建設物価調査会

建設物価2015年10月号

徹底して女性が働きやすい環境づくりを行う 「357号東京港トンネル(その2)工事」を訪ねて

「建設業での女性活躍を支援するプロジェクト」

当調査会では、「建設業での女性活躍を支援するプロジェクト」として、女性職員中心にプロジェクトチーム(愛称“チームひまわり”)を立ち上げています。第3回目は、女性が活躍する建設現場のひとつ、「357号東京港トンネル(その2)工事」を訪ねてと、㈱大林組赤坂一丁目再開発土木工事事務所の阿部友香所長に女性から見た建設現場についてお聞きしました。


現在、8名の女性が配属されている

357号東京港トンネル(その2)工事は、慢性的な渋滞が発生している首都高速湾岸線の東京港トンネルと平行して整備することで、渋滞の緩和を図る事業です。全長1,890m、シールド延長1,315mのトンネルが整備されることにより、都心部から臨海部へと交通が転換し、都心部の交通状態が緩和されるほか、空港や湾岸地域の物流拠点とのアクセスも向上し、物流輸送がよりスムーズになると期待されており、大林組・鹿島建設のJVが工事を行っています。

この工事現場には、現在、技術職2名、事務1名、清掃1名、派遣4名、計8名の女性が配属されています。女性が多いこともあり、現場での悩みなどは周囲の方々に相談しやすい環境ができています。

また、半田剛所長を中心に、女性にとって必要なもの、あったらいいなあというものを積極的に取り入れています。

現場の様子
現場の様子
女性スタッフ
女性スタッフ

トイレの防音効果を強化した

水回りは、男性と女性で分けて欲しいとの要望に応えるために、トイレ、シャワー室、洗面台、洗濯機は女性専用のものを設けています。事務所内には、女性用トイレは2ケ所設置していますが、打ち合わせスペースの横にあるため、間仕切りの遮音性が不十分という意見がありました。そのため、新幹線にも使用されている制振シートを壁に貼り直し、防音対策を強化しています。

屋外にも女性専用トイレがありますが、男女を仕切るパーティションの壁には、ヘルメットや腰につけた工具をかける金具を配置するなどのきめ細かな配慮をしています。

今後は工事の進行に合わせて、シールド内に台車で移動させられるトイレも設置する予定としています。

「現場では共同トイレ、女性専用のシャワー室がないことが当たり前だと思っていました。現在は女性も増え、意見を言いやすい環境になり、設備もどんどんよくなっています。設備は私たちのために整えていただいていますが、仕事面では女性だからと変に気を遣われるということもなく、男性と同じようなレベルを求められています。それに応えるために私たちも持てる力を発揮して仕事をこなしています。」(髙坂 理紗さん)

パーティションの裏には工具がかけられる
パーティションの裏には工具がかけられる
畳敷きの更衣室
畳敷きの更衣室
女性専用の洗面台
女性専用の洗面台

更衣室は畳敷きでリラックスできる

更衣室は、元請け企業の女性技術者だけではなく、協力会社の女性も利用しています。室内は、靴を脱いでリラックスできように畳敷きで、エアコンや鏡などの設備も整っています。更衣室の鍵は、女性だけが持ち、室内に設置されている個人ロッカーも鍵がかかるように配慮しています。

「着替えたり、くつろいだりできる更衣室があり、恵まれている環境だと思います。また、清潔感を保つための芳香剤や消臭剤なども設置されているため、臭いが気になる時には、自由に利用しています」(小枝 千尋さん)

そのほか、スカートやヒールで事務所を訪れる女性のために、階段周りに目隠し用板を設置しています。

女性が使いやすいものを取り入れていきたい

お弁当を夏場冷やしておきたい、冬は暖かいお茶が飲みたいというニーズがあるため、食堂には、電子レンジ、冷蔵庫、ポット、製氷機などが完備されています。加えて、お茶、コーヒーなどがいつでも気軽に飲めるように用意されています。

会議の様子
会議の様子

「設備は十分整っているため、現在困っていることはありませんが、しいて言えば、屋外での作業が多いための日焼け対策でしょうか。首元までタオルを羽織ったり、日焼け止めを塗ったりしています。女性用のツバ付ヘルメットなども出ていますが、つけるのがちょっと恥ずかしいデザインなので、使用していません」(髙坂 理紗さん)

現場の今後の課題としては、ヘルメット・サイトウェア・安全靴は男性基準で作られているため、女性が利用するには改善する余地があること、また、工具も軽い方が使いやすいという要望もあることなどから、軽いタイプのものを取り入れられるように本社で検討を行っています。

また、女性来客者のために軽く通気性の良いタイプの安全長靴の導入や、女性専用のカタログなどがあれば、随時紹介し、購入検討するとのことでした。


チームひまわり 現場レポート

今回東京港トンネルの現場を訪れ、自分と同世代の女性技術者の方が、女性だからといって変に気を遣われることもなく業務を任せられ、「重たい資材等も自分で持っています!」と言われていたのがたくましく感じ、私も男性に負けず頑張らなきゃという気持ちになりました。

以前訪れた現場の女性技術者の方は、「重たいものや大きいものは男性が気を遣って持って下さり、申し訳ない気持ちになってしまう。」と言われていたので、男性が女性はこうだろうなと思っていることが、実はそうではないことがあるのだと感じました。そうしたギャップを埋めていくためにも、女性の意見を発信していくことは重要だと思いました。

駒津

駒津さん