっかり持てます。汚れると思われがちですが、作業着を着ますし、手はゴム手袋の上に軍手を着けているのでネイルもできます! 職種によりますが、体がすごく汚れるということはありません。オペレーターだったら室内ですし、汚れるとしたらミキサーを洗う時くらいです。
また、男性ばかりの職場なので女性の視点から補える部分もあり、自分の力を発揮できるのかなと思います。
最近では建設現場も変わってきていると感じます。休憩所に飲み物が充実していたり、夏場はかき氷器が置いてあったり。女性が増えているので女性用トイレが設置してありますし、昔の汚いイメージの現場とは異なります。
松浦さん
生コンクリートは色々な工程をたどって出来上がるので、工場では様々な業務がありパソコン作業が好きな人、お客さんとの対応が得意な人、体が動かすことが好きな人それぞれに合った仕事が選べます!
個人的には特に配車係は女性に向いていると思います。現場と直接関わる大事な仕事ですが、指示の仕方や電話の対応が丁寧だと現場の印象が違います。
井上さん
フレキシブルな働き方も、人数が少ない会社だからこその強みなのかなと思います。
猪熊さん
こうゆうことがもっと知られるといいなぁ。
生コン女子のみなさま、ありがとうございました!
チームひまわり 現場レポート
生コンを出荷する際は、常に状況が変化するなかでスピードが要求されます。今回は、こうした環境下で活躍している女性たちに取材の協力をしていただきました。
勝手な先入観から男勝りな‘強い女性’たちがいらっしゃるのかと身構えていましたが、日常業務のなかでの気遣いや、やりがいなどのお話を伺ううち、‘しなやかな女性’だなという印象に変わりました。それぞれの個性を生かせる職種、職場であるからこそ、しなやかな女性たちが生き生きと働けているのだと思いました。
建設業界は、まだまだ男性が多く難しい面もあるのかもしれません。しかしながら、近年は制度も充実しはじめ、男性も女性も自分らしさを生かして働ける環境になってきているのだと今回のインタビューを通し感じました。より一人ひとりが個性を生かすことができるような、この先もっと男性も女性も働きやすくなるような、業界、ひいては世の中になってほしいと強く願うばかりです。
山本