建設物価調査会

建設物価2020年1月号

全ての働く人に安全と快適さを提案 
ミドリ安全 株式会社「ワーク女子力」を訪ねて

立ち上げ経緯

 社長の“「安全」を社会に広めていきたい”という想いから、5年前に「働く女性応援プロジェクト」を立ち上げ、安全衛生保護具等のブランド「ワーク女子力」を展開。メンバーは、商品の各部門から代表者を数人選出し全員が通常業務を兼務しながら、今年度は主に17人で活動しています。従来、作業服や安全衛生保護具等は男性が使用することを前提として作られているものがほとんどで、女性は、男性向けのサイズの小さいものを使用している状態でした。そこで、発足してすぐに、女性向け商品の開発に取り掛かりました。しかし、今まで商品開発をしていたのは男性ばかりだったこともあり、実際に働く女性たちがどのようなことを望んでいるのかが分かりません。

現場で働く女性のための
安全保護具

 そのため、お世話になっている取引先の現場で働く女性たちに協力してもらい、生の声を集めることからスタートしました。靴・ヘルメット・ユニフォームについてそれぞれの担当者が出向いて直接お話を聞き、他にもインターネットでアンケートを実施するなど、現場のニーズに応えることにしました。今でも取引先に出向き、現場作業をしている方を中心としてアンケートを実施するなど、ニーズ調査を続け女性向けの商品を開発しています。

カタログについて

 商品の開発を始めたからといって、すぐに商品化出来るものではありません。最初の1年は従来からあった女性向け商品をカタログにまとめ、展示会などで紹介し意見を集め、翌年から具体的な商品開発を始めました。

 年ごとに建設業、運輸業、物流業といったようにテーマを絞って活動し、業種に合わせた商品、ヒアリング結果の記事、毎年新しく開発した商品などをメインにカタログに掲載しています。また巻頭ページには、その年のテーマに沿った、業団体との座談会の様子や人間工学を研究されている医学博士の「作業時に身体にかかる負荷の軽減」などの記事も掲載しました。

 何度も集まって打合せを行い、商品開発時から、カタログに掲載した際に、トータルコーディネートの色合いがそろうようにこだわっています。2019年10月でVol.5を作成・配布し、展示会にも参加しました。

マタニティユニフォームも展開

 近年、多くの企業で産休制度が整えられ、業務内容を変更しながら臨月まで働く女性も増えています。マタニティユニフォームは発足前からありましたが、「ワーク女子力」の活動をきっかけにさらなる開発を進めました。社内の妊娠中の社員に試着の協力をしてもらい、働く妊婦さんに優しい機能の検討を重ねることで新しい商品を生み出し、2年前に発売しました。

 またダイバーシティの観点からも世界中の支社・支店まで「他の社員と同じユニフォームを着用したい」と言う要望が高まっています。しかし、企業によってはそろえるのが困難なこともあります。そのため、ワーク女子力で開発を行い、さまざまな要望に応え各社のユニフォームにも応えたいと考えています。

フットウエア統括部
吉成 ヨリ子 さん

 開発する時、自分が保育園にお迎えに行った際、建設業などで働いているお母さんが仕事帰りに安全靴で来ていたことを思い出しました。「もう少し普通のスニーカーのような、私服でも合うようなデザインだったらより良いのでは。」と思いアイデアを出しました。もちろん、機能は通常の安全靴と遜色ないものにしているので、軽くて高機能な靴になっています。自分も育児と仕事の両立をしながら、働いているなかで、現場で働く女性に普段感じている不便さを理由に「諦めてほしくない。辞める要因にしてほしくない。」と感じていました。最初にアンケートをとった時も、「サイズが大きい」「自分に合わない」といった声がすごくたくさん上がっていました。「自分にフィットするものがない」という意見は上位にあったので、ここを少しでもクリアにして、男性と同じものを提供できればいいなと思っています。

ヘルメット統括部
久野 光利 さん

 ヒアリングでは、自分では考えつかないような新鮮な意見を聞けたりするので、女性ものに限らず参考になります。また、「女性=ピンク」といった先入観にとらわれないように気をつけています。アンケートでは「男性と同じものが使いたい」と言う意見も多く、今使用しているものではフィット感に問題があるといった意見なども広く集めて、見た目は大きく変えずにサイズや機能を重視した商品を目指しました。着用時の負担を少しでも減らせるようなヘルメットを作っていきたいと思っています。

ユニフォーム統括部
伊藤 純子 さん

 身に着けるもので考えると、モチベーションが上がるものを作るべきだと思っています。作業や労働環境がハードワークであるほど、着ることによって、モチベーションが高まるものを作るべきだと思います。サイズが合わない、重い、大きいなどが気になってばかりだと、モチベーションも上がらないだろうと考え、その人が着たいもの、女性が働いていてかっこいいと思われるものを作ることが、女性向け商品を作る上で重要になると考えています。男性は着るもので仕事を決めたり、会社を選んだりする人は少ないと思いますが、女性の場合、着るもので決めることもあるのではないでしょうか。建設業者の男性幹部のなかには、女性の比率が少なくても、意見の多い女性の声を優先するとおっしゃる方もいました。このプロジェクトを通して、もとは女性向けで作った商品でも、男性も喜んでくれるということが分かったので、女性を応援しつつ、男性にも還元できるようにしたいです。

安全衛生相談室
山本 多絵子 さん

 私は商品担当ではなく、お客様に対して安全衛生に関するサービスを行う部署にいますので、仕事のなかで、ヘルメットや安全靴を着用して、お客様の現場を見せていただいたりする機会があります。サイズが合わないものを着用するのは、自分でも嫌だと感じていましたし、現場で働く女性の方がぶかぶかの作業着を着て、袖をまくったりしながら作業しているような場面も実際に見ていたので、プロジェクトが始まった時に、女性たちが自分のやりたい仕事をちゃんと身体に合った服を着て出来るようになったらいいなと思っていました。毎年の商品開発などを積み重ねて、プロジェクト活動を続けることで、さまざまな職場で活躍する女性が増えたらいいなと思っています。

今後の取り組みは?

 毎年商品の改良を重ねて、カタログを更新しています。今年度も10月に安全衛生保護具を取り扱う展示会で、新作を発表しました。最終目標は決まっていませんが、今後は現場で働く女性がさらに増えていくと想定されるため、今以上にハードな現場で働く女性も出てくるかもしれません。そのため、時代やニーズに合わせた商品を研究、開発していかなければなりません。

 女性用ハーネスなども、今までは使っている人はごく一部でしたが、2019年2月に「安全帯の規格」改正があり、安全帯自体を胴ベルト型からフルハーネス型に移行することが決定したため、需要が増えていくだろうと思われます。運輸業は特に人手不足が深刻で、女性の採用も増やさなければならないと言われています。そのような場面でも役立つような商品開発に取り組んでいきたいと考えています。

 ミドリ安全では、ピンクリボンのオフィシャルサポーターとして2016年春から、売上金の一部を寄付しています。

 「これからもワーク女子力での活動を通して、たくさんの働く女性を応援していきたいです。」と抱負を語ってくださいました。


チームひまわり 現場レポート

 プロジェクトチームの皆さんは、普段は各担当の商品開発を行う一方で、ワーク女子力の一員としても、現場で働く女性が安全に楽しく仕事が出来る環境作りをされています。

 建設業や女性に限定する訳ではなく、「ワーク女子力」の活動のなかで得た情報や意見を活かしながら、業種や老若男女問わずに良い安全衛生保護具を提供していきたいという想いはとても素晴らしいと感じました。

圖師

 インタビューでの商品説明の際に、商品のこだわりや長所、開発する際のエピソードなどを楽しそうに話される皆さんの姿が印象的です。

 自身の体験談や実際に現場で上がった声などからヒントを得て、毎年、より良い商品を作ること、今後も時代やニーズに合った商品開発を続けていきたいという熱意が伝わるインタビューでした。これからも開発される商品や活動に注目しています!